ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年7月16日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、都市再開発事業などにおいて発生する、権利変換があった場合の所得税実務と所得計算について確認していきたいと思います。



権利変換ですね。自分の土地や建物が再開発されて、新しいビルの一部などの権利に変わるケースのことでしょうか。その場合、税金の計算はどうなるのですか。



おっしゃる通りです。ご自身の資産が新しい資産に変わるため、原則として譲渡所得として課税の対象になりますが、一定の要件を満たせば譲渡はなかったものとみなされる特例が用意されています。今日はその制度の仕組みから、清算金を受け取った場合の例外的な取扱いまで、法令と通達に基づき確認していきたいと思います。
権利変換における譲渡所得の原則と課税の繰延べ特例
都市再開発法などによる権利変換手続により、ご自身が所有していた従前の土地や建物(旧資産)を失い、代わりに新しい施設建築物の一部を取得する権利等(新しい権利)を取得した場合、所得税法上は、特例がなければ従前資産の譲渡として所得計算の対象となり得ます。
しかしながら、このような都市再開発等は公益性が高く、また権利者の意思に関わらず強制的に行われる側面があること、さらに新しい建物の完成を待たなければならないといった事情を考慮し、租税特別措置法第33条の3において「換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例」が設けられています。
権利変換計画等に基づき、租税特別措置法第33条の3各項に定める施設建築物、敷地又はこれらに関する権利等のみを取得した場合には、同条の規定により、一定の旧資産の譲渡がなかったものとみなされます。
対象となる主な事業と特例の内容を以下の表に整理しました。
| 主な事業 | 根拠法令 | 所得税上の基本的取扱い |
|---|---|---|
| 第一種市街地再開発事業 | 都市再開発法 | 権利変換により法定の施設建築物・敷地等に関する権利を取得した場合、一定の旧資産の譲渡がなかったものとみなされる |
| 第二種市街地再開発事業 | 都市再開発法 | 買取り・収用に対する対償として一定の建築施設の部分等の給付を受ける権利を取得した場合、一定の旧資産の譲渡がなかったものとみなされる |
| 防災街区整備事業 | 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律 | 一定の防災施設建築物・敷地等に関する権利を取得した場合、一定の防災旧資産の譲渡がなかったものとみなされる |
| マンション再生事業等 | マンションの再生等の円滑化に関する法律 | 一定の権利変換等について、措置法第33条の3所定の要件を満たす場合に譲渡がなかったものとみなされる |
この特例は、旧資産に係る課税を新たに取得した資産へ繰り延べる制度であるため、新資産の取得価額は、旧資産の取得費等を基礎として計算されます。ただし、旧資産が減価償却資産である場合の未償却残額、複数資産間の取得価額の配分、清算金に対応する部分、追加負担金等を考慮する必要があり、旧資産の当初取得価額が無条件にそのまま新資産の取得価額となるものではありません。
また、権利変換により取得した代替資産等の減価償却費を計算する際の取得時期については、租税特別措置法第33条の6第1項により、原則として旧資産の取得時期を引き継ぎます。したがって、新建物に適用する償却方法は、引き継いだ取得時期に基づいて判定します。一方、耐用年数は、新建物の構造及び用途等に基づいて判定します。
後日、新たに取得した資産を譲渡した場合の所有期間及び取得費は、旧資産の取得時期及び取得費等を基礎として計算します。ただし、旧資産が複数ある場合の対応関係、清算金に対応して既に課税対象となった部分、追加負担金、新資産取得後の資本的支出及び減価償却費相当額等を反映する必要があります。



ここでのポイントは、権利変換によって新しい権利だけを取得した場合は、実質的に手元に現金が入ってきているわけではないため、課税を将来に繰り延べるという配慮がなされている点です。ただし、税金が免除されるわけではなく、あくまで課税のタイミングが先送りになるだけであることにご留意ください。
権利変換により清算金を取得した場合の例外的な取扱い
先ほどは新しい権利のみを取得した場合の原則的な特例について解説しましたが、実際の権利変換においては、新しい権利のほかに、権利変換計画等に基づき旧資産と新しい権利との差額に相当する金銭(清算金)の交付を受けるケースが多々あります。
この清算金を受け取った部分については、課税の繰延べの対象とはなりません。第一種市街地再開発事業や防災街区整備事業の場合、清算金(差額に相当する金額)の交付を受けることとなった日において、旧資産のうちその清算金に対応する部分について「収用等による譲渡」があったものとみなされ、譲渡所得として課税されることになります。
具体的には、旧資産全体の価額のうち、取得した新しい権利の価額と清算金の額との合計額に占める清算金の額の割合を計算し、その割合に対応する旧資産の取得費及び譲渡費用を差し引いて、清算金部分に係る譲渡所得の金額を算出します。ただし、これはあくまで基本的な考え方であり、実際の計算にあたっては、都市再開発法等の根拠法令に基づく差額の性質、当初の補償金等、権利変換計画における資産区分、土地・建物の内訳などによって法的な取扱いが細かく異なるため、事業の施行者から提供される資料をもとに個別に確認・計算する必要があります。
この清算金等に対応する部分は、租税特別措置法第33条の3の規定により収用等による譲渡があったものとみなされるため、同法第33条の4の要件を満たす場合には、最大5,000万円の特別控除を選択できる可能性があります。ただし、代替資産取得による課税繰延べとの選択関係、最初の買取り等の申出から6か月以内という要件、同一事業が複数年にわたる場合の制限、譲渡者に関する要件、確定申告書への記載・書類添付等を確認する必要があります。また、控除限度額は一件ごと又は共有者ごとに機械的に判断するのではなく、納税者ごと・年分ごとに判定します。なお、マンション建替事業や敷地分割事業において清算金を受け取った場合は「収用等」とはみなされず通常の譲渡となるため、この5,000万円控除は適用できない点にご注意ください。



清算金等に対応する譲渡所得が生じ、確定申告義務がある場合には、その清算金等の交付を受けることとなった日の属する年分について申告します。このとき、5,000万円特別控除の特例を適用できるケースが多いため、適用漏れがないようにしっかりと要件を確認することが重要です。5,000万円特別控除を適用する場合には、原則として確定申告書にその適用を受ける旨を記載するとともに、公共事業施行者から交付を受けた収用証明書その他の所定の証明書類を添付する必要があります。必要書類は事業の種類及び受領した金銭の性質によって異なるため、施行者から交付された補償金等の内訳書、権利変換計画書、清算関係書類等も併せて保管してください。
計算イメージ
以下は、権利変換により取得した資産等と、措置法上収用等による譲渡の対価として取り扱われる清算金等を併せて取得した場合の一般的な計算イメージです。清算金の法的性質によっては異なる計算・取扱いとなるため、すべての清算金に一律に適用できる計算式ではありません。
- 清算金部分の収入金額=清算金等の額
- 清算金部分に対応する取得費・譲渡費用=(旧資産の取得費+譲渡費用)× 清算金等の額÷(清算金等の額+権利変換により取得した資産等の価額)
- 清算金部分の譲渡益=清算金等の額-清算金部分に対応する取得費・譲渡費用
具体的な計算例
前提
- 旧資産の取得費 2,000万円
- 権利変換で取得した新資産の時価 8,000万円
- 交付を受けた清算金 2,000万円
- 譲渡費用 100万円
清算金に対応する取得費・譲渡費用
(2,000万円+100万円)×2,000万円÷(8,000万円+2,000万円)=420万円
清算金部分の譲渡益
2,000万円-420万円=1,580万円



この1,580万円について、措置法第33条の4の要件を満たし、他の対象譲渡との合計でも控除限度額に余裕があれば、5,000万円特別控除により課税譲渡所得がゼロとなる可能性があります。
ただし、実際の計算では旧資産が土地・建物・借地権等に分かれている場合の取得費・時価の区分、建物の減価償却費相当額、補償金等の内訳、追加負担金等を反映する必要があります。
権利変換により新たな権利に変換することのない権利の取扱い
権利変換の対象となるのは、土地の所有権や建物の所有権だけではありません。借地権や地役権など、様々な権利が絡んできます。ここで注意しなければならないのが、都市再開発法等に規定する権利変換により「新たな権利に変換することのない権利」の扱いです。
都市再開発法に基づく通常の権利変換では、土地、建物、借地権、借家権等について新たな施設建築物又はその敷地等に関する権利が定められます。他方、地役権や工作物所有のための地上権・賃借権など、法定の権利変換により新たな権利に変換されない権利もあります。(措置法基本通達33-23)
このように権利変換により消滅した権利については、代わりに金銭による補償が行われることになります。この金銭による補償は、租税特別措置法第33条第1項第6号または第6号の2の規定に該当し、「収用等の場合の課税の特例」の適用対象として取り扱われます。つまり、この補償金についても、先ほどの清算金と同様に5,000万円特別控除などの適用を検討することができるということです。ただし、補償金に利息相当額、過怠金、営業補償その他の収益補償等が含まれる場合には、受領金の全額が譲渡所得又は5,000万円特別控除の対象になるとは限りません。施行者が作成した補償金内訳書等により、補償の性質ごとに所得区分を判定する必要があります。



この基本通達33-23は、補償金の交付の基因となる権利が、法律上新たな権利に変換されるものか、それとも消滅して金銭補償のみとなるものかを区分するために非常に重要です。工作物所有を目的とする賃借権などが補償の対象となった場合は、特例適用の可否を慎重に判断する必要があります。
権利変換を希望せず申出を撤回した場合等の取扱い
もう一つ、実務で遭遇し得るケースとして、当初は権利変換による新しい権利の取得を希望していたものの、事情が変わって権利の取得を辞退し、金銭による補償(対償)を受けることになった場合の取扱いがあります。
第二種市街地再開発事業において、建築施設の部分の譲受け希望の申出を撤回した場合又は都市再開発法の規定により撤回したものとみなされる場合には、租税特別措置法第33条の3第3項により、その撤回の日等において旧資産について収用等による譲渡があったものとみなされます。この場合、収用等の5,000万円特別控除の適用対象となり得ますが、措置法第33条の4所定の要件を別途満たす必要があります。なお、「やむを得ない事情」が必要となるかどうかは、申出撤回そのものではなく、適用する補償金・特例の根拠条文ごとに確認する必要があります。



再開発事業は長期間にわたるため、途中で権利者の生活状況や事業環境が変化し、新しい建物に入居することを断念せざるを得ないこともあります。そのような場合でも、税務上は収用等の特例を活用して税負担を軽減できる道が用意されていますので、諦めずに専門家にご相談いただくことをお勧めします。
まとめ
本日は、所得税実務における権利変換があった場合の所得計算について解説いたしました。ポイントを振り返ります。
- 権利変換により新しい権利のみを取得した場合は、旧資産の譲渡はなかったものとみなされ、課税が繰り延べられます。新資産の取得時期及び取得価額は、旧資産の取得時期及び取得費等を基礎として計算されます。ただし、清算金対応部分、追加負担金及び資産間の配分等を反映します。
- 権利変換に際して清算金を受け取った場合は、その清算金に対応する部分について譲渡があったものとみなされ、課税されます。この部分には収用等の5,000万円特別控除の特例が適用できる場合があります。
- 地役権や工作物所有のための賃借権など、新たな権利に変換されずに消滅して金銭補償を受ける権利についても、収用等の課税の特例の対象となります。
- 権利変換を途中で辞退して金銭補償に切り替えた場合でも、要件を満たせば収用等の特例の適用が可能です。



都市再開発等による権利変換は、関係する法令が複雑であり、また金額も大きくなる傾向があるため、税務上の判断を誤ると大きな損害を被る可能性があります。事業の施行者から送られてくる権利変換計画書や各種通知書の内容を正確に読み解き、適切な申告を行うことが不可欠です。もしご自身の資産が再開発の対象となった場合には、早めに税理士などの専門家へ相談し、余裕を持った準備を進めるようにしてください。





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