【町田市の税理士が解説】消費税の納税義務の判定:新規設立法人と特定新規設立法人の完全ガイド

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年6月16日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は「消費税の納税義務の判定」について、特に新たに会社を設立したばかりの「新規設立法人」と「特定新規設立法人」のケースを確認していきましょう。

ミミレイドン

新しく設立した会社は、最初の2年間は消費税がかからないと聞いたことがあるんですけど。

新屋賢人

原則はその通りなのですが、資本金の規模や、親会社などのグループの売上高によっては、設立1期目から納税義務が発生する特例があります。今朝はその複雑な法令の仕組みから実務上の具体例まで、確認していきたいと思います。

ミミレイドン

特例でいきなり課税事業者になることもあるんですね。しっかり勉強させていただきます!
昨日の基準期間・特定期間編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】消費税の納税義務の判定(基準期間・特定期間編)

目次

はじめに:消費税の納税義務の原則

    消費税法では、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、消費税を納める義務を免除するという原則があります。法人の場合、この「基準期間」とは原則として前々事業年度を指します。

    そのため、新たに設立された法人については、設立後2年目までの課税期間には基準期間そのものがないため、原則として消費税の納税義務が免除されることになります。しかし、この原則だけでは、意図的に新設法人を次々と立ち上げて消費税の納税を免れるといった租税回避行為が可能になってしまいます。そこで設けられているのが、資本金1,000万円以上の「新設法人」に対する特例と、大規模な事業者のグループとして設立された「特定新規設立法人」に対する特例です。

    新設法人の納税義務の免除の特例

      原則として基準期間がない新設の法人であっても、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人(消費税法上「新設法人」と呼びます)については、基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間の納税義務は免除されません。 つまり、設立1期目又は2期目の期首における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人は、その課税期間について課税事業者となります

      ただし例外的な取扱いとして、社会福祉法人など、専ら非課税となる別表第二に掲げる資産の譲渡等を行うことを目的として設立された一定の法人については、この特例の対象外とされています。

      この特例を適用するにあたって、資本金の額又は出資の金額の判定は、原則としてその事業年度開始の日の現況によって行われます。また、出資の金額については、株式会社の資本金に限らず、合名会社、合資会社又は合同会社の出資金なども該当します。種々の法人に出資を受け入れる旨の規定が置かれているため、会社の形態にかかわらず出資の金額をもって判定する点に留意が必要です。

      新屋賢人

      法人設立時に資本金を990万円など、1,000万円未満に設定することで、設立当初の消費税の納税義務を免除させるという判断は実務上よく検討されます。ただし、事業年度開始の日の資本金等で判定しますので、期中で増資をして1,000万円以上になったとしても、その事業年度の納税義務判定には影響しませんが、翌事業年度の開始の日に1,000万円以上になっていれば、その2期目は課税事業者となります。

      特定新規設立法人の納税義務の免除の特例

        新設法人の特例の網をすり抜けるため、資本金を1,000万円未満にして法人を設立したとしても、「特定新規設立法人」の特例に該当した場合は、やはり設立当初から納税義務が免除されません特定新規設立法人とは、基準期間がない事業年度開始の日(新設開始日)において「特定要件」に該当し、かつ、新規設立法人が特定要件に該当する旨の判定の基礎となった「他の者」及びその者と特殊な関係にある法人のうちいずれかの者について、基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超える場合(または総収入金額が50億円を超える場合)におけるその新規設立法人をいいます

        特定要件とは、他の者によって新規設立法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の50%超を直接又は間接に保有される場合など、新規設立法人が他の者に支配されている一定の場合を指します。

        ここで重要なのが、判定対象となる「他の者」や特殊関係法人の「基準期間相当期間」における課税売上高を全て合算して判定するわけではなく、いずれかの一つの法人の課税売上高が5億円を超えているかどうかで判定するという点です。例えば、親会社である法人の基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超えていれば、その親会社が100%出資して設立した資本金1,000万円未満の子会社は、設立1期目から特定新規設立法人として課税事業者となります。判定対象者が法人である場合の基準期間相当期間は、まず、新設開始日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した各事業年度を合わせた期間を確認します。ただし、これに限られるわけではなく、一定の場合には、新設開始日の1年前の日の前日から新設開始日の前日までの間に終了した各事業年度や、事業年度開始の日以後6か月の期間を確認する必要があります。そのため、実務上は、親会社等の直近決算期や半期実績も含めて判定する必要があります。

        新屋賢人

        特定要件に該当するかどうかの判定は、法人を新規に設立した事業年度に限らず、設立した事業年度の翌事業年度以後の事業年度であっても、基準期間がない事業年度については行う必要があります。個人事業主のいわゆる法人成りによって設立された会社であっても、設立した法人の株主がその個人であり、かつ、その個人の基準期間相当期間(原則として前々年)における課税売上高が5億円を超えていれば、新設した法人は特定新規設立法人に該当します。売上規模の大きい事業者の法人成りの際には、この5億円のハードルを絶対に忘れないでください。

        新設法人等が調整対象固定資産・高額特定資産を取得した場合の例外

          ここまで解説した新設法人や特定新規設立法人が、基準期間がない事業年度の期間中に「調整対象固定資産」や「高額特定資産」の仕入れ等を行った場合には、さらに追加の特例が適用されます。

          まず、新設法人や特定新規設立法人として、調整対象固定資産(税抜100万円以上の建物、機械装置など)の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等の日の属する課税期間から、当該課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、基準期間の課税売上高にかかわらず免税事業者となることができません。 また、免税事業者でない事業者が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産(一の取引単位につき税抜1,000万円以上の棚卸資産や調整対象固定資産)の仕入れ等を行った場合にも、同様にその仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間について納税義務が免除されないという厳しい特例があります。

          さらに、基準期間がない新設法人や特定新規設立法人は、資本金が1,000万円以上あることなどにより納税義務が免除されない状態であっても、簡易課税制度を選択することは原則として可能です。しかし、原則課税(本則課税)を適用している課税期間中に調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合や、高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、その後の課税期間において簡易課税制度選択届出書の提出に制限がかかるため、結果として向こう3年間は実額計算による本則課税での申告が強制されることになります。(※簡易課税制度及び2割特例を適用している期間中に取得した場合には、この制限は受けません。)

          新屋賢人

          新設法人が設立当初の期間に高額な設備投資を行うことは珍しくありません。この特例に該当すると、設立後3期目以降に基準期間の課税売上高が1,000万円以下になっても免税事業者になれず、また簡易課税による事務負担の軽減も図れないという結果を招きます。設備投資のタイミングや金額は、将来の消費税の申告方法に長期間影響を与えることを十分にシミュレーションしておきましょう。

          新規設立時の届出義務について

            事業者が新設法人や特定新規設立法人に該当することとなった場合には、その旨を記載した届出書を速やかに納税地を所轄する税務署長に提出しなければならないと法令で定められています。 なお、消費税法基本通達1-5-20において、「新設法人」に該当する場合には、税務署へ提出する「法人設立届出書」の所定の欄に消費税に関する事項を記載することで、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」の提出を省略することが認められています。しかし、「特定新規設立法人」に該当する場合にはこの省略はできず、必ず別途「消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出書」を提出しなければならないため、注意が必要です。

            新屋賢人

            消費税の届出関係は、制度の選択や提出期限を1日でも過ぎると取り返しがつかない事態になることが多々あります。新設法人や特定新規設立法人に該当するかどうかは設立前に確実に判定し、それに合わせた事業計画と資金繰りを立てることが税務専門家としての腕の見せ所です。

            まとめ

            本日は、消費税の納税義務の判定の中でも特に間違いやすい、新設法人と特定新規設立法人について詳しく解説しました。

            項目原則新設法人の特例特定新規設立法人の特例
            主な判定要素基準期間の課税売上高期首の資本金の額又は出資の金額支配関係+判定対象者の売上規模
            金額基準基準期間の課税売上高1,000万円以下なら原則免税期首資本金等1,000万円以上なら免税不可判定対象者の基準期間相当期間の課税売上高5億円超等で免税不可
            設立1期目・2期目原則免税課税事業者課税事業者
            注意点インボイス登録、課税事業者選択、特定期間判定等に注意期中増資は当期ではなく翌期以後の判定に影響特殊関係法人や50億円基準も確認
            高額資産取得時課税事業者で一般課税の場合は高額特定資産特例に注意調整対象固定資産・高額特定資産の3年縛りに注意同左
            新屋賢人

            なお、設立1期目・2期目であっても、適格請求書発行事業者として登録を受けている場合、消費税課税事業者選択届出書を提出している場合、設立2期目に特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える場合などには、資本金1,000万円未満であっても納税義務が免除されないことがあります。
            新たに事業を立ち上げる際、法人の資本金をいくらにするか、株主構成をどうするかによって、消費税の負担は数年間において大きく変わる可能性があります。この記事が皆様の適正な実務の助けになれば幸いです。

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            この記事を書いた人

            コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

            町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
            30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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