ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年8月5日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、グループ通算制度を開始するときに、どの法人が資産の時価評価を求められるのか、いわゆる『時価評価対象法人』についてさらに詳しく確認していきたいと思います。



昨日取り上げた繰越欠損金の取り扱いにも影響するんですよね。どのように判定したらよいですか?



法令の組み立てとしては、まず親法人と開始時の子法人を時価評価の対象に置き、そのうえで、完全支配関係の継続が見込まれる法人を対象から除外しています。したがって、実務では『どの法人が対象か』よりも、『どの法人が対象外になるか』を判定することが重要です。



完全支配関係が続く予定なら、基本的に時価評価は不要ということですか?



基本的にはその理解で差し支えありません。ただし、親法人と子法人では判定方法が異なります。また、売却、合併、清算などが予定されている場合には、単純に現在100%保有だから対象外とはいえません。時価評価対象法人に該当するかどうかは、時価評価損益だけでなく、繰越欠損金の切捨てや開始後の損金算入制限にも関係します。本日は、法人税法第64条の11を中心に、原則、対象外となる法人、例外的な取扱い、新設親法人の承認申請特例まで順番に整理しましょう。



繰越欠損金の取り扱いについては、こちらのブログ記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】グループ通算制度開始における繰越欠損金の取り扱い
1.グループ通算制度開始時に時価評価を行う理由
グループ通算制度は、完全支配関係にある企業グループ内の各法人が、それぞれを納税単位として法人税の申告を行いながら、一定の損益通算や欠損金の通算を行う制度です。旧連結納税制度のようにグループ全体を一つの納税単位とする制度ではありませんが、複数法人間の損益を通算できる点に大きな特徴があります。
このような損益通算が認められる制度へ移行する際、通算開始前に生じた資産の含み損益を何の制限もなく持ち込めると、開始後にその含み損を実現させ、他の通算法人の所得と通算することが可能になります。
例えば、1億円の含み損を抱えた土地を保有する法人がグループ通算制度を開始し、開始直後にその土地を売却したとします。何ら調整規定がなければ、単体申告時代に生じた1億円の含み損を、開始後のグループ全体の所得から事実上控除できてしまいます。
そこで法人税法は、一定の法人について、通算開始直前事業年度終了の時に保有する一定の資産を時価評価し、その評価益または評価損を開始直前事業年度の益金または損金に算入することとしています。根拠規定は法人税法第64条の11第1項です。
つまり、時価評価制度の目的は、通算制度を開始する前に発生していた含み損益を開始前の単体申告で清算し、通算開始後の所得計算に混入させないことにあります。
旧連結納税制度との考え方の違い
旧連結納税制度では、子法人が単体納税から連結納税という新しい納税単位に移ることから、連結開始時の子法人は原則として時価評価の対象とされていました。
これに対し、グループ通算制度では各法人が引き続き個別の納税単位となるため、納税単位そのものは変わりません。それでも損益通算等が可能になることから、租税回避防止や組織再編税制との整合性を踏まえて、一定の法人に時価評価を求めています。
また、旧連結納税制度では連結親法人は無条件に時価評価の対象外でしたが、グループ通算制度では親法人も子法人と同様に、一定の要件を満たさなければ時価評価対象法人となり得ます。この点は、制度移行時の大きな変更点です。



時価評価は単なる決算処理ではありません。通算開始前の含み損益を、開始前と開始後のどちらに帰属させるかを決める重要な税務処理です。まず制度趣旨を理解すると、各要件の意味が見えやすくなります。
2.時価評価対象法人の法令上の基本構造
法人税法第64条の11第1項は、通算承認を受ける内国法人のうち、一定の法人について、通算開始直前事業年度終了時に有する時価評価資産の評価益または評価損を益金または損金に算入することを定めています。
対象となり得る法人は、次の2つです。
- 通算親法人となる法人
- 最初通算事業年度開始時に、その親法人との間に親法人による完全支配関係がある子法人
ただし、次の法人は時価評価の対象から除かれます。
| 法人区分 | 時価評価の対象外となる場合 |
|---|---|
| 親法人 | 最初通算事業年度開始後、開始時の子法人のいずれかとの間で、親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合 |
| 子法人 | 最初通算事業年度開始後、親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合 |
| 一定の合併予定子法人 | 開始後、その子法人を被合併法人とし、親法人または一定の他の子法人を合併法人とする適格合併が見込まれ、開始時から合併直前まで完全支配関係が継続することが見込まれている場合 |
この法令構造を整理すると、次のようになります。
| 判定結果 | 税務上の取扱い |
|---|---|
| 完全支配関係の継続が見込まれる | 原則として時価評価対象外 |
| 完全支配関係の継続が見込まれない | 時価評価対象法人 |
| 親法人の場合、少なくとも1社の開始時子法人との継続が見込まれる | 親法人は時価評価対象外 |
| 親法人の場合、すべての開始時子法人との継続が見込まれない | 親法人は時価評価対象法人となり得る |
| 子法人の場合、その子法人について継続が見込まれない | その子法人は時価評価対象法人 |
したがって、法令を形式的に読むと「原則として時価評価を行い、継続見込みがある法人を除外する」という構造ですが、通常の企業グループでは完全支配関係を維持する前提で通算制度を開始することが多いため、実務上は時価評価対象外となる法人の方が多いと考えられます。



『100%子会社だから対象外』ではなく、『開始後も100%の通算完全支配関係が継続する見込みだから対象外』です。現在の資本関係だけで判断しないようにしてください。
3.親法人の時価評価対象法人判定
3-1.親法人の判定は「いずれかの子法人」との関係で行う
親法人については、開始時の子法人のいずれか1社との間で、親法人による完全支配関係が継続することが見込まれていれば、時価評価の対象外となります。
つまり、親法人に複数の子法人がある場合、すべての子法人との完全支配関係が継続する必要はありません。
例えば、親法人P社にS1社、S2社、S3社という3社の100%子会社があり、通算制度開始後にS2社とS3社を外部へ売却する予定であったとしても、S1社との完全支配関係が継続することが見込まれていれば、P社は原則として時価評価対象外です。
一方、開始時の子法人が1社しかなく、通算開始後にその子法人を外部へ売却することが具体的に予定されている場合には、親法人と開始時子法人との完全支配関係の継続が見込まれません。この場合、親法人自身も時価評価対象法人となる可能性があります。
3-2.親法人についても特別扱いはない
旧連結納税制度では、連結親法人は納税義務者としての立場が変わらないことから、連結開始時の時価評価対象外とされていました。
しかし、グループ通算制度では、親法人も法人税法第64条の11第1項の対象に含まれています。親法人だから当然に時価評価不要という取扱いではありません。
親法人が対象外となるためには、開始後に少なくとも1社の開始時子法人との間で完全支配関係が継続することが見込まれている必要があります。
3-3.実務上想定される親法人が対象となるケース
親法人が時価評価対象法人となる場面としては、例えば次のようなケースが考えられます。
- 通算開始時の子法人が1社しかなく、その子法人の外部売却が既に契約されている
- 開始時子法人のすべてを外部へ譲渡する具体的な計画がある
- 開始直後にグループ再編を行い、開始時子法人が親法人による完全支配関係から外れる予定である
- 親法人だけを通算制度に一時的に残し、開始時子法人をすべて離脱させることが予定されている
ただし、最終的に通算親法人だけとなった場合には、グループ通算制度の承認取消しの問題も生じます。そのため、親法人について完全支配関係の継続見込みがないケースでは、時価評価だけでなく、そもそも通算制度を開始する事情や事業計画を総合的に確認する必要があります。



親法人の判定では、子法人ごとに判定した後、少なくとも1社との継続見込みがあるかを確認してください。親法人とすべての子法人との関係が切れる予定であれば、時価評価だけでなく、通算承認そのものへの影響も検討が必要です。
4.子法人の時価評価対象法人判定
4-1.子法人は法人ごとに判定する
子法人については、それぞれの子法人ごとに、親法人による完全支配関係が継続することが見込まれているかを判定します。
親法人の場合とは異なり、ある子法人との完全支配関係が継続するからといって、他の子法人まで対象外になるわけではありません。
例えば、次のようなグループを考えます。
| 法人 | 開始後の予定 | 判定 |
|---|---|---|
| S1社 | 引き続き100%子会社として保有 | 時価評価対象外 |
| S2社 | 開始3か月後に外部へ全株式を売却 | 時価評価対象法人となる可能性が高い |
| S3社 | 親法人を合併法人とする適格合併で消滅 | 一定の要件の下で時価評価対象外 |
| S4社 | 第三者割当増資により親法人の持株割合が低下予定 | 時価評価対象法人となる可能性が高い |
このように、同じ通算グループの中でも、対象外となる子法人と、対象となる子法人が混在することがあります。
4-2.「継続することが見込まれている」の意味
完全支配関係の継続見込みは、単に開始時点で100%保有しているという事実だけではなく、その後の売却契約、取締役会決議、事業再編計画、株式移転計画、第三者割当増資の予定などを踏まえて判断する必要があります。
少なくとも、開始時点で既に次のような事情がある場合には注意が必要です。
- 株式譲渡契約を締結している
- 売却先との基本合意書を締結している
- 取締役会で売却方針を正式決定している
- 外部投資家への第三者割当増資が具体化している
- 非適格合併その他の再編により完全支配関係が消滅する予定である
- 会社清算または外部への事業譲渡後の株式売却が具体的に予定されている
一方、将来的に売却する可能性があるという程度の抽象的な検討だけで、直ちに継続見込みがないと判断されるものではありません。判定にあたっては、開始時点における客観的な事実関係と、意思決定の具体性を確認する必要があります。
4-3.適格合併が予定されている場合
子法人が通算開始後に消滅する予定であっても、直ちに完全支配関係の継続見込みがないとは限りません。
開始後に、その子法人を被合併法人とし、親法人または他の一定の子法人を合併法人とする適格合併が予定されており、開始時から合併直前まで親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合には、その子法人は時価評価対象外となります。
これは、100%グループ内の適格合併では、子法人の資産と負債が簿価でグループ内法人に引き継がれ、含み損益がグループ外へ移転しないことを踏まえた取扱いと考えられます。
ただし、合併法人となる他の子法人についても、親法人による完全支配関係の継続が見込まれている必要があります。外部へ売却される予定の法人を合併法人とするような場合には、同じ結論にならない可能性があります。



子法人の判定は、必ず法人別に行ってください。組織図に『継続保有』『売却予定』『適格合併予定』『清算予定』などを書き込み、各社の将来計画を可視化すると判定漏れを防げます。
5.ここでいう完全支配関係の範囲
時価評価対象法人の判定で使われる完全支配関係は、単なる法人税法第2条に規定する一般的な完全支配関係ではなく、グループ通算制度を適用できる一定の完全支配関係であることが前提です。
グループ通算制度の対象となる子法人は、親法人との間に親法人による完全支配関係がある内国法人ですが、外国法人や一定の通算制度適用除外法人が支配関係の途中に介在する場合には、通算子法人となれないことがあります。
例えば、次のような関係には注意が必要です。
親法人P社
↓100%
外国法人F社
↓100%
内国法人S社
この場合、P社とS社との間には一般的な意味で間接の完全支配関係が成立し得ますが、外国法人が介在しているため、P社を親法人とする通算グループの子法人にはなれません。
したがって、時価評価対象法人の判定を始める前に、まず通算制度上の完全支配関係が成立しているかを確認する必要があります。



時価評価の判定に入る前に、通算グループの範囲を確定してください。海外法人や適用除外法人が中間に入る資本関係では、一般的な100%グループの範囲と通算グループの範囲が一致しないことがあります。
6.対象法人に該当した場合に時価評価する資産
時価評価対象法人に該当したからといって、その法人が保有するすべての資産を時価評価するわけではありません。
法人税法第64条の11第1項および法人税法施行令第131条の15により、時価評価の対象は主として次の資産に限定されています。
| 資産区分 | 原則的な取扱い |
|---|---|
| 固定資産 | 対象 |
| 土地および土地の上に存する権利 | 対象 |
| 有価証券 | 対象。ただし売買目的有価証券、償還有価証券などを除く |
| 金銭債権 | 対象 |
| 繰延資産 | 対象 |
| 一般の棚卸資産 | 原則として対象外 |
| 棚卸資産である土地 | 「土地等」として対象 |
| 現金・預金 | 対象外 |
| 自己創設営業権 | 帳簿価額がゼロであるため、帳簿価額1,000万円未満の除外規定により通常は対象外 |
金額的重要性による除外
上記の資産に該当しても、次のいずれかに該当する場合には、原則として時価評価対象資産から除外されます。
- 資産の帳簿価額が1,000万円未満である場合
- 含み損益が、次のいずれか少ない金額未満である場合
・その法人の資本金等の額の2分の1
・1,000万円
例えば、資本金等の額が1,200万円であれば、重要性基準は600万円です。一方、資本金等の額が5,000万円であれば、その2分の1は2,500万円となるため、重要性基準は1,000万円です。
なお、この判定は法人単位や資産の種類全体で一括して行うのではなく、法令で定められた資産の単位ごとに行います。
| 資産 | 判定単位の例 |
|---|---|
| 建物 | 1棟ごと。区分所有建物は区分所有部分ごと |
| 機械装置 | 1台、1基、1組または一式ごと |
| 土地 | 一筆ごと。ただし一体利用地は一団の土地ごと |
| 有価証券 | 銘柄ごと |
| 金銭債権 | 同一の債務者ごと |
| その他の資産 | 通常の取引単位を基準として区分 |
棚卸資産である機械と土地の違い
機械メーカーが販売目的で保有する機械は棚卸資産ですから、原則として時価評価の対象外です。
これに対し、不動産販売会社が販売目的で保有する土地は、会計上は棚卸資産であっても、法人税法第64条の11の「土地」に該当するため、他の要件を満たせば時価評価の対象になります。
資産区分を会計科目だけで判断すると、このような相違を見落とす可能性があります。



対象法人の判定と対象資産の判定は、必ず二段階に分けてください。法人が時価評価対象でも、帳簿価額や含み損益が基準未満であれば、その資産は評価対象外です。
7.初年度に離脱する子法人の例外
時価評価対象法人に該当する子法人であっても、最初通算事業年度開始の日から2か月以内に親法人との完全支配関係がなくなり、かつ、最初通算事業年度終了の日までに離脱する一定の子法人については、その保有資産が時価評価対象資産から除外されます。
これは、いわゆる「初年度離脱開始子法人」に関する例外です。短期間で離脱し、実質的に損益通算の対象とならない法人についてまで時価評価を求めない趣旨と考えられます。
ただし、次の点に注意が必要です。
- 2か月の起算日は、完全支配関係が生じた日ではなく、最初通算事業年度開始の日である
- 最初通算事業年度終了日までに離脱している必要がある
- 通算グループ内法人を合併法人とする合併による離脱は、原則としてこの除外の対象にならない
- 残余財産の確定による離脱も、原則として除外の対象にならない
- いったん時価評価損益を計上した後に初年度中に離脱しても、原則として時価評価は取り消されない
例えば、最初通算事業年度が4月1日から翌年3月31日までの場合、5月31日までに外部売却等によって離脱し、かつ3月31日までに完全支配関係がなくなっていれば、一定の要件の下で保有資産が時価評価対象外となります。
一方、5月31日までに株式売却契約を締結していても、実際に完全支配関係がなくなる日が6月1日以後であれば、この2か月以内離脱の除外規定は適用できません。



2か月以内離脱の例外は、予定日ではなく、実際に完全支配関係がなくなった日で判定します。株式譲渡契約の締結日とクロージング日が異なるケースでは特に注意してください。
8.新設親法人の承認申請特例を利用する場合
8-1.時価評価法人は第2期目から参加する
新設親法人の設立事業年度またはその翌事業年度からグループ通算制度を開始する承認申請の特例を利用した場合には、通常の開始時とは異なる取扱いがあります。
申請特例年度開始の日の前日の属する事業年度終了時に、時価評価を行うべき資産等を有している子法人は「時価評価法人」とされ、原則として申請特例年度からではなく、その終了日の翌日、つまり第2期目から通算制度に参加します。
また、その時価評価法人が発行済株式等を直接または間接に保有する子法人についても、第2期目から参加する取扱いとなります。
| 法人 | 通算承認の効力発生日 |
|---|---|
| 通常の開始時子法人 | 原則として申請特例年度開始の日 |
| 時価評価法人 | 申請特例年度終了の日の翌日 |
| 時価評価法人が直接または間接に株式を保有する子法人 | 申請特例年度終了の日の翌日 |
8-2.ここでいう「時価評価を行うべき資産等」
新設親法人の特例では、時価評価資産だけでなく、次のような項目の有無も確認します。
- 時価評価を行うべき資産
- 完全支配関係のある法人間の取引に係る一定の繰延譲渡損益
- 一定のリース譲渡等に係る繰延損益
- 収用や特定資産の買換え等に係る一定の特別勘定
これらについては、原則として1,000万円以上のものが問題となり、その金額判定は譲渡資産や関連契約等ごとに行います。
8-3.判定時点と実施時点が異なる
新設親法人の特例では、次の2つの時点を混同しないことが重要です。
| 内容 | 時点 |
|---|---|
| 時価評価法人に該当するかの判定 | 申請特例年度開始の日の前日の属する事業年度終了時 |
| 実際の時価評価等 | 申請特例年度終了の日の属する子法人の事業年度終了時 |
| 通算制度への参加 | 原則として申請特例年度終了日の翌日 |
判定時点で時価評価資産そのものを有していなくても、一定の繰延譲渡損益や特別勘定等を有していたために時価評価法人と判定されることがあります。その場合、実施時点で時価評価資産を保有していれば、その資産について時価評価が必要になります。
8-4.関連子法人の時価評価の有無
時価評価法人が株式を直接または間接に保有する子法人も、第2期目から参加します。
ただし、その関連子法人自身が時価評価対象法人に該当せず、所定の判定時点で時価評価を行うべき資産等を有していなかった場合には、後の時点で資産等を有していても時価評価を行わない取扱いがあります。
一方、新設親法人の申請特例年度中に新たに加入した子法人については取扱いが異なるため、開始時から存在する子法人と期中加入法人を分けて検討する必要があります。



新設親法人の特例では、対象法人の判定日、時価評価の実施日、通算承認の効力発生日が通常と異なります。日付を一本のタイムラインに落とし込んで確認してください。
9.時価評価対象法人と繰延損益等の取崩し
時価評価対象法人については、資産の時価評価だけでなく、一定の繰延損益や特別勘定の取崩しが必要になることがあります。
主な対象は次のとおりです。
| 項目 | 原則的な取扱い |
|---|---|
| 完全支配関係法人間の取引に係る繰延譲渡損益 | 一定のものを取崩し |
| リース譲渡に係る繰延損益 | 一定のものを取崩し |
| 収用等に伴う特別勘定 | 一定のものを取崩し |
| 換地処分等に伴う特別勘定 | 一定のものを取崩し |
| 特定資産の買換え等に伴う特別勘定 | 一定のものを取崩し |
| 国庫補助金等に係る特別勘定 | 原則として開始時取崩しの規定なし |
| 保険金等に係る特別勘定 | 原則として開始時取崩しの規定なし |
これらのうち、取崩前の金額が1,000万円未満のものなどは対象外となります。1,000万円以上かどうかは、原則として譲渡資産または関連契約等ごとに判定します。
国庫補助金や保険金に係る特別勘定について取崩し規定が設けられていないのは、資産譲渡益に相当する含み益を繰り延べているものとは性質が異なるためと考えられます。



対象法人と判定したら、固定資産台帳だけでなく、別表十四関係、圧縮記帳関係、グループ内譲渡損益の管理資料まで確認してください。時価評価資産がなくても、繰延損益等の取崩しが必要な場合があります。
10.時価評価対象法人となった場合の処理
時価評価対象法人は、通算開始直前事業年度終了時に保有する時価評価資産について、評価益または評価損を計上します。
- 時価が帳簿価額を超える場合
その超える部分が評価益となり、益金算入します。 - 帳簿価額が時価を超える場合
その超える部分が評価損となり、損金算入します。
評価損益は、原則として会計帳簿上の評価替えではなく、法人税申告上の申告調整によって加算または減算することになります。
時価の基本的な考え方
法人税法上、すべての資産について統一的な時価算定方法が定められているわけではありません。
基本的には、その資産が通常使用収益されるものとして、その時点で譲渡される場合に通常付される価額、すなわち客観的な交換価値を合理的に算定します。
実務上は、法人税基本通達12の7-3-1などを踏まえ、課税上弊害がない限り、次のような資料や方法を使用します。
| 資産 | 時価算定の参考例 |
|---|---|
| 上場有価証券 | 評価時点の市場価格、一定の場合は直前1か月の市場価格の平均額 |
| 土地 | 近隣の売買実例、公示価格、基準地価、不動産鑑定評価 |
| 有形減価償却資産 | 再調達価額から経過年数等を考慮した価額 |
| 非上場株式 | 売買実例価額、類似法人比準価額、純資産価額等 |
| 金銭債権 | 債権額から回収不能見込額等を控除した価額 |
| 繰延資産 | 支出額と経過期間を基礎として算定した未償却相当額 |
重要なのは、算定結果の数字だけでなく、採用した評価方法、比較対象、前提条件、計算過程を資料として保存することです。



時価に絶対的な正解がない資産ほど、評価根拠の保存が重要です。不動産鑑定書、売買事例、取締役会資料、計算過程をまとめ、第三者が追跡できる状態にしてください。
11.時価評価対象法人の判定が他の税務処理に及ぼす影響
時価評価対象法人に該当するかどうかは、資産の評価替えだけの問題ではありません。
特に重要なのが、次の論点です。
- 開始前の繰越欠損金の切捨て
- 開始後の特定資産譲渡等損失の損金算入制限
- 通算前欠損金額の損益通算制限
- 一定の子法人株式等の時価評価
- 新設親法人の特例における承認効力発生日
時価評価対象法人に該当した場合、原則として開始前の繰越欠損金が切り捨てられるため、含み益の時価評価と欠損金切捨てが同時に生じると、相当額の法人税負担が発生する可能性があります。
逆に、時価評価対象外法人であっても、欠損金を無条件に持ち込めるとは限りません。支配関係の継続期間や共同事業性など、別の要件によって欠損金の切捨てや開始後の利用制限が生じることがあります。
したがって、時価評価対象外という結論だけで検討を終了するのは危険です。



時価評価対象法人の判定結果は、欠損金検討のスタート地点でもあります。対象外と確認した後も、支配関係5年超、共同事業性、特定資産譲渡等損失の制限を続けて確認してください。
12.実務で使用したい判定フロー
実務では、次の順番で検討すると整理しやすくなります。
ステップ1 通算グループの範囲を確定する
- 通算親法人となる法人を特定する
- 開始時の100%子法人を抽出する
- 外国法人や適用除外法人の介在を確認する
- 直接保有と間接保有を整理する
ステップ2 親法人を判定する
- 開始時子法人のうち、少なくとも1社との完全支配関係が継続する見込みがあるか
- すべての開始時子法人を売却・離脱させる予定がないか
- グループ通算制度自体の継続可能性に問題がないか
ステップ3 子法人を1社ずつ判定する
- 完全支配関係を継続する予定か
- 株式売却予定があるか
- 第三者割当増資の予定があるか
- 合併、分割、株式交換その他の再編予定があるか
- 適格合併による例外に該当するか
- 清算予定があるか
ステップ4 新設親法人の特例を確認する
- 新設親法人の承認申請特例を利用するか
- 判定時点で時価評価資産等を有するか
- 第2期目から参加する法人があるか
- 時価評価法人が株式を保有する関連子法人があるか
ステップ5 対象資産を抽出する
- 固定資産
- 土地等
- 有価証券
- 金銭債権
- 繰延資産
- 一定の繰延損益や特別勘定
ステップ6 資産単位と金額基準を確認する
- 帳簿価額1,000万円以上か
- 含み損益が重要性基準以上か
- 建物、土地、機械、有価証券等を所定の単位に区分しているか
- 除外資産に該当しないか
ステップ7 欠損金その他の制限を確認する
- 繰越欠損金の切捨て
- 特定欠損金としての持込み
- 特定資産譲渡等損失の損金算入制限
- 通算前欠損金額の損益通算制限



判定過程は口頭説明だけで終わらせず、法人別判定表、資産別判定表、組織再編予定表の3つを作成してください。後日の税務調査や事業計画変更にも対応しやすくなります。
13.実務上の必要資料
時価評価対象法人の判定にあたっては、少なくとも次の資料を収集しておくとよいでしょう。
| 分類 | 主な確認資料 |
|---|---|
| 資本関係 | 最新の資本関係図、株主名簿、出資関係図 |
| 将来計画 | 中期経営計画、再編計画、売却計画 |
| 意思決定 | 取締役会議事録、稟議書、株主総会議事録 |
| 契約関係 | 株式譲渡契約書、基本合意書、合併契約書 |
| 資産 | 固定資産台帳、土地台帳、有価証券明細、債権明細 |
| 評価資料 | 不動産鑑定書、株価算定書、市場価格資料 |
| 欠損金 | 青色申告書別表七、欠損金管理表 |
| 繰延損益 | 譲渡損益調整額管理表、関連する申告書別表 |
| 圧縮記帳 | 特別勘定明細、圧縮記帳関係別表 |
| 時系列 | 通算開始日、完全支配関係発生日、売却日、合併予定日等の一覧 |
特に「完全支配関係の継続見込み」は将来事実に関する判定ですから、開始時点でどのような情報に基づいて判断したのかを残しておくことが重要です。
開始後に計画が変更されたとしても、開始時点の判断が当時の客観的資料に基づく合理的なものであったことを説明できるようにしておく必要があります。



継続見込みの判定では、結論だけでなく『判定時点で知り得た事実』を保存してください。後から結果だけを見て、当初の判定が誤りだったと誤解されないための重要な証拠になります。
まとめ
グループ通算制度開始時の時価評価対象法人については、次の点を押さえておく必要があります。
- 法令上は、通算親法人と開始時子法人が時価評価制度の対象となり得る
- 親法人による完全支配関係の継続が見込まれる法人は、原則として時価評価対象外となる
- 親法人は、開始時子法人のいずれか1社との完全支配関係が継続する見込みがあれば、原則として対象外となる
- 子法人は、各法人について個別に継続見込みを判定する
- 一定の適格合併が予定されている子法人は、消滅予定であっても対象外となる場合がある
- 新設親法人の承認申請特例では、時価評価法人とその関連子法人の通算参加が第2期目からとなる場合がある
- 対象法人に該当しても、すべての資産が時価評価されるわけではなく、資産の種類、帳簿価額、含み損益等による除外がある
- 対象法人の判定は、繰越欠損金の切捨てや開始後の損金算入制限にも影響する
- 判定時点の株式売却計画、再編計画、契約、取締役会決議などを客観的資料として保存することが重要である
時価評価対象法人の判定は、単に「現在100%保有しているか」を確認する作業ではありません。
通算開始後も完全支配関係が継続する見込みがあるか、具体的な株式売却や組織再編が予定されていないか、新設親法人の特例が適用されるかなどを、法人ごとに確認する必要があります。
また、時価評価対象法人に該当すると、資産の含み益が顕在化するだけでなく、開始前の繰越欠損金が切り捨てられる可能性もあります。通算開始直前になって初めて検討すると、評価資料の準備や税負担の資金手当てが間に合わないことがあります。
グループ通算制度の開始を検討するときは、承認申請の手続だけを先行させるのではなく、対象法人、対象資産、繰越欠損金、将来の組織再編まで含めた事前シミュレーションを行うことが不可欠です。



時価評価対象法人の判定は、グループ通算制度開始時の税務リスクを左右する最初の関門です。組織図と将来計画を照合し、法人別、資産別、欠損金別の順番で丁寧に検討してください。









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