【町田市の税理士が解説】所得税実務における給与等とされる経済的利益の評価Part3〜商品、製品等の評価〜

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月8日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、所得税実務において企業からよくご相談を受ける『給与等とされる経済的利益の評価Part3』として、とりわけ自社の商品や製品等を使用人や役員に支給、あるいは値引販売した場合の取扱いについて確認していきたいと思います。

ミミレイドン

自社の商品を安く社員に買ってもらったり、現物支給したりするケースですね。そういったものもお給料になってしまうのですか?

新屋賢人

ええ、原則として金銭以外の物や権利で受け取った利益も収入金額に含まれるのです。ただし、一定の要件を満たせば課税されない特例もありますから、本日は法令と通達に基づき、その原則と例外を確認していきたいと思います。

目次

所得税法における「経済的利益」の原則的な考え方

所得税法では、各種所得の金額の計算上、収入金額とすべき金額は、現金や預金への振込みで受け取る金銭だけとは限りません。所得税法第36条第1項において、金銭以外の物や権利、その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物等の価額を収入金額とすべき金額に含めることとされています。

つまり、使用者(会社や個人事業主)から役員や使用人(従業員)に対して、給与という名目の金銭ではなく、物やサービスなどの「経済的利益」が与えられた場合、それは実質的に給与を支給したのと同じであると考え、原則として給与所得の収入金額に含めて課税することになるのです。そして、この金銭以外の物や権利、その他経済的な利益の価額は、当該物や権利を取得した時、あるいは当該利益を享受した時における価額(時価)とされています

新屋賢人

実務上、『現物給与』と呼ばれる論点です。金銭でお給料を支払わなくても、会社の商品を無償で渡したり著しく安く販売したりすれば、それは経済的な利益を与えたことになり、給与課税の対象になるという大原則をまずはしっかりと押さえておいてください。

役員や使用人に支給する「商品・製品等」の評価方法(原則的な取扱い)

それでは、具体的に使用者が役員や使用人に対して「商品」や「製品等」を無償で現物支給した場合、その経済的利益の額(収入金額に算入すべき価額)をどのように評価するのでしょうか。 所得税基本通達36-39では、有価証券や食事を除く商品や製品等の物については、その支給時において以下の価額によって評価することが定められています。

使用者が通常他に販売する物である場合

使用者が、自社の取り扱う商品や製品(通常他に販売している物)を役員や使用人に支給した場合には、その支給時における「使用者の通常販売価額」により評価します。 この「通常販売価額」とは、その使用者の業態に応じた価額を指します。具体的には、その使用者が製造業者であれば製造業者としての販売価額により、卸売業者であれば卸売価額により、また、小売業者であれば小売価額によって評価することになります。

使用者が通常他に販売するものでない場合

使用者が通常他に販売していない物(例えば、他社から購入した贈答品や日用品などを自社の従業員に支給した場合など)については、その支給時におけるその物の「通常売買される価額(時価)」により評価します。 ただし、この場合には実務上の便宜を考慮した例外的な取扱いが設けられています。当該物が、役員や使用人に支給するために使用者が購入した物であり、かつ、その購入の時から支給の時までの間にその価額に相当な違いが生ずる等の事情がないと認められる場合に限り、その実際の「購入価額」をもって評価額とすることができるとされています。

支給する物の区分評価額の原則例外的な取扱い
使用者が通常他に販売する物(自社の商品・製品など)支給時における使用者の「通常販売価額なし
使用者が通常他に販売するものでない物支給時における「通常売買される価額(時価)支給用に購入し、購入時から支給時までに価額の変動がない場合は、その「購入価額」によることができる
新屋賢人

自社で取り扱っている商品を従業員に支給した場合は、会社の仕入原価や製造原価ではなく、あくまで『通常の販売価額』で評価して給与課税額を計算するという点に注意が必要です。原価で評価してしまうと源泉所得税の徴収漏れを税務調査で指摘される原因になりますので、実務では十分に気をつけてください。

商品・製品等の値引販売に関する例外的な取扱い(特例)

自社の商品や製品を無償で支給するのではなく、従業員割引などを利用して「通常よりも安く販売した(値引販売した)」場合、その通常の販売価額と実際の販売価額との差額も、原則として経済的利益として給与課税の対象となります。 しかし、従業員に対する一定の値引販売については、福利厚生的な側面もあることから、特段の弊害がない限り、これに課税対象として取り扱うことは実情に沿わない面があります。 そこで、所得税基本通達36-23では、使用者が役員や使用人に対し、自己の取り扱う商品や製品等(有価証券や食事は除きます。)の値引販売をすることにより供与する経済的利益について、一定の要件を全て満たす場合には、課税しなくて差し支えないという例外的な取扱いを設けています。

値引販売において課税されないための3つの要件

非課税の福利厚生として取り扱われるためには、次の3つの要件を全て満たす必要があります。これらの要件を満たさない場合には、所得税基本通達36-23による非課税扱いはできず、原則として、通常の販売価額と実際の販売価額との差額について給与課税の有無を検討する必要があります。

  1. 販売価額の下限に関する要件
    値引販売に係る実際の販売価額が、使用者の「取得価額以上」であり、かつ、通常他へ販売する価額に比して著しく低い価額(通常他へ販売する価額のおおむね70パーセント未満)でないことが必要です。 つまり、原価(仕入価額や製造原価)を割って安く販売してはならず、さらに、一般顧客への通常の販売価格の70パーセント以上の価格で販売しなければならない、という二重の価格下限が設定されています。
  2. 値引率の合理性に関する要件
    値引率が、役員や使用人の全員につき一律に定められているか、あるいは、役職、地位、勤続年数などに応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められている必要があります。 特定の役員だけに極端に有利な値引率を設定しているような場合には、この要件を満たさず、課税対象となります
  3. 販売数量に関する要件
    値引販売をする商品等の数量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費する程度の数量に限定されている必要があります。 これは、従業員が自分や家族の生活のために消費する範囲を超えて、転売目的などで大量に安く購入するようなケースを排除するための要件です。
要件の項目    満たすべき基準・条件
1. 販売価額の下限使用者の取得価額以上であり、かつ、通常販売価額のおおむね70%以上の価額であること
2. 値引率の合理性役員や使用人の全員につき一律、又は地位や勤続年数等に応じて合理的なバランスが保たれた格差であること
3. 数量の限定一般の消費者が自己の家事のために通常消費する程度の数量に限定されていること
新屋賢人

この自社商品の値引販売の非課税要件は、源泉所得税の実務上、確認漏れがあると給与課税や源泉徴収漏れにつながり得る重要なポイントです(税務調査で確認されます。)。特に『取得価額以上かつ通常販売価額の70%以上』という算定基準は明確な数値基準ですから、会社が社内規定(従業員割引制度など)を整備する際には、必ずこの通達の要件を満たすように制度設計する必要があります。
なお、自己の取り扱う商品等であっても、土地・建物等の不動産の値引販売については注意が必要です。国税庁の質疑応答事例では、建売住宅を社員に値引販売する場合について、所得税基本通達36-23の取扱いを適用することはできないとされています。不動産は経済的利益の額が多額となりやすく、また、一般の消費者が自己の生活において通常消費するものとはいえないためです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。本日は、所得税実務において避けては通れない、給与等とされる経済的利益のうち、商品や製品等の支給時の評価と値引販売の取扱いについて詳しく解説いたしました。 大原則として、使用者から与えられた金銭以外の物や経済的利益は、その支給時における通常販売価額等で評価され、給与所得として課税されます。 しかしながら、自社商品の従業員向け値引販売については、取得価額以上かつ通常販売価額のおおむね70%以上であること、値引率に合理的なバランスがあること、数量が家事消費の範囲内であること、という3つの厳しい要件を全て満たすことで、例外的に給与として課税されない道が用意されています。 こうした原則と例外の境界線を法令と通達から正確に読み解き、実務に適用していくことこそが、私たち税理士の重要な役割です。給与課税の判断や社内制度の設計に迷われた際は、ぜひ今回の解説をご活用いただければ幸いです。

新屋賢人

税務の知識は、知っているか知らないかで会社の処理や従業員の方の税負担に直結します。基本通達の細かな要件までしっかりと目を通し、明確な根拠に基づいたアドバイスができるよう、私たちも日々研鑽を積んでいきます。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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