【町田市の税理士が解説】グループ通算制度開始に伴う時価評価とは

ミミレイドン

ボス、おはようございます!2026年8月3日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、グループ通算制度における「開始に伴う時価評価の概要」についてです。

ミミレイドン

時価評価ですか。単体納税からグループ通算制度に移行する際に行う特別な処理のことですよね。なぜわざわざ時価評価を行う必要があるのでしょうか?

新屋賢人

非常に良い着眼点ですね。単体申告時代の含み損益をグループ内に持ち込ませないための、租税回避を防止する重要な仕組みなのです。本日はその理由から、対象範囲、判定時期、そして実務上悩ましい「時価とは何か」まで、確認していきましょう。

グループ通算制度開始に伴う時価評価とは?なぜ行うのか?(時価評価行う理由)

目次

単体申告からグループ申告への移行と租税回避防止

グループ通算制度を開始するにあたり、一定の法人に対して保有する資産の時価評価が求められます。なぜこのような手続きが必要になるのか、その根本的な理由を理解することが実務において非常に重要です。

グループ通算制度は、原則として旧連結納税制度における時価評価と同様の考え方を採用しています。単体納税からグループ通算制度への移行に伴い、単体申告時代に発生した資産の含み損益をそのままグループ内に持ち込むと、不当な租税回避行為を誘発するおそれがあります。例えば、含み損を抱えた資産を持つ法人をグループに加入させ、その後に資産を売却して損失を顕在化させることで、グループ全体の所得を圧縮し、不当に税負担を減少させるといった行為です。

このような租税回避行為を防止する観点から、グループ通算制度を開始する初めに、一定の要件を満たす法人に対し、保有する一定の資産の時価評価損益の計上を求めています(法人税法第64条の11第1項、法人税法施行令第131条の15第1項)。つまり、グループ通算制度の適用を受ける前に、単体時代の含み損益をあらかじめ精算しておくという趣旨に基づく制度と言えます。

新屋賢人

時価評価の目的は「過去の含み損益の遮断」にあります。実務においては、この制度趣旨を念頭に置くことで、なぜ特定の法人が対象となり、特定の資産が評価の対象となるのかが論理的に理解できるようになります。制度の根幹を成す考え方ですので、しっかりと押さえておきましょう。

時価評価の概要(時価評価の対象法人と対象資産)

時価評価の対象となる法人(原則と例外)

時価評価の対象となる法人については、原則と例外が明確に規定されています。

原則として、グループ通算制度の開始時または加入時に、親法人及び子法人のすべてが時価評価の対象法人となります。

しかし、すべての法人に時価評価を強制すると実務上の負担が過大となるため、例外的な取扱いが設けられています。一定の要件を満たす親法人や、親法人との間に完全支配関係が継続することが見込まれている子法人などは、時価評価の対象外とされます(法人税法第64条の11第1項)。実務上は、多くの法人がこの継続保有要件などを満たすことで時価評価の対象外となるケースが多いですが、要件の判定には細心の注意が必要です

時価評価の対象となる資産の範囲

時価評価の対象法人に該当した場合、その法人が有するすべての資産を時価評価するわけではありません。対象となる資産(時価評価資産)は以下のものに限定されています(法人税法施行令第131条の15第1項)。

・固定資産
・土地(土地の上に存する権利を含みます)
・有価証券
・金銭債権
・繰延資産

さらに、上記の資産であっても、実務の簡便性等を考慮し、以下のものは時価評価の対象から除外されます(法人税法第64条の11第1項、法人税法施行令第131条の15第1項第1号から第3号)。

帳簿価額が1,000万円未満の資産
含み損益が子法人の資本金等の額の1/2の若しくは1,000万円のいずれか少ない金額未満の資産
・自己創設営業権(他の者から購入したものではない営業権など)
売買目的有価証券
・償還有価証券
・一定の圧縮記帳対象減価償却資産
・生命保険契約に関する権利など、一定の資産

資産の対象・対象外の比較表

項目      時価評価の対象となるもの時価評価の対象外となるもの(主な例)
法人原則としてすべての親法人・子法人継続保有が見込まれるなどの要件を満たす法人
資産の種類固定資産、土地等、有価証券、金銭債権、繰延資産棚卸資産、現金預金など
帳簿価額の要件帳簿価額が1,000万円以上のもの帳簿価額が1,000万円未満の資産
その他の要件他者から取得した営業権など自己創設営業権など
新屋賢人

時価評価の対象資産の判定において、帳簿価額が1,000万円未満かどうかの判定は非常に重要です。この判定は「資産の単位ごと」に行うため、一筆の土地や一棟の建物ごとなど、資産の区分ごとに法令上定められた単位で判定して帳簿価額を確認する必要があります。一括して判定するわけではない点に実務上十分注意してください。

時価評価の対象外でも注意!繰延損益等の取崩し

取崩しが必要な繰延損益等とは

グループ通算制度開始にあたって、時価評価の対象外となる法人であっても安心はできません。開始直前の事業年度末において一定の繰延損益等を有している場合は、その繰延損益等を取り崩して、開始直前事業年度の益金又は損金に算入しなければならない規定が設けられています

具体的には、完全支配関係のある法人間での取引に係る繰延譲渡損益(法人税法第61条の11第4項)や、特定の資産の買換え等に伴う特別勘定(法人税法第65条の8第1項など)などが該当します。

これは、単体申告の時代に内部取引として繰り延べられていた損益を、グループ通算制度という新たな課税単位に移行するにあたり、一旦清算しなければならないという考え方に基づいています。時価評価が必要ない法人であっても、過去の組織再編やグループ内取引によって生じた繰延損益が存在しないか、開始前の事業年度において必ず確認を行う必要があります。

新屋賢人

時価評価の対象外になったからといって、過去の取引の確認を怠ってはいけません。特に、過去に100%グループ内の法人と大きな固定資産の売買を行っていた場合、繰延譲渡損益が残っている可能性があります。通算制度開始前の決算において、別表等の確認を徹底しましょう。

いつ判定し、いつ実施するのか?(時価評価の判定時点と実施時点)

判定時点と実施時点の明確な区分

時価評価の手続きにおいては、「いつの状況で対象になるか判定するのか(判定時点)」と、「いつの時点で時価評価の仕訳を計上するのか(実施時点)」を正確に区別する必要があります。

まず、判定時点については、原則としてグループ通算制度の開始の日の前日(完全支配関係発生日等の末日)の現況で判定を行います。例えば、ある法人をグループに加入させる場合、その完全支配関係が生じた日の前日の状況をもって、時価評価法人に該当するかどうかを判断します。

次に、実施時点については、時価評価が必要と判定された法人は、グループ通算制度の開始の日の前日の属する事業年度(通算前事業年度)の終了の時において、対象資産の時価評価を行います(法人税法第64条の11第1項)。すなわち、通算制度に切り替わる直前の単体としての最後の決算期において、時価評価損益を計上し、単体申告として申告を済ませることになります。

新屋賢人

判定時点と実施時点のズレは、実務上のミスが起きやすいポイントです。判定はあくまで事前の現況で行いますが、実際の損益計上は開始直前の事業年度の末日に行います。決算スケジュールを組む際には、この時価評価の算定期間を十分に確保しておくことが肝要です。

そもそも「時価」とは何か?資産ごとの評価方法

客観的な交換価値としての時価

時価評価を行う上で最も実務的な課題となるのが、「時価」をどのように算定するかという問題です。法人税法における時価とは、原則として「第三者間における取引価格として合理的な価格」、すなわち「客観的な交換価値」を指します

しかし、すべての資産について市場で取引されるような明確な価格が存在するわけではありません。そのため、実務上は個別の資産の状況を総合的に勘案し、合理的な方法で時価を算定する必要があります。

資産の種類ごとの時価の算定方法表

資産の種類時価の算定方法の考え方
上場有価証券取引所における最終価格など、客観的な市場価格を基準とする(法人税基本通達9-1-13等を参照)。
非上場有価証券類似法人の株式の価額に比準して推定した価額や、純資産価額などを参酌して通常取引されると認められる価額を算定する(法人税基本通達9-1-13、9-1-14)。
土地等近傍類地の売買実例を基準として合理的に算定した価額や、公示価格などから合理的に算定した価額を用いる。不動産鑑定評価を活用することもある。
建物等の固定資産原則として客観的な交換価格であるが、算定が困難な場合は、実務上は法人税基本通達により未償却残高を用いた簡便的評価が認められる場合があります。
新屋賢人

「時価」の算定には、税務当局に対して合理性を説明できる根拠資料を残しておくことが不可欠です。非上場株式や土地の評価については、法人税基本通達や財産評価基本通達の考え方を参考にしつつ、必要に応じて専門家(不動産鑑定士など)の意見を仰ぐことも検討すべきです。根拠のない概算は税務調査で否認されるリスクが高いため、慎重な対応が求められます。

まとめ

本日は、グループ通算制度開始に伴う時価評価の概要について解説いたしました。

時価評価は、単体申告時代の含み損益をグループ内に持ち込ませないための重要な制度です。対象となる法人は原則としてすべての親法人・子法人ですが、継続保有要件などを満たすことで例外的に対象外となるケースも多くあります。また、時価評価の対象外であっても、過去の繰延損益等の取崩しが必要になる場合がある点には十分な注意が必要です。

実務においては、判定時点と実施時点を正確に把握し、対象資産の洗い出し(帳簿価額1,000万円以上の判定など)と、合理的な「時価」の算定をスケジュールに余裕を持って進めることが成功の鍵となります。

新屋賢人

制度への移行にあたっては、事前のシミュレーションと周到な準備が欠かせません。疑問点があれば、いつでもご相談ください。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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