ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は個人の所得シリーズ第10弾、退職所得の基礎について、整理しようと思います。



いよいよ、個人の所得シリーズもラストですね!



退職金は一生に何度も受け取るものではありませんので、そもそも税金の課税対象になることを知らない人もいらっしゃるのではないでしょうか。また、2026年1月以降、制度が改悪されますので、最低限知っておくべき退職所得の基礎について解説します。
1. はじめに
(1).退職金は人生の大きな節目で受け取る重要な資金
長年の勤労の対価として受け取る退職金は、老後の生活を支えるための重要な資金源となります。特に、大企業を定年退職した場合、その総額は2,000万円を超えることも珍しくありません。
(2).「退職所得」として課税対象になることを知らない人も
このまとまったお金を受け取る際、「退職所得」として税金(所得税や住民税)が課せられることをご存知でしょうか。退職金には税負担を軽減する大きな優遇措置が設けられていますが、その仕組みを正しく理解していないと、思わぬ税負担に直面し、手取り額が大きく減ってしまう可能性があります。
(3).本記事の目的
本記事では、この退職所得の定義、計算方法、そして2026年以降の重要な制度改正のポイントまで、誰にでもわかりやすく、専門的な内容を深く掘り下げて解説します。大切な老後資金を最大限に守るための「出口戦略」を一緒に考えていきましょう!
2. 退職所得とは?
(1).定義:退職に伴い勤務先から受け取る退職手当や一時金など
退職所得とは、退職に伴い勤務先から一括で受け取る退職手当や一時金などの所得区分を指します。国は、長年の勤労への報いとして、退職所得に対して他の所得にはない優遇税制を設けています。
(2).iDeCoや企業型DCからの一時金も退職所得に含まれる
会社の退職金だけでなく、近年普及が進んでいるiDeCo(個人型確定拠出年金)企業型DC(企業型確定拠出年金)老齢給付金を一時金として受け取る場合も、税法上は退職所得として扱われます。
(3).解雇予告手当や未払賃金の弁済も退職所得に該当
また、退職所得に該当する退職手当等には、退職時に受け取る手当のほか、解雇予告手当や未払賃金の弁済金なども含まれる場合がありますが、一般的にこれらの「退職手当等」は、税制上の優遇措置の対象となる収入金額に含まれます。
3. 退職所得の計算方法
退職所得は、優遇された計算式によって算出され、そのおかげで税負担が大幅に軽減されます。
(1).算定式
退職所得金額を計算するための基本的な算定式は、以下の通りです。
退職所得金額=(退職金の収入金額−退職所得控除額)×1/2
ここで注目すべきは、退職所得控除額を引いた後の残額(課税対象となる部分)をさらに半分(1/2)にしてから課税されるという強力な優遇措置(1/2課税)です。
(2).特定役員退職手当等の場合は「÷2」の特例が適用されない
ただし、この「1/2課税」の特例が適用されないケースがあります。
特定役員退職手当等として支払われる退職金については、退職所得控除額を控除した残額の全額が課税対象となります(2分の1課税が適用されません)。
(3).短期退職手当等の扱い
さらに、2022年1月1日以降に支払われる短期退職手当等(役員等以外の者として勤続年数が5年以下であるもの)についても、税制上の制限が設けられています。
短期退職手当等に係る退職所得の計算では、収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分の金額については「1/2課税」が適用されません。このルールは、従来は役員に限定されていましたが、現在は一般従業員にも適用対象が拡大されています。
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
4. 退職所得控除の仕組み
退職所得の計算において、最も重要な要素が退職所得控除です。これは、退職金の非課税枠、つまり「税金がかからないライン」を意味します。
(1).勤続年数に応じた控除額
退職所得控除額は、勤続年数に応じて計算され、勤続期間が長いほど控除額が大きくなるのが特徴です。特に勤続20年を超えると、控除額が増額される優遇措置があります。
(2).勤続年数の考え方
控除額の計算における勤続年数(iDeCoの場合は掛金拠出期間)は、1年未満の端数がある場合、これを1年に切り上げて計算します。例えば、勤続10年1ヶ月であれば、勤続年数は11年として計算されます。
複数の退職給付制度に加入している場合や、同じ年に複数の退職一時金を受け取る場合は、控除額の計算基礎となる「勤続年数」は、会社の勤続期間とiDeCoの加入期間のうち、最も長い期間が採用されます(期間が単純に合算されるわけではありません)。
(3).控除額早見表の紹介
退職所得控除額は以下の計算式で算出されます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 |
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 (最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
例えば、勤続30年の場合、控除額は800万円(最初の20年分)+ 70万円 × 10年(20年超の10年分)= 1,500万円となります。勤続40年であれば、合計2,200万円まで税金がかかりません。
(4).もしもの時の特例:障害退職の場合
もし、あなたが障害者になったことが退職の原因である場合、通常の退職所得控除額に100万円が上乗せされる特例があります。この特例の適用を受けるためには、退職所得の受給に関する申告書にその事実を記載する必要があります。
5. 税金の種類と計算
退職所得にかかる税金は、その計算方法と納付先が、給与や事業所得とは大きく異なります。
(1).所得税:分離課税で計算
退職所得は、給与所得など他の所得とは合算せずに税額を計算する「分離課税」が適用されます。この方式のおかげで、退職金の金額が大きくても、他の収入の影響を受けず、低い税率で済む傾向があります。
(2).住民税:居住地の自治体に納付
所得税の他に、退職所得に対しては住民税も課税されます。住民税は、原則としてあなたが居住している自治体(都道府県や市区町村)に納付されます。住民税についても、所得税と同様に優遇された計算方法が適用されます。
(3).復興特別所得税(2037年まで2.1%上乗せ)
現在、所得税の計算においては、2013年1月1日から2037年12月31日までの間に生じる所得に対して、復興特別所得税が上乗せされています。これは、所得税額の2.1%相当額です。
(4).実例計算
退職所得の計算プロセスを具体的な例で見てみましょう。ここでは勤続年数に応じた控除額と、1/2課税を適用します。
| ケース | 勤続年数 | 退職金の収入金額 (A) | 控除額 (B) | 課税退職所得金額 (A-B)×1/2 |
| 勤続10年 | 10年 | 800万円 | 40万円×10年=400万円 | (800万円 – 400万円) × 1/2 = 200万円 |
| 勤続30年 | 30年 | 2,000万円 | 800万円+70万円×10年=1,500万円 | (2,000万円 – 1,500万円) × 1/2 = 250万円 |
【勤続30年、退職金2,000万円の場合の税額目安(所得税のみ)】
課税退職所得金額は250万円です。
所得税率(下記速算表より10%):250万円 × 10% – 97,500円 = 152,500円。
これに復興特別所得税(102.1%)を乗じたものが、おおよその所得税額になります。


参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.2260 所得税の税率
6. 退職金の受け取り方法による違い
iDeCoや企業型DCを含む退職金は、「一時金」として一括で受け取るか、「年金形式」として分割で受け取るかを選択でき、この選択によって税金の計算方法が大きく変わります。
(1).一時金として受け取る場合のメリット・デメリット
• メリット
「退職所得控除」と「1/2課税」という最大の税制優遇が適用されるため、税負担が軽くなる傾向があります。特に退職金額が控除額の範囲内に収まる場合は、全額非課税となる可能性が高いです。
• デメリット
一度に多額の資金を受け取るため、管理や運用をすべて自己責任で行う必要があります。また、後述する制度改正(10年ルール)により、複数の退職金を短期間で受け取ると控除のメリットが薄れる可能性があります。
(2).年金形式で受け取る場合の税負担
年金として分割で受け取る場合、その収入は「公的年金等に係る雑所得」に分類され、総合課税の対象となります。
- 適用される控除
「公的年金等控除」が適用されます。 - 税負担
他の所得(老齢基礎年金、老齢厚生年金など)と合算して課税されるため、公的年金の受給額が大きいと、iDeCoの年金受取分に高い税率が適用され、税負担が増える可能性があります。ただし、65歳未満であれば公的年金等の収入が年間60万円まで非課税となるなど、控除枠を単独で使える期間は有利になる場合もあります。



雑所得については、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】個人の雑所得の基礎知識について
(3).社会保険料の有無や控除額の違い
- 一時金
退職所得は社会保険料の計算には影響しません。 - 年金形式
年金形式で受け取る場合、雑所得として扱われ、公的年金と合算されるため、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料の算定基礎に含まれ、結果として社会保険料が増える可能性があります。
7. 制度改正のポイント(2026年1月以降)
老後の資産形成においてiDeCoの利用者が増える中、退職金とiDeCoの受取タイミングによる税制の不公平性を是正するため、2026年(令和8年)1月以降に大きな制度改正が予定されています。
(1).退職所得控除の「5年ルール」→「10年ルール」への変更
現行制度では、iDeCoの一時金と会社の退職金の受け取りを5年以上空けると、それぞれの退職所得控除をほぼ満額適用できる「5年ルール」が存在していました。
しかし、2026年1月1日以降にDC一時金の支払いを受け、同日以後に退職手当等の支払を受ける場合、この重複排除の調整対象期間が「退職手当等の一時金の支払を受ける年の前年以前9年内」に延長されます。これは実質的に「10年ルール」への変更を意味します。



退職手当等の一時金の支払を受ける年の前年以前9年内にDC一時金を受給している場合は調整対象ということですね。
(2).iDeCoや企業型DCと退職金の控除競合問題
この改正は、特に65歳定年や継続雇用制度を利用する方にとって重大です。
- iDeCoを先に受け取る場合(パターン①)
60歳でiDeCo(DC一時金)を受け取り、65歳で会社から退職金を受け取ると、両者の受給間隔が5年しかないため、改正後の10年ルール(前年以前9年内)の調整規定に引っかかります。これにより、勤続期間が重複している期間分の控除額が会社の退職金から除外され、税負担が大幅に増加する可能性があります。 - 退職金を先に受け取る場合(パターン②)
会社の退職金を先に受け取る場合、iDeCoの受給時の重複排除調整期間は従来から19年と長く設定されており、こちらは大きな変更はありませんが、控除を満額活用するには20年以上の間隔を空ける必要があります。
課税の公平性を保つための改正ですが、退職金とiDeCoの受給順序とタイミングを計画的に設計しなければ、せっかくの税制優遇が活かせなくなるリスクが高まります。



小規模企業共済に加入されている場合も注意が必要そうですね。
小規模企業共済については、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】いまさら聞けない、小規模企業共済の概要とメリットについて
8. 実務上の注意点
税制優遇を最大限に享受するためには、事前の準備と正確な手続きが不可欠です。
(1).退職所得の受給に関する申告書の提出で確定申告不要
退職金を受け取る人が、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払者に提出することにより、確定申告は不要となります。
この申告書を提出すると、支払者側が正確な退職所得控除を計算した上で、所得税および復興特別所得税、住民税を源泉徴収(天引き)するため、手続きが完了します。



もし、この申告書を提出し忘れると、退職金の支払額に対して退職所得控除などの優遇が一切適用されず、退職金全額に一律20.42%(所得税20%+復興特別所得税2.1%)の高い税率で源泉徴収されてしまいます。払い過ぎた税金を取り戻すには、翌年に確定申告(還付申告)を自分で行う必要があります。
参照:A2-29 退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.2732 退職手当等に対する源泉徴収
(2).顧問税理士や税務署への確認が必要なケース
以下のような複雑なケースでは、税理士に事前に相談し、最適な受取戦略を立てることを強くお勧めします。
- 複数の退職一時金を同じ年または短期間に受け取る場合 (iDeCoと会社の退職金など)。
- 短期勤続(5年以下)での退職金がある場合 (短期退職手当等)。
- 退職金を年金形式で受け取ることを検討している場合 (他の公的年金との兼ね合いをシミュレーションする必要がある)。
(3).老後資金計画のために事前に手取り額を試算しておく重要性
退職金やiDeCoの一時金は、受け取るタイミングと方法によって課税額が大きく変わる可能性があります。
老後の生活設計を不安なく進めるためには、まずはご自身の「退職所得控除額を正確に把握」し、「老後にいくら必要なのか」という視点から、複数の受け取りパターンで税額を試算(シミュレーション)しておくことが非常に重要です。
9. まとめ
退職金は、長年の頑張りが形になった大切な資産です。この資産を守り、最大限に活用するために、最後に重要なポイントを再確認しましょう。
(1).退職所得は税制優遇があるが、勤続年数や受け取り方で負担が変わる
退職所得は「退職所得控除」と「1/2課税」、「分離課税」という強力な優遇措置によって守られています。しかし、この優遇の適用度合いは、あなたの勤続年数や退職金の受け取り方(一時金か年金か)によって大きく変動します。
(2).制度改正により控除の適用ルールが変わるため最新情報の確認が必須
特に2026年1月以降は、iDeCoと退職金の同時期受給に関する「10年ルール」が適用され、これまでの節税の「常識」が通用しなくなる可能性があります。税制は今後も変更される可能性があるため、国税庁などの信頼できる情報源から最新の情報をキャッチし続けることが必須です。



退職所得の計算方法と控除の仕組みを理解することは、将来の安心への大きな一歩です。 最適な「出口戦略」は人それぞれ異なります。まずは、ご自身の退職金やiDeCoの状況を「見える化」し、受け取りタイミングと方法について計画的にシミュレーションを行いましょう。複雑な場合は、専門家である税理士に相談することも、賢い選択です。相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。








コメント