ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年5月17日のテーマはなんでしょうか?



今朝は法人の税務において非常に重要かつ、実務で頻繁に直面する「青色申告事業年度の欠損金の繰越控除」について解説いたしますよ。



欠損金、つまり事業で赤字が出た年に、その赤字を翌年以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できるという制度ですよね?



その通りです。ただし、法人の規模によって控除できる上限額が異なったり、組織再編成や株主の異動が行われた場合には、租税回避を防ぐための複雑な制限が適用されたりします。今回は関連する法令や通達に基づいて、これらの論点を徹底的に紐解いていきましょう。



なんだか奥が深そうですね。しっかりと勉強させていただきます!
青色申告事業年度の欠損金の繰越しとは(原則的な取扱い)
制度の概要と繰越期間
法人が事業活動を行う中で赤字(欠損金)が生じた場合、その欠損金を翌事業年度以降に繰り越して、将来の所得(黒字)から差し引くことができる制度があります。法人税法第57条第1項によれば、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額は、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます。この「10年」という繰越期間は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額に適用される期間であり、それ以前は9年間とされていました。



ここでいう10年とは、欠損金を控除しようとする事業年度の開始日前10年以内に開始した事業年度に生じた欠損金を対象とする、という意味です。
控除限度額の原則
欠損金を繰り越して控除する場合、無制限に所得と相殺できるわけではありません。法人税法第57条第1項の原則的な取扱いでは、各事業年度の所得の金額の「100分の50(50%)」に相当する金額が、控除できる限度額となります。つまり、大法人などの場合は、その年の所得の半分までしか過去の欠損金と相殺できず、残りの半分の所得については法人税が課される仕組みとなっています。
適用要件と帳簿書類の保存
この欠損金の繰越控除の規定の適用を受けるためには、厳格な要件が定められています。法人税法第57条第10項によれば、欠損金額が生じた事業年度について青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後においても連続して確定申告書を提出していることが必要です。 さらに、欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存していることが要件とされます。法人税法施行規則第26条の3第1項によれば、青色申告法人は、欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類を整理し、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日(事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日)から起算して10年間、これを納税地等に保存しなければなりません。



適用要件において実務上とくに注意していただきたいのは、帳簿書類の10年保存です。申告を連続して行うだけでなく、赤字が出た年の帳簿関係は長期間しっかりと保管する体制を整えておく必要があります。
控除限度額の特例(中小法人等・事業再生法人)
中小法人等の特例(全額控除)
先ほど、控除限度額の原則は「所得の50%まで」と解説しましたが、これには重要な特例が存在します。法人税法第57条第11項第1号によれば、一定の要件を満たす「中小法人等」については、所得の金額の100分の50という制限を受けず、所得の金額の全額(100%)まで控除することが認められています。 ここでいう「中小法人等」とは、普通法人のうち、資本金の額または出資金の額が1億円以下であるもの、または資本もしくは出資を有しないものなどをいいます。ただし、資本金5億円以上の大法人や相互会社等による完全支配関係がある法人、複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人、大通算法人などは除かれます。また、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等も中小法人等に含まれ、全額控除の対象となります。
事業再生法人等の特例
中小法人等以外の法人であっても、法人の事業の再生が図られたと認められる一定の事由が生じた法人については、所得の全額(100%)控除が認められる特例があります。法人税法第57条第11項第2号によれば、更生手続開始の決定があった場合や、再生手続開始の決定があった場合などにおいて、その事由が生じた日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度等については、控除限度額の制限が撤廃されます。ただし、株式上場その他事業再生が図られたと認められる一定の事由が生じた場合には、その日以後に終了する事業年度は対象から除かれることがあります。
控除限度額に関する要件を以下の表に整理しましたので、参考にしてください。
| 法人の区分 | 控除限度額 | 該当する法人の主な要件 |
|---|---|---|
| 原則(大法人など) | その事業年度の所得の金額の50% | 資本金1億円超の法人、または資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人など |
| 特例(中小法人等) | その事業年度の所得の金額の100% | 資本金1億円以下の法人、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等 |
| 特例(事業再生法人) | その事業年度の所得の金額の100% | 更生手続開始の決定や再生手続開始の決定があった法人など(事由発生日から7年等の期間) |



多くの中小企業のお客様にとっては、所得の100%まで欠損金を控除できる特例が適用されます。ただし、親会社が大規模な法人である場合など、完全支配関係の状況によっては資本金が1億円以下でも原則の50%制限を受けてしまうため、株主構成の確認は必須のプロセスとなります。なお、中小法人等に該当しない法人であっても、一定の新設法人の一定期間については、控除限度額が所得金額の100%とされる特例があります。
組織再編成等における欠損金の引継ぎと制限
適格合併等による欠損金の引継ぎ
企業が合併等の組織再編成を行った場合、消滅する法人が持っていた欠損金はどうなるのでしょうか。法人税法第57条第2項によれば、内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合、又は当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の残余財産が確定した場合において、被合併法人等における前10年内事業年度において生じた欠損金額(未処理欠損金額)があるときは、その欠損金額を合併法人等に引き継ぐことが可能とされています。これにより、合併法人等の所得と被合併法人等の過去の赤字を相殺することができます。
欠損金の引継ぎ及び使用の制限
ただし、この欠損金の引継ぎには制限があります。法人税法第57条第3項では、被合併法人等と合併法人等との間に支配関係がある場合において、当該適格合併等が「共同で事業を行うための合併」として政令で定めるものに該当せず、かつ、合併等事業年度開始の日の5年前の日等から継続して支配関係がある場合として政令で定める場合にも該当しないときは、被合併法人等の支配関係事業年度前に生じた欠損金額などは、合併法人等に引き継がれる未処理欠損金額に含まれないこととされています。 また、法人税法第57条第4項では、内国法人と支配関係法人との間で適格組織再編成等が行われた場合において、5年継続支配要件を満たす場合として政令で定める場合に該当せず、かつ、共同で事業を行うための適格組織再編成等にも該当しないときは、合併法人等自身が有していた支配関係事業年度前の欠損金についても、繰越控除の対象から除外されることがあります。
基本通達に基づく具体例:「最後に支配関係があることとなつた日」の判定
前述の欠損金の引継ぎ制限を回避するための「5年継続支配要件」を満たすかどうかを確認する上で、実務上絶対に間違えてはならないのが「いつから支配関係が継続しているとみなすのか」というスタート地点の判定です。
税務上、このスタート地点となる基準日は「最後に支配関係があることとなつた日」と規定されています。法人税基本通達12-1-5では、「最後に支配関係を有することとなった日」について、適格合併の日等の直前まで継続して支配関係がある場合の、その支配関係を有することとなった日をいうものとされています。これを具体例で確認すると、次のようになります。
法人A(合併法人)と法人B(被合併法人)との間に「最後に支配関係があることとなつた日」とは、適格合併の日からみて支配関係が生じた最も古い時点をいうのか、あるいは適格合併の日の直前まで継続した支配関係が生じている時点をいうのかが疑問となります。
- X年4月1日:法人Aが法人Bの発行済株式等の50%超を取得(支配関係の発生)。
- X+1年4月1日:法人Aが法人Bの株式の一部を売却し、保有割合が50%以下となる(支配関係の消滅)。
- X+2年4月1日:法人Aが法人Bの株式の一部を再度取得し、保有割合が50%超となる(支配関係の発生)。
- X+3年4月1日:法人Aを合併法人、法人Bを被合併法人とする適格合併が行われる。
このケースにおいて「最後に支配関係があることとなつた日」とは、適格合併の日の直前まで継続して支配関係がある場合のその支配関係があることとなつた日をいうことが明らかにされています。すなわち、合併法人(法人A)と被合併法人(法人B)の適格合併の日(X+3年4月1日)の直前まで継続して支配関係があることとなる「3の時点(X+2年4月1日)」が、最後に支配関係があることとなつた日となります。



組織再編税制における欠損金の引継ぎは、非常に難解でミスが起きやすい分野です。特に、支配関係が途中で途切れているようなケースでは、どの時点から継続しているかを正確に判定しなければ、引き継げると考えていた欠損金の全部または一部が、税務上利用できなくなる可能性があります。慎重な検討が求められます。
特定株主等によって支配された欠損等法人の特例(例外的な取扱い)
制度の趣旨と適用対象
赤字法人(欠損等法人)の株式を買い取り、その後、当該赤字法人に黒字事業を移転させることで、意図的に欠損金と黒字を相殺しようとする租税回避行為を防ぐため、法人税法第57条の2に特別な例外規定が設けられています。 この規定は、欠損金を有する法人(または資産の含み損を有する法人)が、他の者により発行済株式の50%超を保有されるなどの「特定支配関係」を有することとなった場合(その日を「支配日」と呼びます)を対象としています。
繰越控除が制限される「一定の事由」
この特定支配関係を有することとなった欠損等法人が、支配日以後5年を経過する日の前日までに「一定の事由」に該当した場合には、その該当することとなった日の属する事業年度以後の各事業年度において、適用事業年度前の欠損金の繰越控除が認められなくなります。 制限の対象となる「一定の事由」として、法令では以下のような事由が定められています。
- 支配日の直前において事業を営んでいない法人が、支配日以後に事業を開始すること。
- 支配日の直前において営む事業(旧事業)のすべてを廃止し、旧事業の支配日直前における事業規模の5倍を超える資金の借入れ又は出資による金銭等の受入れを行うこと。
- 旧事業のすべてを廃止し、かつ、特定の合併等の組織再編成を行うこと。
- 旧役員のすべてが退任し、かつ、旧使用人のおおむね20%以上の者が使用人でなくなった場合において、新事業の事業規模が旧事業の事業規模の5倍を超えることとなること。



この規定は、いわゆる「休眠会社の買収」や「赤字法人の箱としての利用」に対する強力な網です。M&Aのスキームを検討する際には、対象会社が過去の欠損金を抱えている場合、株式取得後にどのような事業展開を行うかによって過去の欠損金が使えなくなるリスクがあるため注意が必要です。
まとめ
本日は「青色申告事業年度の欠損金」について、原則から特例、そして例外的な取扱いまで網羅的に解説いたしました。 基本となる欠損金の繰越期間は10年であり、控除限度額は原則として所得の50%ですが、要件を満たす中小法人等であれば所得の100%まで控除できるという実務上非常に有利な特例があります。 一方で、適格合併等の組織再編成を行った場合や、特定株主等によって株式の50%超を取得された後に事業を大きく変更するような場合には、租税回避を防止するための厳格な制限規定が発動し、せっかくの欠損金が切り捨てられてしまうことがあります。



法人の欠損金は「税務上の貴重な資産」とも言える重要な要素です。事業承継やM&A、組織再編成などを検討する際には、必ず事前に専門家による精緻なシミュレーションを行うことが不可欠です。少しでも迷われることがあれば、いつでも私たち税理士にご相談ください。丁寧かつ確格にサポートさせていただきます。










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