ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年7月12日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、所得税法第183条に規定されている「給与所得に係る源泉徴収義務」についてです。実務の基本となる非常に重要な論点ですよ。



給与から天引きする所得税のことですよね。毎月当たり前のように処理していますが、法律ではどのように定められているのでしょうか。



ええ、誰が、いつ、どのように納付しなければならないのか、原則的なルールはもちろん、例外的なケースについても細かく規定されています。



原則だけでなく、例外的なルールもあるのですね。どのような場合に例外となるのか、とても気になります!



例えば、家事使用人のみに対する給与の支払いや、役員賞与の支払いが遅延した場合など、様々なケースがあります。通達に基づいた実務的な取り扱いも確認する必要がありますね。



ベースアップの遡及支払いなど、実務で迷いやすいケースも合わせて教えていただきたいです。
■ 1. 源泉徴収義務の原則的な取扱い(所得税法第183条第1項)
● 源泉徴収義務者と対象となる給与等
所得税法において、給与所得に係る源泉徴収義務の原則は、所得税法第183条第1項に定められています。法令によれば、居住者に対し国内において所得税法第28条第1項に規定する給与等の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収しなければならないとされています。ここでいう給与等とは、俸給、給料、賃金、歳費、賞与及びこれらの性質を有する給与をいいます。雇用契約に基づく賃金だけでなく、役員報酬など、労務提供又は職務執行の対価として支払われるものは、名称のいかんにかかわらず給与等に該当する場合があります。
● 徴収と納付の時期
給与等の支払をする者は、給与等の支払の際に所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければなりません。この「支払の際」とは、現実に給与等を支払う時を意味します。したがって、未払いの給与については、実際に支払われるまで源泉徴収義務は発生しないのが大原則となります。



給与の源泉徴収義務は、現実に支払いが行われた時点で発生し、納付期限は翌月10日となります。資金繰りの都合などで給与の支払いが遅延している場合は、その遅延している期間中は源泉徴収をして納付する義務は生じない点に留意してください。ただし、後述する役員賞与には特別なルールがありますので注意が必要です。
■ 2. 例外的な取扱い(源泉徴収を要しない場合)(所得税法第184条)
● 常時2人以下の家事使用人のみに対する給与
原則として、居住者に対して国内で給与等を支払う者は、法人・個人を問わず源泉徴収義務者となりますが、所得税法第184条には例外規定が設けられています。常時2人以下の家事使用人のみに対し給与等の支払をする者は、所得税法第183条の規定にかかわらず、その給与等について所得税を徴収して納付することを要しないとされています。 家事使用人とは、個人の家庭において家事に従事する者のことです。このような小規模な個人的な雇用の場合は、源泉徴収の手間や事務負担を考慮し、源泉徴収義務を免除しています。



この免除規定は『常時2人以下の家事使用人のみ』に給与を支払う場合に限られます。もし、個人事業主として事業用の従業員を雇いながら、併せて家事使用人を雇っているような場合には、この例外規定は適用されず、家事使用人に対する給与も含めて源泉徴収義務が生じることになりますので、実務上は誤解のないように状況を正確に把握してください。
■ 3. 特例的な取扱い(役員賞与の支払遅延)(所得税法第183条第2項)
● 支払が確定した日から1年を経過した場合の特例
原則として給与等の源泉徴収義務は現実に支払われた時に発生すると解説しましたが、法人の役員に対する賞与については特例が設けられています。 所得税法第183条第2項の規定により、法人の役員に対する賞与については、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日においてその支払があったものとみなして源泉徴収を行うこととされています。 これは、法人が同族会社である場合などに、役員への賞与の支払いを意図的に遅らせて源泉徴収を免れたり遅延させたりする租税回避行為を防ぐための措置です。



法人の役員賞与は、株主総会などで支給の決議が行われて支払が確定したにもかかわらず、会社の資金繰りなどを理由に支払いが1年以上保留されるケースが実務でも時折見受けられます。そのような場合、現実の支払いがなくても、確定から1年を経過した時点で源泉徴収義務が発生し、その翌月10日までに納付しなければなりません。延滞税などの附帯税が課されるリスクがありますので、役員賞与の未払金管理には十分な注意を払ってください。
なお、所得税基本通達183-1では、「支払の確定した日から1年を経過した日」とは、その支払の確定した日の属する年の翌年の応当日の翌日をいうとされています。例えば、支払確定日が令和7年6月20日であれば、令和8年6月21日に支払があったものとみなされることになります。
■ 4. 基本通達に基づく実務上の具体的な取扱い(183~193共)
法令の規定に加えて、実務上どのように判断すべきか迷いやすいケースについては、所得税基本通達によって詳細な取扱いが示されています。ここでは重要な4つの事例を解説します。
● 航行中の船舶乗組員の給与等に対する源泉徴収(183~193共-4)
船舶の乗組員の給与等を船長等にあらかじめ一括して前渡しし、航行中の船舶において船長等に支払わせる場合には、所得税基本通達183~193共-4により、給与の内容に応じた納付時期の取扱いが定められています。具体的には、毎月支払う固定給のように船長等に前渡しする際に各人ごとの支給額が明らかな部分については、定められた支給日が到来する都度その到来した部分に係る徴収税額をその日の属する月の翌月10日までに納付することとし、それ以外の部分については、船長等が現実に支払う際に計算した税額を、国内に帰港した日の属する月の翌月10日までに納付するという合理的な取扱いが認められています。
● 給与改訂に伴う新旧給与の差額に対する税額の計算(183~193共-5)
労働協約等により給与のベースアップが遡及して実施された場合、過去の期間の給与の差額が一時的に支給されることになります。この遡及期間の各月の給与として源泉徴収をやり直すのではなく、その差額の総額を「定められた支給日」又は「改訂の効力が生じた日」の属する月の給与等として税額を計算することとされています。具体的には、その差額をその月の通常の給与に加算して源泉徴収税額を求めてもよく、その月の賞与として税額を求めても差し支えありません。
● 非常勤の政府職員の給与等に対する税額の計算(183~193共-6)
一般職の職員の給与に関する法律第22条に規定する常時勤務を要しない委員等に対する手当については、その支給が定期的でないものであっても、通常の給与として所得税法第185条(賞与以外の給与等に係る徴収税額)の規定により源泉徴収税額を計算することが、所得税基本通達183~193共-6により明らかにされています。
● 過年分の課税漏れ給与等に対する税額の簡易計算(183~193共-8)
過年分の課税漏れ給与等については、原則として各支払月ごとの源泉徴収税額や年末調整を再計算する必要があります。ただし、所得税基本通達183~193共-8では、年末調整を行うべき給与等に係る過年分の課税漏れについて、課税漏れ給与等と課税済給与等を合算して計算した年末調整後の税額から、課税済給与等について計算した税額を控除する方法により、源泉徴収税額を計算して差し支えないとされています。なお、延滞税及び不納付加算税の計算基礎となる各月ごとの税額は、課税漏れ給与等の各月ごとの金額割合により按分して求めることとされています。



給与計算の実務では、ベースアップの遡及支払いは頻繁に発生する事象です。過去に遡って毎月の税額を再計算するとなると事務的な負担が膨大になりますが、通達により差額を支払う月の給与や賞与に上乗せして一括計算することが認められており、実務上の負担が大きく軽減されています。このような通達の趣旨を正しく理解し、効率的かつ適法な処理を心がけることが大切です。
■ 5. 関連論点:源泉徴収に係る所得税の納期の特例(所得税法第216条)
原則として源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は翌月10日までに納付する必要がありますが、小規模な事業者に対しては納付事務の負担を軽減するための特例が設けられています。 給与等の支払を受ける者が常時10人未満である事務所等において、所轄税務署長の承認を受けた場合には、半年分をまとめて年2回に分けて納付することができます。具体的には、1月から6月までに支払った給与等から徴収した所得税及び復興特別所得税はその年の7月10日までに、7月から12月までに支払った分は翌年1月20日までに国に納付することが認められています。
なお、納期の特例の対象となる源泉所得税及び復興特別所得税は、給与・退職手当等に係るもののほか、税理士、弁護士、司法書士など一定の報酬・料金に係るものに限られます。原稿料、講演料、デザイン料など、納期の特例の対象外となる報酬・料金については、原則どおり翌月10日までに納付する必要があります。
また、納期の特例は、申請書を提出したその月から直ちに適用されるわけではありません。税務署長から却下通知がない場合には、申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、原則として申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する分から納期の特例の対象となります。
| 区分 | 給与等の支払を受ける者の要件 | 納付期限 | 必要な手続き |
|---|---|---|---|
| 原則 | 要件なし | 支払った月の翌月10日 | 特になし |
| 納期の特例 | 常時10人未満 | 1月~6月支払分:7月10日7月~12月支払分:翌年1月20日 | 所轄税務署長の承認を受けること |



この納期の特例は、毎月の納付事務を省力化できるため、対象となる常時10人未満の事業所では積極的に活用すべき制度です。ただし、常時10人未満かどうかの判定には、繁忙期に臨時に雇い入れた人数などによって一時的に10人以上となる場合であっても、平常の状態において10人未満であれば特例の適用を受けることができるとされています。要件や適用開始時期、対象となる報酬の範囲をしっかり確認して申請を行ってください。
■ まとめ
本日は、所得税法第183条の給与所得に係る源泉徴収義務について解説いたしました。 給与等を支払う者は原則としてすべて源泉徴収義務を負い、支払った月の翌月10日までに納付する責任があります。しかし、家事使用人のみに対する支払いの免除や、役員賞与の未払いに対する1年ルールの特例、そしてベースアップ遡及時の実務的な取り扱いなど、状況に応じて柔軟かつ厳格な規定が設けられています。



源泉徴収は、国の税収を確保するための重要な仕組みであり、事業者が正しく理解して運用することが求められます。納期の特例などの制度も適切に活用し、ミスのない適法な給与計算実務を行っていただければと思います。ご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

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