【町田市の税理士が解説】組織再編成に係る所得の金額の計算《基礎ログ》

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年5月18日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は「組織再編成に係る所得の金額の計算」について整理していきたいと思います。

ミミレイドン

組織再編成ですか。合併や分割など、とても複雑なイメージがありますし、税務上の処理も難しそうです。

新屋賢人

おっしゃる通り、税務上の取扱いは多岐にわたり、非常に専門的な知識が求められます。しかし、原則的な取扱いと特例的な取扱いをしっかりと分類して押さえれば、確実に理解できるようになりますよ。

ミミレイドン

なるほど。ぜひ、基本から実務的なポイントまで、詳しく教えてください。

組織再編成における譲渡損益の計上と繰延べ(原則と例外)

法人税法上、法人が分割、合併、現物出資、現物分配又は株式分配(以下、組織再編成と呼びます)によりその有する資産等を他の法人に移転した場合には、どのような取扱いになるかが法人税法第62条等に定められています。

目次

原則的な取扱い(非適格組織再編成)

組織再編成により資産や負債を移転した場合、原則として、その移転した資産等について時価による譲渡があったものとして、移転資産等の譲渡損益を計上しなければなりません。つまり、含み益や含み損が実現したものとして課税関係が生じます。これを一般に「非適格組織再編成」と呼びます。もっとも、合併、分割、現物出資、現物分配、株式交換等又は株式移転など、再編手法ごとに適用される条文は異なり、法人税法第62条から第62条の9までにそれぞれ定められています。

例外的な取扱い(適格組織再編成)

ただし、例外として、当該組織再編成が「適格組織再編成」(適格分割、適格合併、適格現物出資、適格現物分配又は適格株式分配)に該当する場合には、移転資産等の譲渡損益の計上を繰り延べることが認められます。この場合、移転した資産や負債は帳簿価額で引き継がれることになり、組織再編成の時点では課税が発生しません

株式交換等の場合の取扱い

また、法人が自己を株式交換等完全子法人又は株式移転完全子法人とする株式交換等又は株式移転を行った場合には、組織再編成による資産の直接的な移転はありませんが、その法人が有する時価評価資産の評価損益を計上することが原則とされています(法人税法第62条の9)。ただし、これが適格株式交換等や適格株式移転に該当する場合は、評価損益の計上は行われません

新屋賢人

実務上、組織再編成を実行する際には、まずその再編が「適格」になるか「非適格」になるかの判定が極めて重要です。適格要件を満たさないと、思わぬ多額の税金が発生するリスクがありますので、再編スキームの策定段階から慎重に要件を確認する必要があります。

適格組織再編成の要件と実務上の判定基準

適格組織再編成に該当するためには、完全支配関係がある企業グループ内の再編50%超100%未満の支配関係があるグループ内の再編あるいは共同で事業を行うための再編など、状況に応じて定められた要件を満たす必要があります。ここでは、判定が複雑になりやすい「共同事業を行うための適格組織再編成」等の要件について、確認していきたいと思います。

主要な事業の判定

共同事業を営むための適格合併等に該当するかどうかの判定基準の一つに、被合併法人の当該合併前に行う「主要な事業」が合併法人において当該合併後に引き続き行われることが見込まれていること、という要件があります。 被合併法人の合併前に行う事業が2つ以上ある場合において、そのいずれが適格要件に規定する「主要な事業」であるかは、それぞれの事業の収入金額又は損益の状況、従業者の数、固定資産の状況等を総合的に勘案して判定します(法人税基本通達1-4-5)。

ミミレイドン

被合併法人とは、合併によって消滅する(なくなる)側の法人のことです 。 相手の会社に吸収されて会社自体は消えてしまい、自社の持っていた資産や負債、従業員などをすべて相手の会社に引き渡すことになります 。
一方で、合併法人とは、合併によって相手を受け入れる(存続する・新しくできる)側の法人のことです 。 被合併法人の資産や負債、ビジネスを丸ごと引き継いで、その後もビジネスを継続していきます 。

事業規模の判定

共同事業を営むための適格要件には、双方の事業規模の割合がおおむね5倍を超えないこと、という事業規模要件があります。 事業規模を比較する場合、一般的には売上金額で判定しますが、業種や業態によっては売上金額が少なくても多額な損益が生じる事業や、製造設備が中心となる事業など様々です。そこで、法令では売上金額のほか、従業者の数、それぞれの資本金の額、若しくは「これらに準ずるもの」の規模の割合が5倍を超えないことが要件とされています。 基本通達1-4-6によれば、「これらに準ずるものの規模」を表す指標として、例えば金融機関においては預金量等、客観的かつ外形的にその事業の規模を表すものと認められる指標を用いることが明らかにされています。いずれか一つの指標が5倍を超えなければ要件を満たします。

特定役員の範囲

共同事業を営むための適格合併等において、事業規模のおおむね5倍以内という要件を満たさない場合であっても、双方の特定役員のいずれかが再編後に合併法人等の特定役員となることが見込まれている場合には、適格要件を満たすことができます。

この「特定役員」が誰を指すのかについてですが、まず法令(法人税法施行令)において、「社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者」と明確に定義されています。

その上で、法人税基本通達1-4-7では、この法定要件のうち「これらに準ずる者」が具体的にどのような者を指すのかという、実務上の解釈を明らかにしています。通達によれば、「これらに準ずる者」とは、常務取締役以上の役員と同等に法人の経営の中枢に参画している者をいうものとされています。

実務上よく問題となるのが、企業において「CEO(最高経営責任者)」や「COO(最高執行責任者)」と称される方々の取扱いです。これらの役職にある方が、会社法上の役員とされていない場合であっても、実態として会長や社長と同等に経営の中枢に参画して業務に従事していれば、通達の解釈に基づく「これらに準ずる者」に該当し、法令上の特定役員として認められることになります。

新屋賢人

特定役員は法令上、役員に限らないとされていますが、法人の経営の中枢に参画しているという実態から、通常はみなし役員(法人税法施行令第7条)に該当するものと考えられます。また、適格要件を満たすことのみを目的として、形式的に短期間だけ専務取締役等に就任するようなことは許されませんので、実態を伴った継続的な経営参画が求められる点に十分ご留意ください。

従業者の引継ぎ要件と出向者の取扱い

適格分割等における従業者の引継ぎ要件は、分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が当該分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれていることと規定されています。 この点、分割法人の従業者が「出向」により分割承継法人の業務に従事する場合にこの要件を満たすかが問題となります。基本通達1-4-9及び1-4-10等により、雇用形態を問わず、分割後においても分割承継法人の業務に従事すれば要件を満たすことが明らかにされています。

新屋賢人

事業規模要件を売上金額で判定する場合の比較期間については、法令上明記されていません。実務上は、直近事業年度の売上金額を基礎とすることが考えられますが、単年度に特殊要因がある場合や業態上それが事業規模を適切に表さない場合には、他の合理的な指標や期間も含めて慎重に検討する必要があります。また、特定役員の要件を満たすことのみを目的として形式的に短期間だけ専務取締役等に就任するようなことは許されない点に留意してください。

組織再編成に係る資産調整勘定と負債調整勘定

非適格組織再編成が行われた場合、移転を受けた資産や負債の時価と、交付した対価の額との間に差額が生じることがあります。この差額の取扱いについて解説します。

資産調整勘定の損金算入等

内国法人が非適格合併等により被合併法人等から資産又は負債の移転を受けた場合において、当該内国法人が交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が、当該移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額(資産の取得価額の合計額から負債の額の合計額を減算した金額)を超えるときは、その超える部分の金額のうち政令で定める部分は「資産調整勘定」の金額となります(法人税法第62条の8第1項)。 資産調整勘定は、いわゆる税務上の「のれん」に相当するものであり、原則として、その計上した事業年度から60か月にわたり均等償却して損金の額に算入していくことになります。

新屋賢人

資産調整勘定は、当初計上額を60で除した金額に各事業年度の月数を乗じて計算した金額を減額し、その減額すべき金額を損金の額に算入します。したがって、実務上はいわゆる5年均等償却に近い処理となりますが、初年度は非適格合併等の日から事業年度終了の日までの月数に応じて月割計算を行う点に注意が必要です。

負債調整勘定の益金算入等

逆に、移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額が、交付した対価の額の合計額を超えるときは、その超える部分の金額のうち政令で定める部分は「負債調整勘定」の金額となります。負債調整勘定には、退職給与債務引受額に係るもの短期重要債務見込額に係るもの対価額が時価純資産価額を下回る場合に生じる差額負債調整勘定があります。このうち、いわゆる負ののれんに相当する差額負債調整勘定については、当初計上額を60で除した金額に各事業年度の月数を乗じて計算した金額を益金の額に算入します。一方、退職給与負債調整勘定や短期重要負債調整勘定は、退職給与の支給、従業者の退職、損失の発生、3年経過等の一定の事由に応じて益金算入されるため、一律に60か月均等処理とはなりません。

新屋賢人

資産調整勘定や負債調整勘定を計上した法人は、その有することとなった事業年度の確定申告書に、その金額の計算や損金又は益金に算入される金額の計算に関する明細書を添付しなければならない要件がありますので、申告実務においては添付漏れがないよう十分注意してください。

特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入

グループ内の組織再編成を利用した租税回避行為を防止するため、一定の損失の損金算入を制限する規定が設けられています。

制度の概要

内国法人が、その内国法人との間に支配関係がある法人を合併法人等とする適格合併等のうち共同事業を行うための適格組織再編成に該当しないもの(特定適格組織再編成等)を行った場合において、移転を受けた資産(特定引継資産)や、組織再編成前から自ら有していた資産(特定保有資産)について、一定の適用期間内に譲渡、評価換え、貸倒れ、除却等が生じたとします。このとき発生した損失の額(特定資産譲渡等損失額)は、原則として、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません。組織再編成に伴う特定資産譲渡等損失額の損金不算入については、法人税法第62条の7に定められています。なお、通算制度の開始・加入等に関しても、法人税法第64条の14において類似の損金不算入規定が設けられているため、グループ再編や通算制度への加入を伴う場合には、両制度の関係を確認する必要があります。

新屋賢人

この規定の対象期間は、単純に組織再編成の日から起算するのではなく、原則として、特定組織再編成事業年度開始の日から同日以後3年を経過する日までの期間とされています。ただし、その経過日が最後に支配関係を有することとなった日から5年を経過する日後となる場合には、その5年を経過する日までとされるなど、期間判定には注意が必要です。

対象となる資産の除外(例外的な取扱い)

すべての資産の譲渡等損失が否認されるわけではなく、例外として以下のものは特定引継資産や特定保有資産から除かれます。

  1. 資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額又は取得価額が1,000万円に満たない資産
  2. 支配関係発生日の属する事業年度開始の日における価額が、同日における帳簿価額を下回っていない資産。ただし、確定申告書等にその価額及び帳簿価額に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、価額算定の基礎となる書類を保存している場合に限られます。
新屋賢人

この制度は非常に強力であり、グループ法人税制や通算制度の加入時にも同様の考え方が適用されます。支配関係発生日の時価を把握して書類を保存しておかないと、含み損がなかったことの証明ができず、損金算入が否認されるおそれがあります。組織再編やグループ加入時には、必ず主要な資産の時価評価と証拠書類の保存を行ってください。

適格要件の比較整理

適格組織再編成の主要な要件について、企業グループ内の再編のケース別に比較表を作成しました。

要件項目      100%完全支配関係内の再編(※1)50%超100%未満の支配関係内の再編(※2)共同事業を行うための再編(支配関係50%以下等)(※3)
事業関連性要件不要不要必要
事業規模要件等不要不要事業規模が概ね5倍以内、又は特定役員の引継ぎ
従業者引継要件不要必要(おおむね80%以上)必要(おおむね80%以上)
事業継続要件不要必要(主要な事業の継続)必要(双方の主要な事業の継続)
株式継続保有要件不要必要(支配関係の継続等)必要(株式等の継続保有)

適格要件は、再編手法ごとに異なりますが、大きく分けると、完全支配関係内の再編、支配関係内の再編、共同事業を行うための再編の3類型で要件の重さが異なります。

(※1)完全支配関係内の再編では、従業者引継要件や事業規模要件は通常問題となりませんが、完全支配関係の継続や対価要件など、再編手法ごとの要件確認が必要です。

(※2)50%超100%未満の支配関係内の再編では、従業者引継要件、事業継続要件、支配関係継続要件などが問題となります。

(※3)共同事業を行うための再編では、事業関連性、事業規模要件又は特定役員引継要件、従業者引継要件、事業継続要件、株式継続保有要件など、より詳細な要件判定が必要となります。

なお、これらの要件は合併、分割、現物出資、株式交換等、株式移転、株式分配などの再編手法ごとに細部が異なるため、実際のスキームごとに条文・政令・通達を確認する必要があります。

まとめ

本日は「組織再編成に係る所得の金額の計算」について、法人税法、法人税法施行令、法人税法基本通達等の観点から整理してみました。

組織再編成の税務は、原則としての時価譲渡課税と、例外である適格組織再編成による帳簿価額引継ぎという大きな枠組みを理解することが第一歩です。その上で、事業規模の判定や従業者の引継ぎ、特定役員の範囲といった基本通達で示される実務的な判定基準を正しく適用することが求められます。

さらに、非適格再編における資産調整勘定・負債調整勘定の処理や、租税回避を防止するための特定資産譲渡等損失額の損金不算入規定など、非常に複雑な論点が絡み合います。

新屋賢人

実務においては、単なる法令の文言だけでなく、通達や実態に即した深い理解と慎重な検討が不可欠です。組織再編成をご検討の際は、ぜひ早い段階で我々のような税務の専門家にご相談いただければと思います。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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