【町田市の税理士が解説】所得税実務における課税しない経済的利益Part3:従業員等のスキルアップ費用・レクリエーション費用

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月2日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、前回、前々回に引き続き「課税しない経済的利益」について、今回が第3弾となります。今回はその中でも、使用人等に対して技術の習得等をさせるために支給する金品と、使用者が負担するレクリエーション費用の2つを取り上げて解説します。

ミミレイドン

いよいよPart3ですね!従業員のスキルアップ費用や、社員旅行などの費用でしょうか。会社が払ってくれたら従業員としてはとても嬉しいですが、それが給与として税金の対象になってしまうケースもあると聞いたことがあります。

新屋賢人

おっしゃる通りです。会社の業務に必要なものや、一般的な福利厚生として認められるものは非課税(給与として課税しなくて差し支えない、いわゆる給与課税しない経済的利益として取り扱われます。)になりますが、一定の要件を満たさないと現物給与として課税されてしまいます。税務調査でも確認されやすい論点ですので、所得税基本通達の考え方に基づいて、今回も一つ一つ丁寧に解説していきますね。

目次

使用人等に対し技術の習得等をさせるために支給する金品の取扱い

まずは、会社が従業員等のスキルアップのために費用を負担した場合の取扱いについて確認していきましょう。

原則的な取扱い

会社(使用者)が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員や従業員(使用人)に対して、その職務に直接必要な技術や知識を習得させたり、免許や資格を取得させたりするための研修会や講習会等の出席費用、あるいは大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限って、給与として課税しなくて差し支えないとされています。

この取扱いの背景には、たとえその費用負担によって従業員個人が特定の知識や資格を修得したとしても、それは会社のために職務を遂行する過程においておのずから修得する技術や知識等と、本質的には異ならないという考え方があります。したがって、業務遂行上の必要性があり、かつ使途や金額が適正なものであれば、個人の経済的利益として課税されることはありません

例外的な取扱い(課税されるケース)

一方で、どのような研修費用であってもすべて非課税になるわけではありません。たとえば、福利厚生の一環として、会社が従業員の自己啓発のために様々な通信教育のメニューを提供し、従業員が自由に受講した通信教育の費用を会社が負担するという例が実務上よく見受けられます。

このような給付については、従業員の個人的な趣味や教養を深める目的が含まれることも多く、その従業員の現在の職務に直接必要なものでなければ、この通達の適用はありません。したがって、この場合は従業員に対する経済的利益の供与として、給与課税されることになります。

業務遂行上の必要性があるかどうか、そして職務に直接関連しているかどうかが、課税と非課税を分ける重要な境界線となります。

技術の習得等に関する費用の取扱い比較

項目の内容取扱い 判断のポイント
職務に直接必要な研修・講習会の出席費用非課税業務遂行上必要であり、金額が適正であること
職務に直接必要な免許・資格の取得費用非課税業務遂行上必要であり、金額が適正であること
職務に直接必要でない自己啓発等の通信教育費用課税業務遂行上直接の必要性がないため、給与として課税
新屋賢人

実務上、この「職務に直接必要かどうか」の判断が難しいケースが多々あります。会社の業務命令で受講させているのか、資格取得が現在の業務に直結しているのかという点を確認してください。資格取得の報奨金などを支給する場合は、また別の規定の考慮が必要になることもありますので、単なる実費負担なのか金銭の支給なのかも合わせて確認することが大切です。

使用者が負担するレクリエーションの費用の取扱い

続いて、会社が負担する慰安旅行や運動会などのレクリエーション費用の取扱いについて解説します。

原則的な取扱いと背景

会社が役員や従業員のレクリエーションのために、社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担することがあります。これにより、行事に参加した役員や従業員が受ける経済的利益については、原則として課税しなくて差し支えないとされています。

一般的に社内のレクリエーションとして行われる行事は、従業員同士の親睦を図り、士気を高めるという会社の必要に基づくものです。参加する従業員にとっては、必ずしも自分の希望に合致する行事ばかりではないでしょう。また、それによって各人が受ける経済的利益の額も少額であると認められることから、少額不追求の観点から強いて課税しないこととされているのです。

レクリエーション旅行(社員旅行等)の特例的な要件

レクリエーションの中でも、特に社員旅行(海外旅行を含みます。)については、企業が負担する金額が大きくなりがちです。旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、参加割合、そして会社と参加者の負担額などを総合的に勘案して実態に即した処理を行う必要があります

具体的には、会社の負担額が少額不追求の趣旨に止まるものであり、かつ、次の2つの要件のいずれも満たしている場合には、原則として非課税として取り扱われます

  1. 旅行期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合は、目的地における滞在日数が4泊5日以内であることが求められます
  2. 従業員等の参加割合が50パーセント以上であること。工場や支店ごとに行う場合は、その工場や支店の従業員等の50パーセント以上が参加している必要があります

例外的な取扱い(課税されるケース)

レクリエーション費用であっても、以下のようないくつかのケースでは、給与等として課税されることになりますので注意が必要です。

第一に、行事に参加しなかった者に対して、その参加に代えて金銭を支給する場合です。特に、自己都合で参加しなかった者に金銭を支給するような運用を行うと、参加者と不参加者の全員について、その不参加者に支給した金銭相当額の給与の支給があったものとして取り扱われます。
なお、使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者に金銭を支給する場合には、その金銭を受け取った本人については給与等として課税されますが、自己都合不参加者への金銭支給の場合と同じく、当然に参加者全員まで給与課税されるわけではありません。この点は、実務上混同しやすいため注意が必要です。

第二に、役員だけを対象として会社が費用負担を行う場合です。これは従業員の親睦を図るという一般的なレクリエーションの趣旨から外れるため、その役員に対する経済的利益として課税対象となります。

第三に、社会通念上一般的に行われていると認められる行事とはいえないような、豪華な旅行や高額な費用負担を行う場合です。給与課税しなくて差し支えないとされるのは、使用者主催の新年会、忘年会、ボーリング大会、運動会、社員旅行など、社会通念上一般的に行われていると認められるレクリエーション行事に限られます。したがって、各人が受ける経済的利益が多額となるものや、実質的に私的な旅行・遊興と認められるものまで、当然に給与課税しない取扱いが認められるわけではありません。

レクリエーション費用の取扱い比較

行事の形態や条件取扱い判断のポイント
全従業員を対象とした一般的な忘年会や運動会非課税会社の必要性に基づくものであり、少額不追求に該当
4泊5日以内で参加率50%以上、かつ社会通念上一般的な規模・内容の社員旅行原則として給与課税しなくて差し支えない旅行期間・参加割合の基準に加え、会社負担額や旅行内容が少額不追求の趣旨を逸脱しないことが必要
自己都合の不参加者に金銭を支給する場合の費用負担課税金銭での受取を選択できるため、参加者も含め全員が給与課税
業務都合の不参加者にのみ金銭を支給する場合不参加者のみ課税金銭を受け取った不参加者は課税されるが、行事参加者は非課税を維持できる
役員のみを対象として実施される慰安旅行課税役員に対する個人的な経済的利益の供与とみなされる
著しく高額で豪華なレクリエーション行事課税社会通念上一般的に行われる簡易な行事とは認められない
新屋賢人

社員旅行や忘年会の費用については、実務でも非常によく問題になります。とくに「参加しないなら代わりに現金を渡す」という運用をしてしまうと、自己都合の場合にはせっかく参加した人の分まで課税されてしまうという大きなデメリットが生じます。社内規程や行事の案内文書を作成する際には、こうした税務上の取り扱いを意識して制度設計を行うようにしましょう。

まとめ

本日は「所得税実務における課税しない経済的利益」として、技術の習得等に関する費用とレクリエーション費用について解説いたしました。

どちらの論点も、会社の業務遂行上必要なものであるか、社会通念上一般的な規模に収まっているかという実態に即した判断が求められます。技術の習得においては「職務への直接的な必要性」、レクリエーションにおいては「少額不追求の趣旨と金銭支給の有無」が、実務上の大きなポイントです。

新屋賢人

形式的に会社の経費として処理をしていても、要件を逸脱していれば税務調査の際に現物給与として指摘を受け、所得税の源泉徴収もれを問われることになります。従業員のために良かれと思って行った支出が、結果的に従業員の税負担を増やすことのないよう、法令と通達に基づいた正しい理解と運用を心がけていきましょう。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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