ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年6月22日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、所得税法第204条第1項第2号に規定されている「弁護士等の報酬又は料金」に関する源泉徴収の実務についてです。



弁護士さんや税理士さんなどにお支払いする報酬ですね。源泉徴収が必要なのは何となく知っていますが、実費の扱いや、資格ごとの細かいルールまでは把握しきれていません。



その通りです。支払先がどのような資格を持っているかによって源泉徴収税額の計算方法が変わりますし、交通費や立替金などの名目で支払う金額を源泉徴収の対象に含めるべきかという点も実務上よく迷うポイントですので、確認していきたいと思います。



所得税法第204条第一項第一号については、昨日のこちらのブログ記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】所得税法第204条第1項第1号「原稿等の報酬や料金」にかかる源泉徴収義務のすべて
所得税法第204条第1項第2号に規定する源泉徴収の原則的な取扱い
源泉徴収の対象となる「弁護士等」の範囲
居住者に対して国内で特定の報酬や料金を支払う者は、その支払いの際に所得税を源泉徴収し、翌月10日までに国に納付する義務があります(源泉所得税の納期の特例の承認を受けている場合には、一定の報酬・料金について半年ごとの納付が認められます。)。このうち、所得税法第204条第1項第2号において、源泉徴収の対象となる業務を行う者として以下の士業や専門家が列挙されています。
弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士などです。
さらに、所得税法施行令第320条第2項により、計理士、会計士補、企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含みます。)、測量士補、建築代理士、不動産鑑定士補、火災損害鑑定人、自動車等損害鑑定人、技術士補の業務に関する報酬も対象として定められています。



なお、ここでいう弁護士・税理士等への報酬に係る源泉徴収は、原則として、支払先が「居住者である個人」の場合を前提としています。税理士法人、弁護士法人、司法書士法人などの法人に対する報酬の支払については、通常、この規定による源泉徴収の対象にはなりません。
源泉徴収税額の計算方法
弁護士等に支払う報酬から源泉徴収すべき所得税の額は、原則として、同一人に対し1回に支払われる金額に応じて計算されます。
- 原則的な計算方法
支払金額が100万円以下の場合は、その金額に10%(10.21%)の税率を乗じて計算します。支払金額が100万円を超える場合には、その超える部分の金額については20%(20.42%)の税率を適用して計算します。 - 司法書士、土地家屋調査士、海事代理士に対する特例
これらの資格に関する報酬については、計算方法が異なります。同一人に対し1回に支払われる金額から1万円を控除した残額に、10%(10.21%)の税率を乗じて計算した金額となります。
| 支払先の資格 | 控除額 | 100万円以下の税率 | 100万円超の部分の税率 |
|---|---|---|---|
| 弁護士、税理士、社会保険労務士など | なし | 10%(10.21%) | 20%(20.42%) |
| 司法書士、土地家屋調査士、海事代理士 | 1回の支払につき1万円 | 10%(10.21%) | 10%(100万円超も一律)(10.21%) |
(注:かっこ書きは復興特別所得税を含めた税率となります。実務上併せて徴収する必要があります。)



司法書士や土地家屋調査士の先生方に報酬をお支払いする際、1万円の控除を忘れてしまうミスが実務では散見されます。この1万円の控除は同一人に対し1回に支払われる金額から控除するものですから、複数件の業務をまとめて支払うような場合であっても、支払いが1回であれば控除額は1万円のみとなる点にご留意ください。
なお、請求書等において報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、報酬・料金本体部分のみを源泉徴収の対象として差し支えありません。区分されていない場合には、原則として税込金額を基礎として源泉徴収税額を計算します。
源泉徴収義務者とならない例外的な取扱い
支払者が「個人」である場合の特例
報酬の支払者が法人であれば、原則として源泉徴収義務がありますが、支払者が「個人」である場合には、例外的な取扱いが設けられています。
所得税法第204条第2項第2号では、給与等の支払者でない個人が支払う弁護士等の報酬については、源泉徴収の対象から除外されると規定されています。つまり、事業を営んでおらず従業員もいない一般の個人が、私的な法律相談などで弁護士に報酬を支払う場合には、源泉徴収を行う必要はありません。
通達に基づく実務上の判定
この例外に関連して、所得税基本通達204-5では、源泉徴収義務者の範囲等についての実務上の指針を示しています。給与等の支払を行っている個人は原則として源泉徴収義務者となりますが、支払額が少額であることにより実際に源泉徴収して納付すべき税額がない者であっても、実質的に給与の支払事務を取り扱うことができると考えられる場合には、源泉徴収義務が免除される個人には該当しないことが明らかにされています。ただし、常時2人以下の家事使用人のみに対し給与の支払をしている個人については、そもそも給与等に係る源泉徴収義務がないため、弁護士等への報酬についても源泉徴収は不要となります。



個人事業主の方が税理士などに報酬を支払う場合、ご自身が従業員を雇って給与を支払っているかどうかが源泉徴収義務の分かれ目となります。ご自身の事業形態を確認し、源泉徴収漏れがないように注意していただきたいと思います。
報酬や料金に含まれるもの・含まれないものの具体例
名目にかかわらない実質的な判定
所得税基本通達204-2によれば、弁護士等に支払われる金銭等が報酬や料金に該当するかどうかは、その名目にかかわらず実質で判定されます。たとえ謝礼、研究費、取材費、車代、記念品代、酒こう料といった名目で支払うものであっても、実質的に業務の対価としての性質を有するものであれば、源泉徴収の対象となります。
金銭以外の経済的利益
所得税基本通達204-3では、金銭以外の物や権利その他の経済的利益として支払われるものについても、原則として源泉徴収の対象になるとしています。
支払者が直接交通機関等に支払う旅費等
弁護士等に業務を依頼した際、交通費や宿泊費を負担することがあります。これらが報酬の性質を有する場合には、原則として源泉徴収の対象となります。 しかし、所得税基本通達204-4の例外的な取扱いとして、報酬の支払者が、航空会社、ホテル、旅館などの交通機関や宿泊施設に対して直接旅費や宿泊費等を支払い、かつ、その金額がその費用として通常必要であると認められる範囲内のものであるときは、その旅費等の金額については、源泉徴収をしなくて差し支えないとされています。
登録免許税等の立替金等
司法書士や土地家屋調査士などに業務を委嘱する際、登録免許税や手数料を支払うための資金を預けることがあります。所得税基本通達204-11によれば、これらの国や地方公共団体に対して本来納付すべきものとされている登録免許税や手数料に充てるための金銭で、その金額が客観的に明らかであるものについては、源泉徴収の対象としなくてよいとされています。
| 支払の性質 | 源泉徴収の要否 | 理由・条件 |
|---|---|---|
| 車代、謝礼などの金銭 | 要 | 名目にかかわらず実質的な業務の対価であるため。 |
| 弁護士等へ渡す交通費や宿泊費 | 要 | 業務の対価の一部を構成すると考えられるため。 |
| 支払者がホテル等に直接支払う宿泊費 | 不要(例外) | 直接支払われ、通常必要な範囲内の金額であるため。 |
| 登録免許税などの立替金 | 不要 | 依頼者が本来負担すべき税金等であり、金額が客観的に明らかなため。 |



交通費などを先生に現金でお渡しする場合は源泉徴収の対象となりますが、依頼者側でチケットやホテルを手配し、直接支払いを行う場合には源泉徴収が不要になります。経理処理の手間や源泉徴収税額の計算を簡略化するためにも、交通機関への直接支払いを活用するのは一つの有効な手段です。
資格ごとの特別な留意事項
測量士等の資格のない測量業者等に支払う報酬
所得税基本通達204-12では、測量士、測量士補、不動産鑑定士、不動産鑑定士補、建築士、建築代理士の資格を有しない者であっても、これらの資格を有する使用人を使用してこれらの業務を行い、その業務に関する報酬・料金を受ける場合には、源泉徴収の対象に含まれるとされています。
建築士の設計と施工を一括で支払う場合
建築士の資格を持つ者に設計と施工を併せて請け負わせ、対価を一括して支払う場合があります。所得税基本通達204-14によれば、このような場合には、設計の報酬部分と建築の施工の対価部分を区分し、設計の報酬部分についてのみ源泉徴収を行うべきとされています。ただし、設計の報酬部分が建築の対価部分に比べて極めて少額であると認められるときは、全体について源泉徴収をしなくても差し支えないという例外も設けられています。
企業診断員の範囲
所得税基本通達204-15によれば、法令で規定する企業診断員には、中小企業支援法に基づく中小企業診断士として登録された者だけでなく、企業の求めに応じて、経営の診断や改善のための指導を行う者(経営士、経営コンサルタント、労務管理士などと称する者)も含まれるとされています。名称に関わらず、実質的に経営診断や指導の業務を行う個人に対する支払いは源泉徴収の対象となります。



ただし、ここで問題となるのは、原則として支払先が居住者である個人の場合です。コンサルティング会社など法人に対する支払については、通常、この規定による源泉徴収の対象とはなりません。
火災損害鑑定人・自動車等損害鑑定人
所得税基本通達204-16では、火災損害鑑定人や自動車等損害鑑定人の範囲について解説しています。社団法人日本損害保険協会に登録されている鑑定人だけでなく、同協会に登録されているアジャスターも含まれます。また、同通達204-17により、これらの業務に関する報酬について、損害保険会社等(損害保険に類する共済の事業を行う法人を含みます。)が支払うものが主たるものであることから、それ以外の者が支払うものについては源泉徴収をしなくて差し支えないという特例があります。



経営コンサルタントといった名称であっても、実質的に企業診断員としての業務を行っていれば源泉徴収の対象となります。支払先の肩書きや契約書の名称だけで判断せず、実際にどのような役務の提供を受けているかを確認することが、源泉徴収の要否を判断する上で極めて重要です。
まとめ
今回は、所得税法第204条第1項第2号に規定される弁護士等の報酬や料金に関する源泉徴収の仕組みについて解説いたしました。 弁護士、税理士、司法書士といった専門家に対する報酬は、その資格によって税額計算における控除の有無が異なるほか、支払者が源泉徴収義務のある個人か否かによっても取扱いが変わります。さらに、旅費の直接支払いや登録免許税の立替といった実務で頻出する項目についても、基本通達に基づく明確なルールが存在します。 また、コンサルタントのように名称が異なっても実態で判定されるケースや、設計と施工が一括となっているケースなど、個別の契約ごとの事情を的確に把握することが求められます。



これらの原則と例外を正確に理解し、正しい源泉徴収事務を行えるように知識を整理しておきましょう。ご不明な点がございましたら、いつでも当事務所までご相談ください。










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