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2026年5月5日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、法人の税務における『有価証券の評価損』の取扱いについてです。決算期になるとお客様からよくご相談を受ける、非常に重要な論点ですよ。



有価証券の評価損ですね。たしか、税務上は保有している株式などの価値が下がっても、基本的には評価損を計上してはいけない決まりだったと思います。



その通りです。法人が保有する有価証券の価額が下落した場合であっても、税務上は、その評価損が当然に損金として認められるわけではありません。 法人税法では、資産の評価換えにより帳簿価額を減額した場合、その減額した金額は原則として損金不算入とされており、この原則は有価証券にも及びます。
もっとも、有価証券の価値下落がすべて税務上無視されるわけではなく、一定の客観的事実が生じた場合には、例外的に評価損の損金算入が認められる場面があります。 ただし、その適用関係は条文ごとにかなり細かく分かれており、会計上の取扱いと税務上の取扱いを混同すると、誤った申告につながるおそれがあります。
この記事では、法人税実務における有価証券の評価損について、原則・例外など、実務で押さえておきたいポイントを整理します。
1. 有価証券の評価損の原則的な取扱い(資産の評価損の損金不算入)
法人税法第33条第1項では、内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合、その減額した部分の金額は、原則として損金の額に算入しないと定めています。 したがって、法人が保有する株式や投資信託、社債等について、決算時に価額が下落していたとしても、会計上評価損を計上したからといって、税務上もそのまま損金になるわけではありません。
この原則は、企業が恣意的に資産評価を引き下げて所得を圧縮することを防ぐ趣旨によるものです。 実務では、会計上評価損を計上していても、税務上は別表四で加算調整が必要になるケースが少なくありません。 有価証券の評価損を検討するときは、まず「評価損は原則として損金不算入である」という出発点を押さえておくことが重要です。



まずは『評価損は原則として損金に落ちない』という大前提をしっかりと頭に入れてください。お客様から『株価が半分になったから評価損を立てたい』と相談された場合は、まずこの原則をご説明した上で、次に解説する例外要件に当てはまるかどうかを慎重に検討する必要があります。
2. 例外として評価損の計上が認められる場合(法33条2項・令68条1項2号)
法人税法第33条第2項は、災害による著しい損傷その他の政令で定める事実が生じた場合において、法人が資産の評価換えをして損金経理により帳簿価額を減額したときは、その減額額のうち一定額を損金算入できると定めています。 有価証券についての具体的な事由は、法人税法施行令第68条第1項第2号に規定されています。
有価証券について問題になる事由は、概ね次の3つです。 ①市場有価証券等の価額が著しく低下したこと、②市場有価証券等以外の有価証券について、その発行法人の資産状態が著しく悪化したため価額が著しく低下したこと、③これらに準ずる特別の事実、です。
2-1. 上場株式など市場有価証券等の評価損
市場価格のある有価証券については、法人税基本通達9-1-7により、「価額が著しく低下したこと」とは、期末価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうとされています。 単に相場が一時的に下落しているだけでは足りず、50%程度の下落に加えて、回復可能性が乏しいことまで求められる点が実務上重要です。
また、同通達では、一定の有価証券について、期末前1か月の市場価格の平均額を用いて判定することも認めています。 回復可能性の判断は、過去の株価推移や発行法人の業況等も踏まえて、事業年度終了時点で行うこととされています。
2-2. 市場有価証券等の対象から除かれるもの
ただし、市場価格のある有価証券であれば、どのようなものでもこのルールの対象になるわけではありません。
発行会社に対して一定の支配関係を持つ株式や出資(いわゆる企業支配株式等)については、この「市場価格の著しい下落」による評価損のルールの対象から外されます。
そのため、たとえば上場株式であっても、単なる投資目的ではなく、発行会社との関係が深い株式については、一般の上場株式と同じように市場価格の下落だけで評価損を認めることはできません。 一方で、満期まで保有する目的で取得した債券などが、それだけで一律にこのルールの対象外になるわけではない点には注意が必要です。
実務上は、「市場で売買されているかどうか」だけでなく、その有価証券が単なる投資なのか、それとも発行会社に対する支配・影響力を持つ性質のものなのかまで確認したうえで、評価損の可否を判断することが大切です。
2-3. 非上場株式など市場価格のない有価証券の評価損
非上場株式など市場価格のない有価証券については、単なる業績不振や一時的な赤字だけでは足りません。 令68条1項2号ロは、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したことを要件としています。
この「発行法人の資産状態が著しく悪化したこと」について、法人税基本通達9-1-9は、たとえば特別清算開始命令、破産手続開始決定、再生手続開始決定、更生手続開始決定があったことや、1株当たり純資産価額が取得時に比べておおむね50%以上下回ったことを具体例として挙げています。 したがって、非上場株式の評価損を検討する場合は、発行法人の直近決算書を入手し、純資産価額の大幅な低下や法的整理開始の有無を客観資料で確認することが不可欠です。
さらに、法人税基本通達9-1-11は、非上場株式等についても、「価額が著しく低下したこと」の判定に9-1-7を準用するとしています。 そのため、非上場株式であっても、おおむね50%以上の下落と回復見込みの乏しさという観点が重要になります。



有価証券の評価損が税務上認められるかどうかは、「会計上評価損を計上したかどうか」ではなく、「税法上要求される客観的事実が存在するかどうか」で判断されます。 とりわけ非上場株式については、顧問先の説明だけで判断せず、貸借対照表・純資産価額・法的整理手続の有無・継続企業性の状況などを裏付資料で確認することが大切です。
3. 法的整理等による評価損の規定の位置づけ(法33条3項・4項)
ここで注意したいのが、法人税法第33条第3項・第4項の位置づけです。 これらの規定は、投資先(有価証券の発行会社)が更生・再生手続に入った場合の株式評価損を直接定めたものではありません。 条文上、これらはあくまで有価証券を保有している法人自身が更生・再生等の対象になった場合に、その法人自身が有する資産(有価証券を含みます)について評価損を計上できる場面を定めたものです。
法人税法第33条第3項は、内国法人がその有する資産につき、更生計画認可の決定があったことにより、会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律に従って行う評価換えをして帳簿価額を減額した場合に、その減額額を損金算入するものです。 また、同条第4項は、内国法人について再生計画認可の決定その他これに準ずる事実が生じた場合に、その内国法人が有する資産の価額につき政令で定める評定を行っているときに、その評価損を損金算入するものです。 いずれも、条文の主体は評価換え又は評定を行う法人自身です。
したがって、投資先会社が倒産等の深刻な状況に陥ったからといって、直ちにその株式について法33条3項・4項が適用されるわけではありません。 投資先株式の評価損を検討する場合は、通常、前述のとおり、法33条2項・令68条1項2号ロに基づき、発行法人の資産状態の著しい悪化や価額の著しい低下があるかどうかを判定することになります。
もっとも、自社自身が再生計画認可等の対象となり法33条4項の適用を受ける場合には、確定申告書に評価損明細の記載があり、かつ財務省令で定める書類の添付があることが原則として必要です。 また、記載又は添付がない場合でも、やむを得ない事情があると認められるときは適用余地があることが、法人税法第33条第7項・第8項に定められています。



会社更生法や民事再生法などの法的整理手続に入った場合は、裁判所や管財人の主導の下で厳格な資産評定が行われます。税務上もその評定に従って評価損を計上することが認められるわけです。申告書には評価損に関する明細書の記載と、財務省令で定める書類の添付が必要になるため、手続の漏れがないように気をつけてください。
4. 売買目的有価証券の特例(法61条の3)
ここまで見てきたのは、主として売買目的外の有価証券についての評価損の話です。 これに対し、法人税法第61条の3第1項第1号は、売買目的有価証券について、事業年度終了時に時価法により評価することを定めています。 そして、同条第2項により、その時価評価によって生じた評価益又は評価損は、法人税法第25条や第33条の原則規定にかかわらず、益金又は損金に算入されます。
つまり、売買目的有価証券については、期末の評価損益が原則として税務上もそのまま反映されることになります。 この点が、原則として評価損が損金不算入となる売買目的外有価証券との大きな違いです。
4-1. 売買目的有価証券は「専担者売買有価証券」だけではない
実務で誤解されやすいのは、売買目的有価証券=独立の専門部署が運用するトレーディング資産だけではない、という点です。 施行令119条の12第1号は、売買目的有価証券の範囲として、①短期売買目的で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的で取得した有価証券(専担者売買有価証券)と、②取得日に短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載したものの両方を掲げています。
このうち、法人税基本通達2-3-26は、専担者売買有価証券について、特定の取引勘定を設け、トレーディング業務を日常的に遂行し得る人材から構成された独立の専門部署により運用されている場合の有価証券がこれに当たるとしています。 また、基本通達2-3-27は、短期売買有価証券について、取得日に売買目的有価証券に係る勘定科目で区分している場合の有価証券をいうとし、短期的に売買していても取得時に区分していなければ該当しないことを明らかにしています。
したがって、「専門部署がない会社は売買目的有価証券を持てない」と理解するのは正確ではありません。 一般事業会社であっても、取得時点で税法所定の帳簿区分を行っていれば、売買目的有価証券に該当する余地があります。 もっとも、取得後に恣意的に売買目的へ振り替えることは認められないため、取得時の区分管理が極めて重要です。



法人が一般の事業を行っている中で、たまたま短期的な利益を狙って株を買った程度では、売買目的有価証券(専担者売買有価証券)としては認められません。一般的には、専門部署を設けて日常的にトレーディングを行っているような金融機関等でない限り、この規定の適用を受けることは実務上ほとんどないと言ってよいでしょう。『短期売買目的だから時価評価で損を落としたい』場合には、この厳しい要件を理解する必要があります。
5. 完全支配関係がある法人の株式等に関する評価損の制限(法33条5項)
グループ内株式の評価損については、さらに注意が必要です。 法人税法第33条第5項は、法33条2項から4項の評価損規定について、一定の完全支配関係法人の株式又は出資には適用しないと定めています。 ただし、この制限は、すべての完全子会社株式に一律に及ぶわけではありません。
施行令第68条の3は、法33条5項の「政令で定めるもの」として、①清算中の内国法人、②解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれる内国法人、③完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれる内国法人を掲げています。
つまり、清算・解散・適格合併が予定されていない事業継続中の完全子会社については、法33条5項の制限を当然に受けるわけではありません。 その株式についても、法33条2項・令68条1項2号ロ等の通常の要件を満たすかどうかを検討する余地があります。 実務では、完全支配関係の有無だけで結論を出さず、施行令68条の3の対象法人に当たるかどうかまで確認することが重要です。
なお、通算制度の文脈では、他の通算法人の株式等について別途制限が設けられているため、グループ内株式の評価損を検討する際には、単なる完全支配関係の問題なのか、通算制度の問題なのかも区別して考える必要があります。



このグループ法人税制における評価損の制限は、実務で非常によく発生する落とし穴です。会計上は子会社株式の評価損を計上しなければならないケースでも、税務上は法人税法第33条第5項により損金不算入となる場合には、申告調整(別表4での加算)を確実に行う必要があります。100%子会社の株式の価値が下がったときは、特に注意して処理を行ってください。
6. 組織再編成および通算制度に伴う時価評価損益
有価証券の評価損益は、通常の決算時だけでなく、組織再編成や通算制度の開始・加入・離脱といった特殊場面でも問題になります。 法人税法の体系上、組織再編成に係る所得の金額の計算や、通算制度に伴う資産の時価評価損益に関する規定が別建てで設けられています。
6-1. 組織再編成
法人税法の目次上も、「非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の時価評価損益」が独立の項目として置かれており、組織再編税制の場面では、一定の資産について時価評価損益が問題になることがあります。 したがって、組織再編の前後で有価証券の含み損益をどのように扱うかは、通常の評価損ルールとは別に、再編税制の規定も確認する必要があります。
6-2. 通算制度
通算制度については、国税庁FAQが、時価評価資産として、固定資産、棚卸資産たる土地、有価証券、金銭債権、繰延資産を挙げています。 もっとも、有価証券であっても、売買目的有価証券、償還有価証券、帳簿価額が1,000万円未満の資産、評価差額が少額の資産、一定の完全支配関係法人の株式等、他の通算法人の株式等は、通算制度の開始・加入・離脱に伴う時価評価の対象から除かれるとされています。
したがって、「通算制度に入るなら有価証券は全部時価評価される」と考えるのは正確ではありません。 実務では、対象資産に当たるのか、除外資産に当たるのか、どの時点で評価するのかを個別に確認する必要があります。 とくにグループ内株式は、通常の評価損ルールとは別に、通算制度特有の除外や調整があるため注意が必要です。



組織再編成や通算制度の導入にあたっては、法人が保有する有価証券などの時価評価資産について、強制的に評価損益が計上されることになります。この時価評価の対象となる資産の範囲や、評価のタイミングについては極めて専門的で複雑な判断が伴います。組織再編を検討される際には、必ず事前に税理士にご相談いただき、税務上のシミュレーションを行うことが不可欠です。
7. まとめ
法人税実務における有価証券の評価損は、次のように整理すると分かりやすいでしょう。 まず原則として、有価証券の評価換えによる評価損は損金不算入です。 そのうえで、法33条2項・令68条1項2号に該当する客観的事実がある場合に限り、例外的に評価損の損金算入が問題になります。
上場株式など市場価格のある有価証券については、おおむね50%以上の下落に加え、近い将来の回復見込みがないことが重要な判断要素です。 また、令68条1項2号イの対象から除かれるのは、「満期保有目的等有価証券」全体ではなく、令119条の2第2項第2号に掲げる株式又は出資、すなわち企業支配株式等である点にも注意が必要です。
非上場株式については、発行法人の資産状態の著しい悪化や、純資産価額の大幅な低下、法的整理開始の有無などを客観資料で確認する必要があります。 投資先が倒産等の深刻な状況に陥った場合であっても、通常は法33条3項・4項ではなく、法33条2項・令68条1項2号ロの文脈で評価損を検討することになります。
また、法33条3項・4項は、自社自身が更生・再生手続に入った場合に、自社の資産(有価証券を含む)について評価損を計上できる規定であることを押さえておく必要があります。 ここを「投資先が法的整理に入った場合の特例」と誤解すると、条文の適用場面を取り違えるおそれがあります。
さらに、売買目的有価証券については、時価評価損益が原則として税務上も反映される一方、その範囲には、専担者売買有価証券だけでなく、取得時に帳簿区分した短期売買有価証券も含まれる点に注意が必要です。
そして、完全支配関係がある法人の株式等については、完全子会社株式だから一律に評価損が認められないわけではなく、法33条5項と施行令68条の3が対象とする、清算中・解散見込み・適格合併見込みといった一定の場合に限って評価損制限がかかることを確認する必要があります。 事業継続中の完全子会社株式については、通常の評価損要件を満たせば、評価損計上の余地が残ります。
有価証券の評価損は、条文の適用場面、資産区分、発行法人の状況、グループ関係、通算制度の有無によって結論が変わります。 決算や申告で評価損を扱う際は、会計処理だけで結論を出さず、法人税法・施行令・基本通達に沿って事実関係を丁寧に確認することが不可欠です。



有価証券の評価損は、税務調査において否認されるリスクが非常に高い項目のひとつです。決算を組む際には、該当する有価証券の区分、発行法人の資産状態、グループ関係の有無などを多角的に検討し、法令に則った適正な申告を心がけましょう。疑問点があれば、いつでも相談してください。










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