【町田市の税理士が解説】所得税法第204条第1項第7号の「契約金」に関する源泉徴収

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年6月26日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、所得税法第204条第1項第7号に規定される「契約金」について確認していきたいと思います。プロスポーツ選手などが受け取る支度金や移転料などがこれに該当しますよ。

ミミレイドン

プロ野球選手の契約金などが対象になるのですね。具体的にはどのようなルールがあるのでしょうか。

新屋賢人

源泉徴収の対象となる契約金の範囲や、給与所得者が受け取る場合の特例、そして税率の計算方法など、実務上迷いやすいポイントがたくさんあります。基礎編から応用編まで確認していきたいと思います。

目次

所得税法第204条第1項第7号に規定する「契約金」の原則的な取扱い

所得税法では、居住者に対して国内で特定の報酬や料金などを支払う者は、支払いの際に所得税を源泉徴収しなければならないと定めています(所得税法第204条第1項)。その対象の一つとして、同項第7号に「役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの」が掲げられています。

この「政令で定めるもの」について、所得税法施行令第320条第6項では、「職業野球の選手その他一定の者に専属して役務の提供をする者で、当該一定の者のために役務を提供し、又はそれ以外の者のために役務を提供しないことを約することにより一時に受ける契約金」と具体的に定義されています。

実務上、この契約金には「契約金」という名称だけでなく、支度金、移転料など、名称を問わず実質的に専属契約の対価として支払われる全てのものが含まれます。さらに、その支払額の中に旅費に相当するものが含まれていたとしても、原則としてその全額が源泉徴収の対象となります。

新屋賢人

契約金という名称でなくても、専属契約の対価として一時に支払われるものであれば源泉徴収の対象となる点に注意してください。名目ではなく、実態で判断することが税務の基本です。

契約金に対する源泉徴収税額の計算方法

契約金に対して源泉徴収すべき所得税の額は、所得税法第205条第1号の規定により、支払金額に応じて2段階の税率が適用されます。

支払金額の区分適用される税率(所得税のみ)
同一人に対し1回に支払われる金額が100万円以下の部分10%(10.21%)
同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える部分20%(20.42%)

なお、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に生ずる所得については、復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要があります。したがって、実務上で実際に源泉徴収する際の合計税率は、100万円以下の部分については10.21%、100万円を超える部分については20.42%となります。

新屋賢人

税率の適用は「同一人に対し1回に支払われる金額」で判定します。なお、「同一人に対し1回に支払われる金額」とは、原則として同一人に対し1回に支払われるべき金額をいいます。ただし、所得税基本通達205-1では、税率区分の判定に当たっては、現実に1回に支払われる金額によって差し支えないとされています。そのため、分割払いの場合には、契約書上の支払時期・支払金額、実際の支払方法を確認して判定する必要があります。

給与所得者が受け取る契約金の例外と特例

プロスポーツ選手等の個人事業主だけでなく、役務の提供の対価が「給与等」とされる給与所得者が、就職に際して引き抜き料や支度金として契約金を受け取るケースもあります。このような給与所得者が受け取る契約金も、法第204条第1項第7号の源泉徴収の対象に含まれます

ここで重要な特例と例外があります。

  1. 旅費に関する例外的な取扱い
    給与所得者が受け取る就職に伴う転居のための費用で、他の契約金と明確に区分して支払われ、かつ、所得税法第9条第1項第4号に掲げる非課税とされる旅費に該当することが明らかなものについては、源泉徴収の対象となる契約金から除外されます
  2. 所得区分の特例(雑所得と臨時所得)
    給与所得者が受け取る引抜料や支度金等の契約金は、給与所得ではなく「雑所得」として取り扱われます。そのため、これらの契約金は年末調整の対象にはなりません。

さらに、この契約金は、一定の要件を満たすことで所得税法第2条第1項第24号に規定する「臨時所得」に該当する場合があります。臨時所得に該当する場合には、さらに所得税法90条の平均課税の適用要件を満たし、確定申告書に所定の記載・計算明細を添付することにより、平均課税制度を適用できる場合があります。臨時所得に該当することと、平均課税を実際に適用できることは同義ではないため、総所得金額に占める割合や申告書への記載要件も確認する必要があります。 臨時所得となる要件は以下の通りです(所得税法施行令第8条第1号)。
・3年以上の期間、特定の者に専属して役務を提供すること(または他者に提供しないこと)を約していること。
・受け取る契約金が、その契約による報酬の年額の2倍に相当する金額以上であること。

なお、この場合の「契約」には新規契約だけでなく更新契約も含まれ(所得税基本通達2-33)、「報酬の年額」は契約締結時に見積もった平年額を基準として判定します(所得税基本通達2-34)。

新屋賢人

給与所得者が受け取る契約金が年末調整の対象にならない点は、実務で非常によくある間違いです。また、金額が大きく契約期間が3年以上になる場合は、臨時所得として平均課税の対象になるかどうかの判定を必ず行うようにしてください。

源泉徴収を要しない例外的な支払者

所得税法第204条第2項第2号の規定により、源泉徴収義務が免除される例外があります。

契約金を支払う者が、所得税法第183条第1項の規定により給与等につき所得税を源泉徴収して納付すべき個人「以外」の個人である場合は、源泉徴収をする必要がありません。 具体的には、常時2人以下の家事使用人のみを雇用している個人(所得税法第184条により給与の源泉徴収義務が免除されている個人)などが、他者に契約金を支払う場合には、源泉徴収義務は生じないということです。

新屋賢人

支払者が個人である場合は、その個人が給与の源泉徴収義務者であるかどうかをまず確認することが重要です。支払者が法人である場合には、個人支払者についての免除規定は適用されません。そのため、居住者に対して国内で源泉徴収対象となる契約金を支払う場合には、原則として源泉徴収が必要です。

まとめ

本日は所得税法第204条第1項第7号の「契約金」について解説いたしました。 名目が支度金や移転料であっても実態として専属契約の対価であれば源泉徴収の対象となること、1回に支払われる金額が100万円を超える部分には20.42%の税率が適用されること、そして給与所得者が受け取る場合は雑所得となり臨時所得に該当する可能性があることなど、実務上押さえておくべき論点が多岐にわたります。

新屋賢人

特に、契約の内容(期間が3年以上か、報酬年額の2倍以上か)を正確に読み取り、正しい所得区分と課税方法を判断することが重要となります。日々の業務において、契約書等の事実関係を丁寧に見極めるよう心がけましょう。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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