ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年5月15日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、医療法人や歯科医療法人の経営において非常に重要なテーマである、「都道府県等への事業報告」と「附帯業務の制限」について確認していきたいと思います。



事業報告というと、毎年の決算の後に提出する書類のことですね。附帯業務というのは、クリニックの診療以外の事業のことでしょうか。



おっしゃる通りです。近年は医療法の改正により経営情報の報告義務が新たに加わり、実務対応がより複雑になっています。また、医療法人は非営利性が厳しく求められるため、業務範囲を誤ると重大な問題につながります。一つひとつ、法令や通達に基づいて丁寧に確認していきましょう。なお、本記事では便宜上、歯科診療所を開設する医療法人を「歯科医療法人」と表現しますが、医療法上は通常の医療法人の一類型として取り扱われます。
1. 医療法人の業務範囲と附帯業務の制限について
医療法人は、一般の株式会社などの事業会社とは異なり、定款に記載さえすればどのような事業でも自由に行えるわけではありません。医療法によって、行うことができる業務の範囲が厳格に定められています。
「本来業務」の原則的な取扱い
医療法人の事業の中心となるのが、医療法第39条に規定される本来業務です。具体的には、病院、診療所、介護老人保健施設、および介護医療院の運営がこれに該当します。歯科医療法人であれば、歯科診療所の運営がまさに本来業務にあたります。 また、この本来業務に付随する業務についても、定款の変更等を行うことなく、本来業務の一部として行うことが認められています。例えば、院内に設置する売店、病院や診療所に隣接する患者用の駐車場の運営、松葉杖などの医療用器具の販売、無償で行う患者の送迎などが付随業務として扱われます。
「附帯業務」の規定と実施の条件
医療法人は、定款(または寄附行為)に定めることにより、本来業務に支障のない範囲で、医療法第42条に規定される附帯業務を行うことができます。 この附帯業務は法令によって限定的に列挙されており、以下のような業務が含まれます。
・医療関係者の養成または再教育(例:看護専門学校、リハビリテーション専門学校など)
・医学または歯学に関する研究所の設置
・巡回診療所、医師または歯科医師が常時勤務していない診療所の開設
・疾病予防運動施設や疾病予防温泉施設の運営
・保健衛生に関する業務(例:薬局、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所など)
・社会福祉法に規定する社会福祉事業(※乳児院などの第1種社会福祉事業は社会医療法人のみ実施可能)
・老人福祉法に規定する有料老人ホームの設置
例外的な取扱いとしての「収益業務」
原則として、医療法人は営利を目的とした収益業務を行うことは禁止されています。しかし、例外的な取扱いとして、社会医療法人に限り、本来業務に支障のない範囲で、その収益を本来業務の経営に充てることを目的として収益業務を行うことが認められています(医療法第42条の2)。 具体的には、不動産賃貸業や駐車場業、フィットネスクラブ業、保健機能食品等の販売業、飲食業などが行えますが、これらの収益業務を行うための会計は、本来業務や附帯業務に関する会計から明確に区分し、特別の会計として経理しなければならない点に注意が必要です。
| 業務区分 | 実施可能な法人 | 具体的な事業内容の例 | 法令の根拠 |
|---|---|---|---|
| 本来業務 | すべての医療法人 | 病院、診療所、介護老人保健施設の運営、およびそれに付随する院内売店や駐車場等※ | 医療法第39条 |
| 附帯業務 | すべての医療法人(定款の定めが必要) | 保健衛生に関する業務(訪問看護など)、医療関係者の養成、有料老人ホームの設置等 | 医療法第42条 |
| 収益業務 | 社会医療法人のみ | 不動産賃貸業、フィットネスクラブ、飲食業等 | 医療法第42条の2 |
※もっとも、売店や駐車場であっても、患者・来院者の利便性確保という範囲を超え、一般向けに独立した収益事業として行うような場合には、本来業務の付随業務とは評価されない可能性があります。



実務上、附帯業務の範囲については注意が必要です。附帯業務は、医療法第42条各号およびこれに類するものとして認められる範囲に限られており、一般の株式会社のように自由に事業を追加できるものではありません。例えば、役職員に対する金銭等の貸付は附帯業務として行うことはできません。もし福利厚生の一環として貸付を行う場合は、全役職員を対象とした内部規定を適切に設ける必要があります。また、事業を拡大する際には、それが本来業務の付随業務にあたるのか、定款変更が必要な附帯業務にあたるのか、事前に所轄の役所や専門家に確認することが非常に大切です。
2. 医療法人の都道府県等への決算届(事業報告等)
医療法人は、一般の事業会社が税務署に確定申告を行うのとは別に、医療法に基づき、毎期決算後に所轄の都道府県知事等に対して「事業報告書等」を届け出る義務があります。
原則的な取扱い(事業報告書等の作成と届出)
医療法人は、毎会計年度終了後2か月以内に、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書その他の事業報告書等を作成しなければなりません。また、関係事業者との一定規模以上の取引がある場合には、「関係事業者との取引の状況に関する報告書」についても詳細な記載が必要となります。該当取引がない場合でも、自治体の様式上、「該当なし」として提出を求められることがあります。
これらの書類については、監事による監査を受け、監査報告書を作成してもらいます。その後、必要な法人内部の承認手続を経たうえで、毎会計年度終了後3か月以内に、事業報告書等と監事の監査報告書を併せて都道府県知事に届け出る必要があります。
これらの書類は、法人の事務所に備え置く必要があり、社員若しくは評議員又は債権者から閲覧請求があった場合には、正当な理由がある場合を除き閲覧に供しなければなりません。また、都道府県知事に届け出られた事業報告書等についても、医療法に基づき閲覧の対象となります。
関係事業者との取引の状況に関する報告書の重要性
提出書類の中でも特に注意が必要なのが「関係事業者との取引の状況に関する報告書」です。これは、理事長やその配偶者が代表を務めるMS法人(メディカルサービス法人)などの関係会社との不透明な取引を防ぎ、非営利性の透明性を確保するために設けられています。 具体的には、関係事業者との取引のうち、事業収益又は事業費用の額が1,000万円以上で、かつ当該医療法人の本来業務・附帯業務・収益業務に係る事業収益又は事業費用の総額の10%以上を占める取引などについて、報告が必要となります。なお、報告対象となる取引はこれに限られず、事業外収益・事業外費用、特別利益・特別損失、資産・負債残高、資金貸借、固定資産や有価証券の売買、事業譲渡等についても別途基準が設けられています。
例外的な取扱い(一定規模以上の医療法人の公認会計士監査)
医療法人のうち、一定以上の規模をもつ法人については、より厳格な基準が適用されます。具体的には、最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部が50億円以上、または損益計算書の事業収益が70億円以上である医療法人や、社会医療法人については、負債20億円以上又は事業収益10億円以上の場合、さらに社会医療法人債発行法人である社会医療法人などは、公認会計士または監査法人による外部監査を受けることが義務付けられています。 これらの大規模な医療法人は、純資産変動計算書や附属明細表なども作成し、医療法人会計基準に準拠した厳格な会計処理を行う必要があります。



関係事業者、特にMS法人との取引については、都道府県への報告だけでなく、税務調査においても厳格にチェックされます。実態のない業務委託費や、相場に比べて著しく高額な不動産賃借料等を関係事業者に支払っている場合には、法人税法上、損金算入が否認されたり、寄附金、役員給与、関係者への経済的利益の供与等として問題視されたりするリスクがあります。業務の実態を示す契約書、作業報告書、価格の算定根拠となる資料を日頃から確実に整備しておくことが、事業報告と税務の両面で非常に重要となります。
3. 都道府県等への経営情報等報告の義務化
令和5年5月の医療法等の改正により、医療法人における事業報告の制度が大きく変わりました。従来の毎年の決算届(事業報告書等)の提出に加えて、新たに「経営情報等の報告」が義務化されています。
経営情報等報告の原則的な取扱い
すべての医療法人は、運営する病院や診療所の経営情報等を、毎会計年度終了後3月以内に都道府県知事宛に報告しなければなりません。この制度は、医療の実態を把握し、持続可能な医療提供体制の構築に向けた政策の企画・立案や、国民への丁寧な説明を行うことを目的として創設されました。 なお、一定の基準を満たし、公認会計士または監査法人の監査を受けなければならない大規模な医療法人等については、報告期限が会計年度終了後4月以内となる特例が設けられています。
特例としての例外的な取扱い(報告の免除規定)
この経営情報の報告は原則として全医療法人が対象ですが、税務上の特定の計算方法を採用している場合には例外的な取扱いがあります。 具体的には、法人税の計算において、租税特別措置法第67条に規定される「社会保険診療報酬の所得計算の特例(いわゆる概算経費の特例・四段階税制)」を適用して所得金額を計算した医療法人は、当該会計年度に関する詳細な経営情報の報告が対象外となります。これは、小規模な法人の経理担当者の事務負担に配慮した措置です。 ただし、報告が完全に不要になるわけではなく、「報告対象外医療法人」用の様式を用いて、報告対象外である旨の届出自体は提出しなければなりません。
報告の内容と具体的な提出方法
報告は法人単位ではなく、病院や診療所といった施設単位で行います。1つの医療法人で複数のクリニックを運営している場合は、施設ごとに報告書を作成します。なお、報告対象となる情報は、医療法人が開設する病院・診療所に係る経営情報等です。介護老人保健施設、介護医療院、訪問看護ステーションなどの附帯業務に係る情報は、原則としてこの経営情報等報告の対象外とされています。 報告すべき内容は、病院会計準則をもとにした詳細な医業収益・費用の内訳や、職種別(医師、歯科医師、薬剤師、看護職員など)の給与総額およびその人数(常勤・非常勤の別)に関する情報などです。一部の項目は任意とされていますが、報告そのものは義務となっています。 提出方法については、原則として独立行政法人福祉医療機構のシステム(WAM-NET)上に構築された『医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)』を通じた電子的な届出(アップロード等)で行います。(※以前利用されていたG-MISによる受付は終了しました。)例外として、事業報告書の届出と併せて書面で郵送提出することも認められています。なお、現在、オンライン報告は、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)を利用して行います。システムで報告する場合は、事前に医療法人IDの利用申請が必要です。なお、過去にG-MISの医療法人アカウントを保有していた場合でも、G-MISのIDはMCDBに引き継がれず、MCDB専用の新規IDが付与されます。



この新しい報告制度は、勘定科目の名称が「病院会計準則」をもとに設定されています。そのため、日々の経理処理の段階から病院会計準則に準拠した会計ソフトを利用し、施設ごとの部門別会計を導入しておくことが、決算時の集計作業をスムーズにする鍵となります。また、概算経費の特例を適用すれば詳細報告を免除されますが、実際の経費に基づく実額計算と概算経費計算のどちらが税務上有利になるかは毎期異なります。単に報告の手間を省くためだけに不利な税務計算を選択することがないよう、総合的なシミュレーションを行うことをお勧めいたします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。医療法人および歯科医療法人における業務範囲の規定は医療法によって厳格に定められており、定款の範囲を逸脱した業務を行うことはできません。 また、近年の制度改正により、都道府県知事に対する「経営情報等」の報告が新たに義務化されました。これに対応するためには、施設ごとの損益管理や職種別の給与データの把握など、よりきめ細やかな経理体制の構築が不可欠となっています。 さらに、これらの医療法上の区分や集計データは、法人事業税における社会保険診療分の非課税計算の基礎となります。



医療法務と税務会計は表裏一体の関係にあると言えます。 制度の趣旨を正しく理解し、適正な業務運営と正確な事業報告、そして漏れのない税務申告を実現するためにも、日頃から顧問税理士等の専門家と緊密に連携して経営にあたっていただければと思います。







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