ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年6月28日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、所得税法における『変動所得および臨時所得の平均課税』についてです。



平均課税ですか。なんだか計算が難しそうな言葉ですね。どのような制度なのでしょうか。



所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる超過累進税率を採用しています。しかし、特定の年に所得が集中して発生した場合、通常の計算をすると税負担が過度に重くなってしまいます。それを和らげるための救済措置的な特例計算制度です。実務でも見落としがちな論点ですので、しっかりと確認しておきましょう。



なるほど!特定の年にドカンと儲かったときの税負担を平準化する仕組みなのですね。ぜひ詳しく教えてください!



承知いたしました。それでは、対象となる所得の範囲から、具体的な計算方法、さらには実務上の注意点まで、確認していきたいと思います。
平均課税制度の概要と趣旨
所得税は、1年間の所得に対して課税されるのが原則であり、その税率は所得が高くなるにつれて段階的に高くなる「超過累進税率」が採用されています。 しかし、漁獲や原稿の執筆など、年によって収入の変動が激しい所得や、数年分の対価を一括して受け取るような臨時の所得については、その収入があった年だけに高い税率が適用されてしまうと、毎年平準化して所得を得ている人と比べて税負担が不当に重くなるという不公平が生じます。
これを調整するため、所得税法第90条において設けられているのが「変動所得および臨時所得の平均課税」という制度です。この制度を適用することで、対象となる所得の5分の4相当額を他の所得と切り離し、残りの所得に適用される税率(平均税率)を用いて税額を計算し直すことができます。これにより、高い累進税率の適用を緩和することが可能となります。



適用を受けるためには、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に平均課税の適用を受ける旨を記載し、計算明細書を添付する必要があります。当初申告で適用漏れがあると、後日の救済が制限される場合もあるため、申告時に該当所得の有無を慎重に確認することが重要です。
変動所得の範囲と計算方法
まずは「変動所得」の範囲について確認しましょう。所得税法第2条第1項第23号および所得税法施行令第7条の2において、変動所得とは、年々の変動の著しい所得として以下のものが規定されています。
- 漁獲から生ずる所得
- のりの採取から生ずる所得
- はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝または真珠(真珠貝を含む)の養殖から生ずる所得
- 原稿または作曲の報酬に係る所得
- 著作権の使用料に係る所得
実務上は、これらの所得は事業所得又は雑所得として計上されることが多いですが、平均課税における変動所得の金額は、所得税基本通達90-2において、各種所得の区分にかかわらず対象所得の金額を合計するものとされています。
実務上の詳細な取扱いについては、所得税基本通達に以下のような規定があります。
・通達2-30(漁獲の意義)
法令上「漁獲」とは水産動物を捕獲することを指し、水産植物の採取や水産動物の養殖は本来の漁獲には含まれません。しかし、のりの採取や真珠等の養殖については、政令で特別に指定されているため変動所得に該当することになります。対象となる養殖と対象外の養殖がある点に注意が必要です。
・通達2-31(簡易な加工)
自己が捕獲、採取または養殖をした水産動物やのりを、そのまま販売して生ずる所得だけでなく、切断、乾燥、冷凍、塩蔵等の「簡易な加工」を施して販売して生ずる所得も、変動所得に含まれるとされています。



実務では、作家や作曲家の方からのご依頼で変動所得を扱う機会が多くあります。また、水産業を営むお客様の場合、行っている養殖の対象物が政令で指定されたもの(はまち、かき等)に該当するかどうか、また加工の度合いが簡易なものに留まっているかどうかを的確に判定する必要があります。
臨時所得の範囲と要件
次に「臨時所得」の範囲です。所得税法第2条第1項第24号および所得税法施行令第8条では、臨時所得に該当する代表的な所得として、次の4類型及びこれらに類する所得が定められています。
- プロ野球選手などが、3年以上の期間特定の者のために専属して役務を提供することを約束し、その見返りとして一時に受ける契約金等で、報酬の年額の2倍以上の金額であるもの。
- 不動産、船舶、航空機、鉱業権や特許権(技術に関する権利など)を有する者が、3年以上の期間他人にその資産を使用させることを約束し、一時に受ける権利金や頭金で、使用料の年額の2倍以上の金額であるもの(譲渡所得に該当するものを除く)。
- 一定の場所における業務の全部または一部を休止、転換、廃止することに伴い、3年以上の期間の事業所得等の補償として受ける補償金に係る所得。
- 鉱害などの災害により業務用の資産が被害を受け、その被害に伴う3年以上の期間の事業所得等の補償として受ける補償金に係る所得。
臨時所得の実務的な判定については、所得税基本通達でさらに細かな基準が示されています。
・通達2-33(契約の範囲)
3年以上の期間という要件については、最初に締結する新規契約だけでなく、既契約を更新または更改する契約も含まれます。新契約の存続期間が3年以上であれば要件を満たします。
・通達2-34(報酬や使用料の年額の意義)
一時に受ける金額が「年額の2倍以上」であるかどうかの判定に用いる年額とは、契約締結の際に見積もったいわゆる「平年額」を基準とします。
・通達2-35(使用料年額の2倍以上かどうかの判定)
この金額基準の判定は、個々の契約ごとに個別に行う必要があります。納税者を単位としたプール計算や、資産ごとのプール計算は認められません。 例えば、特許権Aについて、甲に対して頭金500万円・使用料年額100万円の契約を結び、乙に対して頭金200万円
・使用料年額150万円の契約を結んだ場合、合計額(頭金700万円、年額250万円)で判定するのではなく、甲との契約(500万円は100万円の2倍以上で該当)、乙との契約(200万円は150万円の2倍未満で非該当)と個別に判定します。



臨時所得の判定では、契約期間が3年以上であること、そして一時金が平年額の2倍以上であることの2点が重要です。特に契約ごとの個別判定が求められる点は、計算誤りを防ぐ上で絶対に外してはならないポイントです。契約書をしっかりと読み込み、事実関係を精査しましょう。
平均課税の適用要件と計算の仕組み
変動所得と臨時所得の範囲が理解できたところで、いよいよ平均課税の適用要件と計算方法について解説します。
1. 適用要件
平均課税制度を適用するためには、原則として「その年分の変動所得の金額と臨時所得の金額の合計額が、その年分の総所得金額の20%以上であること」が必要です。
ただし、例外的な取扱いとして、その年分の変動所得の金額が「前年分および前々年分の変動所得の金額の合計額の2分の1」以下である場合には、変動所得については所得が急増したとは言えないため、臨時所得の金額のみで総所得金額の20%以上あるかどうかを判定します。
2. 計算の仕組み
平均課税の計算は、「5分5乗方式」と呼ばれる仕組みに類似しています。計算手順は以下の通りです。
| 項目 | 計算方法 |
|---|---|
| 平均課税対象金額 | 臨時所得の金額 + 変動所得の金額(※注1) |
| 調整所得金額 | 課税総所得金額 − (平均課税対象金額 × 5分の4)(※注2) |
| 平均税率 | 調整所得金額に対する通常の算出税額 ÷ 調整所得金額 |
| 最終的な算出税額 | 調整所得金額に対する通常の算出税額 + (平均課税対象金額 × 5分の4)× 平均税率 |
(※注1):前年分および前々年分に変動所得がある場合は、本年分の変動所得の金額のうち「前年分および前々年分の合計額の2分の1」を超える部分の金額のみを加算します。
(※注2):調整所得金額は、原則として「課税総所得金額 − 平均課税対象金額 × 4/5」により計算します。ただし、課税総所得金額が平均課税対象金額以下である場合には、課税総所得金額の5分の1相当額が調整所得金額となります。
つまり、急増した所得(平均課税対象金額)の5分の4をいったん課税対象から除外して(調整所得金額として)税額と税率を計算し、その算出された低い税率(平均税率)を、除外しておいた5分の4の所得に掛け合わせることで、全体の税負担を軽減する仕組みです。
3. 赤字の場合の特例的な取扱い
変動所得の金額を計算する上で、所得が赤字になった場合はどうなるでしょうか。所得税基本通達90-6および90-7において、明確なルールが定められています。
・本年の変動所得が赤字の場合(通達90-6)
事業所得の中に変動所得に該当する部分とそれ以外の部分がある場合、合理的な基準で経費を配分します。その結果、本年分の変動所得が赤字となった場合は、変動所得はなかったもの(ゼロ)として扱い、臨時所得の金額のみで適用要件の判定および税額計算を行います。赤字の変動所得を臨時所得から差し引くことはしません。
・過去の変動所得が赤字の場合(通達90-7)
前年分や前々年分のいずれかの変動所得が赤字であった場合には、本年の取扱いとは異なり、ゼロとして扱うのではなく、その赤字をもう一方の年の黒字と通算(相殺)します。黒字の金額から赤字の金額を差し引くことで前年等の平均額が小さくなり、結果として本年分の平均課税対象金額が大きくなるため、納税者に有利となるように取り扱われます。



平均課税の計算過程では、控除の順番や端数処理(所得税法基本通達90-9により、1,000円未満の切り捨て等)など、細かなルールが定められています。実務においては、前年、前々年の確定申告書を必ず確認し、過去の変動所得の有無や金額を正確に把握することが、適正な税額計算の第一歩となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、所得税法における「変動所得および臨時所得の平均課税」について解説いたしました。
この制度は、漁獲や原稿料、専属契約金など、特定の一時期に集中して得られる所得に対して、累進課税による税負担の急増を緩和するための非常に重要な特例措置です。 対象となる所得の範囲は所得税法施行令によって細かく規定されており、基本通達によって契約の単位や赤字の場合の取扱いなど、実務に即した具体的な基準が設けられています。



適用要件である「総所得金額の20%以上」というハードルを満たすかどうか、そして過去2年間の変動所得の状況を正確に把握することが、本特例を正しく適用するための鍵となります。ご自身に該当する所得があるかもしれないとお考えの方は、ぜひ一度、お近くの税理士にご相談されることをお勧めいたします。










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