ミミレイドンた、大変ですボス!税務署からお客様のところに税務調査が入ると連絡がありました!税務調査初めてで、、、怖いです、どうしましょう。。。



確かに税務調査と聞くと怖がる人は多いけど、はじめてでも怖がらなくて大丈夫です。調査は「罰するため」ではなく「適正申告を確認するため」の制度です。刑事ドラマでよくあるような、”取り調べ”みたいな雰囲気ではありません。調査官にもよりますが、とてもフレンドリーです。ただし、フレンドリーだからと言って気を許して余計なことまで話してしまうと、あらぬ疑いを持たれてしまうこともあります。今回は、税務調査の要点を整理してみましょう。
1.税務調査とは
税務調査とは、納税者が申告した所得や税額が、税法に基づいて正しく計算されているかを確認するために行われるものです。その主な目的は、内国税の適正かつ公平な徴収、そして悪質な不正計算を是正することにあります。
一般的に税務調査といわれるものの本質は「任意調査」です。任意調査は、納税者の協力に基づいて行われる調査であり、刑事事件となる脱税捜査を目的とした「強制調査(マルサ)」とは根本的に異なります。
任意調査は、納税者の協力に基づくため、日程や場所の調整も可能であり、強硬的な行為は原則として行われません。ただし、「任意」という名称ですが、調査官には質問検査権が与えられているため、納税者は調査に応じる義務(受忍義務)があり、正当な理由なく拒否した場合は罰則の対象となる可能性もある点には注意が必要です。
2.税務調査の種類
税務調査は、主にその性質によって以下の2種類に大別されます。多くの人がイメージされる税務調査は(2)かもしれませんが、一般的な税務調査は(1)ですので、(1)だけ見ていただければ問題ありません。
(1). 任意調査(一般調査)
- 実施主体:税務署の担当官、または国税局の担当官。
- 特徴:ほとんどの調査がこれに該当します。事前に電話で通知があり、日程調整(事前通知)を経て実施されます。通常、調査官は1名から数名で訪問します。
- 動向:近年、文書や電話連絡、来署依頼を通じて、納税者に対し自発的な申告内容の見直しを要請する「簡易な接触」も行われ、申告漏れ所得金額が高水準となっています。
(2). 強制調査(マルサ)
- 実施主体:国税局の査察部(通称マルサ)。
- 特徴:裁判所の令状に基づき、事前連絡なく突然、強制的に行われる犯罪捜査です。大口かつ悪質な脱税や犯罪行為が疑われる場合に対象となります。検察への告発が目的であり、強制捜査に踏み切るのは、脱税や犯罪行為に対する証拠がある程度押さえられている(裏が取れた)状態です。動員される査察官が100人を超えることも珍しくありません。顧問税理士がこの強制調査に立ち会うことは、ほとんどありません。
- 国税局の資料調査課(通称リョウチョウ):マルサ以外にも国税局には「リョウチョウ」と呼ばれる部署があり、マルサの対象とすべきかの選定や悪質性の調査を行います。リョウチョウからの調査は任意調査の形をとりますが、無予告調査を行うことがあります。



税務調査といわれると、(2)の強制調査をイメージしてました。少し安心しました!
3.税務調査の流れ
一般的な任意調査は、以下の7つのステップで進行します。
調査対象者、または顧問税理士(税務代理権限証書を提出している場合)に、調査を行う旨が通知されます。
調査官から打診があったら、業務状況や準備期間、税理士の予定を踏まえ、事業を優先して日程調整をしっかり行いましょう。
調査開始日時、場所、対象税目、期間、準備資料などの詳細が伝えられます。
指定された事業年度の過去3年間の帳簿や資料を揃えます。不足があると調査が長引く可能性があります。
通常2~3日間にわたって行われます。初日の午前中は聞き取り調査(事業概況ヒアリング)が、午後からは帳簿や書類の確認(帳簿調査)が本格的に開始されます。
実地調査後、1〜2週間を目安に税務署内で検討が行われ、結果が通知されます(大規模な場合は3ヶ月程度かかることも)。
結果は「是認」「否認(修正申告)」「更正」のいずれかです。否認された場合、修正申告を行うか、内容に納得できなければ更正処分を受け不服申し立てを行うかを選択します。
4.調査対象になりやすい法人の特徴
税務署は、税金が取れると見込まれる納税者を優先的に調査したいと考えています。近年では、AIを活用したデータ分析(KSKシステム等)により、効率的に調査対象が選定されています。
中小企業の法人が特に調査対象となりやすい要素は以下の通りです。
(1). 利益・規模の変動
赤字の事業所よりも黒字の事業所の方が調査対象になる可能性が高くなります。また、売上高や利益などが大きく変動している会社は狙われやすいです。
(2). 赤字でも油断禁物
赤字会社でも調査対象となることはあります。特に消費税に重点を置いた調査が行われることがあります。
(3). 社長個人の動き
代表者が新たに不動産を購入している場合や、個人借入金が大幅に変動している会社は調査対象になりやすいです。
(4). 経理上の特性
消費税の還付申告をした、多額の経費計上があった、設立3年目の事業者も調査に入られやすい傾向にあります。
(5). 過去の履歴
過去の税務調査で不正取引や大きな計算ミスが発見された会社は、調査のスパンが短くなると言われています。
5.調査に備えるための実務ポイント
日頃から「調査に入られても不安のない税務処理」を心がけることが最善の対策です。
(1). 帳簿・書類の整理保存
総勘定元帳などの帳簿や、領収書、請求書などの証憑書類は、要求されたらすぐに見せられるように整理保存しておきましょう。
(2). 現金の管理徹底
現金出納帳は日々記帳し、現金残高も毎日確認することが基本です。現金商売の場合、レジペーパーや売上伝票なども破棄せずに保存しましょう。
(3). 証憑の適正化
白紙の領収書は絶対に受け取らず、記入は必ず支払先にしてもらうこと。印紙が必要な領収書には必ず印紙を貼り、消印してもらいましょう。
(4). プライベートとの分離
机の引き出しなどに不必要な私物を保管しないように徹底します。また、代表者や家族の通帳を見られることもあるため、注意が必要です。
(5). 文書による裏付け
広告宣伝費や交際費、手数料など、税務調査で指摘されやすい費用については、配布先リストや書面による契約書を作成し、取引の実態を証明できるように準備します。
(6). 事前是正
税務調査の前に申告内容を再確認し、もし申告の不備や間違いが見つかった場合は、調査官から指摘される前に修正申告や期限後申告を済ませておきましょう。これにより、ペナルティ(加算税)を軽減することが可能です。
6.提出を求められる可能性が高い資料やデータ
一般的な任意調査の対象期間は、基本的に過去3年間です。ただし、問題が判明した場合、最長で7年間遡ることもあります。
調査では、事業に関する全ての事項について資料の提示を求められる可能性があります。
| 分類 | 具体的な資料・データ |
|---|---|
| 申告関連 | 法人税申告書、消費税申告書、 決算書、内訳書、事業概況書 |
| 帳簿書類 | 総勘定元帳、仕訳帳、振替伝票、 現金出納帳、補助簿(会計データから出力) |
| 原始資料 | 過去3年間の領収書、請求書、納品書、 契約書(業務委託、賃貸借、売買) |
| 資金関連 | 会社(事業用)の通帳(ネットバンキング の場合はプリントアウトが必要な場合も) |
| 人件費関連 | 賃金台帳、源泉徴収簿、源泉徴収票、給与支払報告書 |
| 内部資料 | 在庫表、消費税計算書、 株主総会や取締役会等の議事録、稟議書 |
| 電子データ | 帳簿データ(電子帳簿保存法対応の場合)、 パソコン内の電子メール、販売管理ソフトのデータ |
【注意:社長個人の通帳について】 法人税の調査であっても、社長個人名義の通帳について「事業関連性」が疑われる場合、調査官は提示を求めることが法令上認められています。例えば、家賃の支払い(オフィス等を個人所有し法人に貸している場合)や、役員借入金・役員貸付金といった個人と法人間での金銭のやり取りがあるケースです。事業関連性がなければ、通常、提示する義務はありません。
7.過去の指摘例
中小企業が受ける指摘例をいくつかご紹介します。
(1). 売上除外(個人口座の利用)
自動販売機の収入や仕入先からのリベートを社長個人の通帳で受け取り、法人の売上に計上せず、個人としても申告していなかったケースがあります。個人名義の口座に入金しても、税務当局は金融機関への名寄せで入出金データを把握できます。これは脱税行為であり、重加算税(35%または40%)の対象となります。
(2). 経費の不適切な処理:
交際費の否認
広告宣伝費として処理した社名入り粗品の費用が、配布先リストがないために交際費と認定された。また、同業者団体の会費が親睦目的と見なされた場合も同様です。



領収書の但し書きが空欄で、交際費の一部否認されることも。参加者・目的・取引先名を記載することや、写真・議事メモで補強するようにしましょう。
役員報酬の否認
役員が行った業務の裏付けが不十分な場合や、同規模・同業種の会社と比べて不当に高額であると判断され、一部が否認された。



役員報酬の場合、定期同額給与にも注意が必要です。別の記事で解説します。
給与認定(外注費の否認)
外注費として計上していたが、その性質から給与として認定されてしまい、源泉徴収漏れ等の指摘が入った。



この場合、源泉徴収漏れだけでなく、消費税の仕入税額控除も否認される可能性があります。外注費と給与の違いをよく理解し、業務委託契約の締結と成果物を明確にするなどの対応が必要です。
(3). 退職金の損金算入否認
定年退職後、同一賃金・同一役職で再雇用した社員に対し、支払った退職金が税務的に退職とは言えず、一括費用計上が否認されたケース。就業規則や規約による裏付けが重要となります。



論点は売上・交際費・役員・外注・在庫・消費税に集中する傾向があります。チェックリストを作成するなど、先回りしておきましょう。
8.気を付けるべき発言や行動
税務調査官は、雑談も含めてすべての会話から情報を収集しています。対応次第で結果が大きく変わるため、以下の点に細心の注意を払いましょう。
(1). 余計なことは口にしない
調査中に余計なことを話さないのが鉄則です。雑談も調査官にとっては貴重な情報源となるため、不用意な発言は控えましょう。



聞かれていない論点まで広げる必要はありません。求められた範囲+前後関係に必要な最低限の回答に留めましょう。
(2). 無責任な発言を避ける
確認が必要なことや不明な点については、曖昧な回答を避け、「確認します」と伝え、後日正確に回答するようにします。無責任な発言は不信感につながります。



その場で答えた方が印象よくないですか?



実際には、即答よりも正確性が重視されます。「関連資料を精査の上、◯日までに文書で回答します。」として、回答を保留(翌日までの宿題)にしても何ら問題ありません。「たぶん」「おそらく」で言い切らないようにしましょう。
(3). 想像で答えない
法人であれば従業員、個人事業者であれば家族も質問されることがありますが、自分が担当していないことについては、想像で答えてはいけません。
(4). 態度を冷静に保つ
威圧的、高圧的、威嚇的な態度は絶対NGです。誠実な対応を心がけましょう。ただし、事実ではないことや、調査官の指摘が間違っている場合は、きっぱりと否定することも大切です。感情的になると「怪しい」と捉えられてしまいます。
(5). 文書への署名押印
調査官があらかじめ作成した、納税者にとって不利になるような事実を認める「確認書」のような文書(一筆)への署名押印は、拒否することが可能です。強制調査ではないため、不利になる書面の提出を強制されることはありません。
9.よくある質問
- 調査日は変更できる?
-
調査官によっては、別の税務調査で予定が埋まっている等との理由で、断ってくることもありますが、基本的には、正当な理由があれば調査日を変更することはできます。どうしても調整が難しい場合には、税理士経由で候補日を提示しましょう。
- どこまで提出義務がある?
-
基本的に調査に必要な範囲はすべて提示する必要があります。担当官に目的・意図・範囲を確認し、守秘義務や個人情報はマスキングで対応することも可能です。
- 録音は可能?
-
録音は調査官の同意が必要です。断られる場合もあるため、議事録の相互確認が現実的です。
- 追加税額が出たら?
-
修正申告による加算税・延滞税を含め、速やかに納付しましょう。また、将来の再発防止策とセットで行うべきです。
- 税理士は必須?
-
税理士に依頼するかは任意ですが、論点整理・交渉・手続の面で立会いしてもらうことを推奨します。税務調査に強い税理士というよりは、日頃から関与のある顧問税理士に立合いを依頼しましょう。
- 税務調査の連絡が突然来たらどうすればよいですか?
-
基本的には顧問税理士に事前連絡がありますが、直接連絡があった場合には、調査担当者の氏名と所属部署等を聞き、即座に回答せず、「税理士の立会いを希望しますので、都合を聞いて折り返し連絡します」と伝えてください。
- 事前に修正申告をすれば、重加算税を回避できますか?
-
税務調査の立会いのための日時の連絡が行われた段階で、実際に調査が行われる前に修正申告書が提出された場合は、原則として「更正があるべきことを予知してされたもの」には該当せず、重加算税を回避できる場合があります。重加算税(原則35%)は非常に重い負担となりますので、避けることは重要です。
- 調査官に言われたら、必ず修正申告に応じる必要がありますか?
-
修正申告に応じるか否かは納税者の判断となります。申告に誤りがある場合は自ら是正することが望ましいですが、指摘内容に納得できない場合は、修正申告をせず更正処分を待つという選択肢もあります。更正処分であれば、その内容について不服申し立てをすることができます。



国税庁HPにも税務調査手続きに関するFAQがありますので、ご参照ください。税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)|国税庁
10.まとめ
税務調査は、日々の経理処理が試される場です。新型コロナウイルスの影響が落ち着き、調査件数は増加傾向にあり、AIの活用も進んでいます。
大切なのは、以下の3点です。
(1). 日頃からの準備と是正
帳簿や証憑の整理を徹底し、不正計算(売上除外や架空経費)は絶対にしないこと。もしミスを見つけたら、調査前に自ら是正申告を行い、ペナルティを軽減しましょう。
(2). 任意調査であることを理解する
調査官には誠実に対応しつつも、不当な要求や私的な事柄については毅然とした態度で臨むこと。特に社長個人の通帳の提示は、事業関連性の有無を確認しましょう。
(3). 信頼できる税理士の活用
税務調査の対応には、専門知識と折衝力が必要です。味方である税理士と共に万全の体制で臨むことが、最善の結果を導く鍵となります。税務調査に強い税理士を顧問とすることも大事ですが、私はどちらかと言うと、日頃からコミュニケーションがしっかりと取れる税理士に依頼されることが重要であると考えております。一番の税務調査対策は、税務調査当日の振る舞いではなく、日頃からの適正な処理の積み重ねですからね。
税務調査は怖いものではなく、準備と心構えがあれば乗り切れます。変に身構えてしまい、本業に影響を及ぼさないように注意しましょう!
補足 税務調査に税理士が立ち会うメリット



税務調査の基礎が理解できました。ただ、調査に入られる側としては、とても不安でしょうね。。。



毎年入るものではないですからね。慣れることはないと思います。税理士は、税務調査において納税者の「盾」となり、調査のストレスから解放し、本業に集中できる環境を取り戻すことが使命です。



なるほど、まさに税理士が立ち会うメリットですね。



メリットは他にもあって、税務調査は、取引の処理が税法に照らして正しいかという「解釈」のせめぎ合いです。実は、税務署側が間違えることだって全然あるんですよ。だからこそ、税理士の対応能力で調査結果は大きく変わります。調査官との交渉において、こちら側の処理の正当性を説明し、調査官を納得させることができれば、当初指摘された追徴税額を軽減できる可能性があります。税理士がいないと交渉の余地があるかも判断できないため、言われるがまま追徴税額を支払うだけになると思います。税理士の有無や力量によって、負担額が大幅に変わる可能性があるということは覚えておいてください。



反論もできるんですね!



調査官からの質問や指摘事項について、反論すべきことは、自信を持って冷静に理路整然と行う必要があります。逆に感情的な態度は調査官に「怪しい」と捉えられてしまうため厳禁です。



いずれにせよ、顧問税理士との信頼関係が大事ですね!



税務調査は顧問税理士と二人三脚で対応することになります。普段から税理士と良好な信頼関係を築いておくことが、調査を円滑に進める上で非常に重要です。調査の連絡があったら、事前に顧問税理士と懸案事項について検討し、不安を解消しておきましょう!”顧問税理士がまだいない”、又は”顧問税理士とうまくコミュニケーションが取れていない”場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










コメント