【町田市の税理士が解説】法人課税信託に係る所得の金額の計算を徹底解説

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年6月19日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、実務において重要な論点である「法人課税信託に係る所得の金額の計算」について解説いたします。

ミミレイドン

法人課税信託ですか。通常の信託は受益者に課税されると聞いたことがありますが、信託自体に法人税が課されるものがあるのですね。

新屋賢人

おっしゃる通りです。信託は原則として受益者等に課税されますが、一定の要件に該当する信託は、受託者がその信託財産について一つの法人とみなされて法人税を納める義務を負います。これが法人課税信託です。

ミミレイドン

なるほど。その法人課税信託の所得はどのように計算されるのでしょうか。

新屋賢人

法人課税信託に関する法令上の規定は非常に緻密に作られています。事業の取り扱いや、信託が法人課税信託に該当することとなった場合の未分配利益の処理など、順を追って詳しく見ていきましょう。

目次

法人課税信託とは(課税の原則的な取扱い)

法人課税信託の定義と課税の原則

法人課税信託とは、法人税法第2条第29号の2に定める信託をいい、代表的には、受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託、受益者等が存しない信託、法人が委託者となる一定の信託などが含まれます
なお、法人課税信託に該当するかどうかは、信託の名称や形式だけでなく、法人税法第2条第29号の2各号の要件に照らして判定する必要があります。

原則として、信託の受益者は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして法人税法の規定が適用されます。もっとも、集団投資信託、退職年金等信託、特定公益信託等又は法人課税信託については、法人税法第12条の受益者等課税の原則から除かれます

このうち法人課税信託については、受託者が各法人課税信託の信託資産等と固有資産等とをそれぞれ別の者とみなして法人税法を適用する仕組みが採られています。

具体的には、法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の「信託資産等」(信託財産に属する資産及び負債並びに収益及び費用)と、それ以外の「固有資産等」とをそれぞれ別の者とみなして、法人税法の規定が適用されます。つまり、受託者は自身の固有の財産とは別に、法人課税信託ごとに一つの法人が存在しているかのように計算を行わなければなりません。また、法人課税信託の受託者である法人は「受託法人」とみなされ、会社でないものであっても会社とみなして規定が適用されることになります

法人課税信託の種類と要件

信託の種類   要件の概要
受益証券発行信託受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託
受益者が存しない信託受益者が存しない信託(一定のものを除く)
法人が委託者となる特定の事業信託法人が委託者となる信託で、事業の全部又は重要な一部を信託し、かつ、その信託の効力が生じた時において株主等が取得する受益権の割合が50パーセントを超えるもの
新屋賢人

法人課税信託の適用に当たっては、その信託された営業所等が国内にある場合には内国法人とされ、国内にない場合には外国法人とされる点にも注意が必要です。信託ごとに受託法人という架空の法人が設立されたものとして取り扱うのが実務の基本となります。

法人課税信託に係る所得の金額の計算の特例

法人課税信託に係る所得の金額の計算については、法人税法第64条の3において詳細な特例が定められています。

特定受益証券発行信託が法人課税信託に該当することとなった場合の処理

特定受益証券発行信託が法人課税信託に該当することとなった場合には、その該当することとなった時の直前の未分配利益の額に相当する金額として政令で定める金額は、当該法人課税信託に係る受託法人のその該当することとなった日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています

この政令で定める金額とは、特定受益証券発行信託が法人課税信託に該当することとなった日の属する事業年度開始の日の前日における当該特定受益証券発行信託の貸借対照表に記載された財務省令で定める金額とされています。なお、当該金額が零に満たない場合には、零とされます。 また、該当することとなった時の直前の未分配利益の額として政令で定める金額が零に満たないときは、その満たない部分の金額に相当する金額は、当該受託法人のその該当することとなった日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。

受益者が存することとなった場合等の資産の引継ぎ

受益者が存しない信託(法人課税信託に該当するもの)に、新たに受益者等が存することとなったことにより、当該信託が法人課税信託に該当しないこととなった場合(受益証券発行信託などに該当する場合を除きます)には、当該法人課税信託に係る受託法人は、当該受益者に対しその信託財産に属する資産及び負債のその該当しないこととなった時の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、当該受託法人の各事業年度の所得の金額を計算します

そして、この場合に当該受益者が内国法人であるときは、その内国法人は、当該資産及び負債の直前の帳簿価額による引継ぎを受けたものとして、各事業年度の所得の金額を計算することになります。時価評価によるみなし譲渡損益を計上するのではなく、帳簿価額で引き継ぐという点が非常に重要です。

受託者の変更があった場合の処理

法人課税信託に係る受託法人が、当該法人課税信託の受託者の変更により当該法人課税信託に係る資産及び負債の移転をしたときは、変更後の受託者に当該移転をした資産及び負債の当該変更の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、当該受託法人の各事業年度の所得の金額を計算します

法人税法施行令によれば、この資産及び負債の移転があった場合には、適格合併による資産又は負債の引継ぎの例により、資本金等の額や利益積立金額の引継ぎが行われたものとされます。

新屋賢人

法人税法第64条の3では、受益者等が存しない信託に受益者等が存することとなった場合や、法人課税信託の受託者が変更された場合について、一定の要件の下で帳簿価額による引継ぎをしたものとして所得金額を計算することとされています。
ただし、法人課税信託に関するすべての資産移転について一律に帳簿価額引継ぎとなるわけではないため、信託の終了、併合、分割、受益権の移転等がある場合には、個別の規定を確認する必要があります。

基本通達に基づく実務上の具体例と解釈

ここからは、法人税基本通達に基づき、実務上判断に迷いやすいケースについて解説します。

受託者が二以上ある場合の納税義務者の判定

一つの法人課税信託の受託者が二以上ある場合には、各受託者の当該法人課税信託に係る信託資産等は、一の者の信託資産等とみなして法人税法の規定が適用されます。この際、各受託者は、当該法人課税信託の信託事務を「主宰」する受託者を納税義務者として当該法人課税信託に係る法人税を納めることとされています。

ここでいう「主宰」とは、一般に中心となって全体を取りまとめるという意味であるとされています。したがって、受託者のうち中心となって信託事務の全体を取りまとめる者が納税義務者となります。その判定に当たっては、信託契約に基づき、信託財産の受入れ事務、信託財産の管理又は処分に関する事務、収益計算の報告事務等の処理の実態を総合的に勘案して判断することになります。

法人が委託者となる事業信託における特別決議の要否

法人が事業の全部又は重要な一部を信託し、株主等が取得する受益権が50パーセントを超えることなどが見込まれる場合は、法人課税信託に該当します。この要件における「事業の全部又は重要な一部」の譲渡等については、会社法の規定により原則として株主総会の特別決議を要するものとされています。

この点について、法令の規定上は株主総会の決議を要するものとされていることから、信託の形式上は特別決議を必要とするにもかかわらず、実際にはこれを行っていない事業信託が存在する場合に、株主総会の決議を行っていないからといって直ちに法人課税信託に該当しないのではないかとの疑義が生じるかもしれないと指摘されています。この要件における「株主総会の決議を要するもの」とは、実際に株主総会決議が行われたかどうかではなく、その行為が、法人の事業の全部又は重要な一部の譲渡を行う場合に株主総会の決議又はこれに準ずる承認を要する性質のものかどうかにより判定されます。

新屋賢人

複数の受託者がいるケースでは、誰が「主宰受託者」に該当するかは契約書面の文言だけでなく、管理や収益計算などの実態を総合勘案して判断されます。事前の契約段階で役割分担を明確にし、誰が主宰受託者として申告納税を行うのかをしっかりと取り決めておくことが、将来の税務リスクを防ぐ上で極めて重要です。

まとめ

本日は、法人課税信託に係る所得の金額の計算について詳細に解説いたしました。

法人課税信託は、通常の信託とは異なり、受託者が自己の固有資産とは切り離して、その信託ごとに一つの法人が存在するものとみなして所得を計算し、申告を行うという特殊な仕組みを持っています。 特定受益証券発行信託が法人課税信託に該当することとなった場合の未分配利益の益金又は損金算入の処理、受益者が存することとなった場合や受託者が変更された場合の帳簿価額による資産及び負債の引継ぎのルールなど、法令上詳細な規定が設けられています。

また、複数の受託者がいる場合の主宰受託者の判定や、事業の全部又は重要な一部を信託する場合の会社法上の決議要件との関係など、基本通達の解釈に則った実務上の慎重な対応も求められます。

新屋賢人

法人課税信託の税務は非常に専門的で複雑な分野ですが、原則的な取り扱いと特例やみなし規定を正確に読み解き、実態に即した処理を行うことが、正しい税務申告への第一歩となります。実務で法人課税信託を取り扱う際は、ぜひこの記事を参考に要件や規定を再確認してみてください。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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