ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年5月21日のテーマはなんでしょうか?



今朝は組織再編税制における適格要件の一つである、従業者引継ぎ要件について確認していきたいと思います。



従業者引継ぎ要件ですね。一昨日の適格判定のところで少し出てきましたね。確か、合併や分割などで事業を移転する際に、従業員をどれくらい引き継ぐ必要があるか、というルールでしたっけ?



ご名答です。この要件を満たせるかどうかが、適格組織再編として認められるかどうかの大きな分かれ道になります。実務上は、誰を従業者に含めるべきか判断に迷うケースも多いですから、しっかりと整理していきたいと思います。



適格組織再編・非適格組織再編については、こちらの記事で解説しておりますので、よろしければ、ご覧ください。
【町田市の税理士が解説】組織再編成に係る所得の金額の計算《基礎ログ》
適格組織再編における従業者引継ぎ要件の基本と原則
法人が合併、分割、現物出資などの組織再編を行う場合、一定の要件を満たせば適格組織再編として、資産や負債の譲渡損益の計上を繰り延べることができます。 この適格要件のうち、100パーセントの完全支配関係がない法人間で行われる組織再編(50パーセント超100パーセント未満の支配関係がある場合や、共同事業を行う場合など)において求められるのが、従業者引継ぎ要件です。 法令上の原則的な取扱いとして、たとえば分割の場合、分割に係る分割法人の当該分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね80パーセント以上に相当する数の者が、当該分割後に当該分割に係る分割承継法人の業務に従事することが見込まれていることが要件とされています。 このおおむね80パーセント以上という割合は、実務においても厳格に判定されるため、移転する事業に関わっていた人員の大部分をそのまま引き継ぐ必要があります。



ここでは、総数のおおむね80パーセント以上という数値要件が重要になります。ただし、対象となる従業者の数がそもそも少ない場合などは、1人の増減で割合が大きく変動してしまうため、事業移転前後の人員配置計画を早期に、かつ慎重に策定しておくことが実務上求められますよ。
引継ぎ後の「従事すべき業務」に関する特例と例外的な取扱い
従業者が分割後に従事すべきとされているのは、分割承継法人の業務です。 ここで注意すべき特例的な取扱いとして、必ずしも引き継いだ分割事業そのものに従事しなければならないというわけではありません。 共同事業を営むための適格分割における従業者の引継ぎ要件についても、分割後に従事すべきとされているのは分割事業ではなく、分割承継法人の業務とされています。 したがって、分割承継法人自身が分割前から行っている固有の事業に従事することが見込まれている場合であっても、この要件を満たすこととなります。 さらに法令上の例外的な取扱いとして、分割承継法人との間に完全支配関係がある法人の業務に従事する場合や、当該分割後に行われる適格合併により当該分割事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該合併法人及び当該合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務に従事することが見込まれている場合も、引継ぎ要件を満たすものとして取り扱われます。



引き継いだ従業者が、分割承継法人の既存の事業部門に配属されるケースも実務ではよくあります。このような場合でも引継ぎ要件を満たすことができるのは、企業の柔軟な人員配置を妨げないための合理的な取扱いと言えますね。
通達に基づく「従業者」の範囲と具体例
従業者引継ぎ要件を判定するにあたり、最も論点となりやすいのが誰が従業者に含まれるのかという従業者の意義です。 法人税基本通達1-4-4において、従業者の範囲が明確に示されています。 原則として、従業者は雇用契約があるかどうかといった雇用形態のいかんにかかわらず、役員、使用人その他の者で、被合併法人の合併前に営む事業、分割事業又は現物出資事業に、現に従事する者の全てが含まれることになります。 しかし、具体的な実務上の取扱いにおいては、いくつかの留意点や例外が定められています。
以下の表に、実務で頻出する具体的な者の取扱いを整理いたしました。
| 対象者の種類 | 従業者に含まれるか | 取扱いの具体例・根拠 |
|---|---|---|
| 役員・使用人等 | 含まれる | 雇用形態にかかわらず、現に事業に従事している者は全て含まれるのが原則です。 |
| 日雇労働者等 | 含まれないことができる | 日々雇用契約を締結している日雇労働者等については、実態に合わないため、法人が従業者数に含めないこととしている場合にはそれが認められます。 |
| 出向者・派遣社員 | 含まれる | 他の法人からの出向者や、人材派遣会社から受け入れている派遣社員であっても、現に移転する事業に従事する者であれば含まれます。 |
| 下請先の従業員 | 含まれない | 下請先が自社の工場内で特定のラインを継続的に請け負っている場合でも、下請先の従業員は下請先自身の事業に従事しているにすぎないため含まれません。 |
| 兼務者 | 含まれる(条件あり) | 分割事業等とその他の事業を兼務している者については、主としてその分割事業等に従事していれば、当該事業に係る従業者に含まれます。 |



出向者については通常、従業者に含まれます。
一方で派遣社員については、実質的にどの法人の事業に従事していると評価できるかにより判断が分かれるため、個別具体的に判断する必要があります。自社の直接雇用者だけで計算してしまうと、80パーセントの要件判定を誤るリスクがありますので、実務では人員リストをくまなくチェックしてくださいね。
出向による業務従事の取扱い
分割法人の従業者が、分割承継法人へ転籍するのではなく、出向により分割承継法人の業務に従事する場合に要件を満たすかどうかも、実務上よく問題となります。 適格分割等における従業者の引継ぎ要件は、分割承継法人の業務に従事することが見込まれていることとされています。 法人税基本通達1-4-4で示されているように、雇用形態のいかんを問わず分割事業に従事している者を従業者とする以上、分割後においても分割承継法人の業務に従事すれば特に雇用形態は問われないことになります。 したがって、分割法人の従業者が分割後に分割承継法人の業務に出向により従事した場合であっても、従業者引継ぎ要件を満たすこととなります。 この取扱いは、適格現物出資における従業者の引継ぎ要件についても同様です。



人事制度の統合が間に合わないなどの理由で、組織再編時は一旦出向の形をとり、後日転籍させるといったスキームを採用することがあります。通達により出向でも要件を満たすことが明示されているため、実務上の選択肢が広がりますね。
まとめ
本日は、適格組織再編における従業者引継ぎ要件について解説いたしました。 基本となるおおむね80パーセント以上という引継ぎ割合のルールを押さえるとともに、誰が従業者にカウントされるのか、そして引き継いだ後にどのような業務に従事すればよいのかについて、法令および通達の規定を正確に理解しておくことが不可欠です。 特に、雇用形態を問わず派遣社員や出向者も対象になる点、移転事業だけでなく分割承継法人の既存事業に従事しても要件を満たす点、出向による従事でも問題ない点などは、組織再編のプランニングにおいて非常に重要な知識となります。
なお、従業者引継ぎ要件は「見込み」によって判定されるため、組織再編後に実際の人員が大きく変動した場合には、当初の適格判定が否認されるリスクもあり、計画段階で合理的な人員配置計画とその根拠資料を整備しておくことが重要です。



税務要件を満たしつつ円滑な組織再編を実現できるよう、今回の解説をぜひ実務にお役立てください。










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