【町田市の税理士が解説】所得税法第186条:賞与にかかる源泉徴収税額の完全ガイド

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月14日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、所得税法第186条に規定されている『賞与に係る徴収税額』について確認していきたいと思います。夏のボーナスが支給されるこの時期、実務でも非常によく直面するテーマですね。

ミミレイドン

賞与の源泉所得税ですね!普段の毎月の給与の計算方法とは違う表を使うので、イレギュラーなケースが来るとたまに混乱してしまいます。そもそも、どうして給与と賞与で計算方法が異なるのでしょうか?

新屋賢人

とても良い視点です。日本の所得税は累進課税制度をとっているため、仮に賞与という一度に支給される大きな金額に対して毎月の給与と同じ税額表をそのまま当てはめてしまうと、その月だけ異常に高い税率が適用され、手取り額が極端に減ってしまうという弊害が生じます。それを防ぐため、前月の給与水準をベースにして、年間を通じた税負担が平準化されるような専用の計算方法が設けられているのです。

ミミレイドン

なるほど!高い税率がかかりすぎないように調整されているのですね。本日はその原則的な計算から、例外、さらには特例までしっかり学ばせていただきます!
なお、賞与以外の給与等にかかる源泉徴収については、昨日のブログ記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】所得税法第185条:賞与以外の給与等に係る源泉徴収税額の完全ガイド

目次

1. 所得税法第186条における賞与の源泉徴収の原則

賞与の意義と徴収の基本

所得税法上、居住者に対して国内において賞与を支払う者は、原則として、その支払の際に所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、支払月の翌月10日までに納付しなければなりません。ただし、源泉所得税の納期の特例の承認を受けている場合には、一定の給与・賞与に係る源泉所得税等を半年分まとめて納付することができます。所得税法第186条における「賞与」には、一般にボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当などと呼ばれるもののほか、賞与の性質を有する給与が含まれます。名称だけでなく、支給額、支給基準および支給期の定めなどを踏まえて判定します

賞与にかかる源泉徴収税額の計算は、所得税法第186条にそのルールが規定されています。計算の大前提として、「給与所得者の扶養控除等申告書」が提出されているか否かによって、適用する税額表の区分(甲欄または乙欄)が分かれます。

前月に通常の給与の支払いがある場合の計算(原則的な取扱い)

賞与の計算において最も一般的であり、原則となる取扱いです。賞与を支払う前月に「通常の給与等」の支払いがある場合、所得税法第186条第1項の規定により、次のように計算を行います。

  1. 基準となる金額の算出
    まず、前月中に支払った通常の給与等の金額から、控除される社会保険料等の金額を差し引いた金額を求めます。また、賞与の金額についても、賞与から控除される社会保険料等の金額を差し引いた金額を求めます。この「社会保険料等控除後の金額」が計算のベースとなります。
  2. 算出率の決定
    前月の社会保険料等控除後の通常の給与等の金額と、扶養親族等の数をもとに、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(別表第四)」を引いて、賞与に乗ずべき「率」を求めます。扶養控除等申告書が提出されている場合は「甲欄」を、提出されていない場合は「乙欄」を参照します。
  3. 源泉徴収税額の算出
    賞与の金額(社会保険料等控除後)に、先ほど求めた「率」を乗じて計算した金額が、徴収すべき所得税額となります。
新屋賢人

実務上、この原則的な計算方法が全体の9割以上を占めるはずです。ポイントは『前月の社会保険料等控除後の給与額』を基準にして税率を決めるという点です。前月の給与が確定していないと賞与の税額計算が正しく行えないため、給与計算と賞与計算のスケジューリングには常に注意を払うようにしてくださいね。

2. 前月に給与の支払いがない場合等の計算(例外的な取扱い)

前月に通常の給与等がない場合の計算

産休や育児休業、あるいは中途入社などの理由により、賞与の支給月に先立つ「前月」に通常の給与の支払いがない場合があります。前月の給与がないということは、先ほどの原則のように「前月の給与をベースにした算出率」を使うことができません。 このような場合、所得税法第186条第1項第1号ロおよび第2号ロの規定により、例外的な取扱いとして以下の手順で計算を行います。

  1. 賞与を月数で按分する
    賞与の金額(社会保険料等控除後)の6分の1に相当する金額を求めます。 なお、法令上、賞与の金額の計算の基礎となった期間が「6ヶ月を超える場合」には、この割合を12分の1として計算することが定められています。
  2. 月額表を用いて税額を算出する
    上記1で求めた金額(賞与の6分の1、または12分の1)を、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表・別表第二)」に当てはめて税額を求めます。この時、前月の給与はないため、純粋に賞与の按分額のみで月額表を引くことになります。
  3. 算出した税額を元に戻す
    上記2で求めた税額に対して、6(計算基礎期間が6ヶ月を超える場合は12)を乗じて計算した金額が、最終的に徴収すべき所得税額となります。

なお、通常の給与等の支給期が2か月ごとなど、月の整数倍の期間ごとに定められている場合には、前月中に現実の給与支払がなくても、直前に支払った、または支払うべき通常の給与等の月割額を基礎として判定します。したがって、単に前月の実際の振込額がゼロであることだけをもって、直ちに前月給与なしの計算を適用するわけではありません。

新屋賢人

この計算は、賞与の社会保険料等控除後の金額を6か月分または12か月分に按分した金額について月額表を適用し、その結果を6倍または12倍する仕組みです。実務では、休職明けの社員に対する少額の賞与支給などの場面でこの計算が必要になるため、会計ソフトや給与計算システムの設定が正しく行われているか、必ず確認するようにしてください。

3. 賞与が前月の給与の10倍を超える場合の計算(特例)

10倍超の判定基準と特例の計算方法

前月に通常の給与の支払いがある場合であっても、賞与の金額が前月の給与等と比べて極端に大きい場合には、所得税法第186条第2項に定められた特例計算を用いなければなりません

判定の基準となるのは、「賞与の金額(社会保険料等控除後)」が「前月中に支払った通常の給与等の金額(社会保険料等控除後)」の「10倍に相当する金額」を超えるかどうかです。10倍を超える場合には、前述の別表第四による率の計算ではなく、以下の特例手順に従います

  1. 賞与の社会保険料等控除後の金額を6分の1とします。賞与の計算の基礎となった期間が6か月を超える場合には、12分の1とします。
  2. その金額を前月の通常の給与等の社会保険料等控除後の金額に加算し、月額表により税額を求めます。
  3. 加算後の税額から、前月給与のみについて月額表により求めた税額を控除します。
  4. その差額を6倍し、計算基礎期間が6か月を超える場合には12倍します。
新屋賢人

この10倍超の特例は、前月の給与が極端に少なかった場合(例えば月の途中で入社した、あるいは欠勤控除が大きかった等)や、業績連動で莫大な賞与が支給された場合などに適用されます。給与計算システムが自動判定してくれることも多いですが、原理を知らないとなぜこのような税額になるのか従業員へ説明ができません。プロとして計算の仕組みを論理的に説明できるようになっておきましょう。

4. 所得税基本通達から読み解く実務上の留意点と具体例

法令の枠組みを理解したところで、実際の運用指針となる「所得税基本通達逐条解説」に基づいて、実務上迷いやすいポイントを整理していきましょう。

扶養親族等の人数の確認時期(基通186-1)

賞与に対する源泉徴収税額の計算は、原則として前月中の通常の給与の計算時に控除された扶養親族等の数をもとに行います。しかし、前月の給与計算時から賞与の支払い時までに、結婚、出産、死亡などにより扶養親族等の数に異動が生じる場合があります。 通達186-1では、このような異動が生じたことにつき、賞与を支払う時までに「給与所得者の扶養控除等異動申告書」が提出されている場合には、その「賞与を支払うべき日の現況」により控除対象となる扶養親族等の人数を確認することを明らかにしています。

賞与の計算の基礎となった期間の考え方(基通186-2)

例外計算において「計算の基礎となった期間」が6ヶ月を超えるかどうかの判定が必要になりますが、通達186-2ではこの期間の定義を示しています。 それによると、「計算の基礎となった期間」とは、その賞与の金額を定めることについて基準となった勤務期間をいいます。その期間が明らかでない場合には、当該賞与と同性質の給与等の直前の支給期から当該賞与の支給期までの期間によります。ただし、その期間の中途で就職または退職した者については、それぞれ就職時以後または退職時までの期間によります

従たる給与の扶養控除等がある場合(基通186-3)

「従たる給与についての扶養控除等申告書」が提出され、従たる給与等から控除する源泉控除対象配偶者または源泉控除対象親族がある場合には、前月に通常の給与等がないときの月額表乙欄による計算において、その控除すべき源泉控除対象配偶者および源泉控除対象親族の数に応じた乙欄の税額を使用します。実際の計算では、支給年分に対応する最新の月額表を確認する必要があります。

10倍超の判定における注意点(基通186-4)

賞与が前月の通常の給与の10倍を超えるかどうかの判定に当たって、通達186-4は以下の2つの重要なポイントを示しています。

  1. 賞与が分割して支払われる場合
    計算の基礎とされた期間を同じくする賞与の金額が、数回に分割して支払われる場合であっても、その分割して支払われる賞与の金額の「合計額」をベースにして、10倍を超えるかどうかの判定を行うこととされています。
  2. 社会保険料等が控除される場合の判定
    賞与や前月中の通常の給与から控除される社会保険料等がある場合には、当然のことながら、それらの社会保険料等の金額を控除した後の「残額」を基礎として判定を行います。
新屋賢人

賞与の源泉徴収税額の計算において、もう一つ知っておくべき特別な規定があります。それが所得税法第186条第3項の『年末調整時の不足額の徴収』です。その年最後に支払う給与(12月給与など)で年末調整を行い、かつ同じ月に賞与を支払う場合、年末調整の再計算によって『不足額』が生じることがあらかじめ見込まれるときは、特例として賞与から徴収する税額にその不足額を加算して徴収することが認められています。これにより、従業員の12月給与の手取りがマイナスになるような事態を防ぐことができます。実務的な配慮から生まれた規定と言えますね。

5. まとめ

ここまで、所得税法第186条の賞与にかかる徴収税額について、法令と通達の双方から網羅的に解説してきました。内容を簡単に整理した比較表を用意しましたので、実務の参考にしてください。

条件使用する表・計算方法
前月に通常の給与等があり、賞与が前月給与の10倍以下別表第四の算出率を、社会保険料等控除後の賞与に乗じる
前月に通常の給与等があり、賞与が前月給与の10倍超月額表を使用。賞与を6分の1または12分の1して前月給与に加算し、加算後税額と前月給与税額の差額を6倍または12倍する
前月に通常の給与等がない賞与を6分の1(計算基礎期間が6か月超なら12分の1)として月額表(甲欄または乙欄)を適用し、その税額を6倍または12倍する
給与の支給期が月の整数倍ごとに定められている前月に現実の給与支払がなくても、直前の通常給与等の月割額を用いる場合がある

賞与の源泉徴収税額計算は、原則的な「率」を乗じる計算が圧倒的に多いものの、前月の給与の有無や、賞与と給与のバランスによって計算の枠組みがガラリと変わる点に最大の注意が必要です。 さらに、基本通達に示されている通り、扶養親族の現況を確認するタイミングや、計算の基礎となる期間の捉え方など、細部にわたるルールを正確に把握しておくことが、ミスのない給与・賞与計算業務に直結します。

新屋賢人

本日の解説が、皆様の正確な税務処理と、従業員への分かりやすい説明の一助となれば幸いです。賞与計算の時期には、ぜひこの記事を振り返って確認してみてください。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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