【町田市の税理士が解説】所得税法第190条に基づく年末調整のすべて

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月15日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、所得税法第190条に規定されている『年末調整』についてです。冬の風物詩とも言える手続きですが、その法的根拠を深く掘り下げていきます。

ミミレイドン

年末調整ですね!毎年実務で当たり前のように処理していますが、法律や通達で具体的にどのようなルールが定められているのか、きちんと確認したことはありませんでした。

新屋賢人

実務の処理を正確に行うためには、法令や基本通達の根拠を網羅的に理解しておくことが非常に重要です。本日は原則的な取扱いから、年の途中で行う特例、さらには年末調整後の再調整まで、確認していきたいと思います。

目次

1. 年末調整の原則的取扱い

対象者と実施時期

所得税法第190条において、年末調整の対象となるのは、「給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者」であり、かつ「その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円以下であるもの」と規定されています。 実施する時期については、原則として「その年最後に給与等の支払をする場合」とされています。ただし、その居住者がその年最後に給与等の支払を受けた後、その年の12月31日までの間に別の支払者に扶養控除等申告書を提出すると見込まれる場合は、年末調整の対象から除かれます。

税額精算の仕組みと計算方法

年末調整は、毎月の給与から天引き(源泉徴収)された所得税の合計額と、年間の給与総額から正しく計算し直した所得税額とを比較して、その過不足を精算する手続きです。法律上は、次の「年間徴収税額」と「算出税額」を比較することとされています。

  1. 年間徴収税額
    その年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等につき、源泉徴収された、又はされるべき所得税の額の合計額です。なお、年の中途で就職した人について、前の勤務先に扶養控除等申告書を提出して支払を受けていた給与等がある場合には、原則として、その前職分と現在の勤務先の給与等を通算して年末調整を行います。ただし、現在の勤務先は、前職分の給与額、源泉徴収税額、社会保険料等を前職の源泉徴収票などにより確認する必要があります。前職分を確認できない場合には、現在の勤務先で前職分を含めた年末調整を行うことはできず、本人が確定申告により精算することになります。
  2. 算出税額
    年調年税額は、概ね次の順序で計算します。まず、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額について、別表第五を用いて給与所得控除後の給与等の金額を求めます。ここで、所得金額調整控除の適用がある場合には、その控除額を差し引きます。 次に、そこから各種の所得控除額の合計額を差し引き、1,000円未満の端数を切り捨てた金額を法律上「課税総所得金額」とみなして、所得税の税率を適用し税額を計算します。 さらに、年末調整で住宅借入金等特別控除などの税額控除の適用を受ける場合にはその控除額を差し引き、原則として、その後の税額に102.1パーセントを乗じ、100円未満を切り捨てた金額を所得税および復興特別所得税の年調年税額とします。 なお、差し引くことができる所得控除には、給与から控除された社会保険料や小規模企業共済等掛金のほか、申告により控除される生命保険料、地震保険料、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除、基礎控除などが含まれます。
比較する項目計算内容
年間徴収税額年中に支払う給与等から徴収された、又はされるべき所得税の合計額(前職分を含む)
算出税額給与所得控除後の金額から各種所得控除を差し引き、税率を適用して計算した税額

超過額の充当・還付と不足額の徴収

上記の比較の結果、年間の源泉徴収税額が年調年税額を上回る場合、その差額は本人に還付します。給与の支払者は、原則として、年末調整を行った月分として納付する源泉徴収税額からその過納額を差し引いて本人へ還付します。還付しきれない場合には、その後に納付する源泉徴収税額から順次還付し、一定の場合には所轄税務署長に還付請求を行います。 逆に、年間徴収税額が算出税額を下回る場合(不足している場合)は、その不足額を、その年最後に給与等を支払う際に徴収して国に納付する必要があります。もし一度で徴収しきれない場合は、翌年において給与等を支払う際に順次徴収して納付することになります。

新屋賢人

なお、年末調整による不足額の全額をその年最後の給与から徴収すると、その月の税引手取給与が、その年1月から年末調整を行った月の前月までの税引手取給与の平均月額の70%未満となる場合には、所定の申請書をその年最後の給与等の支払日の前日までに給与の支払者を経由して所轄税務署長へ提出し、その承認を受けることにより、年末調整による不足額の徴収を翌年1月および2月に繰り延べることができます。
ただし、年末調整を行う月の給与・賞与に対する通常の源泉徴収税額は繰延べの対象とはなりません。

2. 特例:年の中途で年末調整を行う場合

年末調整は原則として「その年最後に給与等の支払をする際」に行いますが、所得税基本通達190-1では、年の途中で退職した者などについて、その退職等の時点で年末調整を行う特例的な取扱いを定めています。具体的には以下のケースに該当した時において、法第190条の規定を適用して年末調整を行います。

  1. 死亡により退職した場合。
  2. 海外支店等に転勤したことにより非居住者となった場合。
  3. 著しい心身の障害のため退職した場合で、その退職の時期からみてその年中において再就職することが明らかに不可能と認められ、かつ、退職後その年中に給与等の支払を受けることとなっていないとき。
  4. 12月に支給期の到来する給与等の支払を受けた後に退職した場合。

このほか、いわゆるパートタイマーとして勤務していた人などが退職した場合で、一定の要件を満たす人についても、退職時に年末調整を行います。例えば令和7年分については、その年中に支払を受ける給与の総額が123万円以下であり、かつ、退職後その年中に他の勤務先等から給与の支払を受ける見込みがない人が対象とされています。なお、この金額基準は税制改正により変更されることがあるため、対象年分の国税庁資料を確認する必要があります。

新屋賢人

パートタイマーの方などが中途退職した場合の年末調整は、実務上遭遇することのある取扱いです。ただし、対象となる給与収入の上限額は税制改正により変更されるため、必ず対象年分の基準を確認する必要があります。退職時に本人が『今年はもう他で働きません』と申告している場合は、その時点で年末調整を行います。その結果、年調年税額が0円となる場合には、源泉徴収済みの所得税および復興特別所得税が還付されます。なお、本人の申告内容や他の所得の状況によっては、別途確定申告が必要となることがあります。

3. 例外的な取扱い:年末調整後の再調整

年末調整を終えた後に、予期せぬ事情の変更や申告漏れが判明した場合には、どのように対応すべきでしょうか。これについても基本通達で細かなルールが定められています。

給与等の追加払をする場合の再調整

年末調整を行った後に、予期しなかった事由によりその年分の給与等の追加払いをすることとなった場合には、原則として、その追加払をする給与等を含めたところで再度計算を行い、先に年末調整を行った際に計算した税額との差額を精算しなければなりません(所得税基本通達190-4)。

年末調整後に所得控除に異動があった場合の再調整

年末調整における所得控除は、原則として、その年最後に給与等を支払う時の現況に基づいて判定します。給与の支払者は、給与所得者から提出された扶養控除等申告書その他の申告書に基づいて確認しますが、控除対象者の年齢など、法令上12月31日の現況で判定する事項もあります。(所得税基本通達190-5)。したがって、年末調整後からその年の12月31日までの間に、結婚や出産などで扶養親族に異動があり控除額が増加する(結果として税額が減少する)ような場合であっても、給与等の支払者が行う年税額の計算が誤りとなるわけではなく、給与所得者本人が確定申告を行うことで精算するのが本来の筋です(所得税基本通達190-5)。 しかし、通達では給与所得者の便宜を考慮し、その年分の源泉徴収票が作成される時までにその異動について申告書が提出されたのであれば、給与等の支払者が年末調整の再計算の方法によって、減少することとなる税額を還付しても差し支えないという例外的な取扱いを明らかにしています(所得税基本通達190-5)。
反対に、年末調整後、その年の12月31日までの間に扶養親族が就職して所得要件を満たさなくなった場合など、所得控除額が減少して税額が増加する異動が判明したときは、異動申告書の提出を受け、年末調整をやり直して不足税額を徴収する必要があります。徴収不足税額がある場合のやり直しは、翌年1月末日を過ぎて判明した場合であっても必要です。
また、国外居住親族に係る扶養控除等について、送金関係書類その他の必要書類が年末調整後に提出または提示された場合にも、一定の要件の下で再計算が認められる取扱いがあります。なお、国外居住親族の年齢や区分に応じ、親族関係書類、留学ビザ等書類、送金関係書類または38万円送金書類が必要となることがあります(所得税基本通達190-7)。

新屋賢人

控除額が増加して還付が生じる異動について、給与の支払者が再調整を行わない場合には、給与所得者本人が確定申告により還付を受けることができます。一方、控除額が減少して徴収不足が生じる場合には、給与の支払者は年末調整をやり直し、不足税額を徴収する必要があるため、両者を区別して取り扱うことが重要です。

4. まとめ

所得税法第190条に基づく年末調整は、毎月の給与から天引きされた源泉徴収税額と、年間の正しい所得税額とのズレを精算するための、給与所得者にとって非常に重要な手続きです。 基本となる計算の仕組み(年間徴収税額と算出税額の比較)を法令から正確に理解した上で、パートタイマーの退職時など年の中途で年末調整が行える特例ケースや、年末調整後に事情が変わった際の再計算のルールといった通達レベルの例外的な取扱いまで網羅的に把握しておくことが、ミスのない実務対応へと繋がります。

新屋賢人

本日の解説が、皆様の正確でスムーズな税務実務の一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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