ミミレイドンボス、おはようございます!2026年6月1日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、グループ法人税制の中でも非常に重要かつ複雑な論点である『完全支配関係がある法人の間の取引の損益』について解説していきましょう。



完全支配関係ですか。つまり、親会社と100パーセント子会社などの間で資産を売買したときの税務上の取扱いということですね。なんだか難しそうな響きがします。



ええ、その通りです。100パーセントの資本関係があるグループ法人間で資産を移動させても、グループ全体で見れば単なるポケットの移し替えにすぎません。そのため、法人税法では譲渡損益をすぐに計上せず、いったん繰り延べるという特別なルールが設けられているのです。本日は法令や通達をベースにして、この仕組みの原則から例外までを整理していきたいと思います。
完全支配関係がある法人の間の取引の損益調整の原則
企業グループを一つの事業体として捉える「グループ法人税制」においては、100パーセントの資本関係がある法人の間で一定の資産を譲渡した場合、その譲渡から生じた利益や損失を、譲渡した時点では計上せずに繰り延べるという原則的な取扱いが定められています。
法人税法第61条の11第1項において、内国法人(普通法人又は協同組合等に限ります。)が、その有する譲渡損益調整資産を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限ります。)に譲渡した場合には、その譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額を、その譲渡した事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入することとされています。
わかりやすく言いますと、譲渡によって利益が出た場合はその利益と同額を損金(マイナス)に算入して利益を打ち消し、逆に譲渡によって損失が出た場合はその損失と同額を益金(プラス)に算入して損失を打ち消すことで、課税上は損益が発生しなかった状態にするということです。この繰り延べられた利益や損失のことを「譲渡損益調整額」と呼びます。
完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係、又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいいます。この制度は、グループ内での意図的な損益の付け替えによる租税回避を防ぐとともに、グループ全体での経済実態に即した課税を行うために設けられています。



この制度の対象となるのは、譲渡する側も譲渡を受ける側も、ともに普通法人又は協同組合等である内国法人に限られます。どちらか一方が外国法人であったり、公益法人等であったりする場合には適用されませんので、グループ内に様々な形態の法人が混在している場合は注意が必要です。
なお、本制度は、時価による譲渡を前提とした譲渡損益の繰延制度です。譲渡対価が時価と著しく乖離している場合には、譲渡損益調整とは別に、寄附金、受贈益、資本等取引該当性などの論点が生じる可能性があるため、譲渡価額の妥当性も併せて確認する必要があります。
譲渡損益調整資産の範囲と特例(除外される資産)
それでは、グループ間で譲渡された資産のうち、どのような資産が損益の繰り延べの対象になるのでしょうか。
法令上、この対象となる資産を「譲渡損益調整資産」と呼びます。譲渡損益調整資産とは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除きます。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産を指します。
ただし、これらに該当する資産であっても、実務上の負担を軽減するためなどの理由から、一定の要件を満たすものは譲渡損益調整資産から除外される特例が設けられています。法人税法施行令第122条の12第1項により、以下の資産は譲渡損益調整資産の対象から除外されます。
| 除外される資産の要件 | 内容の解説 |
|---|---|
| 売買目的有価証券 | 短期的な価格変動等を利用して利益を得る目的で取得した有価証券など、譲渡法人において売買目的有価証券とされているものは除外されます。 |
| 譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券 | 譲渡法人では売買目的以外であっても、譲渡を受けた法人(譲受法人)において売買目的有価証券とされるものは除外されます。 |
| 譲渡直前の帳簿価額が1,000万円未満の資産 | 譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円未満の資産は、少額であるため実務上の事務負担を考慮して除外されます。 |
ここで非常に重要な実務上のポイントとなるのが、「1,000万円未満であるかどうか」をどのような単位で判定するのかという点です。この1,000万円未満かどうかの判定は、譲渡した資産を財務省令で定める単位に区分した後の帳簿価額により行います。 たとえば、金銭債権であれば一の債務者ごとに区分し、減価償却資産である建物であれば一棟(区分所有の建物の場合はその専有部分)ごとに区分し、機械及び装置については、一の生産設備又は一台若しくは一基ごと、通常一組又は一式をもって取引単位とされるものは一組又は一式ごとに判定します。特に工場設備などでは、固定資産台帳上は一台ごとに管理されていても、実態として一の生産設備を構成する場合には、生産設備単位での判定が問題となることがあります。また、土地等については一筆(一体として事業の用に供される一団の土地等にあっては、その一団の土地等)ごとに区分して、その帳簿価額が1,000万円未満であるかを判定することになります。



1,000万円の判定についてよく質問を受けますが、多数の資産を一括して譲渡した場合でも、譲渡代金の合計額ではなく、法令で定められた個別の資産の区分単位ごとに帳簿価額を判定します。実務ではこの判定単位を間違えると、繰り延べるべき損益を計上してしまったり、その逆のミスを犯したりするため、慎重に確認をしてください。
なお、グループ通算制度を適用している法人間で、他の通算法人の株式又は出資を譲渡する場合には、通常の譲渡損益調整資産の戻入れとは異なる特別な取扱いが設けられています。そのため、通算法人株式の譲渡については、通常の固定資産や土地の譲渡とは区別して確認する必要があります。
譲渡損益の算定と「原価の額」に関する実務上の特例
譲渡利益額又は譲渡損失額を計算するにあたり、譲渡の対価の額と、その資産の「原価の額」との差額を算出します。この場合の「譲渡に係る原価の額」とは何を指すのかについて、法人税法基本通達12の4-1-1で具体的な取扱いが明確にされています。
例えば、譲渡損益調整資産である土地や有価証券などを譲渡したことに伴い、譲渡法人が負担することとなる土地の売買手数料や、有価証券の譲渡に係る手数料等といった「付随費用」が発生するケースが多々あります。このような譲渡に伴う付随費用が、譲渡に係る原価の額に含まれるかどうかが問題となります。
これについて通達では、完全支配関係がある法人の間の取引の損益調整の規定は、あくまで譲渡損益調整資産そのものから生じる譲渡損益を調整するためのものであると考えられるため、当該付随費用は「譲渡に係る原価の額」には含まれず、その原価の額はその譲渡直前の帳簿価額となることが留意的に明らかにされています。 したがって、譲渡法人が負担する譲渡の手数料等の額については、原則として譲渡損益の繰り延べの対象とはならず、その譲渡をした日の属する事業年度の損金の額にそのまま算入されることになります。



譲渡損益を計算する際、会計上は手数料を含めて損益を算定することがありますが、税務上のグループ法人税制における譲渡損益調整額の計算では、直前の帳簿価額のみを原価とします。手数料は当期の経費として落とせるという点をしっかりと押さえておいてください。
繰り延べた譲渡損益調整額の戻入れのタイミング
譲渡によって繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額(譲渡損益調整額)は、いつまでも繰り延べられたままではありません。譲渡を受けた法人(譲受法人)において一定の事由が生じたタイミングで、譲渡法人の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入して、繰り延べを解消(戻入れ)することになります。
法人税法第61条の11第2項では、譲受法人において譲渡損益調整資産の譲渡、償却、評価換え、貸倒れ、除却その他の政令で定める事由が生じたときは、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額を、譲渡法人の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入すると定めています。
以下に、実務上よく発生する具体的な戻入れの事由と、その計算方法を解説します。
1. 減価償却資産や繰延資産の償却による戻入れ
譲渡された資産が減価償却資産や繰延資産である場合、譲受法人が毎期の決算で減価償却費を損金算入するのに合わせて、譲渡法人でも譲渡損益調整額を徐々に戻し入れていきます。 具体的には、減価償却資産であれば、譲受法人における当該資産の取得価額のうちに、その事業年度の損金の額に算入された減価償却費の額の占める割合を、譲渡損益調整額に乗じて計算した金額を戻し入れます。 また、実務上の煩雑さを避けるための特例(簡便法)として、譲渡法人の事業年度の月数を、譲受法人がその資産について適用する耐用年数の月数(耐用年数に12を乗じた数)で除して得た割合を乗じて計算した金額を、毎期定額で戻し入れる方法も認められています。
2. 金銭債権のアキュムレーション・アモチゼーション等の事由
金銭債権を譲渡した場合で、譲受法人において取得価額と債権金額との差額についていわゆるアキュムレーション(益金計上)又はアモチゼーション(損金計上)が行われることがあります。これらの調整は実質的には金利の調整と認められることから、譲渡法人における譲渡損益調整額の戻入れ計算は、譲渡日から支払期日までの期間のうちにその金銭債権を保有している期間の占める割合に応じて行うことが適当とされています(基本通達12の4-3-3)。 また、金銭債権の一部が貸倒れとなって損金算入された場合にも、その貸倒れとなった割合に応じて戻入れ計算を行います(基本通達12の4-3-4)。
3. 契約の解除等や値引きがあった場合の取扱い
完全支配関係法人間の譲渡について、その後に契約の解除や取消し、返品が生じた場合には、その事実が生じた事業年度において、残っている譲渡損益調整額の全額を益金又は損金に算入して戻し入れを行います(基本通達12の4-3-2)。 また、譲渡代金の値引きが行われた場合には、当初の譲渡利益額が生じた譲渡と譲渡損失額が生じた譲渡とに区分して取り扱われます。譲渡利益額が生じた譲渡について値引きがあった場合は、その値引き額が減少したこととして譲渡損益調整額を減少させる処理を行います。なお、譲渡利益額が生じた譲渡について値引きがあった場合で、その値引額が期首譲渡損益調整額を超えるときは、期首譲渡損益調整額の全額を益金の額に算入するとともに、その超える部分の金額を新たな譲渡損益調整額として益金の額に算入します。



戻入れの計算は、譲受法人の処理に連動して譲渡法人側で申告調整を行うという特殊な構造になっています。譲渡法人は譲受法人から、償却や譲渡、除却などの事実が生じた旨の通知を受け取る必要があります。実務ではグループ内のコミュニケーション不足によって、戻入れの計上漏れが発生しやすいので、税理士としてグループ全体の資産の動きをしっかりトラッキングすることが不可欠です。
完全支配関係がなくなった場合などの例外的な取扱い
ここまで、完全支配関係が継続していることを前提とした原則的な取扱いと戻入れのルールを解説してきました。では、株式の売却などによって、譲渡法人と譲受法人の間に完全支配関係がなくなった場合はどうなるのでしょうか。
法人税法第61条の11第3項において、譲渡法人が譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなったときは、原則として、まだ戻し入れていない譲渡損益調整額の残額を、その完全支配関係を有しないこととなった日の前日の属する事業年度の所得の金額の計算上、一括して益金の額又は損金の額に算入しなければならないと規定されています。 グループという一つの事業体から資産が外部に流出した、あるいはグループの範囲外になったとみなされるため、このタイミングで課税関係を清算するわけです。
ただし、ここにも例外的な取扱いが存在します。たとえば、完全支配関係を有しないこととなった理由が、譲渡法人の適格合併による解散(合併法人が譲渡法人と完全支配関係がある内国法人であるものに限ります。)や、譲受法人の適格合併による解散である場合には、一括での戻入れは行われません。この場合、適格合併に係る合併法人が、譲渡損益調整額を引き継ぎ、引き続きこの制度の適用を受けることになります。



グループ再編やM&Aによって資本関係が変動した瞬間に、過去に繰り延べていた巨額の譲渡損益が突然益金として実現し、多額の税金が発生するケースがあります。株式の譲渡や組織再編を行う前には、グループ内に未処理の譲渡損益調整額がどれくらい眠っているかを必ず確認し、税務インパクトをシミュレーションすることが我々専門家の重要な使命となります。
まとめ
本日は「完全支配関係がある法人の間の取引の損益」について、制度の概要から対象資産の判定、原価の取扱いの特例、そして戻入れや資本関係の変動に伴う例外的な取扱いに至るまで、幅広く解説いたしました。
100パーセントの資本関係にあるグループ内での資産の譲渡は、譲渡利益額と譲渡損失額の両方が繰り延べの対象となります。対象となる「譲渡損益調整資産」の要件や1,000万円の判定単位、付随費用の取扱いなど、実務上の細かい論点が基本通達で数多く規定されています。また、譲受法人におけるその後の資産の動き(減価償却、譲渡、除却、貸倒れなど)に連動して譲渡法人が戻入れの申告調整を行う仕組みであるため、グループ企業間の緊密な情報連携が求められます。さらに、完全支配関係が切断された場合の課税の実現など、経営の意思決定に直結するダイナミックな規定でもあります。



グループ法人税制は非常に専門的で複雑な領域ですので、判断に迷われた際は、法令や通達の趣旨に立ち返って一つ一つ事実関係を整理することが重要です。皆様の実務の参考になれば幸いです。








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