ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年5月13日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、医療法人や歯科医療法人の税務論点として『役員報酬と配当禁止の原則』について詳しく解説いたしますよ。



医療法人って、一般の株式会社と比べて役員報酬のルールが厳しいと聞いたことがあります。配当禁止というのも関係しているのでしょうか?



その通りです。医療法人は非営利性が求められるため、剰余金の配当が法律で厳格に禁止されています。そのため、役員報酬や退職金が実質的な配当とみなされないよう、税務面でも医療法面でも徹底した管理が必要になるのです。本日はそのあたりを深く体系的に確認していきましょう。
医療法人における配当禁止の原則と税務の基本
医療法第54条による剰余金配当の禁止
医療法人は、一般の事業会社と異なり、医療法によって非営利性が強く求められています。その根幹となるのが「剰余金の配当禁止」の原則です。医療法第54条では、「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない」と明確に規定されています。各法人の定款においても、決算の結果として剰余金が生じたとしても、これを配当してはならない旨が必ず定められています。
医療法人で利益が出た場合、それを株式会社のようには出資者や役員に配当として還元することはできません。そこで実務上、利益を役員報酬や役員退職金という形で正当な経費として支給することが検討されます。
配当類似行為とみなされるリスクとは
ここで最大の注意点となるのが「配当類似行為」とみなされるリスクです。役員としての職務内容や医療法人への貢献度、法人の収益力に見合わない高額すぎる報酬や退職金を設定すると、単なる経費の否認(税務上の損金不算入)にとどまらず、医療法に違反する不当な利益分配(配当)を行っていると判断される恐れがあります。
内部留保を吐き出す目的で算定基準なく高額な支給を行うと、行政からの立入検査や改善命令、最悪の場合は医療法人の認可取消につながる重大なリスクを招く可能性があります。



役員報酬の金額を決める際は、税務上損金として認められるかどうかという視点だけでなく、医療法人として外部(監督官庁など)に対して客観的かつ合理的に説明できる金額であるかという視点を持つことが極めて重要です。
役員報酬の原則的な取扱いと損金算入の要件
法人税法における役員報酬の3類型
医療法人における役員報酬が法人税の計算上、経費(損金)として認められるためには、法人税法に定められた要件を厳格に満たす必要があります。原則として、役員に対する給与で損金算入が認められるのは、以下のいずれかに該当するものに限られます。
- 定期同額給与
支給時期が1か月以下の一定期間ごとであり、かつ、その事業年度内の各支給時期における支給額が同額である給与です。医療法人の役員報酬として最も一般的な形態となります。事業年度開始から3か月以内(定時社員総会等の後)に金額を決定する必要があり、期中の恣意的な変更は原則として認められません。業績の著しい悪化など特別な事由(業績悪化改定事由)がない限り、減額も容易ではない点に注意が必要です。 - 事前確定届出給与
役員賞与などを支給する場合に、あらかじめ税務署へ支給時期や支給金額を届け出たうえで、その届出どおりに支給する給与です。届出した支給日や支給額と実際の支給内容が異なると、原則としてその職務執行期間に係る事前確定届出給与について損金算入が認められません。もっとも、複数回支給の場合の判定には細かな取扱いがあるため、実行前に個別確認が必要です。 - 業績連動給与
利益などの業績指標に連動して支給される給与ですが、同族会社が大部分を占める医療法人では要件を満たすことが難しく、実務上採用されるケースは稀です。
不相当に高額な役員給与の損金不算入
定期同額給与等の形式要件を満たしていても、金額そのものが「不相当に高額」と判断された場合、その超過部分は法人税法第34条および法人税法施行令第70条の規定により損金不算入となります。
高額かどうかの判定は、その役員の職務の内容、法人の収益状況、他の従業員に対する給与の支給状況、そして同種・同規模の医療法人の役員報酬水準などを総合的に勘案して実質基準で判断されます。
役員報酬の損金算入要件の概要表
| 報酬の類型 | 概要と実務上の要件 | 損金算入の可否 |
|---|---|---|
| 定期同額給与 | 毎月定額で支給。金額改定は期首から3か月以内に行う。 | 要件を満たせば算入可 |
| 事前確定届出給与 | 事前に税務署へ支給額・時期を届出し、その通りに支給。 | 要件を満たせば算入可 |
| 不相当に高額な部分 | 職務内容や類似法人と比較して過大と認められる部分。 | 超過部分は不算入 |



役員に対して、他の従業員と同様に状況に応じた『手当』を出したいというご相談をよく受けますが、役員は雇用契約ではなく委任契約に基づくため、毎月変動するような手当は定期同額給与の要件から外れ、原則として経費になりません。翌期以降に手当相当額を含めた定額の役員報酬として設定するよう工夫してください。
実務上の具体例と特例・例外的な取扱い
親族への役員報酬に関する注意点
理事長(院長)の配偶者など、親族を理事に就任させて役員報酬を支払うケースは多数存在します。配偶者が実際に経営や管理業務(経理、人事労務など)に従事している場合、その職務に見合った適正な報酬を支払うことは問題ありません。
しかし、実態が伴わない名目的な役員就任で多額の報酬を支払っていたり、医療資格を持たず直接的な診療行為を行っていない配偶者に対して過大な報酬を設定していたりする場合は、税務調査で厳しく否認されます。 実務上の目安として、医療資格を持たない配偶者が事務統括を行う場合、一般の求人で同等の業務を任せた場合の給与水準を目安として客観的に考えることが、税務リスクを抑えるポイントとなります。
役員退職給与と功績倍率法による適正額の算定
長年医療法人に貢献した理事長などが退任する際の退職金は、高額になることが一般的です。退職金は「退職所得」として退職所得控除や2分の1課税が適用され、個人の税負担が大きく軽減される特例があるため、出口戦略として非常に有効です。
しかし、これも「不相当に高額な部分」は損金不算入となります。適正額の算定には、一般的に「功績倍率法」が用いられます。
計算式:最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率
最終報酬月額をベースとするため、引退を見据えて数年前から役員報酬を適正水準まで計画的に引き上げておくことが実務上のセオリーとなります。ただし、内部留保をゼロにする目的だけで算定基準のない極端な高額支給を行うと、医療法の配当類似行為とみなされる危険性があります。そのため、役員退職金規程の整備と、定款・寄附行為、役員報酬規程・退職金規程に従い、理事会・社員総会その他必要な機関決定を適切に経ることが重要です。
認定医療法人等における役員報酬の実務上の上限
持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行を促進するための「認定医療法人制度」を利用する場合、移行後もクリアし続けなければならない運営の適正性要件があります。この要件の一つに、「役員に対する報酬等が不当に高額にならないように支給基準を定めていること」が規定されています。
認定医療法人の要件において、法律上は具体的な金額の上限が明記されているわけではありません。しかし、公益性が求められる制度であるため、適正額の算定には十分な注意が必要です。職務の内容や法人の経営状況などを考慮し、客観的に妥当といえる支給基準を整備しておくことが求められます。
一方で、認定医療法人とは別の制度であり、法人税の軽減税率などの優遇措置が受けられる「特定医療法人」の承認を目指す場合には、非常に明確な基準が存在します。特定医療法人における厚生労働大臣の証明に係る基準では、「役職員1人につき年間の給与総額が3,600万円を超えないこと」と厳格に規定されています。
同じ持分なし医療法人への移行・運営であっても、利用する制度によって役員報酬の要件は異なります。それぞれの制度の公式なルールを正確に理解したうえで、報酬設計を行うことが重要です。



親族への給与や高額な退職金は、調査官が必ず目を光らせるポイントです。『なぜこの金額になったのか』という算定根拠を、第三者が納得できる客観的な比較資料として平時から準備しておくことが何よりの防御策となります。
税務調査で指摘されやすいポイントと対策
役員報酬や関係者取引に対する税務当局の視点
医療法人や歯科医療法人の税務調査では、法人と個人の公私混同がないか、恣意的な利益調整が行われていないかが重点的に確認されます。
役員報酬の改定プロセスが正当であるかは当然として、理事長個人と法人との資金のやり取り(貸付金や立替金)、理事長所有の不動産の賃貸借契約、あるいは親族が代表を務めるMS法人(メディカルサービス法人)との取引価格なども厳しく調査されます。 特に、MS法人に対して支払う業務委託料などが、第三者間取引の相場から著しく乖離して高額に設定されている場合、実質的な利益供与や役員賞与とみなされ、法人の損金算入が否認されるだけでなく、個人の所得税が追徴されるという重いリスクがあります。
さらに、令和8年度税制改正において「企業グループ間の取引に係る書類保存の特例」が創設されました(令和8年4月1日より施行)。医療法人とMS法人の関係によっては検討が必要になる可能性がありますので、ご注意ください。
規程と議事録の整備による客観性の担保
これらの指摘を防ぐためには、日々の運用ルールを明文化し、決定のプロセスを証拠として残すことが必要です。役員報酬や退職金の決定、関係者との取引金額の改定については、必ず社員総会や理事会を開催し、その議論の過程と承認の事実を「議事録」として詳細に残してください。
また、給与規程や役員退職金規程を最新の法令に合わせて整備し、その規程通りに運用されている実態を維持することが、税務調査をスムーズに乗り切るための最大の対策となります。



税務調査で一番厄介なのは、『昔からこの金額でやっている』という根拠のない説明です。金額の多寡にかかわらず、決定に至った経緯を議事録に残し、契約書や相場検証の書類を完備しておくことで、調査官や監督官庁への心証は大きく変わり、適法性を証明することができます。
まとめ
医療法人・歯科医療法人における役員報酬の決定は、単なる節税対策として金額を自由に操作できるものではありません。法人税法に基づく定期同額給与などの要件を満たし、損金算入の適用を受けると同時に、医療法が定める「剰余金の配当禁止」に抵触しないよう、厳格な適正額の算定が求められます。
役員報酬や退職金を決定する際は、理事長や親族に対する支払いが不当に高額とならないよう、職務実態や類似法人の相場といった客観的なデータに基づき算出してください。また、社員総会や理事会での決議プロセスを議事録として残し、定款および規程に沿った運用を徹底することが不可欠です。



特に認定医療法人制度の活用を検討している場合や、MS法人との取引を行っている場合は、役員報酬について不当に高額とならない支給基準の整備が重要です。





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