【町田市の税理士が解説】所得税実務における給与課税しない経済的利益Part2:掘採場燃料や無利息貸付など

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年7月1日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は昨日に引き続き『給与課税しない経済的利益 Part2』についてです。昨日学んだ例外的な取扱いの基本的な考え方は覚えていますか?

ミミレイドン

はい!現金以外で受け取る経済的利益は原則として給与課税の対象になりますが、少額であったり福利厚生の目的であれば、特例として課税されないケースがあるということですよね。Part2ではどのような内容を学ぶのでしょうか?

新屋賢人

その通り、しっかりと理解していますね。今回はPart2として、さらに具体的な事例である、掘採場勤務者に支給する燃料、寄宿舎の電気料等、会社からの金銭の無利息貸付、そして自社サービスの提供等に関する取扱いについて、詳しく解説していきましょう。

ミミレイドン

昨日のPart1については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】所得税実務における給与課税しない経済的利益Part1

目次

原則的な取扱い:経済的利益とは何か

所得税法第36条第1項では、収入金額とすべき金額は「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」を含むと明確に規定されています。つまり、現金以外の形であっても、使用者が役員や従業員に対して提供する物やサービス、債務の免除などは、原則として給与所得として課税されることになります。

しかしながら、従業員の福利厚生の一環として提供されるものや、金額が少額であってわざわざ税金を計算し徴収することが煩雑であるものについては、一定のルールの下で課税しなくてもよいという例外的な取扱いが基本通達によって定められています。この「原則課税、例外として非課税(課税しない)」という基本構造をしっかりと理解しておくことが、税務実務においては非常に重要となります。

新屋賢人

経済的利益の評価は、その利益を受けた時の価額(時価)で行うのが原則です。しかし、すべての経済的利益に課税してしまうと、実務の現場は混乱してしまいます。そのため、これから解説する通達の要件に合致しているかを慎重に見極めることが、重要となります。

掘採場勤務者に支給する燃料の取扱い

まずは、少し特殊な業種における取扱いである「掘採場勤務者に支給する燃料」について解説します(所得税基本通達36-25)。

鉱業を営む使用者が、自己の掘採場(これに隣接して設置されている選鉱場、製錬場その他の付属設備を含みます)に勤務する使用人に対して、石炭や薪などの燃料を支給することがあります。原則として、このような物品の支給は現物給与として課税されます

しかし、鉱山などの現場では、従業員の保健衛生のために、入浴や洗濯、衣服の乾燥などで家庭で多くの燃料を必要とする事情があります。使用者が共同の大きな厚生施設(大浴場など)を設置する代わりに、各家庭に燃料を支給することで福利厚生に代えていると認められる程度の少額なものについては、実態に即して給与として課税しなくて差し支えないこととされています

要件としては以下の通りです。

  1. 対象者:自己の掘採場や隣接する付属設備に勤務する使用人であること
  2. 目的:対象者の保健衛生のためであること
  3. 程度:社会通念上通常必要な厚生施設の設置に代えて支給すると認められる程度の石炭、薪等の燃料であること
新屋賢人

この通達は、あくまで『社会通念上通常必要な厚生施設の設置に代えて支給すると認められる程度』であることがポイントです。常識的な範囲を超えて大量の燃料を支給したり、換金して利益を得られるような状況であれば、当然ながら課税対象となりますので注意してくださいね。

寄宿舎の電気料等の取扱い

次に、「寄宿舎の電気料等」の取扱いについて解説します(所得税基本通達36-26)。

会社が用意した従業員用の寄宿舎や寮において、電気、ガス、水道などの料金を会社が負担した場合、従業員はその光熱費を免れているため、原則として経済的利益を受けたことになります。しかし、この場合も一定の条件を満たせば課税しなくてよいとされています。

ここでいう寄宿舎には、これに類する施設も含まれます。「寄宿舎」とは、一般にトイレ、浴室、台所などが共用となっているような施設を指します。このような施設では、個別の部屋ごとに電気メーターや水道メーターが設置されていないことが多く、誰がどれだけ使用したかを正確に把握することが困難です。

特例として課税されないための要件は以下の2点です。

  1. その寄宿舎に居住するために通常必要であると認められる範囲内のものであること
  2. 各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでないこと
新屋賢人

ここで実務上よく問題になるのが、一般のワンルームマンションを借り上げて社宅としているようなケースです。個別の部屋ごとにメーターが設置されており、各人の使用料金が明確に計算できる場合には、この通達の『各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない』という要件を満たしません。したがって、会社が個人の光熱費を負担した場合は、原則通り給与として課税する必要がある点に十分留意してください。

金銭の無利息貸付等による経済的利益の取扱い

役員や従業員に対して、会社が金銭を無利息または低い利息で貸し付けるケースは実務で頻繁に見受けられます(所得税基本通達36-28)。

原則的な取扱いとして、会社から金銭を無利息または低利で借りた場合、その借りた人は「通常の利息を支払わなくて済んだ」という経済的な利益を受けていることになります。そのため、原則として、通常の利率により計算した利息の額と、実際に支払っている利息の額との差額が、給与として課税されることになります

しかし、例外的な取扱いとして、次のいずれかに該当する場合には、その受ける経済的利益について給与課税をしなくて差し支えないと規定されています。

非課税となるケース(例外的な取扱い)要件や詳細
災害や疾病等のための臨時の貸付け災害、疾病などにより臨時に多額な生活資金を要することとなった役員や使用人に対し、その資金に充てるために貸し付けた金額であること。かつ、その返済期間が合理的と認められる期間内であること。
平均調達金利などによる貸付け役員や使用人に貸し付けた金銭につき、使用者における借入金の平均調達金利など合理的な貸付利率を定め、その定められた利率によって利息を徴収していること。
少額な経済的利益(5,000円基準)上記の2つの貸付金以外の貸付金について受ける経済的利益で、その年における利益の額(通常の利息と実際の利息の差額)が5,000円以下であること。

利息相当額の評価については、会社が他から借り入れて貸し付けたことが明らかな場合にはその借入金の利率により、その他の場合には貸付けを行った日の属する年に応じた所定の利率により計算するのが基本です。また、会社における借入金の平均調達金利など、合理的と認められる貸付利率を定め、その利率により利息を徴している場合には、所得税基本通達36-28により給与課税しなくて差し支えないとされています。また、5,000円以下の少額基準については、役員や使用人に対する各種の貸付金全体の利益の額を合計して判定する必要があります。

新屋賢人

貸付金の利息免除に関する5,000円基準は、個人事業主等の場合にはその年、使用者が事業年度を有する法人である場合にはその法人の事業年度における利益の合計額で判定します。なお、法人の事業年度が1年に満たない場合には、5,000円をその事業年度の月数に応じて按分した金額により判定します。また、会社が銀行等から借り入れた資金をそのまま役員又は使用人に貸し付けたことが明らかな場合には、その借入金の利率により利息相当額を評価します。したがって、その借入金利以上の利息を徴収していれば、原則として利息差額に係る給与課税は生じません。また、会社全体の借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、その利率により利息を徴収している場合にも、所得税基本通達36-28により課税しなくて差し支えないとされています。

用役の提供等の取扱い

最後に、自社のサービス(用役)の提供や、福利厚生施設の運営費負担に関する取扱いについて解説します(所得税基本通達36-29)。

サービス業などを営む使用者が、役員や従業員に対して自社のサービスを無償または安価で提供した場合、原則としては経済的利益として給与課税の対象となります。 しかし、通達では、使用者がその営む事業に属する用役(サービス)を無償または通常の対価に満たない対価で提供する場合や、役員や従業員の福利厚生のための施設の運営費等を負担する場合について、例外的な取扱いを定めています

具体的には、以下の要件を満たせば課税しなくて差し支えないとされています。

  1. 提供を受ける利益の額が、著しく多額であると認められる場合でないこと
  2. 役員だけを対象として供与される場合でないこと

この通達が想定しているのは、興行業、クリーニング業、理容業、運送業などのサービス業を営む企業が、従業員の日常生活に関して自社のサービスを提供する場合です。また、自社で保有する保養所、理髪室などの福利厚生施設を従業員に利用させたり、外部の旅館や理髪店などと契約して従業員に利用させたりする場合の運営費や契約費用の負担についても、著しく多額でなく、かつ役員のみを優遇するものでなければ、課税対象から除外されます

新屋賢人

この規定の重要なキーワードは『役員だけを対象として供与される場合を除き』という部分です。特定の役員だけが高級な保養施設を無料で使い放題になっているようなケースは、明確に給与(役員賞与)として課税されるリスクが高いです。福利厚生費として認められるためには、一般の従業員も平等に利用できる機会が担保されていることが前提となります。

まとめ

本日は、給与課税されない経済的利益について、掘採場勤務者の燃料、寄宿舎の電気料等、金銭の無利息貸付等、用役の提供等の4つの論点を解説しました。

すべての根底にあるのは、原則としては金銭以外の利益も課税対象になるというルールです。その上で、仕事の性質上の必要性や、福利厚生としての側面、そして少額であるために税務執行上の便宜を考慮した結果として、通達による非課税の例外が設けられています。

これらの特例を適用するためには、対象者の範囲(役員限定になっていないか)、金額の多寡(社会通念上妥当か)、個別の利用状況の把握が可能かどうかなど、非常に細かい要件を満たす必要があります。実務においては、会社の良かれと思った現物支給が、後から税務調査で給与課税されてしまい、源泉所得税の追徴や延滞税等のペナルティを受けるケースも少なくありません。

新屋賢人

もし自社の福利厚生や現物支給の仕組みについて少しでも不安や疑問がある場合は、お気軽に私たち専門家にご相談ください。正確な法令解釈に基づき、皆様のビジネスをしっかりとサポートさせていただきます。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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