ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年4月23日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、製造業などで機械を昼夜問わず稼働させている企業にとって非常に重要となる『増加償却』という制度についてです。



増加償却ですか。普段私たちが計算している通常の減価償却とはどのように違うのでしょうか?



簡単に申し上げますと、機械を通常よりも長時間稼働させた場合に、その酷使してすり減った分だけ、通常の限度額に上乗せして減価償却費を計上できる特例制度なのです。この増加償却の適用要件や計算方法、そして実務上間違えやすい適用の単位について、確認していきましょう。
1. 増加償却(通常の使⽤時間を超えて使⽤される機械及び装置の償却限度額の特例)とは?
増加償却の基本的な考え方
法人の有する減価償却資産は、通常、法定耐用年数にわたり規則的に減価償却を行っていきます。しかし、製造業などにおいて受注が急増し、工場を24時間体制で稼働させるなど、機械や装置を通常の経済事情における平均的な使用時間を大幅に超えて稼働させるケースがあります。
機械を通常よりも長く稼働させれば、物理的な損耗や劣化も通常より早く進行します。にもかかわらず、通常の償却限度額しか経費(損金)に算入できないとすれば、実際の資産の目減りに対して税務上の経費化が遅れ、法人の実態に合った適正な課税ができなくなってしまいます。
そこで法人税法では、このような実態に配慮し、一定の要件を満たす場合には、通常の償却限度額に一定の割増額を加算することを認めています。これが増加償却(法令上の正式名称は「通常の使⽤時間を超えて使⽤される機械及び装置の償却限度額の特例」)と呼ばれる制度です。
対象となる減価償却資産
増加償却の適用を受けることができる資産は、「機械及び装置」に限られます。建物や構築物、車両運搬具などは、たとえ通常より長く使用したとしてもこの特例の対象にはなりません。
また、対象となる機械及び装置の減価償却方法にも指定があり、「旧定額法、旧定率法、定額法又は定率法」のいずれかを採用している必要があります。生産高比例法などを採用している場合は、稼働時間がそのまま償却額に反映される仕組みとなっているため、この特例の対象外とされています。



機械をたくさん動かしたのだから建物も一緒に増加償却したい、と考える経営者の方もいらっしゃいますが、法令上、明確に『機械及び装置』に限定されていますので、実務上は資産区分の確認が第一歩となりますよ。
2. 増加償却の適用要件と計算方法
厳格な適用要件
増加償却を適用して通常の償却限度額を超える金額を損金算入するためには、法人税法施行令第60条に基づき、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
- 超過使用の事実
法人が営む事業の通常の経済事情における平均的な使用時間を超えて、対象となる機械及び装置を使用していること。 - 増加償却割合の要件(10%以上の基準)
超過使用の程度に基づく「増加償却割合」が、100分の10(10%)以上でなければなりません。つまり、わずかな残業程度の稼働増では適用できず、明確に通常よりも長い時間を稼働させている必要があります。 - 届出書の期限内提出
適用を受けようとする事業年度の確定申告書の提出期限までに、「増加償却割合を乗じて計算した金額との合計額を償却限度額としようとする旨」など、財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出すること。 - 証拠書類の保存
対象となる機械及び装置を、平均的な使用時間を超えて使用したことを証する書類を保存していること。
増加償却限度額の計算式
当期の償却限度額は、基本となる通常の償却限度額に、超過使用による割増分を加算して計算します。
当期の償却限度額 = 通常の償却限度額 + (通常の償却限度額 × 増加償却割合)
増加償却割合の算定方法
この計算の鍵となる「増加償却割合」は、法人税法施行規則第20条において、次のように定められています。
増加償却割合 = 1000分の35 × 1日当たりの超過使用時間の数
ここで算出された割合に、小数点以下第2位未満の端数があるときは、これを切り上げます。たとえば、計算結果が0.123(12.3%)であれば、要件である10%以上を満たしていることになります。



増加償却割合が10%未満の場合は適用できないという点に注意が必要です。また、増加償却の適用には、その事業年度の確定申告書の提出期限までに届出書を提出し、かつ、通常の使用時間を超えて使用したことを証する書類を保存していることが必要です。したがって、法令上は事前届出制度ではありませんが、実務上は決算直前に慌てて資料を集めるのではなく、期中から稼働記録を整備しておくことが不可欠です。
3. 実務上の留意点と通達に基づく具体例
増加償却の適用単位の原則
実務上、最も迷いやすいのが「増加償却をどの単位で計算し、適用を判断するのか」という点です。工場に10台の機械がある場合、フル稼働した1台だけをピックアップして増加償却を適用できるのでしょうか。
この点について、法人税基本通達7-4-5において明確なルールが示されています。通達によれば、増加償却の適用単位は、原則として法人の有する機械及び装置につき旧耐用年数省令に定める設備の種類(細目)ごとです。もっとも、1日当たりの超過使用時間の算定は、施行規則第20条第2項に基づき、当該設備に属する個々の機械及び装置の平均超過使用時間を基礎として行います。したがって、実務上は「適用単位は設備の種類ごと、超過使用時間の把握は個々の機械装置ベース」という整理で理解するのが正確です。
複数の工場を有する場合の例外
上記のように設備の種類ごとに適用するのが原則ですが、事業規模が大きく、全国に複数の工場を持っているような法人では、設備の種類ごとに全国一律で算定するのが実態に合わない場合があります。たとえば、A工場は24時間フル稼働しているが、B工場は通常の稼働しかしていないといったケースです。
このような事情に配慮し、通達のただし書きでは「2以上の工場に同一の設備の種類に属する設備を有する場合には、工場ごとに適用することができる」と定められています。これにより、法人は自社の実態に応じて、工場という単位で区切って増加償却の適用を判断することが可能となっています。



機械1台単位でのいいとこ取りはできない、というのが実務の鉄則です。設備の種類ごと、あるいは工場ごとというグルーピング単位で一括して算定する点について、お客様にしっかりご説明して理解していただく必要がありますよ。
4. 手続きの詳細と証拠書類の整備
提出すべき届出書の記載事項
増加償却を適用するためには確定申告期限までに届出書を提出する必要がありますが、その届出書に記載すべき事項は法人税法施行規則第20条の2に詳細に定められています。具体的には以下の項目を記載する必要があります。
- 届出をする内国法人の名称、納税地、法人番号及び代表者の氏名
- 適用を受けようとする機械及び装置の設備の種類、名称及び所在する場所
- 通常の経済事情における当該機械及び装置の1日当たりの平均的な使用時間
- 当該事業年度における当該機械及び装置を通常使用すべき日数
- 当該事業年度において平均的な使用時間を超えて使用した時間の合計時間
- 1日当たりの超過使用時間
- 当該事業年度における増加償却割合
- 平均的な使用時間を超えて使用したことを証する書類の名称
- その他参考となるべき事項
証拠書類の保存義務
上記の届出書の記載事項の8番目にもあるように、単に計算上の数字を提出するだけでなく、「平均的な使用時間を超えて使用したことを証する書類」を実際に保存していなければなりません。
実務上、この証拠書類としては、工場の機械ごとの稼働日報、作業員の日報、電力使用量の記録、あるいはシステムによって自動的に記録・管理される生産管理データなどが該当します。税務調査の際にはこれらの記録に基づき、届出書に記載された超過稼働時間が事実かどうかが厳しくチェックされます。
| 項目 | 増加償却制度の要点まとめ |
|---|---|
| 対象となる資産 | 機械及び装置(旧定額法、旧定率法、定額法、定率法を採用しているもの) |
| 適用単位 | 原則として「設備の種類(細目)」ごと。複数工場がある場合は「工場ごと」の適用も可能 |
| 主要な適用要件 | 1. 増加償却割合が10%以上であること 2. 確定申告書の提出期限までに届出書を提出すること 3. 超過使用の事実を証する書類を保存していること |
| 増加償却割合 | 1000分の35 × 1日当たりの超過使用時間の数 (小数点以下第2位未満切上げ) |



表にまとめた通り、要件を満たせば強力な節税効果を発揮しますが、稼働状況を示す証拠の客観性が非常に重要です。製造現場の記録と経理の連携が必須となるため、決算前からお客様の現場とコミュニケーションをとっておくことが成功の秘訣です。
まとめ
今回は、機械及び装置を通常よりも長く稼働させた場合に適用できる「増加償却」について解説いたしました。
この制度は、機械を酷使したことによる実態としての価値の目減りを、税務上の減価償却費として早期に反映させることができる非常に合理的な仕組みです。しかし、適用するためには、機械及び装置に限定される点、増加償却割合が10%以上必要である点、そして設備の種類ごとという原則的な適用単位を守る点など、法令や通達が定める細かなルールをクリアしなければなりません。また、何よりも「通常時間を超えて稼働したことを証明する書類の保存」と「期限内の届出書の提出」が適用を左右する決定的な手続きとなります。



増加償却の適用をご検討される場合は、機械の稼働時間を客観的に証明できる管理体制を整え、お早めに私たち税理士にご相談いただければと思います。










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