ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年7月27日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、実務で非常によく論点となる、消費税実務における役員に対するみなし譲渡について確認していきたいと思います。



みなし譲渡ですか。たしか、会社から社長へ車をタダであげたり安く売ったりしたときに、特別な計算をするアレですよね。



その通りです。ただ、消費税法上の原則と例外、そして通達で認められている取扱いを正確に理解しておかないと、思わぬ税務リスクを招きますから注意が必要です。それでは、確認していきたいと思います。



もう一つのみなし譲渡の論点については、こちらのブログ記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】消費税実務におけるみなし譲渡(個人事業者の家事消費等)の完全網羅ガイド
役員に対するみなし譲渡とは?(原則的な取扱い)
消費税は本来、事業として対価を得て行われる資産の譲渡等に対して課税される税金です。しかし、例外として対価を得ていなくても、消費税法上、対価を得て譲渡したとみなして課税されるケースがあります。これが「みなし譲渡」です。
消費税法第4条第5項第2号では、法人が資産をその役員に対して贈与した場合には、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす旨が規定されています。
そして、このみなし譲渡が行われた場合の消費税の課税標準(税率を掛ける前の基準となる金額)は、消費税法第28条第3項第2号において「その贈与の時における当該贈与をした資産の価額に相当する金額」とされています。つまり、法人が役員に資産を無償で贈与した場合には、その贈与は原則として事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなされ、贈与時の時価相当額が対価の額とされます。
ただし、実際に消費税が課税されるのは、その資産の譲渡が課税資産の譲渡等に該当し、かつ、その法人が当該課税期間について消費税の納税義務を負う場合です。土地や有価証券など非課税となる資産の贈与についてまで、当然に消費税が課されるわけではありません。



ここでのポイントは、会社から役員への贈与は、たとえ1円もお金をもらっていなくても、時価で売れたものとして消費税を計算して国に納めなければならないという点です。これを漏らすと税務調査で指摘され、追徴課税を受けることになりますので、十分に注意してくださいね。
誰が「役員」に該当するのか?
みなし譲渡の対象となる「役員」の範囲について確認しておきましょう。消費税法における役員とは、法人税法第2条第15号に規定する役員を指します。
消費税法4条5項2号にいう「役員」は、法人税法2条15号に規定する役員をいいます。具体的には、法人税法及び法人税法施行令の規定により、次のような者が含まれます。
- 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人
- 使用人以外の者で、その法人の経営に従事しているもの
- 同族会社の使用人のうち、所定の持株要件等を満たし、かつ、その会社の経営に従事しているもの
このうち、使用人以外の者で法人の経営に従事している者については、消費税法基本通達5-3-3により、相談役、顧問その他これらに類する者で、その地位や職務等からみて、他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められる者も含まれることが示されています。
会社法上の役員として登記されていなくても、実質的に経営に従事している相談役や一定の同族会社の使用人は、税務上は役員として扱われるため、これらの者に対する贈与もみなし譲渡の対象となります。



登記簿に役員として載っていないからといって安心はできません。実態として経営に参加している者に対する資産の贈与は、税務上は役員に対するみなし譲渡と判定されるリスクがあります。実質判定が求められることを忘れないでくださいね。
著しく低い対価による譲渡の取扱い(低額譲渡)
完全に無償で譲渡(贈与)した場合は時価で課税されますが、では「少しだけお金をもらって安く譲渡した場合」はどうなるのでしょうか。
法人がその役員に対して、資産の時価に比べて「著しく低い対価」で譲渡した場合、消費税法第28条第1項ただし書の規定により、原則として時価による資産の譲渡があったものとみなして消費税が課税されます。
では、どこからが「著しく低い」と判定されるのでしょうか。これについて、消費税法基本通達10-1-2では、その資産の譲渡金額が通常の販売価額(時価)のおおむね50パーセント未満である場合に「著しく低い対価による譲渡」に該当するとしています。
したがって、法人が役員に自社の車などを売却する際、時価の50パーセント未満の金額で売却した場合は、実際の売却額ではなく「時価」を基準にして消費税を計算しなければならないということになります。



例えば時価100万円(税抜価額)の社用車を、社長に税抜10万円で売却したとします。この場合、時価の50パーセント未満での売却となりますので、10万円ではなく100万円で売却したものとして消費税を計算する必要があります。実務では非常によく見かける事例ですので、譲渡価格の設定には気を付けましょう。
なお、役員に対する販売価格が時価のおおむね50%未満であっても、役員及び使用人の全部を対象として一律に定められた値引率や、勤続年数等に応じた合理的かつ普遍的な値引基準に基づいて販売している場合には、著しく低い対価による譲渡として時価課税する取扱いの対象外となります。
役員だけを対象とした恣意的な値引きなのか、全社的・合理的な福利厚生制度等に基づく値引きなのかを区別する必要があります。
棚卸資産を譲渡した場合の特例と例外的な取扱い
対象となる資産が「棚卸資産(商品など)」である場合には、実務上の負担を考慮し、さらに細かな特例が通達で設けられています。
棚卸資産を役員へ譲渡する場合、以下の2つの要件を両方とも満たせば、「著しく低い対価による譲渡」には該当しないものとして取り扱うことが認められています(消費税法基本通達10-1-2)。
- 譲渡金額が、その棚卸資産の課税仕入れの金額(仕入値)以上であること
- 譲渡金額が、通常の販売価額のおおむね50パーセント以上であること
つまり、仕入値以上かつ時価の50パーセント以上で役員に販売していれば、時価課税ではなく、実際の譲渡金額を課税標準とすることができます。
さらに、棚卸資産を役員へ「完全に無償で贈与した」場合(みなし譲渡に該当する場合)であっても、消費税法基本通達10-1-18の規定により、以下のいずれか高い金額以上の金額を対価の額として確定申告書に記載して申告したときは、その申告が認められます。
- その棚卸資産の課税仕入れの金額
- 通常他に販売する価額のおおむね50パーセントに相当する金額



つまり、会社の商品を社長にタダであげた場合であっても、商品の仕入値と、通常販売価格の半分の、どちらか高い方の金額で申告しておけば税務上は問題ありません。法令の原則は時価ですが、通達によって実務的な配慮がなされている重要なポイントです。
みなし譲渡に該当しない例外的なケース
法人から役員に対して経済的利益を与えた場合でも、みなし譲渡として消費税が課税されないケースがあります。
まず、消費税法基本通達5-3-5において、法人が役員に対して無償で行った「資産の貸付け」や「役務の提供(サービスの提供)」については、みなし譲渡の規定は適用されないことが明確にされています。みなし譲渡の対象となるのは、あくまで資産の「譲渡(贈与)」に限られます。
また、同じく消費税法基本通達5-3-5の注書きにより、所得税法上、給与として課税しなくて差し支えないとされている永年勤続者の記念品や創業記念品等については、役員に対して無償支給する場合であっても、消費税のみなし譲渡として取り扱わず、差し支えないとされています。



会社の所有する社宅を役員に無償で貸し付ける場合などは、資産の譲渡ではなく貸付けですので、消費税のみなし譲渡にはなりません。また、所得税基本通達上、給与として課税しなくて差し支えないとされる一定の永年勤続記念品や創業記念品等については、役員に無償支給した場合でも、消費税法上の役員に対するみなし譲渡に該当しないものとして取り扱って差し支えないとされています。
これは「非課税取引」とされるのではなく、みなし譲渡の対象外として取り扱われるものです。
役員に対するみなし譲渡の要件・取扱いまとめ表
ここまでの解説をわかりやすく整理するため、役員への資産の移転に関する消費税の取扱いを表にまとめました。
| 取引の形態 | 対象資産 | 対価等 | 原則的な課税標準・取扱い |
|---|---|---|---|
| 無償譲渡(贈与) | 棚卸資産以外 | 対価なし | 原則として贈与時の時価相当額 |
| 無償譲渡(贈与) | 棚卸資産 | 対価なし | 原則は贈与時の時価相当額。ただし、通達10-1-18により、課税仕入れの金額と通常販売価額のおおむね50%相当額のいずれか高い金額以上で申告する取扱いが認められる |
| 低額譲渡 | 棚卸資産以外 | 時価のおおむね50%未満 | 原則として譲渡時の時価相当額 |
| 低額譲渡 | 棚卸資産 | 課税仕入れの金額以上、かつ通常販売価額のおおむね50%以上 | 実際の譲渡対価 |
| 低額譲渡 | 棚卸資産 | いずれかの要件を満たさない場合(時価の50%未満、または仕入価額未満) | 原則として譲渡時の時価相当額(通達逐条解説10-1-2に基づく) |
| 一般的な割引販売 | すべての資産 | 全役員・使用人に一律、又は勤続年数等に応じた合理的・普遍的な値引基準 | 通達10-1-2ただし書により、時価課税の取扱いの対象外 |
| 無償貸付け・無償役務提供 | 資産・サービス | 対価なし | 役員に対するみなし譲渡規定の対象外(不課税) |
※上表は、譲渡対象が課税資産であり、法人が消費税の納税義務を負う場合を前提としています。土地、有価証券その他の非課税資産については、別途、非課税規定を検討する必要があります。



このように表で見比べていただくと、資産の種類や、対価の額の大きさによって、消費税の取扱いが大きく変わることがおわかりいただけると思います。迷ったときはこの表を振り返ってみてくださいね。
まとめ
本日は「消費税実務における役員に対するみなし譲渡」について解説いたしました。
法人が役員に資産を無償で贈与した場合は、原則として「時価」で譲渡があったものとみなされて消費税が課税されます。また、時価の50パーセント未満での低額譲渡も、原則として時価による譲渡として扱われます。 しかし、棚卸資産については、仕入値や時価の50パーセントといった基準を満たすことで、実際の譲渡金額や特例計算による金額を課税標準とすることができる実務上の配慮が存在します。さらに、資産の無償貸付けや役務の無償提供はみなし譲渡の対象外となります。



実務においては、対象となる者が法人税法上の「役員」に該当するかどうかの判定も含め、法令と通達に基づいた正確な判断が求められます。安易な判断は避け、迷った場合には専門家である税理士に相談することをおすすめいたします。


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