【町田市の税理士が解説】法人税実務における貸倒損失(金銭債権の貸倒れ)《基礎ログ》

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年5月9日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、法人税の実務で非常に重要でありながら判断に迷うことが多い貸倒損失、特に金銭債権の貸倒れについてです。

ミミレイドン

貸倒損失ですか。取引先が倒産してしまったりして、売掛金や貸付金が回収できなくなった場合の損失のことですよね。税務上、損失として認めてもらうためのハードルはかなり高いと聞いたことがあります。

新屋賢人

その通りです。法人の有する金銭債権について貸倒れが生じたかどうかの事実認定はかなり難しい面もあるため、税務上は貸倒れの判定に関する客観的な基準が法人税基本通達によって定められています。実務上は、この通達に定められた3つの類型に当てはめて判断することが極めて重要です。本日はその3類型について、要件や具体例を確認していきたいと思います。

目次

第1章 法人税における貸倒損失の原則的な位置づけ

法人が事業を行っていく上で、取引先に対する売掛金や貸付金などの金銭債権が回収できなくなるリスクは常に存在します。このような金銭債権について貸倒れが生じた場合の貸倒損失は、法人税法第22条第3項第3号の規定により、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます

しかし、法人が単に回収が遅れているからといって自由に損失として計上できるわけではありません。課税の公平性を保つため、法人税の取扱上、どのような状態になれば貸倒れとして損金算入できるのかについて、客観的な基準が法人税基本通達によって定められています。

金銭債権の貸倒損失は、実務上、①金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ(法基通9-6-1)②債務者の資産状況・支払能力等からみて全額回収不能となった場合の貸倒れ(法基通9-6-2)③一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ(法基通9-6-3)の3つに分類されます。それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

新屋賢人

法人税法では、費用と損失は明確に区分されています。貸倒れは費用収益対応の原則になじまないため、発生した事業年度の損失の額として計上されることになります。この大原則を理解しておくことが第一歩です。

第2章 金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ(法律上の貸倒れ等)

法人税基本通達9-6-1では、法人の有する金銭債権について特定の事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち切り捨てられたこととなった部分の金額を、その事実が発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することが定められています

具体的にどのような事実が発生した場合に、どの範囲の金額が損金算入されるのかを以下の表に整理しました。

事実の概要損金算入される金額の範囲
更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
特別清算に係る協定の認可の決定があった場合この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、債権者集会の協議決定等により合理的な基準で負債整理を定めているものがあった場合その協議決定等により切り捨てられることとなった部分の金額
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

関係者の協議決定による切捨てについての具体例

表の3つ目にある合理的な基準による債務者の負債整理とは、一般的には、すべての債権者についておおむね同一の条件で切捨額等が定められるようなことをいいます。ただし、利害関係が相対立する第三者同士が総合的に協議し、切り捨て額等が決定されている場合には、おおむね同一の基準に該当するものとして取り扱われます。行政機関や金融機関など第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約もこれに該当します。

書面による債務免除についての具体例

表の4つ目にあるように、債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない(回収不能)と認められる場合には、債権者である法人が債務者に対して書面で債務免除を通知することで、その免除額を貸倒損失とすることができます。 この場合、必ずしも当事者間の協議により締結された契約による必要はなく、債権者たる法人が債務者に対して書面により債務免除の事実を明らかにしていれば足ります。また、公正証書などの公証力のある書面によることまでは要求されていません。

ただし、債務の免除が債務者に対する贈与と認められるものであるときは、免除額の単純な損金算入は認められず、寄附金として取り扱われ、寄附金の損金算入限度額を計算することになるため、例外的な取扱いとして非常に注意が必要です。債務超過の状態のいかんによっては損金の額に算入される場合もあり得るため、実態に即した慎重な判断が求められます。

新屋賢人

この通達に基づく貸倒れは、金銭債権そのものが法的に、あるいは書面によって明確に消滅していることが最大のポイントです。そのため、法基通9-6-1に該当する貸倒れは、9-6-2や9-6-3と異なり、損金経理そのものは要件とされていません。したがって、その事実が発生した日の属する事業年度の申告において、別表調整により損金算入を行うことが可能です。

第3章 回収不能の金銭債権の貸倒れ(事実上の貸倒れ)

次に、法人税基本通達9-6-2に定められている、事実上の貸倒れについて解説します。 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができます

適用要件と実務上の注意点

この取扱いは、金銭債権そのものは法的に消滅していないものの、事実上回収不能であることを理由に帳簿上で貸倒処理をすることを認めるものです。法人税法上は一般に評価損の計上が禁止されていますが、事実上回収不能であるという実態を重んじて特例的に損金算入を認めているため、以下の要件を厳格に満たす必要があります。

  1. 損金経理が必須であること
    先ほどの法律上の貸倒れとは異なり、法人がみずから回収不能を理由に帳簿上で償却(貸倒処理としての損金経理)を行うことが必須の要件となります。申告調整による損金算入は認められません。
  2. 全額が回収不能であること
    金銭債権の全額が回収できないことが客観的に明らかでなければなりません。一部のみの貸倒処理は認められていない点に注意が必要です。
  3. 担保物がある場合の特例と例外的な取扱い
    金銭債権について担保物があるときは、原則としてその担保物を処分した後でなければ、貸倒れとして損金経理をすることはできません。担保物の処分後の状況によって、はじめて回収不能かどうかの判断をすべきとされているからです。
  4. 保証債務の取扱い
    保証債務そのものについては、法人税基本通達9-6-2の注記により、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできません。もっとも、債権に保証人や連帯保証人が付されている場合には、その保証人等からの回収可能性も含めて貸倒れ該当性を判断することになります。そのため、保証人等についても資産状況や支払能力等からみて回収不能であることが明らかな場合には、必ずしも現実に保証履行請求をしていなくても、貸倒れが認められる余地があります。

回収不能かどうかの判断基準の深掘り

全額が回収不能であるかどうかは、債務者の支払能力に大きく依存するため、客観的に明らかでなければならないものの、債務者側の事情が一般的には大きな比重を占めます。しかし、どのような事情がどの程度の重みをもって考慮されるべきかは、個別具体的な事案における社会通念に従った総合的な判断によって決せられるべきものと考えられています。 具体的には、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較考量、債権回収を強行することによって生じる他の債権者とのあつれきによる経営的損失なども踏まえて判断されます

新屋賢人

回収不能の判定に当たっては、債務者側の事情等を考慮した対象となる客観的な事実の確認が必要です。課税実務においては、それがどのような場合にどの程度勘案するかの判断には難しいものがあります。一般には、第一義的には債務者側の事情により判断することとなりますが、もし全額回収不能かどうかの判断に迷うような特異な状況を背景とする事案であれば、無理に貸倒損失を計上するのではなく、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金制度の適用を検討することや、子会社等に対するものについては整理する場合の損失負担等の適用も視野に入れた対応が実務上は安全かつ効果的です。

第4章 一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ(形式上の貸倒れ)

最後は、実務上非常に重要となる法人税基本通達9-6-3に基づく、いわゆる形式上の貸倒れです。 債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権について、法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認めることとされています

  1. 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)
  2. 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき

適用要件と実務上の注意点

この通達は、継続的な取引を行っていた債務者に対する売掛債権について、取引停止から一定期間が経過したなどの客観的な形式基準を満たした場合には、事実上の貸倒れのように全額回収不能であることを厳密に証明できなくとも、損金経理を条件として貸倒損失の計上を認めるものです。

  1. 売掛債権に限定されていること
    この通達の適用対象となるのは、商品の販売や役務提供等の営業活動によって生じた売掛債権に限られ、貸付金その他これに準ずる債権は対象外です。また、売掛債権であっても、不動産取引のように通常継続して行うことのない取引に係る債権については、この取扱いの適用はありません。もっとも、通信販売のように、事業の性質上は継続・反復した取引が予定されている場合には、結果として1回限りの取引となった顧客に対する売掛債権であっても、適用が認められる余地があります。
  2. 備忘価額を控除すること
    この通達を適用して損金経理を行う場合、債権が法的に消滅しているわけではないため、帳簿上に対象となる売掛債権の額から備忘価額(通常は1円)を控除した残額を貸倒れとして処理する必要があります
新屋賢人

この形式基準は、取引先との連絡が途絶えてしまったり、少額の売掛金が残ってしまったりした場合の実務的な救済措置として非常に使い勝手が良いものです。ただし、適用対象が売掛債権に限定されている点と、備忘価額を残して損金経理をしなければならないというルールを忘れがちですので、実務では特に気をつけてくださいね。

まとめ

本日は、法人税法及び法人税基本通達に基づく貸倒損失の取扱いについて、実務上重要となる3つの判定基準を網羅的に解説いたしました。

金銭債権の貸倒損失は、以下の3つの類型に整理して判断することが不可欠です。

  1. 法律上の貸倒れ(法基通9-6-1)
    法的な手続や書面により債権が消滅した場合であり、申告調整による損金算入が可能です。
  2. 事実上の貸倒れ(法基通9-6-2)
    債務者の資産状況等から全額回収不能であることが客観的に明らかになった場合であり、損金経理が必須となります。
  3. 形式上の貸倒れ(法基通9-6-3)
    取引停止後1年以上経過した場合など、売掛債権に限定して備忘価額を残して損金経理を行う特例的な扱いです。
新屋賢人

貸倒損失の計上時期や適用する通達の要件を誤ると、後日の税務調査で否認され、思わぬペナルティを受けるリスクがあります。特に、書面による債務免除による寄附金課税のリスクや、形式基準における貸付金の除外規定などには十分な注意が必要です。判断に迷う場合は、必ず専門家である税理士に相談しながら、適正な経理処理と税務申告を行うようにしてください。この記事が皆様の実務のお役に立てば幸いです。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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