【町田市の税理士が解説】繰延資産の償却費の計算について《基礎ログ》

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年5月2日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は昨日の続きとして、『繰延資産の償却費の計算』について整理して行きたいと思います。実務でも頻繁に登場する重要な論点ですので、しっかりと学んでいきましょう。

ミミレイドン

繰延資産ですね!資産という名前がついていますが、実態は費用の一種だというところまでは勉強しました。でも、種類によってどうやって償却していくのかなど、まだ理解が曖昧です。

新屋賢人

良い着眼点ですね。繰延資産には、創立費や開業費のような会社法上の繰延資産と、権利金のような税法独自の繰延資産があり、それぞれ償却方法や計算のルールが法令で細かく定められています。今回は法人税法や法人税法施行令、そして基本通達に基づいて網羅的に確認していきたいと思います。

ミミレイドン

ありがとうございます!例外や特例、実務で迷いやすい具体例などもぜひ教えてください。

新屋賢人

承知いたしました。読者の皆様が深く理解できるよう、わかりやすく解説します。

目次

繰延資産とは?基本的な意義と範囲(昨日までの復習)

法人税法において、繰延資産とは「法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもので政令で定めるもの」と定義されています。つまり、支出した事業年度に一括して費用(損金)とするのではなく、その支出による効果が及ぶ期間にわたって配分して費用化すべきものを指します。

法人税法施行令第14条第1項では、繰延資産の範囲として以下のものが定められています。

繰延資産の区分内容の例
創立費発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税など、法人の設立のために支出する費用で法人の負担に帰すべきもの
開業費法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用
開発費新たな技術や経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出する費用
株式交付費株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税など、自己の株式の交付のために支出する費用
社債等発行費社債券等の印刷費など、債券の発行のために支出する費用
その他の繰延資産(税法独自の繰延資産)自己が便益を受ける公共的施設・共同的施設の設置や改良のための費用、資産を賃借するための権利金や立ちのき料、役務の提供を受けるための権利金、広告宣伝用資産の贈与費用など

創立費から社債等発行費までの5つはいわゆる“会計上も繰延資産として取り扱われ得る類型”に対応するものですが、6つ目の「その他の繰延資産」は、税法独自の取り扱いとして繰延資産に計上しなければならないものです。

新屋賢人

実務上、資産を賃借するための権利金や礼金などを支払った際、一括で経費にしてしまうミスがよく見受けられます。支出の効果が1年以上に及ぶ権利金等は、税務上は繰延資産に該当するため注意が必要です。

繰延資産の償却費の計算(原則的な取扱い)

内国法人が各事業年度において繰延資産の償却費として損金の額に算入できる金額は、法人がその事業年度において償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度額に達するまでの金額とされています。

この「償却限度額」の計算方法は、先ほど分類した繰延資産の種類によって大きく2つに分かれます。法人税法施行令第64条第1項の規定により、以下の通りとなります。

繰延資産の区分償却限度額の計算方法償却の性質
創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債等発行費その繰延資産の額(既にした償却の額で各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたものがある場合には、当該金額を控除した金額)任意償却(支出事業年度に全額損金経理することも可能)
その他の繰延資産(税法独自の繰延資産)その繰延資産の額を、その支出の効果の及ぶ期間の月数で除して計算した金額に、当該事業年度の月数を乗じて計算した金額均等償却(支出の効果が及ぶ期間に応じて月割で償却)

月数の計算については、暦に従って計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月として取り扱います。

なお、税法独自の繰延資産(法人税法施行令第64条第1項第2号)について償却限度額を超過する金額(償却超過額)が生じた場合には、法人税法施行令第65条により、その超過額相当額は帳簿価額が減額されなかったものとして取り扱われます。過去に損金算入されなかった損金経理額を後年の損金経理額に含める仕組み(法人税法第32条第6項)とは異なり、この帳簿価額のみなし規定は均等償却を行う税法独自の繰延資産に対するルールとなりますので、混同しないよう整理しておきましょう。

新屋賢人

創立費や開業費は、会社の業績に応じて好きな金額を償却できる任意償却が認められています。赤字の期は償却を見送り、黒字になった期に大きく償却して節税を図るといった柔軟な対応が可能となります。

少額な繰延資産の特例(例外的な取扱い)

税法独自の繰延資産(前述の「その他の繰延資産」)については、原則として支出の効果が及ぶ期間に応じた均等償却を行わなければなりませんが、例外として少額なものに関する特例が法人税法施行令第134条に設けられています。

内国法人が支出する「その他の繰延資産」となる費用のうち、その支出する金額が20万円未満であるものにつき、その支出する日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、全額を損金の額に算入することができます

この規定により、支出額が20万円未満の権利金等については、面倒な月割償却の計算を行わず、一時に損金として処理することが認められています

なお、20万円未満かどうかは、費目に応じて“設置計画ごと”“契約ごと”“1個又は1組ごと”に判定します。

新屋賢人

この20万円未満の特例は、少額減価償却資産の特例などとは異なり、青色申告法人であるかどうかや資本金の額にかかわらず適用できるという点が特徴です。少額な権利金等を見落とさずに活用してください。

組織再編成等があった場合の取扱い(特例)

内国法人が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(残余財産の全部の分配を除く)といった適格組織再編成を行った場合、繰延資産の取り扱いについても特例が適用されます。

適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(適格分割等)により分割承継法人等に繰延資産を引き継ぐ場合において、当該繰延資産について損金経理額に相当する金額を費用の額としたときは、その費用の額とした金額(期中損金経理額)のうち、適格分割等の日の前日を事業年度終了の日とした場合に計算される償却限度額に達するまでの金額は、適格分割等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。ただし、この規定は、適格分割等の日以後二月以内に期中損金経理額などの一定の事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出した場合に限り適用されます。

また、適格分割等では、移転する資産等と密接な関連を有する繰延資産等について、直前帳簿価額による引継ぎや、期中損金経理額の損金算入の特例が設けられています。これらの適用には、原則として適格分割等の日後2か月以内の届出が必要です。

新屋賢人

適格分割等が行われると、移転する資産等と密接な関連を有する繰延資産等が引き継がれることになります。これらの引継ぎや、期中損金経理額の損金算入の特例を適用するためには、原則として適格分割等の日後2か月以内に税務署長への届出が必要です。事業年度の途中で移転が行われるため、期限内の届出を絶対に失念しないように注意してください。

実務で迷いやすい具体例(基本通達より)

実務上、どのような支出が繰延資産に該当し、どのように期間を判定するかが問題となるケースが多々あります。法人税基本通達逐条解説から、よくある具体例として「ノウハウの頭金等」の取り扱いについて解説します。

法人税基本通達8-1-6によれば、ノウハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金の費用は、原則として役務の提供を受けるための権利金等に該当し、繰延資産として取り扱うこととされています。 しかしながら、ノウハウの設定契約において、頭金の全部又は一部を使用料に充当する旨の定めがある場合、その頭金は実質的に前払使用料としての性格を持つことがあります。 このような場合で、契約により一定期間使用料を支払わない旨の定めがあるときは、当該頭金の額のうちその使用料に充当される部分の金額は、その支払わないこととなる使用料の額に相当する部分の金額を前払費用として処理することができます。そして、その使用料を支払わない期間を経過した日に残額があるときは、その残額は当該期間を経過した日の属する事業年度の損金の額に算入することとされています

新屋賢人

ノウハウの頭金のように、契約書の名称が一時金や頭金となっていても、実質的な内容が将来の使用料の前払いに充当されるものであれば、繰延資産ではなく前払費用として処理することが認められる場合があります。契約書の実質的な内容を精査して判断することが大切です。

まとめ

本日は「繰延資産の償却費の計算」について解説いたしました。

  1. 繰延資産には創立費などの会社法上のものと、権利金などの税法独自のものの2種類がある。
  2. 創立費等の会社法上の繰延資産は任意償却が可能であり、税法独自の繰延資産は効果が及ぶ期間による均等償却が必要となる。
  3. 税法独自の繰延資産であっても、支出額が20万円未満の場合は支出事業年度に全額損金算入できる特例がある。
  4. 適格分割等の組織再編時には、直前の帳簿価額による引継ぎや期中損金経理の特例がある。
  5. 支出の実態が使用料の前払い等である場合には、繰延資産ではなく前払費用として処理できるケースがある。
新屋賢人

繰延資産は、資産という名称でありながら実態は将来の費用となるべきものです。税務調査等でも計上漏れや償却方法の誤りが指摘されやすい項目ですので、法令や通達のルールに従って適正な処理を心がけてください。疑問点があれば、いつでもご相談をお待ちしております。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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