ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年6月14日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、前回の補足として、事業譲渡があった場合の消費税の納税義務の判定についてです。組織再編の手法として合併や会社分割と並んでよく用いられる事業譲渡ですが、消費税の取扱いは大きく異なる点があるのです。



前回は、合併や会社分割があった場合には、事業を引き継いだ法人の基準期間の売上高だけでなく、元の法人の基準期間の課税売上高も合算して判定するという特例を学びました。事業譲渡で他の会社から事業をまるごと買い取った場合も、同じように売上高を引き継ぐのでしょうか?



そこが実務で非常に勘違いしやすいポイントです。結論から申し上げますと、一般的な事業譲渡においては、合併や分割のような納税義務の特例規定は適用されません。しかし、例外的に事後設立と呼ばれる手法を用いた場合には、消費税法上の分割等と同じ扱いを受けることになります。今回はこの原則と例外について、しっかりと確認していきましょう。



組織再編があった場合の納税義務の判定(昨日の記事)については、こちらのブログ記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】組織再編があった場合の消費税の納税義務の判定:合併・分割の特例を徹底解説
事業譲渡における消費税の納税義務の原則
法人が事業の全部または一部を他の法人から事業譲渡によって引き継いだ場合、消費税の納税義務の判定は原則としてどのようになるのでしょうか。
消費税法においては、事業の包括的な承継が行われる「相続(法第10条)」、「合併(法第11条)」、そして「分割等(法第12条)」があった場合については、それぞれ納税義務の免除に関する特例規定が詳細に設けられています。これらの特例により、事業を引き継いだ法人は、自身の基準期間における課税売上高だけでなく、事業を譲り渡した法人の基準期間における課税売上高を加味して納税義務を判定することになります。
しかし、消費税法の条文上、「事業譲渡」という直接的な取引を対象とした納税義務の免除の特例は存在しません。合併や分割が権利義務を包括的に承継する組織再編行為であるのに対し、事業譲渡は個別の事業用資産や負債を売買契約によって個別に移転させる「特定承継」の取引に過ぎないためです。
したがって、譲受法人が新設法人で基準期間が存在しない場合には、一般的な事業譲渡である限り、譲渡法人の課税売上高を引き継いで判定することはありません。
もっとも、新設法人であっても、資本金または出資金が1,000万円以上である場合、特定新規設立法人に該当する場合、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合、課税事業者選択届出書を提出している場合、特定期間における課税売上高等により納税義務が生じる場合などがあります。
そのため、「事業譲渡だから当然に免税」と判断するのではなく、通常の新設法人の納税義務判定を一つずつ確認する必要があります。
なお、個人事業主が法人を設立して事業を引き継がせる、いわゆる法人成りの場合も同様です。個人事業者と法人は別の事業者であり、国税庁タックスアンサーNo.6531でも、法人成りにより新規に法人を設立した場合、個人事業者であった期間の課税売上高は、その法人の基準期間における課税売上高には含まれないとされています。



一般的な事業譲渡においては、譲渡法人の課税売上高を引き継ぐという規定がないため、原則通りの判定を行うことになります。実務上、合併や分割と同じ『事業の引き継ぎ』であると一括りに考えてしまうと、納税義務の判定を誤る原因となりますので、スキームの法的な性質を正確に見極める必要があります。
例外的な取扱い:事後設立の手法を用いた事業譲渡
原則として事業譲渡には納税義務の特例が適用されないと解説しましたが、消費税法において事業譲渡の形式をとっていても特例の対象となる例外が存在します。それが「事後設立」と呼ばれる手法です。
消費税法第12条では、会社分割があった場合の納税義務の免除の特例が定められています。このうち、第12条第7項では、第1項から第4項までにいう「分割等」として、新設分割のほか、一定の要件を満たす現物出資による法人設立や、いわゆる事後設立に係る金銭以外の資産の譲渡を含めています。
なお、吸収分割については、同条第5項および第6項で別途規定されています。
事後設立とは、法人が新たな法人を設立するために金銭を出資し、その後に当該新たな法人と会社法第467条第1項第5号(事業譲渡等の承認等)に掲げる行為に係る契約を締結し、その契約に基づいて事業用資産等の譲渡を行う手法を指します。
消費税法第12条第7項第3号の規定によれば、新たな法人の設立の時において発行済株式の全部をその出資した親法人が有している場合など、金銭以外の資産の譲渡が新たな法人の設立の時において予定されており、かつ、当該設立の時から6ヶ月以内に行われたものである等の政令で定める要件に該当する場合には、この一連の取引は消費税法上の「分割等」に該当するものとされます。
この場合、形式上は金銭出資による法人設立と事業譲渡の組み合わせであっても、実質的には新設分割による事業の切り出しと同じであるとみなされます。その結果、設立された法人は消費税法上「新設分割子法人」として取り扱われ、消費税法第12条第1項から第3項の納税義務の免除の特例の適用対象となります。
この場合、分割等があった日の属する事業年度およびその翌事業年度については、原則として、新設分割親法人の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超えるかどうかが重要になります。
また、翌々事業年度以後については、新設分割子法人が特定要件に該当する場合などには、新設分割子法人自身の基準期間における課税売上高と、新設分割親法人の対応期間における課税売上高との合計額により判定する場面があります。



100%子会社を金銭出資で設立した後、親会社から子会社へ事業用資産を譲渡するスキームでは、単なる事業譲渡として処理してよいか慎重な確認が必要です。
特に、その資産譲渡が会社法第467条第1項第5号に掲げる行為に係る契約に基づくものであり、子会社設立時にその資産譲渡が予定され、かつ設立時から6か月以内に行われるなど、消費税法第12条第7項第3号および消費税法施行令第23条第9項の要件を満たす場合には、消費税法上の「分割等」に該当する可能性があります。
したがって、「設立後6か月以内の親子間取引である」という事実だけで直ちに事後設立に該当するわけではありませんが、100%子会社への設立直後の資産移転については、事後設立該当性を必ず確認する必要があります。
事業の承継手法と納税義務の特例の比較
ここまで解説した組織再編および事業の承継手法ごとの消費税の納税義務の特例の有無について、表に整理しておきましょう。
| 事業の承継手法 | 納税義務の免除の特例の有無 | 判定の基礎に加味される売上高 |
|---|---|---|
| 相続 | 特例あり(法第10条) | 被相続人の基準期間における課税売上高を考慮 |
| 合併 | 特例あり(法第11条) | 被合併法人の基準期間に対応する期間の課税売上高を考慮 |
| 新設分割 | 特例あり(法第12条) | 新設分割親法人の対応期間の課税売上高等を考慮 |
| 吸収分割 | 特例あり(法第12条) | 分割法人の対応期間の課税売上高等を考慮 |
| 一定の現物出資による法人設立 | 特例あり(法第12条における分割等) | 消費税法12条7項2号の要件を満たす場合に限り、新設分割子法人として判定 |
| 一定の事後設立に係る資産譲渡 | 特例あり(法第12条における分割等) | 消費税法12条7項3号および施行令23条9項の要件を満たす場合に限り、新設分割子法人として判定 |
| 一般的な事業譲渡 | 特例なし(原則通り) | 譲受法人自身の基準期間、特定期間、新設法人特例、インボイス登録、課税選択等により判定 |
まとめ
本日は、事業譲渡があった場合の消費税の納税義務の判定について解説しました。
合併や会社分割においては、前回の記事で解説した通り、被合併法人や分割法人の売上高を加味して厳格に納税義務を判定する特例が用意されています。しかし、一般的な事業譲渡においてはこのような包括的な特例規定が存在しないため、原則通り、事業を譲り受けた法人自身の基準期間における課税売上高等によって判定を行います。
一方で、100パーセント子会社を新設し、その設立直後に親会社から事業譲渡によって事業を引き継がせる「事後設立」の要件に該当する場合には、実質的な組織再編として「分割等」の特例が適用されるため、極めて慎重な判断が求められます。



事業を他社から承継するスキームを検討する際は、それが合併なのか、分割なのか、それとも事業譲渡なのか、そして事業譲渡であっても事後設立に該当しないかといった事実関係を正確に把握することが、消費税の実務において決定的に重要となります。ご不明な点がある場合は、事前に税理士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。










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