ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年7月6日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、所得税実務における給与等とされる経済的利益の評価のうち、Part1として、実務で論点となりやすい有価証券の評価と保険契約等に関する権利の評価に焦点を当てて確認していきたいと思います。



現金ではなく、会社の株式や保険契約の名義変更といった形で報酬を受け取るケースですね。そのような場合、いくらとして税金が計算されるのか、非常に難しそうです。



おっしゃる通りです。現金であれば金額は明確ですが、有価証券や保険契約の権利は、どの時点の、どのような価額を基準にして税務上の金額を決定するかが極めて重要になります。



株式の時価といっても色々な基準がありそうですし、保険についても解約時の返戻金なのか、それとも会社がこれまで支払った保険料の総額なのか、迷ってしまいます。



素晴らしい着眼点ですね。まさにその部分が実務上間違いやすいポイントなのです。所得税基本通達に具体的な規定がありますので、それを読み解きながら詳しく確認していきたいと思います。
経済的利益と給与課税の基本原則
所得税法では、各種所得の金額の計算上、収入金額とすべき金額は、金銭で受け取るものだけに限られません。金銭以外の物や権利、あるいはその他の経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物や権利、その他経済的な利益の価額が収入金額となります。この価額は、当該物もしくは権利を取得した時、または当該利益を享受した時における価額とされています。
したがって、使用者が役員や使用人に対して、現金の代わりに自社の株式などの有価証券を与えたり、会社が掛金を負担していた保険契約の権利を譲渡したりした場合は、これらはすべて給与等としての性質を持つ経済的利益に該当し、所得税の課税対象となります。このときに最も重要になるのが、その付与された権利や資産をいくらとして評価するのかという点です。ここからは、有価証券と保険契約等に関する権利の二つに分けて、具体的な評価方法を解説していきます。



実務において、会社から従業員や役員へ何らかの財産的価値のあるものが無償または低額で移転した場合、それが給与課税の対象となる経済的利益に該当しないか、常に注意を払う必要があります。まずはこの大原則をしっかりと頭に入れておいてください。
有価証券を支給された場合の評価方法
会社が役員や使用人に対して有価証券を支給した場合の評価方法については、所得税基本通達36-36(有価証券の評価)において、原則的な取扱いと例外的な取扱いが詳細に定められています。
原則的な取扱いと具体的な評価基準
所得税基本通達36-36によれば、使用者が役員又は使用人に対して支給する有価証券については、原則としてその「支給時における価額」により評価することとされています。つまり、支給を決定した日や契約をした日ではなく、実際にその有価証券が支給され、権利が移転した時点での時価が給与等の額となります。
この支給時における価額をどのように算定するかが問題となりますが、同通達では具体的な評価の基準を明らかにしています。支給時の価額については、所得税基本通達23から35共-9(株式等を取得する権利の価額)及び財産評価基本通達の第8章第2節(公社債)の取扱いに準じて評価することとされています。
株式を支給された場合であれば、それが金融商品取引所に上場されている株式なのか、公開途上にある株式なのか、あるいは売買実例のない非上場株式なのかによって、準拠すべき時価の算定方法が異なります。上場株式等であれば支給日における最終の価格等を用い、非上場株式であれば売買実例や類似法人比準、純資産価額等を参酌する合理的な方法によって時価を算出する必要があります。また、公社債の場合は財産評価基本通達に基づく評価を行います。
例外的な取扱い
有価証券の支給であっても、上記の原則的な評価方法の対象から除外される特例的な有価証券が存在します。通達では、以下の権利についてはこの評価方法の対象から除くことを明記しています。
- 所得税法施行令第84条第3項各号に掲げる権利で同項の規定の適用を受けるもの→特定譲渡制限付株式
- 株主等として発行法人から与えられた株式(これに準ずるものを含みます)を取得する権利→ストックオプション
これらが除外される理由は、特定譲渡制限付株式やストックオプション(新株予約権)などの権利行使による株式の取得については、別途の法令や通達において、権利行使時の評価方法や非課税措置等の特例が詳細に規定されているためです。したがって、実務においては、支給された有価証券がこれらの特別な権利等に該当しないかをまず確認し、該当しない一般的な有価証券の支給である場合にのみ、この基本通達36-36に基づく支給時の時価評価を行うことになります。
| 項目 | 評価方法および取扱い内容 |
|---|---|
| 評価の原則 | その支給時における価額(時価)により評価する |
| 具体的な評価基準 | 所得税基本通達23〜35共-9、財産評価基本通達(公社債)に準じる |
| 除外されるもの(例外) | 特定の税制適格ストックオプション等の権利、株主等として与えられた株式取得権利 |



有価証券の種類によって、準拠すべき評価方法が細かく分かれています。実務においては、単に額面金額や会社の帳簿価額で評価するのではなく、通達に基づく正しい時価評価を厳密に行うよう心掛けてください。また、税制適格ストックオプションなどの特別な規定が適用されるものかどうかを見極めることも非常に重要です。
保険契約等に関する権利を支給された場合の評価方法
続いて、使用者が役員や使用人に対して生命保険契約や損害保険契約、またはこれらに類する共済契約に関する権利を支給した場合の取扱いについて解説します。これについては所得税基本通達36-37(保険契約等に関する権利の評価)に規定があります。
原則的な取扱いと実務における具体例
所得税基本通達36-37では、使用者が役員又は使用人に対して生命保険契約、損害保険契約又はこれらに類する共済契約に関する権利を支給した場合、原則として、その支給時に当該保険契約等を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額により評価します。なお、解約返戻金のほかに前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらを加算した合計額が「支給時解約返戻金の額」となります。
ただし、法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受ける一定の保険契約等について、支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%相当額未満である場合には、支給時解約返戻金の額ではなく、支給時資産計上額により評価します。また、復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等についても、元の契約が同通達の対象である場合には、支給時資産計上額に一定の損金算入額を加算した金額で評価する場合があります。



典型例としては、法人が契約者として保険料を払い込んでいた生命保険契約について、契約者を役員や使用人に変更し、保険契約上の権利を個人に移転するケースが挙げられます。なお、単なる保険金受取人の変更や、使用者が保険料を負担している段階の課税関係については、保険種類、契約者、被保険者、保険金受取人、保険料負担者等に応じて、所得税基本通達36-31、36-31の8、36-32等の取扱いも確認する必要があります。
解約返戻金に加算すべき金額(特例的な要素)
ここで絶対に省略してはならない重要なポイントがあります。それは、評価額は単純な解約返戻金の額だけではない可能性があるということです。
通達では、解約返戻金のほかに支払われることとなる「前納保険料の金額」や「剰余金の分配額等」がある場合には、これらの金額を解約返戻金の額に加算した合計額をもって評価額とすることを明確にしています。 保険契約の名義変更を受けた役員や使用人は、解約返戻金を受け取る権利だけでなく、法人が前もって納めていた未経過分の保険料の価値や、これまでに蓄積された配当金・剰余金の権利も同時に引き継ぐことになります。そのため、これらすべての財産的価値を合算した金額が、その人に供与された真の経済的利益の額となるわけです。
| 項目 | 評価額を構成する要素 |
|---|---|
| 基本となる評価額 | 支給時(名義変更時など)において契約を解除したとした場合の解約返戻金の額 |
| 加算すべき金額1 | 解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額 |
| 加算すべき金額2 | 解約返戻金のほかに支払われることとなる剰余金の分配額、配当金等 |



保険契約の名義変更による権利の支給は、役員の退職金の代わりとして行われるなど、金額が非常に多額になることが珍しくありません。実務では必ず保険会社から解約返戻金相当額の証明書を取得し、そこに前納保険料や配当金・剰余金が含まれているかを詳細に確認してください。評価額は、常に会社がこれまで支払った保険料の総額になるわけではありません。また、原則としては支給時解約返戻金の額を基礎としますが、低解約返戻金型保険等の一定の保険契約については、通達上、支給時資産計上額等による評価が求められる場合があります。したがって、保険会社から取得する解約返戻金相当額の資料だけでなく、法人税基本通達9-3-5の2の適用対象か、支給時資産計上額はいくらかを必ず確認する必要があります。
まとめ
本日は、所得税実務における給与等とされる経済的利益のうち、有価証券の評価と保険契約等に関する権利の評価について詳しく解説いたしました。
有価証券の支給については、支給時における価額により評価し、その具体的な算定は株式等を取得する権利の価額に関する通達等に準じて厳格に行う必要があります。また、特定のストックオプション等、例外として除外される権利との区別も重要です。
保険契約等に関する権利の支給については、名義変更時などの支給時において解約したと仮定した場合の解約返戻金の額がベースとなりますが、前納保険料や剰余金等がある場合には必ずそれらを加算した合計額で評価するという点が最大の留意点です。



現金支給ではない経済的利益の供与は、税務調査でも必ずといっていいほど確認される重要な事項です。法令や通達の原則に立ち返り、事実関係を正確に把握した上で、正しい評価額を算定するようにしてください。日々の実務において、この解説が皆様の理解の一助となれば幸いです。

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