【町田市の税理士が解説】所得税実務における給与等とされる経済的利益の評価Part4〜役員に貸与した住宅等に係る通常の賃借料の額の計算〜

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月9日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、法人税及び所得税の実務において非常に質問が多く、かつ税務調査でも確認されやすい論点である「役員に貸与した住宅等に係る通常の賃借料の額の計算」について確認していきたいと思います。

ミミレイドン

役員社宅の家賃ですね!会社が役員に社宅を貸与する場合、役員からいくら家賃を徴収すれば給与として課税されないのか、いろいろな計算式があっていつも迷ってしまいます。

新屋賢人

おっしゃる通りです。会社が役員に住宅を貸与する場合、役員から無償で提供を受けたり、著しく低い家賃しか徴収していなかったりすると、適正な家賃(通常の賃借料の額)との差額が役員に対する給与として所得税の課税対象となってしまいます。ですから、この「通常の賃借料の額」を正確に計算することが極めて重要なのです。

ミミレイドン

なるほど。その「通常の賃借料の額」の計算方法は、住宅の規模や会社が所有しているか借り上げているかによって異なると聞いたことがあります。

新屋賢人

その通りです。家屋の規模などによって「原則的な取扱い」「特例」、そして豪華な社宅などに対する「例外的な取扱い」が細かく定められていますので、確認していきましょう。

役員社宅の通常の賃借料の額の計算(原則的な取扱い)

目次

一般の役員社宅の評価額の算定

使用者が役員に対して貸与した住宅等(当該役員の居住の用に供する家屋又はその敷地の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利)に係る通常の賃借料の額(月額)は、原則として次の算式により計算した金額となります。

(その年度の家屋の固定資産税の課税標準額 × 12パーセント + その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 6パーセント) × 12分の1

ただし、この算式において「木造家屋以外の家屋」については、家屋の固定資産税の課税標準額に乗ずる割合を12パーセントではなく「10パーセント」として計算します。 ここでいう「木造家屋以外の家屋」とは、耐用年数省令別表第1に規定する耐用年数が30年を超える住宅用の建物をいい、反対に「木造家屋」とは、当該耐用年数が30年以下の住宅用の建物をいいます。

なお、会社が家屋だけ、あるいは敷地だけを貸与した場合には、この算式のうち、その貸与した家屋だけ、又は敷地だけの部分を用いて賃借料の額を計算することになります。

新屋賢人

この原則的な計算方法は、一般の役員社宅(後述する小規模住宅等や豪華役員社宅に該当しないもの)に対して適用されます。実務上は、市区町村から送られてくる固定資産税の課税明細書や、固定資産税評価証明書を取得して、そこに記載されている「課税標準額」を確認して計算にあてはめることが第一歩となります。なお、ここで用いる固定資産税の課税標準額については、固定資産税・都市計画税の税額そのものや、単なる市場価格・実勢価格ではありません。固定資産課税台帳に登録された価格・課税標準額を基礎として確認する必要があります。借上社宅の場合には、貸主等から固定資産税の課税標準額に関する資料を入手することが実務上重要となります。

小規模住宅等に係る通常の賃借料の額の計算(特例)

小規模住宅等の判定基準と評価額の算定

役員に貸与した住宅等が「小規模住宅等」に該当する場合には、通常の賃借料の額の計算に特例が設けられています。 小規模住宅等とは、貸与した家屋の床面積が132平方メートル以下であるものをいいます。ただし、木造家屋以外の家屋(耐用年数30年超の建物)にあっては、99平方メートル以下のものをいいます。 また、マンションなどの区分所有建物や共用部分を有する建物については、専用部分の床面積だけで判定するのではなく、共用部分の床面積を合理的に按分して専用部分の床面積に加えた面積により、小規模住宅等に該当するかどうかを判定します。国税庁の質疑応答事例でも、役員に貸与したマンションについては、通常の賃貸料の額の計算に係る固定資産税の課税標準額および小規模住宅等の判定のいずれについても、共用部分を含めて計算すべきものとされています。

この小規模住宅等に該当する場合の通常の賃借料の額(月額)は、前述の原則的な算式にかかわらず、次の3つの要素を合計した金額により計算します

(小規模住宅等の算式)

  1. その年度の家屋の固定資産税の課税標準額 × 0.2パーセント
  2. 12円 × 当該家屋の総床面積(平方メートル) / 3.3(平方メートル)
  3. その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22パーセント

上記1から3を合計した金額が、小規模住宅等における通常の賃借料の額となります。なお、会社が敷地だけを貸与した場合には、この小規模住宅等の特例計算は適用しないことに留意してください。

新屋賢人

役員社宅として貸与されるマンションの多くは、この小規模住宅等の床面積基準(99平方メートル以下)に該当することが多いものです。この特例算式を用いると、原則的な算式で計算するよりも賃借料の額が低く算定される傾向にあります。役員の負担を軽減するためにも、まずは貸与する社宅が小規模住宅等に該当するかどうかを床面積から判定することが重要です。

他から借り受けて貸与した住宅等の取扱い

借り上げ社宅における計算方法の違い

会社が自社で所有している住宅等を役員に貸与するのではなく、外部の大家さん等から借り受けて、それを役員に貸与するケース(いわゆる借り上げ社宅)も実務では頻繁に見られます。この場合の取扱いは、貸与する住宅が「一般の住宅」か「小規模住宅等」かによって大きく異なります。

住宅の区分借り上げ社宅における通常の賃借料の額の計算方法
一般の住宅(小規模住宅等以外)会社が他から借り受けて支払う実際の家賃(賃借料)の50パーセントに相当する金額と、原則の算式により計算した金額とを比較し、いずれか「多い金額」
小規模住宅等会社が支払う実際の家賃の額にかかわらず、小規模住宅等の特例算式により計算した金額

一般の役員社宅(小規模住宅等以外)を借り上げて貸与した場合は、会社が実際に支払う家賃の50パーセントに相当する金額が、原則の算式で計算した金額を超えるときは、その50パーセントに相当する金額を通常の賃借料の額としなければなりません。 一方で、小規模住宅等に該当する家屋を借り上げて貸与した場合は、会社が他から借り受けるために支払っている実際の家賃の50パーセント相当額が算式による計算額を上回っていたとしても、その多い金額とする必要はなく、あくまで小規模住宅等の特例算式によって計算した金額を通常の賃借料の額とすることができます

新屋賢人

ここは実務上、最も勘違いが生じやすいポイントです。小規模住宅等に該当するマンションを会社が借り上げて役員に貸与する場合、「会社が支払っている家賃の50パーセントを役員から徴収しなければならない」と誤解されている方が非常に多くいらっしゃいます。小規模住宅等であれば、外部から借り上げたものであっても、固定資産税の課税標準額をベースにした算式額を徴収していれば給与課税はされません。

豪華役員社宅の評価(例外的な取扱い)

豪華役員社宅に該当する場合の評価額

ここまでは算式による評価額の計算をご説明してきましたが、社会通念上一般に貸与されている住宅等と認められないもの、いわゆる「豪華役員社宅」については、これまでの算式(基本通達36-40や36-41)による計算方法は適用されません。

豪華役員社宅に該当するかどうかの判定は、基本的には家屋の床面積(専用部分だけでなく共用部分を含めた面積)が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃借料の額、内外装その他の設備の状況等を総合勘案して行われます。 ただし、床面積が240平方メートル以下であっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や、役員個人の嗜好等を著しく反映した設備等を有する住宅等については、豪華役員社宅として取り扱われます

これらの豪華役員社宅に該当した場合は、算式による評価は行わず、その住宅等の利用について通常支払うべき使用料その他その利用の対価に相当する額、すなわち実勢の賃借料の額そのものを通常の賃借料の額として評価し、役員から徴収する必要があります

新屋賢人

豪華役員社宅に該当する場合には、固定資産税の課税標準額を基礎とする算式は適用されず、その住宅等について通常支払うべき使用料に相当する額、すなわち時価ベースの使用料相当額を基準として評価する必要があります。そのため、借上物件では会社が実際に支払う賃料に近い金額が問題となることも多く、役員社宅としての税務上のメリットは大きく制限されます。

通常の賃借料の額の計算に関する細目

実務において直面する計算上の特例

通常の賃借料の額を算式の通り計算するにあたり、固定資産税の課税標準額の取り方や年度の途中の事象について、所得税基本通達36-42において細目が規定されています。

  1. 家屋が1棟の建物の一部である場合等の按分
    貸与した家屋がアパートの一室のように1棟の建物の一部である場合や、敷地が1筆の土地の一部である場合には、固定資産税の課税標準額がその建物全体や土地全体で決定されています。このような場合は、全体として求められた通常の賃借料の額を、その建物全体や土地の状況に応じて合理的に按分するなどして、貸与した部分に対応する賃借料の額を計算します。アパートの一室であれば、専有面積の比率を乗じて計算するなどの方法が考えられます。
  2. 固定資産税の課税標準額が改訂された場合の適用時期
    住宅等の固定資産税の課税標準額が改訂された場合、その改訂後の課税標準額をいつから通常の賃借料の額の計算の基礎とするかですが、これはその改訂後の課税標準額に係る固定資産税の第1期の納期限の属する月の「翌月分」から、その改訂後の課税標準額を基礎として計算します
  3. 年の中途で新築された家屋等の計算
    年の中途で新築された家屋のように、その年においてまだ固定資産税の課税標準額が定められていない住宅等については、その社宅等と状況の類似する住宅等に係る固定資産税の課税標準額に比準する価額を基として計算します。その後、正式に課税標準額が決定されたら、その第1期の納期限の翌月分から新しい課税標準額に切り換えることになります。
  4. 月の中途で居住の用に供された場合
    社宅等が月の中途で役員の居住の用に供された場合、その日割り計算等については、その居住の用に供された日の属する月の「翌月分」から、役員に対して貸与した住宅等としての通常の賃借料の額を計算することとされています。
新屋賢人

固定資産税の課税標準額は3年に1度評価替えが行われますが、改訂された場合の適用時期(第1期の納期限の属する月の翌月)は実務上よくご質問を受けます。改訂されたからといって1月や4月に遡って変更するわけではない点にご留意ください。また、役員社宅については、使用人社宅のような「通常支払うべき賃借料の額の改訂計算を省略できる(改訂後の計算額が改訂前の計算額に対し20%以内の増減にとどまるときは改訂しないことができる)」という特例は認められていません。必ず都度計算を見直す必要があります。

まとめ

本日は、所得税実務における給与等とされる経済的利益の評価のうち、役員に貸与した住宅等に係る通常の賃貸料の額の計算について、実務上特に重要となる基本的な取扱いを中心に解説しました。

役員社宅の通常の賃借料の額は、原則として固定資産税の課税標準額を基礎とした算式により計算します。 その住宅が床面積132平方メートル(木造以外は99平方メートル)以下の「小規模住宅等」に該当すれば、さらに特例的な算式により低く評価することが可能です。 また、会社が外部から借り上げた住宅を貸与する場合、一般住宅であれば「支払家賃の50パーセント」と「算式額」のいずれか高い方となりますが、小規模住宅等であれば外部借り上げであっても「算式額」のみで評価できるという点が、実務上極めて重要です。 ただし、床面積が240平方メートルを超えるなどの「豪華役員社宅」に該当する場合はこれらの算式は一切適用できず、実勢の賃借料で評価しなければなりません。

新屋賢人

役員社宅制度は正しく運用すれば会社と役員の双方にとってメリットのある制度ですが、計算方法や徴収額を誤ると税務調査で多額の追徴課税を受けるリスクが伴います。固定資産税の課税標準額の把握と、面積要件等の確認を正確に行い、適正な実務運営を心がけてください。

参考:国税庁ホームページタックスアンサー No.2600 役員に社宅などを貸したとき

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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