ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年8月4日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、グループ通算制度を開始する際の『繰越欠損金の取り扱い』について確認していきたいと思います。



繰越欠損金ですか。親会社や子会社が過去に抱えていた赤字は、グループ通算制度を始めるとどうなってしまうのでしょうか?



非常に重要なポイントです。実は、そのまま全額持ち込めるケースもあれば、一部が制限されたり、最悪の場合は全額切り捨てられてしまうケースもあるのです。



全額切り捨てですか!?それは判定を間違えると大変なことになりますね。



おっしゃる通りです。判定はいくつかのステップに分かれており、非常に複雑ですので、一つひとつ確認していきましょう。
グループ通算制度開始時の繰越欠損金、基本的な考え方
グループ通算制度を開始する際、各法人が制度開始前に有していた繰越欠損金については、まず、通算制度開始時に切捨ての対象となるかを判定する必要があります。
切捨てを免れて通算制度に持ち込まれた開始前繰越欠損金は、原則として法人税法第64条の7第2項に規定する「特定欠損金」となります。特定欠損金は、その欠損金を有する法人自身の所得を限度として控除されるものであり、他の通算法人の所得を利用して控除することはできません。
したがって、グループ通算制度開始時の繰越欠損金について重要なのは、まず、開始時にその全部または一部が切り捨てられるかどうかを判定することです。具体的には、時価評価対象法人に該当するか、法令上の支配関係継続要件を満たすか、共同事業性が認められるか、支配関係発生日以後に新たな事業を開始しているかという順序で検討します。
ステップ1:時価評価対象法人に該当するか?
最初の関門は、その法人が「時価評価対象法人」に該当するかどうかの判定です。
グループ通算制度を開始する際、一定の要件を満たす法人は、保有する資産を時価評価して評価損益を計上しなければなりません。これを時価評価対象法人と呼びます。



時価評価対象法人については、こちらのブログ記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】グループ通算制度開始に伴う時価評価とは
もし、この時価評価対象法人に該当する場合には、原則として、法人税法第57条第6項により、通算制度開始前に生じた繰越欠損金はないものとされます。
したがって、まずは時価評価の対象から外れる「時価評価対象外法人」に該当するかどうかを慎重に見極める必要があります。時価評価対象外法人に該当して初めて、次のステップへ進み、繰越欠損金を持ち込めるかどうかの判定を行うことができます。



時価評価対象法人になってしまうと、問答無用で繰越欠損金はゼロになります。まずは自社や子会社が時価評価を免れる要件を満たしているか、入り口の確認を怠らないようにしましょう。
ステップ2:支配関係が5年超継続しているか?
時価評価対象外法人に該当した場合、次に確認するのは「支配関係の継続期間」です。
具体的には、通算親法人となる法人と、判定対象となる通算子法人との間に、グループ通算制度の開始日の5年前の日から継続して支配関係(完全支配関係を含みます)があるかどうかを確認します。ここでいう支配関係は、原則として50%超の直接または間接の資本関係等をいい、100%の通算完全支配関係とは異なる概念です。
もし、支配関係が5年超継続している場合、その法人の開始前の繰越欠損金は切り捨てられることはありません。切捨てを免れて通算制度に持ち込まれた開始前繰越欠損金は、原則として「特定欠損金」となり、その欠損金を有する法人自身の所得を限度として控除されます。したがって、他の通算法人の所得を利用して控除することはできません。
一方、支配関係が5年以下である場合は、次のステップ3へと進むことになります。
なお、開始日の5年前の日後に設立された法人の場合、法人税法施行令に定める設立法人に関する特例により、設立日等から支配関係が継続している場合には、この要件を満たすものとして取り扱われることがあります。



昔からずっと100%子会社であったような場合は、このステップ2でクリアとなり安心できます。資本関係の歴史を遡って確認することが実務の第一歩ですね。
ステップ3:共同事業性を満たしているか?
支配関係が5年以下の場合、次に「共同事業性」の有無を判定します。
これは、通算グループ内で単に節税目的で欠損金を利用するのを防ぐための規定です。共同事業性ありと判定されるためには、原則として、①事業関連性要件、②事業規模比5倍以内要件および③事業規模拡大2倍以内要件のすべてを満たすか、または、①事業関連性要件および④特定役員継続要件を満たす必要があります。
この共同事業性の要件を満たした場合、繰越欠損金は切り捨てを免れます。
共同事業性の要件を満たさない場合は、最後のステップ4へ進みます。



共同事業性の判定は、売上高の比較や役員の状況など、事実関係の確認が非常に細かくなります。税務調査でも指摘されやすい論点ですので、証拠書類をしっかりと残しておきましょう。
ステップ4:支配関係発生日以後に新たな事業を開始しているか?
共同事業性も満たさない場合、いよいよ繰越欠損金が切り捨てられる可能性が高まります。ここで鍵となるのが、通算親法人との間に支配関係が発生した日以後に、その法人が新たな事業を開始しているかどうかです。
もし、支配関係発生日以後に新たな事業を開始していないのであれば、首の皮一枚繋がり、繰越欠損金は切り捨てられません。ただし、この場合も扱いは「特定欠損金」となります。
しかし、支配関係発生日以後に新たな事業を開始している場合、開始前繰越欠損金のすべてが一律に切り捨てられるわけではありません。原則として、支配関係事業年度より前の事業年度に生じた繰越欠損金と、支配関係事業年度以後の事業年度に生じた繰越欠損金のうち特定資産譲渡等損失から成る部分が切捨ての対象となります。実務上は、何をもって「新たな事業の開始」とするか、基本通達などを参考にしつつ事業の類似性などを慎重に判断する必要があります。



M&Aなどで買収した子会社に、買収後まったく新しいビジネスを始めさせたようなケースが該当しますね。事業計画と照らし合わせて、過去の赤字がどうなるか事前に評価することが不可欠です。
判定結果のまとめと特定資産譲渡等損失の制限
ここまでの4つのステップによる判定結果を整理すると、以下の表のようになります。
| ステップ | 判定内容 | Yesの場合 | Noの場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 時価評価対象法人に該当するか | 原則として開始前繰越欠損金を切捨て | ステップ2へ |
| 2 | 法令上の支配関係継続要件を満たすか | 切捨てなし。持込み欠損金は特定欠損金 | ステップ3へ |
| 3 | 共同事業性を満たすか | 切捨てなし。持込み欠損金は特定欠損金 | ステップ4へ |
| 4 | 支配関係発生日以後に新たな事業を開始したか | 支配関係事業年度前の欠損金等、法定された一定部分を切捨て。残額は特定欠損金 | 切捨てなし。持込み欠損金は特定欠損金。ただし開始後の損益通算制限に注意 |
なお、時価評価対象外法人であっても、支配関係5年以下かつ共同事業性なしの場合には、通算制度開始後についても一定の制限が課されます。支配関係発生日以後に新たな事業を開始した場合には、一定の制限期間中に生じた特定資産譲渡等損失が法人税法第64条の14により損金不算入となる場合があります。一方、新たな事業を開始していない場合には、法人税法第64条の6により、一定の通算前欠損金額が他の通算法人との損益通算の対象外となる場合があります。
これは、含み損を抱えた資産をグループ通算制度に持ち込み、開始後に売却して意図的に損失を作り出す租税回避を防止するためのものです。繰越欠損金の持ち込み判定とセットで、この特定資産譲渡等損失の制限についても精査しなければなりません。



欠損金本体だけでなく、含み損の持ち込みにも網が掛けられているということです。目先の欠損金だけでなく、保有資産の状況も含めて総合的に判断するように心がけてください。
まとめ
グループ通算制度開始時における繰越欠損金の取扱いは、法人の状況によって切捨ての有無および切捨ての範囲が異なります。
時価評価対象法人に該当する場合には、原則として開始前繰越欠損金が切捨ての対象となります。一方、時価評価対象外法人については、支配関係の継続状況、共同事業性の有無、支配関係発生日以後における新たな事業の開始の有無を順に判定します。
法令上の要件を満たして持込みが認められた開始前繰越欠損金は、原則として特定欠損金となり、その欠損金を有する法人自身の所得を限度として控除されます。
また、支配関係5年以下かつ共同事業性なしの場合には、開始前繰越欠損金の切捨てだけでなく、開始後に生ずる特定資産譲渡等損失の損金算入制限や、通算前欠損金額の損益通算制限が適用されることがあります。



このため、制度開始前には、各法人の設立日、資本関係の推移、支配関係発生日、事業内容の変遷、役員構成、事業規模、保有資産の含み損益などを法人ごとに確認することが重要です。








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