【町田市の税理士が解説】完全支配関係がある法人間の寄附金と受贈益の取り扱いと実務上の注意点

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年6月17日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は「完全支配関係がある法人間の寄附金と受贈益の取り扱い」についてです。グループ法人税制の中でも、実務で頻繁に遭遇しかつ間違いやすい重要な論点ですよ。

ミミレイドン

完全支配関係ですか。つまり、100%子会社と親会社の間などで、お金や資産のやり取りをした場合の話ですね?

新屋賢人

その通りです。法人が寄附をした場合と、寄附を受けた場合ではそれぞれ原則となる税務上のルールがありますが、100%グループ内の法人間では特別な取り扱いが用意されているのです。

ミミレイドン

なるほど!親会社から子会社への寄附なら、グループ全体で見ればお金が移動しただけだから、税金の計算も少し違ってくるんでしょうか。

新屋賢人

非常に良い視点ですね。まさにその「グループ全体を一つの組織として捉える」という考え方が背景にありますので、詳しく確認していきたいと思います。

寄附金と受贈益の原則的な取扱い

目次

寄附金(支出側)の原則

まずは、法人が寄附金を支出した場合の原則的な取扱いから確認しましょう。法人が各事業年度において支出した寄附金の額は、その全額が無条件に損金(経費)として認められるわけではありません。 法人税法第37条第1項の規定により、法人が支出した寄附金の合計額のうち、その法人の資本金の額や所得の金額を基礎として計算された「損金算入限度額」を超える部分の金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入されないこととされています。つまり、一定の限度額までは損金になりますが、それを超えた部分は課税の対象となってしまいます。

受贈益(受入側)の原則

一方で、寄附金を受け取った側、つまり受贈益の原則的な取扱いはどのようになっているでしょうか。法人が金銭などの資産を無償で受け取った場合、あるいは通常よりも著しく低い対価で資産を譲り受けた場合などは、その経済的利益は「受贈益」として扱われます。 法人税法の規定により、無償による資産の譲渡に係る収益の額などは、原則としてその法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金(収益)の額に算入されます。したがって、寄附を受けた法人はその受け取った利益に対して法人税が課されることになります。

新屋賢人

寄附金は、名目が「寄附金」でなくても、実質的に経済的利益の無償の供与等であれば寄附金として扱われます。交際費や広告宣伝費との区分も実務上よく問題になるので注意して判定してくださいね。

完全支配関係がある法人間の特例

制度の概要と目的

原則的なルールをそのまま適用すると、グループ内の法人間で寄附を行った場合、支出した側で損金不算入(課税)となり、受け取った側で益金算入(課税)となるため、グループ全体で見ると二重に課税されてしまう恐れがあります。これを解消し、100%グループ内の内部取引を円滑にするために設けられているのがグループ法人税制による特例です。

新屋賢人

なお、グループ内支援であっても、必ず寄附金に該当するとは限りません。例えば、子会社等の整理や再建のための債権放棄、損失負担、無利息貸付け等について、合理的な再建計画に基づくなど相当な理由がある場合には、法人税基本通達9-4-1または9-4-2により、そもそも寄附金に該当しないと判断される場合があります。

寄附金(支出側)の全額損金不算入

法人税法第37条第2項の規定により、内国法人が、当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は、その全額が損金の額に算入されません。 原則のルールでは限度額までは損金に算入できましたが、完全支配関係がある場合は1円も損金に算入できないことになります。これだけを聞くと不利に感じるかもしれませんが、受入側の取り扱いとセットで考える必要があります。

受贈益(受入側)の全額益金不算入

法人税法第25条の2第1項の規定により、内国法人が完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額は、その全額を益金の額に算入しないこととされています。 つまり、支出側で全額が損金不算入となる代わりに、受入側では全額が益金不算入となるため、グループ全体で見れば課税関係が生じないという仕組みが構築されています。

新屋賢人

もっとも、完全支配関係法人間の寄附については、株主法人側で株式帳簿価額や利益積立金額の調整、いわゆる寄附修正が必要となる場合があるため、申告実務では別表調整まで確認する必要があります。 具体的には、寄附をした法人の株式を保有する法人では株式帳簿価額を減額し、寄附を受けた法人の株式を保有する法人では株式帳簿価額を増額するなど、利益積立金額を含めた税務調整が必要となる場合があります。

原則と特例の比較

ここまでの内容を表に整理してみましょう。

取引の立場原則的な取扱い完全支配関係がある場合の特例
寄附金を支出した法人損金算入限度額を超える部分が損金不算入全額が損金不算入
受贈益を受けた法人全額が益金算入全額が益金不算入
新屋賢人

この特例における完全支配関係とは、法人による完全支配関係に限られています。具体的には、法人税法上の「完全支配関係」には、個人を頂点とする関係も含まれ得ますが、寄附金の全額損金不算入および受贈益の全額益金不算入の特例については、対象が「法人による完全支配関係」に限定されています。
また、特例は要件を満たせば強制的に適用される点に注意が必要です。グループ内の資金移動を行う際には、貸付金とするのか寄附金とするのか、事前にしっかりと検討することが重要ですよ。

例外的な取扱いと適用要件の注意点

個人のみによる完全支配関係の場合

この特例を適用する上で、非常に間違いやすいポイントがあります。それは、「完全支配関係」の定義です。 法人税法第37条第2項及び第25条の2第1項では、特例の対象となる完全支配関係を「法人による完全支配関係に限る」と明確に定めています。 したがって、内国法人が寄附金を支出した他の内国法人との間に完全支配関係がある場合であっても、個人による完全支配関係のみである場合には、この寄附金の全額損金不算入および受贈益の全額益金不算入の特例の対象からは除外されます

法人税基本通達9-4-2の5では、この理由について詳しく解説されています。例えば、個人Xが法人Aの株式を100%保有し、同じく個人X(またはその子Y)が法人Bの株式を100%保有しているとします。この場合、法人Aと法人Bは個人を介して完全支配関係にあります。もしこの法人Aから法人Bへの寄附について特例を認めてしまうと、実質的には親である個人Xから子である個人Yが株主となっている会社への経済的価値の移転が、法人税も贈与税もかからずに無税で行われてしまうおそれがあります。このような相続税や贈与税の回避に利用されるのを防ぐため、個人のみが介在する完全支配関係は制度の対象から意図的に除外されているのです。

間に法人が介在する場合

では、個人が株主であっても、間に法人が介在している場合はどうなるでしょうか。 同じく法人税基本通達9-4-2の5の具体例を見てみましょう。個人Xと子Yが法人Cの株式を100%保有しており、その法人Cが法人Dと法人Eの株式をそれぞれ100%保有しているケースです。 この場合、寄附金を支出した内国法人Dと寄附金を受けた他の内国法人Eとの間には、法人Cによる完全支配関係が存在します。このように、頂点に個人がいたとしても、間に法人が介在しており法人による完全支配関係が成立している場合には、個人が株式を保有する法人Cにおいて資産の変動がなく租税回避のおそれがないことから、特例の対象として寄附金の全額損金不算入および受贈益の全額益金不算入が適用されます

受贈益が課税されない法人の場合

もう一つ実務上重要な例外があります。それは、寄附を受けた法人が公益法人等である場合などの取り扱いです。 法人税基本通達9-4-2の6において、受贈益の額に対応する寄附金の解釈が示されています。特例の要件として、支出した寄附金の額は、受入側の法人において「益金の額に算入される受贈益の額に対応するものに限る」と規定されています。 例えば、受入側の法人が公益法人等であり、その受贈益が収益事業以外の事業に属するものとして区分経理される場合には、その受贈益は法人税の課税所得計算上、益金の額に算入されません
このような場合、その受贈益に対応する寄附金は、法人税法37条2項にいう「受贈益の額に対応するもの」に該当せず、完全支配関係法人間の寄附金の全額損金不算入の特例は適用されません

新屋賢人

株主構成をしっかりと確認することが実務上の最大のポイントです。頂点にいるのが法人なのか個人のみなのかで、全く異なる課税関係が生じます。法人の申告書を作成する前に、必ず最新の株主名簿や資本関係図を入手して確認するようにしてくださいね。

まとめ

本日は「完全支配関係がある法人間の寄附金と受贈益の取り扱い」について解説しました。 原則として、法人の寄附金は一定の限度額までが損金算入され、受贈益は全額が益金算入されます。しかし、100%の完全支配関係(法人による完全支配関係に限る)がある法人間ではグループ法人税制が適用され、寄附金は全額損金不算入、受贈益は全額益金不算入となります。これにより、グループ内の資金移動に伴う二重課税が適切に排除されています。

新屋賢人

ただし、個人による完全支配関係のみである兄弟会社間の寄附は、租税回避防止の観点からこの特例の対象外となる点や、受入側が公益法人等で受贈益に実質的に課税されない場合は特例の適用がない点など、実務上慎重に判断すべき例外的な取り扱いが存在します。 グループ内の資本関係や相手方法人の属性を正確に把握し、法令や通達に基づいた正しい税務処理を行うことが何よりも重要です。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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