【町田市の税理士が解説】所得税実務における使用者が負担する保険料にかかる経済的利益の給与課税

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月4日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、所得税実務における使用者が負担する保険料にかかる経済的利益の給与課税です。

ミミレイドン

会社が役員や従業員の保険料を支払ってあげた場合、それがお給料として課税されてしまうかどうかの話ですね。

新屋賢人

その通りです。保険契約の形態や受取人の設定によって、給与として課税される場合と、福利厚生として非課税になる場合があります。実務でも判断に迷うことが多い非常に重要な分野ですので、しっかりと整理していきましょう。

ミミレイドン

なんだか複雑そうですね。たとえば、特定の役員だけ会社のお金で保険に入れたらどうなるんでしょうか?

新屋賢人

とても良い視点ですね。特定の役員や従業員だけを優遇するような契約は、福利厚生とは認められず給与課税の対象になってしまいます。今日は所得税基本通達をベースにして、確認していきたいと思います。

目次

はじめに:保険料負担が給与課税される仕組みとは

法人がその役員や使用人(従業員)のために生命保険や損害保険に加入し、その保険料を負担することは実務上よく見られます。この場合、使用者が負担した保険料が、役員や使用人に対する給与として所得税の課税対象になるかどうかが問題となります。

所得税法上、給与所得には金銭で支払われる給料や賞与だけでなく、金銭以外の物や権利、その他の経済的利益も含まれます。したがって、会社が従業員に代わって保険料を負担したことによって、従業員が実質的に経済的な利益を受けたと考えられる場合には、その負担した保険料相当額が給与として課税されることになります。

しかし、すべての保険料負担が給与課税されるわけではありません。従業員全体の福利厚生を目的とした一定の契約形態であれば、給与として課税されないという取扱いが通達によって明確に定められています。実務においては、この課税・非課税の境界線を正確に見極めることが求められます。

新屋賢人

保険料の負担が給与として扱われると、従業員の所得税や住民税が増加するだけでなく、会社の源泉徴収義務も発生します。契約を締結する前に、誰が契約者で、誰が被保険者で、誰が受取人になるのかという契約の全体像を正確に確認することが税務リスクを回避する第一歩ですよ。

原則的な取扱い:養老保険における受取人の設定による違い

使用者が契約者となり、役員又は使用人を被保険者とする養老保険に加入して保険料を支払った場合の課税関係については、所得税基本通達36-31に詳細な定めがあります。ここでは、死亡保険金および生存保険金の受取人が誰であるかによって、以下の通り区分して取り扱われます。

死亡保険金・生存保険金の受取人がいずれも使用者である場合

死亡保険金及び生存保険金の受取人がいずれも使用者である場合には、役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとされます。

死亡保険金及び生存保険金の受取人が役員又は使用人である場合

この場合、保険事故が発生した際や満期を迎えた際に支払われる保険金はすべて役員又は使用人のものとなります。つまり、会社が支払った保険料はそのまま役員又は使用人個人の資産形成や保障のために支出されたものと評価されます。したがって、使用者が支払った保険料の全額が当該役員又は使用人に対する給与等として課税されます。

死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合

このケースも上記と同様に、実質的に個人が負担すべき保険料を会社が肩代わりしているに過ぎないと考えられます。したがって、支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与等として課税されます。

死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が使用者である場合

この形態は、実務上いわゆるハーフタックスプランと呼ばれるものです。死亡時には従業員の遺族の生活保障として機能し、生存して満期を迎えた場合には会社の資金として戻ってくるため、退職金の原資などに活用されます。この場合、役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとされ、原則として給与課税は行われません。

    保険の種類契約者被保険者死亡保険金受取人生存保険金受取人給与課税の取扱い
    養老保険使用者役員又は使用人使用者使用者非課税
    養老保険使用者役員又は使用人役員又は使用人等役員又は使用人等支払保険料の全額が給与課税
    養老保険使用者役員又は使用人遺族使用者原則として非課税(ハーフタックス)
    新屋賢人

    なお、いわゆるハーフタックスプランについては、所得税上の給与課税の有無だけでなく、法人税上の保険料処理も別途確認する必要があります。本記事では、主に役員又は使用人側の所得税における経済的利益の取扱いを中心に解説します。

    例外的な取扱い:特定者のみを対象とする場合と同族会社の特例

    先ほど解説した死亡保険金の受取人が遺族、生存保険金の受取人が使用者となる養老保険の形態であっても、無条件で非課税になるわけではありません。福利厚生として認められるための要件を満たしていない場合、例外的な取扱いが適用されます。

    役員又は特定の使用人のみを被保険者としている場合

    死亡保険金受取人を遺族、生存保険金受取人を使用者としている場合であっても、役員や特定の従業員のみを対象として加入している場合には、福利厚生としての性質が薄れ、特定の個人への利益供与とみなされます。この場合、支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額が当該役員又は使用人に対する給与等として課税されます。

    普遍的に設けられた格差がある場合

    役員や特定の従業員のみが加入しているように見えても、加入資格の有無や保険金額等に格差が設けられている理由が、職種、年齢、勤続年数等に応ずる合理的な基準により普遍的に設けられた格差であると認められるときは、給与課税は行われません。会社内のルールとして合理的に制度化されているかどうかがポイントになります。

    同族会社の特例

    役員又は使用人の全部又は大部分が同族関係者である法人については、特段の注意が必要です。このような同族会社においては、たとえ役員又は使用人の全部を対象として保険に加入する場合であっても、その同族関係者である役員又は使用人については、非課税の取扱いは適用されず、支払った保険料の2分の1が給与として課税されます。これは、同族会社における租税回避や恣意的な利益移転を防止するための厳しい取扱いと言えます。

      新屋賢人

      同族会社の取扱いについては実務上トラブルになりやすい部分です。全員を保険に加入させたから大丈夫だと経営者が思い込んでいても、従業員のほとんどが社長の親族であれば、その親族分は給与課税されてしまいます。会社の従業員構成を正確に把握した上でアドバイスを行ってくださいね。

      各種保険や特約ごとの具体的な取扱い

      ここからは、養老保険以外の保険形態や特約を付加した場合の取扱いについて、通達に基づき詳細に解説します。

      定期付養老保険の場合

      定期付養老保険の場合、その保険の額が生命保険証券等において養老保険に係る保険料の額と定期保険に係る保険料の額とに区分されている場合は、それぞれの保険料の支払があったものとして、個別に課税関係を判定します。しかし、保険料が区分されていない場合は、全体の保険料について養老保険の取扱いが適用されます。

      傷害特約等の特約に係る保険料

      養老保険、定期保険又は定期付養老保険に傷害特約等の特約を付した場合、当該特約に係る保険料を支払ったことにより役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとされます。ただし、役員又は特定の使用人のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額に相当する金額は、全額がその役員又は使用人に対する給与等として課税されます。

      保険契約の転換をした場合

      いわゆる契約転換制度により、既存の保険契約を下取りに出して新しい保険契約に転換した場合、その転換のあった日に転換後契約の責任準備金に充当される部分の金額までの取扱いについて注意が必要です。この責任準備金に充当される金額のうち、役員や使用人に対する給与等とされている金額がある場合には、その金額に相当する保険料の一時払いをしたものとして取り扱われます。

      損害保険契約等の場合

      使用者が自己を契約者とし、役員又は使用人のために一定の損害保険契約又は共済契約の保険料を支払う場合で、満期返戻金等がある契約についてはその受取人を使用者としているときは、原則として役員又は使用人に経済的利益はないものとして取り扱われます。ただし、役員又は特定の使用人のみを対象として保険料を支払う場合には、支払保険料の額、満期返戻金等がある場合には積立保険料相当額を控除した金額が、当該役員又は使用人に対する給与等とされます。

        新屋賢人

        特約の保険料は少額であることが多いため見落としがちですが、特定者のみを対象としていると特約部分の保険料が全額給与課税の対象になります。また、契約転換時の責任準備金の充当処理についても、課税関係が複雑になるため、保険会社から提供される書類を基に慎重に判定をしてください。

        実務上の注意点:使用人契約の保険料負担と少額特例

        最後に、契約者が法人ではなく個人(役員や従業員)である場合と、実務的な負担軽減のための少額特例について解説します。

        役員又は使用人が契約者である保険料等の負担

        ここまで解説してきたのは「使用者が契約者」である場合の取扱いでした。これとは異なり、役員や従業員個人が契約者となっている生命保険契約や、個人が負担すべき社会保険料、小規模企業共済等掛金を使用者が代わりに負担するケースがあります。この場合、個人が支払うべき私的な費用を会社が肩代わりしていることが明白であるため、福利厚生目的などの理由を問わず、使用者が負担した金額の全額が当該役員又は使用人に対する給与等として課税されます。

        課税しない経済的利益の特例(少額な保険料等の負担)

        課税しない経済的利益の特例として、使用者が役員又は使用人のために一定の保険料又は掛金を負担する場合であっても、その者につきその月中に負担する金額の合計額が300円以下である場合には、課税しなくて差し支えないとされています。年払や半年払の契約がある場合には、月割額により判定します。ただし、役員又は特定の使用人のみを対象として負担する場合には、この取扱いは適用されません。

          新屋賢人

          従業員個人が契約している保険の保険料を会社が負担してしまうと、それはもう完全に給与の支払と同じ扱いになります。もし会社が福利厚生として保険を用意するのであれば、必ず会社を契約者とした法人契約の形態をとるように経営者に指導することが我々税理士の重要な役割です。また、300円以下の少額特例は現在の経済水準からすると適用されるケースは稀ですが、税務上の厳格な取り扱いの例外として知識として持っておくことは大切です。

          まとめ

          本日は、所得税実務において頻出する「使用者が負担する保険料にかかる経済的利益の給与課税」について解説いたしました。

          保険料の会社負担が福利厚生として非課税になるか、あるいは給与として課税されるかは、以下のポイントで決定されます。 第一に、保険の「契約者」が誰であるか。個人契約の肩代わりは全額給与課税となります。 第二に、法人契約であっても「受取人」が誰に設定されているか。死亡保険金が遺族、生存保険金が法人という設定にすることが基本です。 第三に、「対象者の範囲」がどうなっているか。特定の役員や従業員のみを対象としたり、同族会社の同族関係者を対象としたりする場合には、給与課税の対象となるリスクが非常に高くなります。

          新屋賢人

          保険を活用した福利厚生プランを導入する際には、税務上の要件を完全に満たしているか、事前の確認が不可欠です。制度の趣旨を正しく理解し、適正な税務処理を心がけましょう。

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          この記事を書いた人

          コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

          町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
          30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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