ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年4月16日のテーマはなんでしょうか?



今朝は「損害賠償金」に関する税務上の取扱いについてです。会社が損害賠償金を受け取る場合や支払う場合、それぞれのタイミングについて整理していきましょう。



損害賠償金ですか。賠償金をもらう時はもらった時、払う時は払った時に計上すればよいのではないでしょうか?



一見そのように思えますが、税務上は「権利が確定した時点」や「申し出をした時点」など、状況に応じて非常に細かいルールが定められているのです。



そうなのですね。どのような基準で判断すればよいか、ぜひ詳しく教えてください。



承知いたしました。受け取る側と支払う側、それぞれの原則的な取扱いから例外的な取扱いまで確認していきましょう。
1. 損害賠償金を受け取る場合の益金算入時期
損害賠償金を受け取る側の法人にとって、その賠償金をいつの事業年度の益金(収益)として計上すべきかは非常に重要な論点です。法人税基本通達2-1-43では、この帰属の時期について原則と例外を設けています。
・原則的な取扱い(確定基準)
他者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含みます)の額は、原則として「その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度」の益金の額に算入します。
被害を受けた時点で自動的に損害賠償請求権を取得するという民法上の考え方もありますが、税務上はこれを第一義的に適用しません。なぜなら、相手方がそもそも賠償責任を認めるかどうかに争いがある場合など、示談の成立、和解、あるいは裁判の判決等の結果を待たなければ、実際にいくらの賠償金を受け取れるかが客観的に確定しないからです。したがって、当事者間の合意や裁定などにより「支払を受けるべきこと及びその金額が確定した日」を益金算入の時期とします。
・例外的な取扱い(実際の受領基準)
一方で、支払を受けるべき金額が確定したとしても、相手方の支払能力などからみて、現実にその支払を受けることができるかどうかが極めて不安定なケースが多々あります。
そのため、例外的な取扱いとして、法人がその損害賠償金の額について「実際に支払を受けた日の属する事業年度」の益金の額に算入している場合には、税務上も弾力的にこれを認めることとされています。
| 取扱い | 益金算入のタイミング | 要件・特徴 |
|---|---|---|
| 原則 | 支払を受けるべきことが確定した日 | 示談成立や判決等により権利と金額が客観的に確定した時点 |
| 例外 | 実際に支払を受けた日 | 相手方の支払能力等に疑問があり、実際に受け取った時点で益金処理している場合に容認 |



損害賠償金の請求中である段階では、まだ益金に計上する必要はありません。示談書や判決書の日付で確定させるのが基本ですが、相手の資金繰りが怪しい場合は、実際に振り込まれた日を基準に処理することも認められますので、実態に合わせて対応するようにしてください。
2. 損害賠償の基因となった損失の損金算入時期
損害賠償金を受け取るということは、その前提として自社に何らかの損害(損失)が発生していることを意味します。この損失の税務上の処理についても確認しておきましょう。
・損失の発生年度での損金算入
損害賠償金の益金算入時期は「確定した日」や「実際に受け取った日」ですが、その原因となった損失(被害を受けた資産の損失額や修繕費など)については、「その損害の発生した日の属する事業年度」の損金の額に算入することができます。
つまり、損失の発生と損害賠償金の受領は切り離して認識され、損害賠償請求権の確定を待たずに、損失をその発生時点で計上することが認められています。
・保険金等で補填される部分の除外
ただし、注意点があります。当該損失の額の全部又は一部が、損害保険契約や損害共済契約に基づく保険金又は共済金によって補填されることとなっている場合には、保険金収入との対応関係を要求されるため、その補填される部分の金額については損害発生年度の損金に算入することはできません。保険契約に基づく給付はあらかじめ予測が可能であり、支払を受けられない方が稀であるため、このような取扱いがされています。



損失は発生時に先行して損金算入できますが、損害保険を掛けている場合は事情が変わります。保険金でカバーされる見込みの金額は、保険金が確定するまで損失にすることもできませんので、保険契約の有無と補填される範囲は必ず確認するようにいたしましょう。
3. 役員や使用人による横領等の場合の特例
損害賠償金の相手方が一般の第三者ではなく、「自社の役員又は使用人」であり、その原因が横領や使込みなどの不正行為であった場合には、通常の損害賠償金とは異なる慎重な取扱いが必要になります。
・役員等に対する請求の帰属時期の判断
法人が他者から支払を受ける損害賠償金の帰属時期を定めた法人税基本通達2-1-43は、相手方が「他の者」である場合に限ってその取扱いを明らかにしています。役員や使用人による不法行為は、それが個人的なものか法人としてのものかの区別が難しいケースが多く、事案の個別性が強いため、通達の明文ルールとして一律に処理を定めることは困難とされています。 したがって、役員や使用人による横領等については、損害発生時に損失の計上と損害賠償請求権の益金算入を同一事業年度で認識すべきかが実務上の大きな問題となりますが、個々の事案の実態に基づく慎重な判断が求められます。
・損失と賠償請求権の同時認識(同時両建て)の方向性
一律のルールではないものの、権利確定主義の観点に基づく一般的な考え方や、これまでの裁判例・裁決例においては、横領等による損害の発生時には相手方や損害額が明らかであることが多いため、その時点で損害賠償請求権が確定したものとみなす方向性が示されています。 つまり、通常は、役員等による横領等によって法人が損害を受けた被害発生事業年度において、損失を損金の額に算入するとともに、損害賠償請求権を益金の額に算入するという処理になるケースが多く見受けられます。
・事実関係に争いがある場合の例外
ただし、相手方が自社の役員や使用人であっても、特許権や著作権などの権利の帰属を巡る損害賠償請求や、交通事項における損害賠償請求のように、権利侵害の事実の確定や損害・過失割合の算定を待たねば権利が確定しない性質のものについては、取扱いが異なります。このような事実関係などに争いが生じるものについては、通常の損害賠償金と同様に、当事者間の合意や裁判の判決などによって事実等が確定した時点において損害賠償請求権を益金の額に算入することになります。



従業員の横領が後から発覚した場合、通達の明文ルールとして必ず横領された期に遡って認識しなければならないと一律に決まっているわけではありません。しかしながら、実務の考え方や過去の判例・裁決においては、発生年度に遡って損失と収益を同時両建てで認識する方向性が強く示されています。判断の難しいデリケートな事案ですので、不正が発覚した際はご自身で判断せず、事案の実態を客観的に整理した上で、我々専門家に早めにご相談ください。
4. 損害賠償金を支払う場合の損金算入時期
ここまでは受け取る側の解説でしたが、ここからは法人が業務の遂行に関連して他者に損害を与え、損害賠償金を支払う側の取扱いについて解説します(法人税基本通達2-2-13)。
・原則的な取扱い(債務確定基準)
損害賠償金を支払う場合、法人税法が定める「債務確定基準」により、事業年度終了の日までにその賠償すべき額が確定しているものでなければ、損金の額に算入することはできません。



債務確定基準については、昨日のブログで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】販売費及び一般管理費等の債務確定の判定基準とは《基礎ログ》
・未払金への計上による特例的な取扱い
しかし、損害賠償の事案においては、被害者との交渉が長期化し、事業年度末までに最終的な賠償額の確定に至らないケースがあります。このような場合、法人が事業年度終了の日までに、自らが賠償すべき額として相手方に申し出た金額があるときは、その申し出た金額(相手方に対する申出に代えて第三者に寄託した額を含みます)を当該事業年度の未払金に計上することを条件として、その事業年度の損金の額に算入することが認められます。
ただし、その申し出た金額のうち、法人が加入している保険金等により補填されることが明らかな部分の金額については、損金の額から除外する必要があります。
・損害賠償金を年金として支払う場合の例外
損害賠償金を一括ではなく年金形式で定期的に支払う合意をした場合には、将来の支払額をまとめて当期の未払金に計上することはできません。年金として支払う場合は、その年金の額は「これを支払うべき日の属する事業年度」の損金の額に算入することとされています。
| 状況 | 損金算入の要件・タイミング |
|---|---|
| 金額が確定している場合 | 賠償額が確定した事業年度の損金に算入 |
| 期末時点で未確定の場合 | 相手方に申し出た金額等を未払金計上することで当期の損金に算入(保険補填分を除く) |
| 年金として支払う場合 | 各支払期日が到来した事業年度の損金に算入 |



賠償額の交渉が難航している場合でも、決算期末までに自社の責任を認めて一定の金額を相手方に明確に申し出た事実があれば、その金額までは損金算入の道が開かれています。ただし、申し出た事実を客観的に証明できる書面などを必ず残しておくことが実務上は極めて重要です。
5. 外国法人が受け取る損害賠償金の特例
最後に、少し特殊な論点として、外国法人が日本国内で受け取る損害賠償金についての取扱いにも触れておきます。
外国法人が日本国内において行う業務又は国内にある資産に関して受ける損害賠償金は、国内源泉所得に該当し得ます。さらに、その損害賠償金等が、人的役務の提供の対価や国内にある不動産等の貸付けの対価に代わる性質を有する場合には、法人税基本通達20-2-15により、法138条1項4号又は5号の「対価」に含まれるものとして取り扱われます。



名目が「損害賠償金」となっているからといって、無条件に非課税や免税になるわけではありません。実質的に「本来得られるはずだった国内での収益」を補填する性質のものであれば、日本の課税権が及ぶことになりますので、国際取引が絡む場合は契約の実態を慎重に判断してください。
まとめ
本日は、「損害賠償金」に関する税務上の取扱いについて、受け取る側と支払う側の双方の視点から解説いたしました。
損害賠償金を受け取る場合は、原則として合意や判決等により金額が「確定した日」の属する事業年度の益金となりますが、回収が不透明な場合は「現実に支払を受けた日」の益金とすることも認められます。
一方、支払う側は、期末までに金額が確定していることが大原則ですが、未確定であっても期末までに相手方に申し出た金額を未払計上すれば損金算入が認められる特例があります。
また、損害の基因となった損失の計上時期や、役員等の横領による損害の確定時期、保険金等による補填額の扱いなど、状況に応じて判断が分かれる複雑なポイントが多々存在します。



損害賠償事案は予期せぬタイミングで発生し、金額も多額になる傾向があります。事実関係の正確な把握と、客観的な証拠書類に基づく慎重な税務判断が求められますので、処理に迷われた際はぜひ我々専門家にご相談ください。










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