【町田市の税理士が解説】所得税実務における給与として課税される経済的利益について

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年6月29日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、所得税実務において判断に迷うことの多いテーマである『給与として課税される経済的利益』について確認していきたいと思います。

ミミレイドン

経済的利益ですか。お給料というと現金で振り込まれるイメージが強いですが、それ以外のものも給与になってしまうのですよね。

新屋賢人

おっしゃる通りです。現金だけでなく、現物支給や無償でのサービスの提供なども、実質的に給与と同じとみなされれば課税対象となります。しかし、すべてが一律に課税されるわけではなく、法令や通達によって非課税となる特例や例外的な取扱いが細かく定められています。

ミミレイドン

なるほど。どこまでが非課税として認められ、どこからが課税されてしまうのか、実務ではその境界線の判断が難しそうですね。

新屋賢人

ええ、税務調査でも頻繁に指摘される重要な論点です。本日は所得税法や基本通達を基に、どのような基準で判断すべきか、原則から特例、そして例外的な取扱いまで網羅的に整理してまいりましょう。

目次

給与所得における経済的利益の原則的な取扱い

収入金額の定義と金銭以外の物や権利

所得税法では、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とされています。この際、金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額とされます。 この規定に基づき、給与所得においても、金銭で支払われる基本給や賞与だけでなく、使用者から提供される様々な経済的利益が給与等の収入金額に含まれることになります。

経済的利益の5つの分類

所得税基本通達36-15では、この金銭以外の物又は権利その他経済的な利益について、実務上どのようなものが含まれるかを明確にしています。具体的には、以下の5つの形態に分類されます。

分類      経済的利益の内容利益として算入される金額の計算
1. 資産の譲渡物品その他の資産の譲渡を無償又は低い対価で受けた場合その資産のその時における価額、又はその価額と実際に支払った対価の額との差額
2. 資産の貸与土地、家屋その他の資産の貸与を無償又は低い対価で受けた場合通常支払うべき対価の額、又は通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額
3. 金銭の貸付け金銭の貸付けを無償又は通常の利率よりも低い利率で受けた場合通常支払うべき利息の額、又は通常支払うべき利息の額と実際に支払う利息の額との差額
4. 用役の提供資産の貸与や金銭の貸付け以外の用役の提供を無償又は低い対価で受けた場合通常支払うべき対価の額、又は通常支払うべき対価の額と実際に支払う対価の額との差額
5. 債務の免除等買掛金その他の債務の免除を受けた場合、又は自己の債務を他人が負担した場合その免除を受けた金額、又はその他人が負担した金額

このように、会社から物品を無償でもらったり安く買えたりするだけでなく、会社に借金を肩代わりしてもらうことも、立派な経済的利益として給与課税の対象となることが通達で明示されています。

新屋賢人

ここで重要なのは、経済的利益の額は原則として、その利益を享受する時における価額をベースに計算されるという点です。会社が負担した原価ではなく、従業員が本来ならいくら支払わなければならなかったかという視点で評価されることにご留意ください。

経済的利益の具体的な評価と収入算入時期

収入に算入する時期の原則と特例

経済的利益を収入に算入する時期は、原則としてその利益を享受した日となります。しかし、所得税基本通達36-16では、資産の貸与、金銭の貸付け・提供、用役の提供など、継続的に利益を受ける性質の経済的利益について、収入金額等に算入する時期を各月末又は1年を超えない一定期間の末日によるものとする取扱いが示されています。 具体的には、次のような取扱いとなります。

  1. 家賃相当額の利益のように、利益の享受が各月ごとに均等に行われるものは、その月の末日を収入算入の時期とします。
  2. 利益の享受が各月ごとに均等に行われるもの以外の利益のうち、1年を超えない一定期間ごとに均等に行われるものは、その期間の末日を収入算入の時期とします。 これにより、毎日のように発生する利益を日々計算するのではなく、月ごとなどにまとめて給与計算に含めることが可能になっています。

商品や製品を支給された場合の評価

使用者が役員や使用人に対して商品や製品などの物を支給した場合の経済的利益の額は、その支給時における価額により評価します。その物が使用者において通常他に販売するものである場合には、当該使用者の通常の販売価額によります。他方、通常他に販売するものでない場合には、通常売買される価額によりますが、従業員等に支給するために購入したもので、購入時から支給時まで価額に大きな変動がない場合には、その購入価額によることができます。

新屋賢人

実務上、自社製品を現物支給するケースはよくありますが、評価額を誤ると源泉徴収漏れにつながります。評価額は製造原価などではなく、あくまでその会社が通常販売している価額に基づくという点に注意して計算をしてください。

実務で頻出する課税されない特例的・例外的な経済的利益

ここからは、所得税法や基本通達において例外的に非課税とされている、あるいは課税しないこととされている経済的利益について解説いたします。

通勤手当や旅費の非課税

従業員が職務を遂行するために必要な交通費等は、所得税法第9条第1項第4号及び第5号の規定により非課税とされています。 具体的には、出張や転任に伴う旅費として通常必要であると認められる金品や、通勤に必要な交通機関の利用等のために支出する費用に充てるものとして支給される通勤手当のうち一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分が該当します。

職務上必要な制服等の貸与・支給

警察官や消防士の制服など、職務の性質上欠くことのできないものとして支給される制服その他の身回品の支給や貸与による利益は、所得税法第9条第1項第6号により非課税とされています。 さらに所得税基本通達9-8では、専ら勤務場所のみにおいて着用する事務服や作業服等についても、制服に準じて取り扱うことが明記されています。ただし、一般的なスーツなどを支給する場合は、私生活でも着用できるため、給与課税の対象となります

値引販売による経済的利益

自社の商品等を使用人等に値引販売した場合、原則は経済的利益になりますが、所得税基本通達36-23により、一定の要件を満たす場合は課税しないこととされています。 要件としては以下の通りです。

  1. 値引販売する価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常販売価額のおおむね70パーセント以上であること。
  2. 値引率が、役員や使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の基準で定められていること。
  3. 値引販売する数量が、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度の数量であること。
要件項目内容の概要
販売価額の要件取得価額以上 かつ 通常販売価額のおおむね70%以上
値引率の要件全員一律 又は 地位・勤続年数等に基づく合理的なバランスの維持
数量の要件一般の消費者が家庭で通常消費する数量の範囲内

食事の支給による経済的利益

残業や宿日直の際に支給される食事についても特例があります。所得税基本通達36-24によれば、正規の勤務時間外における勤務として残業や宿日直を行った者に支給する食事については、課税しないこととされています。 なお、食事の支給とは別に、宿直や日直の勤務をした者に対して支給される『宿直料・日直料』については、1回につき4,000円(食事が現物支給される場合は4,000円から食事の価額を控除した残額)までは課税されないという規定が別途設けられています(所得税基本通達28-1)。

なお、現金で食事代を補助する場合は、原則として全額給与課税となりますが、国税庁タックスアンサーでは、深夜勤務者に夜食の現物支給ができないために支給する一定の金銭については、1食当たり税抜650円以下であれば課税されない旨が明記されております。

新屋賢人

なお、通常勤務時の食事補助については、本人が食事の価額の50%以上を負担し、かつ、会社負担額が月額7,500円(税抜)以下である場合には、給与として課税されません。これに対し、残業又は宿日直時に支給する食事は、36-24により別途課税しない取扱いが認められています。

永年勤続者の表彰記念品等

勤続10年、20年といった節目に行われる永年勤続表彰の記念品については、所得税基本通達36-21の要件を満たせば課税されません。

  1. その利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること。
  2. 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。 なお、現金や商品券の支給は、この特例の対象外となり、給与として課税されます。

使用人等に対し技術の習得等をさせるために支給する金品

使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員や使用人にその職務に直接必要な技術や知識を習得させ、又は免許や資格を取得させるための研修会等の出席費用や大学等における聴講費用に充てるための金品を支給する場合、これらが適正な額であれば課税されません

使用者が負担するレクリエーションの費用

社内の慰安旅行などのレクリエーション行事について使用者が負担した費用は、その行事に参加したことによる経済的利益が少額不追求の観点から強いて課税しないこととされています。 旅行であれば、旅行期間が4泊5日以内であり、参加割合が50パーセント以上であること等の基準が実務上設けられています。自己都合で参加しなかった者に対して金銭を支給する選択が与えられている場合は、参加者・不参加者の両方に対する支給が給与として課税されるため注意が必要です。

新屋賢人

これらの特例は、実務において福利厚生費等として非課税処理を行うための根拠となる非常に重要な通達群です。安易に金銭や商品券で支給してしまうと原則通り給与課税されてしまうこと、また特定の役員や従業員のみを対象とすると福利厚生とは認められず課税される可能性があることには、特に気をつけて実務にあたってください。明日以降に詳しく解説します。

社宅や金銭の貸付けに関する経済的利益の評価

役員や使用人に貸与した住宅等の賃貸料

会社が役員や従業員に社宅を貸与する場合、無償であれば原則として通常の賃貸料相当額が経済的利益となります。しかし、従業員から一定額の家賃を徴収していれば、課税されない特例があります。 所得税基本通達36-47によれば、使用者が使用人に貸与した住宅等につき支払う家賃が、その住宅等につき計算した通常の賃貸料の額の50%相当額以上である場合には、住宅等の貸与による経済的利益はないものとされています。つまり、会社が計算した通常の賃貸料の額の半額以上を従業員が負担していれば、給与課税は免れるという実務上よく使われる規定です。 役員に対する貸与の場合は、計算方法や要件が従業員よりも厳しく設定されているため、別途慎重な検討が必要です。

金銭を低い利率で貸し付けた場合

従業員や役員に会社が金銭を無利息または低い利率で貸し付けた場合も、所得税基本通達36-28に基づき、通常の利率による利息と実際の利息との差額が経済的利益として課税されます。 ただし、次に掲げる貸付けの場合は例外として課税されません。

  1. 災害、疾病等により臨時に多額の生活資金を要することとなった役員又は使用人に対し、その資金に充てるために貸し付けた金銭につき、返済に要する合理的な期間内に受ける経済的利益。
  2. 貸付金につき基準利率等により計算した利息と実際の利息との差額が、1年間で5,000円以下であるもの。
  3. 使用者における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、その利率により利息を徴している場合に生じる経済的利益。
新屋賢人

社宅家賃の50パーセント基準や、貸付金利息の5,000円以下の免税基準は、日々の給与計算に直結する重要項目です。会社の経理担当者にもこのルールをしっかりとお伝えして、正しい家賃控除や利息の設定をしていただくことが私たちの役目となります。

まとめ

所得税実務における給与として課税される経済的利益について、原則的な取扱いから各種特例、例外的な取扱いまで幅広く解説いたしました。 給与所得には毎月の金銭による支払いだけでなく、会社から受ける様々な利益が含まれます。原則として利益を受けた時点の価額で評価され課税対象となりますが、職務上必要なものや福利厚生の一環として社会通念上妥当と認められるものについては、法令や通達により非課税あるいは課税しないものとして取り扱う余地が残されています。 実務において最も大切なのは、会社が良かれと思って行った現物支給や費用の負担が、意図せず従業員の税負担を増やしてしまう事態を防ぐことです。そのためには、どのような条件であれば非課税として取り扱えるのか、通達の細かな要件を正確に読み解く知識が不可欠です。

新屋賢人

本記事でご紹介した各基準をご参考に、日々の適切な税務処理と給与計算を行っていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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