【町田市の税理士が解説】消費税実務における資産の譲渡の範囲Part2(損害賠償金、容器保証金等の取扱いなど)

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月20日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、前回に引き続き「消費税実務における資産の譲渡の範囲Part2」として、損害賠償金、容器保証金等、建物賃貸借契約の解除等に伴う立退料、剰余金の配当等、自己株式の取り扱い、そして対価補償金等の取扱いについて詳しく解説します。

ミミレイドン

どれも名前だけ聞くと、消費税がかかるのかどうかわかりにくいものばかりですね。

新屋賢人

そうですね。名称のいかんにかかわらず、その取引の実質から「資産の譲渡や貸付け、役務の提供に係る対価」に該当するかどうかを判定することが重要です。今回は少し長くなりますが、実務において非常に重要な論点ですので、しっかりと学んでいきましょう。

ミミレイドン
目次

損害賠償金の消費税における取扱い

原則として、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金は、資産の譲渡等に係る対価に該当しないため、消費税の課税対象にはなりません

しかしながら、その名称が損害賠償金であっても、その実質によって資産の譲渡等の対価に該当するかどうかを判定すべきです。具体的には、次のような損害賠償金は、その実質からみて資産の譲渡又は資産の貸付けに係る対価に該当することになります。

  1. 損害を受けた棚卸資産等が加害者(加害者に代わって損害賠償金を支払う者を含みます)に引き渡される場合で、その棚卸資産等がそのまま又は軽微な修理を加えることにより使用できるときに、当該加害者から当該棚卸資産を所有する事業者が収受する損害賠償金
  2. 無体財産権の侵害を受けた場合に、当該加害者から当該無体財産権の権利者である事業者が収受する損害賠償金
  3. 不動産等の明渡しの遅滞により、当該加害者から当該賃貸人である事業者が収受する損害賠償金
新屋賢人

損害賠償金として処理されていても、例えば事務所の明渡しが遅れたことにより賃貸人が収受する損害金は、実質的には資産の貸付けの対価に該当します。そのため、国内取引の判定や非課税規定の適用関係を確認した上で、課税関係を判断する必要があります。

容器保証金等の取扱い

びん、缶、又は収納ケース等の容器込みで資産を譲渡する場合に、その容器を引き渡す際に収受し、消費した後に空の容器等を返却したときには返還することとされている保証金等については、容器の返却を担保するために受領する預り金としての性格のものであり、資産の譲渡等の対価には該当しません

ただし、実務上は当該容器等が何らかの原因により返却されないこととなったために返還しないこととなった保証金等が発生することがあります。この場合の取扱いは、当事者間の処理方法によって異なります。

当事者間において当該容器等の譲渡の対価として処理することとしている場合は、当該容器等の資産の譲渡の対価に該当します。 一方、当事者間において損害賠償金として処理することとしている場合は、資産の譲渡等の対価に該当しないこととされています。

当事者間の処理方法資産の譲渡等の対価への該当性
譲渡の対価として処理している場合該当する(課税対象)
損害賠償金として処理している場合該当しない(課税対象外)
新屋賢人

この取扱いについては、請求書や領収書などの書類で、当事者間がどちらの処理をしたのかを明確にしておくことが重要です。実務の統一を図る見地からも、当事者間で授受する書類で処理を明らかにする必要があります。

建物賃貸借契約の解除等に伴う立退料の取扱い

借家又は借地の立退きに際し、賃借人が賃貸借の目的とされている建物等の契約の解除に伴い賃貸人から収受する立退料には、一般的に次のような性格があります。

  1. 賃借権の消滅に対する補償としての性格(賃借人が家屋等を明け渡すことによって消滅する権利の対価としての補償金)
  2. 収益補償としての性格(立退きに伴う営業の休止により事実上生じる収益の補償や給与の支払などの損失の補償金)
  3. 移転費用の補償としての性格(賃借人が家屋等を明け渡すための移転費用として直接支払わなければならない費用の実費補償金)

通達では、このような性格を有する立退料等について、いずれの場合にも資産の譲渡等の対価に該当しない(課税対象外である)ことが明らかにされています。この取扱いは、不動産業者などの取引の仲介を行う者を経由して支払われる場合も同様です。

ただし、例外的な取扱いとして、立退料等と称していたとしても、賃貸借契約を解除することなく当該賃借人たる地位を「賃貸人以外の第三者」に譲渡し、その対価として立退料等を収受した場合については、建物等の賃借権の譲渡に係る対価として受領されるものであるため、資産の譲渡等の対価に該当することになります。

第三者に賃借人たる地位を譲渡した場合は、資産の譲渡等の対価に該当します。ただし、実際に消費税が課税されるかどうかについては、譲渡される賃借権等の内容や非課税規定の適用関係を別途確認する必要があります。

新屋賢人

誰から誰へ支払われる立退料なのか、権利が消滅しているのか、それとも権利を第三者へ譲渡しているのかによって、課税の判定が正反対になるという点に十分留意してください。

剰余金の配当等及び自己株式の取り扱い

剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配(出資に係るものに限ります)は、株主又は出資者たる地位に基づき、出資に対する配当又は分配として受けるものであるため、資産の譲渡等の対価には該当しません

特例的な取扱いとして、事業者が、法人税法第60条の2第1項第1号の「協同組合等の事業分量配当等の損金算入」に掲げる事業分量配当(当該事業者が協同組合等から行った課税仕入れに係るものに限ります)を受けた場合には、仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の特例の規定が適用されることになります。

また、自己株式については、消費税法基本通達5-2-9に明確な取扱いが定められています。法人が自己株式を取得する場合(証券市場での買入れによる取得を除きます。)における株主から当該法人への株式の引渡し、及び法人が自己株式を処分する場合における他の者への株式の引渡しは、いずれも資産の譲渡等に該当しません

ただし、証券市場での買入れによる自己株式の取得については、この通達の取扱いから除かれているため、売主側において通常の有価証券の譲渡として非課税規定等を検討する必要があります。

新屋賢人

協同組合等からの事業分量配当金については、配当という名称であっても、実質的には仕入割戻しと同じ性格を有するため、仕入れに係る消費税額の控除の特例が適用されることに注意しましょう。

対価補償金等の取扱い(収用等の場合)

事業者が、土地収用法その他の法律に基づいて所有権その他の権利を収用され、その権利を取得する者から権利の消滅に係る対価補償金を受け取った場合には、消費税法上、対価を得て資産の譲渡を行ったものとみなされます

ただし、「資産の譲渡があったものとみなされる」ことと、「消費税が課税される」ことは同じではありません。例えば、土地の収用に係る対価補償金は土地の譲渡に係る対価として取り扱われますが、土地の譲渡は原則として非課税です。一方、建物や設備等の収用に係る対価補償金は、他の課税要件を満たす場合には課税対象となります

したがって、対価補償金については、収用された資産又は権利の種類ごとに課税・非課税等を判定する必要があります。

一方で、次のような補償金は対価補償金には該当せず、資産の譲渡の対価とはなりません。

  1. 事業について減少することとなる収益又は生ずることとなる損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金(いわゆる収益補償金)
  2. 休廃業等により生ずる事業上の費用の補填又は収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産について実現した損失の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金(いわゆる経費補償金)
  3. 資産の移転に要する費用の補てんに充てるものとして交付を受ける補償金(いわゆる移転補償金)
  4. その他対価補償金たる実質を有しない補償金
補償金の種類消費税の取扱い
対価補償金(権利の消滅に係る補償金)該当する(課税対象となる)
収益補償金(収益や損失の補填)該当しない(課税対象外)
経費補償金(休廃業等の費用の補填等)該当しない(課税対象外)
移転補償金(移転に要する費用の補填)該当しない(課税対象外)
新屋賢人

収用に伴って支払われる補償金は、内訳ごとにその実質が異なります。名目が補償金であっても、資産の譲渡等に該当する部分とそうでない部分を正確に区分することが実務上極めて重要です。

まとめ

今回は、損害賠償金、容器保証金、立退料、配当、自己株式及び収用等に伴う補償金について、資産の譲渡等の対価に該当するかどうかを解説しました。

消費税の判定では、金銭の名目だけでなく、その金銭が実質的に何の対価として支払われているのかを確認することが重要です。

また、資産の譲渡等の対価に該当する場合でも、直ちに消費税が課税されるとは限りません。土地の譲渡や貸付けなどについては、別途、非課税規定の適用を検討する必要があります。

反対に、資産の譲渡等の対価に該当しない損害賠償金、収益補償金、経費補償金及び移転補償金などは、「非課税取引」ではなく、原則として消費税の「課税対象外」と整理されます。

新屋賢人

実務では、契約書、補償金の明細書、請求書、領収書その他の関係書類を確認し、金銭の性質や対象資産ごとに課税関係を判断することが大切です。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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