
ボス、おはようございます!
2026年6月23日のテーマはなんでしょうか?



今朝は「所得税法第204条第1項第3号関係の診療報酬に関する源泉徴収義務」について確認していきたいと思います。



診療報酬の源泉徴収ですか。病院やクリニックの税務に関わる重要なテーマですね。



おっしゃる通りです。医療機関に支払われる診療報酬のうち、どのようなものが源泉徴収の対象になるのか、そしてどのように税額を計算するのか、特例や実務上迷いやすいポイントを含めて詳しく確認していきますよ。



第1号及び第2号については、それぞれ下記のブログ記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】所得税法第204条第1項第1号「原稿等の報酬や料金」にかかる源泉徴収義務のすべて
【町田市の税理士が解説】所得税法第204条第1項第2号に基づく弁護士等への報酬・料金に係る源泉徴収の実務
■ 所得税法第204条第1項第3号に基づく診療報酬の源泉徴収の原則
所得税法では、一定の報酬や料金を支払う際に、支払者が所得税を差し引いて国に納付する源泉徴収制度が設けられています。その中で、所得税法第204条第1項第3号は、診療報酬に関する源泉徴収義務について定めています。
具体的には、社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬が源泉徴収の対象とされています。これには、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第36条の9第2項の規定により、都道府県知事から流行初期医療確保措置に係る事務を委託された支払基金から支払われる流行初期医療の確保に要する費用も含まれます。
つまり、社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金といいます)が個人開業医など所得税法上の居住者に対して診療報酬を支払う際には、支払基金に源泉徴収義務が生じ、支払いの際に所得税を徴収し、翌月10日までに国に納付しなければならないという原則になっています。



一方、医療法人など法人が受け取る診療報酬については、所得税法204条1項3号の「居住者に対する報酬・料金等」としての源泉徴収の対象にはなりません。
■ 通達に基づく具体的な取扱いと源泉徴収の対象範囲
実務において最も注意すべきなのは、医療機関が受け取るすべての診療報酬が源泉徴収の対象になるわけではないという点です。この点について、所得税基本通達204-19(診療報酬の意義)において詳細な取扱いが示されています。
基本通達によれば、源泉徴収の対象となるのは「社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払基金が支払う診療報酬」に限定されます。したがって、支払基金が支払う診療報酬である限り、それが本来の業務に基づくものであるか、委託を受けて支払うものであるかにかかわらず、また、一般に社会保険と称されないものであっても、源泉徴収の対象となります。
一方で、いわゆる社会保険制度に基づく診療報酬であっても、健康保険組合、国民健康保険を行う市町村、国民健康保険組合などが「直接医療機関に支払う診療報酬」は、支払基金を通さないため、源泉徴収の対象にはなりません。このように、支払いの経路(支払基金を通すかどうか)によって源泉徴収の要否が明確に分かれる仕組みとなっています。
したがって、支払元が支払基金なのか、国保連合会・健康保険組合・市町村・国保組合等なのかを、入金通知書や支払通知書で確認することが重要です。



実務上、医療機関に入金される社会保険診療報酬のすべてから一律に源泉徴収がされていると勘違いされるケースがあります。直接請求・直接支払いの場合は源泉徴収されていませんので、確定申告の際に源泉徴収税額を誤って過大に計上しないよう、支払元をしっかりと確認することが大切ですよ。
■ 源泉徴収税額の計算方法と特例
次に、支払基金が診療報酬を支払う際に、どのように源泉徴収税額を計算するのかを見ていきましょう。
所得税法第205条第2号及び所得税法施行令第322条の規定により、診療報酬に係る源泉徴収税額は、同一人に対しその月分として支払われる金額から20万円を控除した残額に、100分の10(10パーセント)の税率を乗じて計算することとされています。



所得税法上の税率は10%とされていますが、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間は、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算されるため、実務上の源泉徴収税率は10.21%となります。
計算式にすると以下のようになります。
(その月分として支払われる診療報酬の金額 − 20万円) × 10.21% = 源泉徴収すべき所得税額及び復興特別所得税額
■ 「その月分として支払われる金額」の意義と例外的な取扱い
ここで実務上の論点となるのが、計算のベースとなる「その月分として支払われる金額」とは具体的に何を指すのかという点です。所得税基本通達205-3では、この意義について規定しています。
通達によれば、「同一人に対しその月分として支払われる金額」とは、診療機関からその月分として支払基金に提出された診療報酬請求書に対応する診療報酬をいいます。
例外的な取扱いとして、その月より前に支払われた診療報酬の金額に誤りがあり、後になってその月分の診療報酬請求書に対する診療報酬の額で調整(過不足の精算)が行われた場合には、その「調整後の金額」をベースにして20万円を控除し、源泉徴収税額を計算することになります。これにより、実態に即した正確な源泉徴収が担保されています。
さらに、所得税法第204条第2項第1号の規定により、これらの診療報酬に該当する支払であっても、それが給与所得や退職所得に該当する性質のものである場合には、この第204条の規定(報酬・料金等の源泉徴収)ではなく、給与所得等に係る源泉徴収の規定が適用されることになりますので、支払いの性質にも注意が必要です(もっとも、通常の支払基金から個人開業医に支払われる診療報酬は、医業に係る事業収入として扱われるのが一般的であり、給与所得・退職所得に該当するかどうかが問題となる場面は限定的です。)。



診療機関ごとの請求明細と入金明細を照合する際、過去の請求分の調整が含まれていると、単月の請求額と実際の源泉徴収額の計算が一致しないように見えることがあります。これは通達に基づく調整が行われているためですので、入金明細の調整項目を丁寧に読み解くことが実務上のカギとなります。
■ 診療報酬の源泉徴収に関する要件整理
ここまで解説してきた診療報酬に関する源泉徴収の要点を表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる支払 | 社会保険診療報酬支払基金の規定により支払基金から支払われる診療報酬 |
| 対象外となる支払 | 健康保険組合、市町村、国民健康保険組合などが直接支払う診療報酬 |
| 源泉徴収義務者 | 社会保険診療報酬支払基金 |
| 控除額 | 同一人に対しその月分として支払われる金額につき20万円 |
| 源泉徴収税率 | 10%(※復興特別所得税を含めて実務上は10.21%) |
| 計算のベース | 提出されたその月分の診療報酬請求書に対応する金額(過去の誤りによる調整がある場合は調整後の金額) |
| 例外事項 | 支払いが給与所得や退職所得に該当する場合は適用除外 |
■ まとめ
本日は、所得税法第204条第1項第3号に規定される診療報酬に関する源泉徴収義務について解説しました。
原則として、社会保険診療報酬支払基金から支払われる診療報酬が源泉徴収の対象となり、月額20万円を控除した残額に対して10%の税率で所得税が源泉徴収されます。通達により、健康保険組合などから直接支払われるものは対象外となること、また過去の誤りに伴う調整がある場合は調整後の金額を基準として税額計算することが定められています。
医療機関の税務においては、支払基金からの入金明細と源泉徴収税額の対応関係を正確に把握することが、適正な確定申告を行うための第一歩となります。制度の仕組みと通達の趣旨をしっかりと理解し、日々の経理処理や税務申告に役立ててください。



診療報酬の源泉徴収は、制度自体はシンプルに見えますが、支払経路の違いや過年度の調整が絡むことで実務処理が煩雑になりがちです。疑問に思った時は、必ず支払基金からの通知書や通達の原則に立ち返って一つ一つ確認する癖をつけてくださいね。










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