【町田市の税理士が解説】法人税における「利益積立金額」の原則から実務上の留意点まで徹底解説

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年6月7日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、法人税申告の実務において非常に重要な「利益積立金額」について確認していきたいと思います。別表五(一)の作成で必ず直面する概念ですね。

ミミレイドン

利益積立金額ですね。会計上の利益剰余金と似ている気がしますが、そのまま税務上の数字として使ってはいけないのですよね。

新屋賢人

おっしゃる通りです。会計上の利益剰余金をベースにしつつも、税務固有の調整を加えたものが利益積立金額となります。別段の定めや組織再編成などの特殊な取引が絡むと、計算が非常に複雑になることがあります。

ミミレイドン

なるほど。実務で間違えやすいポイントも多そうですね。基礎からしっかりと教えてください!

利益積立金額とはなにか

目次

利益積立金額の原則的な定義

法人税法上、法人の純資産は大きく「資本金等の額」と「利益積立金額」の二つに区分されます。利益積立金額とは、法人の所得の金額で留保している金額をいいます。

簡単に申し上げますと、法人がこれまでの事業活動を通じて稼得した過去の「所得」のうち、社外に流出せず(配当等で分配されず)、また法人税等の税金として納付されずに、社内に留保されている金額の累積額を指します。

企業会計における「利益剰余金」と概念としては共通していますが、計算のスタート地点が会計上の「利益」ではなく、税務上の「所得」である点が異なります。したがって、利益積立金額は、会計上の利益剰余金そのものではなく、税務上の所得金額を基礎としつつ、受取配当等の益金不算入額や欠損金の繰越控除額など、法人税法施行令第9条に定められた加減算項目を反映して計算されます

なお、別表四の調整項目がすべて利益積立金額に反映されるわけではありません。別表四で「留保」とされる項目は別表五(一)に連動しますが、「社外流出」とされる項目は、原則として社内に留保された税務上の純資産を構成しない点に注意が必要です。

新屋賢人

利益積立金額は、別表五(一)で毎期計算を行い、翌期へと繰り越されていきます。過去の別表調整の蓄積でもありますから、過去の申告書で誤りがあると、その後の事業年度の利益積立金額も連鎖的に間違えてしまうことになります。実務上は、期首の利益積立金額が前期末の金額と一致しているかを必ず確認するようにしてください。

利益積立金額の計算構造と増減項目

利益積立金額は、過去の事業年度の増減項目の累積額に、当期の増減項目を加減算して計算されます。法人税法施行令第9条において、どのような項目が利益積立金額を増加させ、あるいは減少させるかが厳密に規定されています。

原則的な増加項目

利益積立金額を増加させる主な項目は以下の通りです。
・所得の金額(各事業年度の課税所得)
・受取配当等の益金不算入額(法人税法第23条の規定により益金の額に算入されない金額)
・外国子会社から受ける配当等の益金不算入額
・受贈益の益金不算入額(法人税法第25条の2の規定によるもの)
・還付金等の益金不算入額(法人税や地方法人税、道府県民税、市町村民税の還付額など)
・欠損金の繰越控除等により所得の金額の計算上損金の額に算入される金額

これらの項目は、税務上の純資産を増加させる性質を持つため、利益積立金額にプラスされます。

原則的な減少項目

利益積立金額を減少させる主な項目は以下の通りです。
・欠損金額(各事業年度の税務上の赤字額)
・納付すべき法人税、地方法人税、道府県民税、市町村民税の額
・株主等に交付する剰余金の配当等の額(株式等に係る剰余金の配当や利益の配当など)

利益の社外流出に該当する税金の納付や株主への配当、そして税務上の赤字である欠損金額は、留保金額を減少させるためマイナス項目となります。なお、事業税は、法人税法施行令第9条における法人税・地方法人税・法人税に係る住民税等の減少項目には含まれていません。事業税は、原則として申告等により債務が確定した事業年度の損金として所得金額の計算に反映されるため、利益積立金額の減少項目として直接控除する税金とは取扱いが異なります。

組織再編成における特例的な取扱い

通常の事業活動だけでなく、合併や分割などの組織再編成が行われた場合にも、利益積立金額の増減が生じます。

適格合併等(適格合併や適格現物分配など)が行われた場合、被合併法人等の有していた利益積立金額は、原則としてそのまま合併法人等に引き継がれます。これを「合併による増加項目」として加算します。 一方で、適格分割型分割などにより資産や負債を分割承継法人へ移転させた場合には、分割法人において、移転した純資産の帳簿価額に相当する額などを控除して利益積立金額を減算する処理を行います

組織再編における利益積立金額の計算は、移転する純資産の簿価額や資本金等の額との調整が複雑に絡むため、非常に高度な検討が求められます。

増減項目の比較表

ここで、実務上頻出する利益積立金額の増減項目について表に整理しておきましょう。

区分主な項目(法人税法施行令第9条に基づく)実務上の性質
増加項目所得の金額税務上の黒字額
増加項目受取配当等の益金不算入額税務上の非課税収益
増加項目欠損金の繰越控除額過去の赤字の当期充当額
増加項目法人税・住民税の還付額税金の戻り額
減少項目欠損金額税務上の赤字額
減少項目法人税・住民税等の納付額利益の社外流出(税金)
減少項目剰余金の配当等の額利益の社外流出(配当)
新屋賢人

利益積立金額の計算においては、別表四の留保項目が利益積立金額を構成するという大原則を意識することが重要です。社外流出とされた項目は、純資産として社内に残らないため、利益積立金額には影響を与えません。別表四と別表五(一)の連動性を理解することが、税務申告書を正確に作成するための第一歩となります。

実務で迷いやすい基本通達の解説

利益積立金額の計算実務において、疑問が生じやすい論点について、法人税基本通達に基づき具体的に解説いたします。

納付すべき道府県民税等の計算上の留意点

利益積立金額を減少させる項目に「納付すべき道府県民税、市町村民税」が含まれています。この税額をいつの時点で、どのように計算すべきかが問題となります。

法人税基本通達1-6-1によれば、利益積立金額を計算する場合の道府県民税等の金額は、利益積立金額の計算を行う時までに確定している法人税額を基礎として計算した金額によることとされています。実際の実務においては、複数の都道府県に事業所を有する法人の場合など、各地方自治体の税率が区々にわたり、正確な税額計算が困難なケースが少なくありません。

そのため、実際の税率による計算が困難である場合には、「標準税率」により計算した金額を用いることが例外的に認められています。この場合において、後日、道府県民税等の申告、更正または決定により過不足額が生じたときは、その過不足額は、該当する申告等のあった日の属する事業年度開始の日において期首の利益積立金額を増減して調整することと定められています。

ただし、適格合併における被合併法人の最後事業年度や、みなし配当の計算の基礎となる事業年度の利益積立金額の計算については、他の法人の計算にも直接影響を及ぼすため、この標準税率による計算の特例は認められず、適正額によつて計算すべき点に留意が必要です。

利益積立金額がマイナスである場合の留保金額の計算

法人の業績が悪化し、過去の赤字が累積している場合、利益積立金額がマイナスになることがあります。この場合の特別な計算の取扱いについても確認しておきましょう。

特定同族会社の留保金課税(法人税法第67条)においては、留保控除額を計算する際に、期末資本金等の額の25%相当額から期末利益積立金額を控除することとされています。ここで、利益積立金額がマイナスである場合、マイナスのまま計算するのか、それともゼロとして計算するのかが疑問となります。

法人税基本通達16-1-7では、法第67条第5項の留保控除額を計算する場合において、期末の利益積立金額がマイナスであるときは、そのマイナス金額をゼロとみなすのではなく、資本金の額又は出資金の額の25%相当額と、そのマイナス金額との差額に相当する金額として計算することが示されています。

例えば、資本金の額の25%相当額が1,000万円で、期末利益積立金額がマイナス500万円である場合には、同号に規定する金額は1,000万円ではなく、1,500万円となります。この取扱いは、期末利益積立金額がマイナスである場合には、その欠損の累積部分も踏まえて、資本金等の額の25%相当額に達するまでの余裕額を計算する趣旨によるものと考えられます。

新屋賢人

税金計算において標準税率を用いることができるのはあくまで実務上の便宜に基づく特例です。組織再編が絡む場面では厳格な適正額の計算が求められますから、原則と特例の使い分けを誤らないように注意してください。また、留保金課税におけるマイナス利益積立金額のゼロ評価など、通達に明記された取扱いを知っておくことで、申告書の作成において迷うことがなくなりますよ。

まとめ

本日は、法人税申告における中核概念である「利益積立金額」について解説いたしました。

利益積立金額は、企業会計上の利益剰余金と似て非なる税務独自の純資産概念です。法人税法施行令第9条に基づく厳密な加減算項目(所得の金額、税金の納付、配当等)によって計算され、さらに組織再編時における引継ぎや調整など、非常に専門的な知識を要する分野でもあります。また、道府県民税等の計算時における標準税率の適用や、マイナス時のゼロ評価など、実務特有の取扱いも基本通達によって詳細に定められています。

新屋賢人

申告実務において別表五(一)を作成する際は、これらの法令や通達の原則と例外を正確に理解し、過去の事業年度からの連続性を保ちながら丁寧に計算を進めることが何より大切です。本日の解説が、皆様の正確な税務申告の一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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