【町田市の税理士が解説】所得税実務における給与課税しない経済的利益Part1

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年6月30日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、所得税実務において非常にご相談の多い『課税しない経済的利益』について確認していきたいと思います。具体的には、Part1として、永年勤続者の記念品等、創業記念品等、商品製品等の値引き販売、そして残業または宿直等をした者に支給する食事の4つのテーマを取り上げます。

ミミレイドン

経済的利益というと、昨日取り上げた、お給料として支給される現金以外の現物支給などのことですね。原則としてはすべて課税されるんですよね?

新屋賢人

おっしゃる通りです。原則として、役員や使用人が使用者から受ける経済的な利益は給与所得として課税されます。しかし、福利厚生の観点や、少額であって課税上弊害がないものについては、特例として非課税とする取り扱いが所得税基本通達で定められているのです。今日はその細かい要件をしっかりと確認していきましょう。

ミミレイドン

昨日の給与として課税される経済的利益については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】所得税実務における給与として課税される経済的利益について

経済的利益の課税の原則と非課税の特例の概要

給与所得を有する者が使用者から受ける金銭以外の物や権利その他の経済的な利益は、原則として給与所得に含まれ、課税の対象となります。しかしながら、企業が福利厚生等の一環として従業員に対して行う給付のすべてに厳密に課税することは、実務上も煩雑であり、また社会通念上も適当ではない場合があります。そのため、所得税基本通達において、一定の要件を満たすものについては、給与として課税しなくて差し支えない取扱いが示されています。ここからは、具体的な4つのケースについて、その取り扱いを法令と通達に基づき詳細に解説いたします。

永年勤続者の記念品等

目次

原則的な取扱いと非課税の要件

使用者が永年勤続した役員又は使用人の表彰に当たり、その記念として旅行、観劇等に招待し、又は記念品を支給することにより当該役員又は使用人が受ける利益については、原則として次の要件のいずれにも該当する場合に限り、課税しなくて差し支えないとされています。

  1. 当該利益の額が、当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし社会通念上相当と認められること
  2. 当該表彰が、おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回目以後の表彰については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。

課税上の注意点と例外的な取扱い

この記念品等の支給は、長期間勤務したことに対する一種の儀礼的な給付であることから、課税上弊害のない範囲内で非課税とされています。ただし、記念品等に代えて支給する金銭については非課税の対象には含まれず、課税対象となります。また、本人が自由に記念品を選択できる仕組みの場合には、その記念品の価額が給与として課税される取扱いが示されています。したがって、広範な商品から自由に選択できるカタログギフト等については、給与課税のリスクが高いものと考えられます。また、社会一般に行われている儀礼的な給付の範囲を超える過大な利益や、10年未満の勤続年数の者に対する表彰などは、給与として課税されることになります。

新屋賢人

実務上は、対象となる勤続年数の区切り(例えば20年、25年、30年など)を社内規程等で明確に定めておくことが重要です。また、あくまで現物支給や旅行等の招待が非課税の対象であり、現金での支給は給与課税の対象となる点にくれぐれもご注意ください。

創業記念品等

原則的な取扱いと非課税の要件

使用者が役員又は使用人に対し、創業記念、増資記念、工事完成記念又は合併記念等に際し、その記念として支給する記念品により受ける利益については、次の要件を満たす場合に課税しないこととされています。

  1. その支給する記念品が社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつ、そのものの価額(処分見込価額により評価した価額)が1万円以下のもの消費税及び地方消費税の額を除いて判定します)であること。
  2. 創業記念のように一定期間ごとに到来する記念に際し支給する記念品については、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに支給するものであること。

ただし、所得税基本通達36-22では、建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等に際して支給するものについては、この取扱いの対象外とされています。工事完成記念品等を扱う場合には、このただし書にも注意が必要です。

課税上の注意点と例外的な取扱い

創業記念品等についても、永年勤続者の記念品等と同様に、金銭による支給は非課税とはならず、給与として課税の対象になります。なお、処分見込価額が1万円を超える記念品を支給した場合には、その全額が課税の対象となるため、1万円という上限額には十分な配慮が必要です。

新屋賢人

この1万円という基準は、購入価額ではなく「処分見込価額」で判定されます。また、消費税等の額を除いた金額(税抜金額)で判定するという通達の取り扱いがありますので、記念品を選定する際には税抜価格で1万円を超えないようにご留意ください。

商品、製品等の値引販売

原則的な取扱いと非課税の要件

使用者が役員又は使用人に対し、自己の取り扱う商品や製品等(有価証券及び食事を除きます)を値引販売することによって生じる利益については、次の要件のすべてに該当する場合に、課税しなくて差し支えないとされています。

  1. 値引販売に係る価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常他へ販売する価額(通常販売価額)の70パーセント以上(値引率が30パーセント以内)であること。
  2. 値引率が、役員若しくは使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれている範囲内の基準で定められていること。
  3. 値引販売をする商品等の数量が、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度の数量であること。

例外的な取扱いと適用除外

この取扱いは、使用者が自ら取り扱う商品等を対象としていますが、一般の顧客に対しても行われるような値引販売である場合には、課税の弊害がないものとして給与課税はされません。 ただし、不動産業者が販売する家屋又は土地については、これらの値引販売による利益が極めて多額になり、一般社会における福利厚生の範囲を超えるものであるため、たとえ上記の要件を満たしていたとしても非課税とはなりません。また、季節商品などで通常他へ販売する価額が取得価額未満となっている場合には、特例として、その通常販売価額からその価額をもって役員や使用人に販売したとしても課税されないこととされています。

新屋賢人

通常販売価額に対する販売価額が、おおむね70%未満となるような過度な値引きは給与課税の対象となる可能性があります。社内販売制度を設計する際には、販売価額が使用者の取得価額以上であり、かつ通常販売価額のおおむね70%以上となるように設定することが重要です。

残業又は宿直等をした者に支給する食事

原則的な取扱いと非課税の要件

使用者が、残業又は宿直若しくは日直をした者(その者の通常の勤務時間外における勤務としてこれらの勤務を行った者に限ります)に対し、これらの勤務をしたことにより支給する食事については、課税しなくて差し支えないとされています。具体的には、正規の勤務時間終了後に残業をする者に対して支給される夕食や、宿日直勤務をした者に支給される夕食や朝食がこれに該当します。

課税上の注意点と例外的な取扱い

ここで注意しなければならないのは、原則として食事そのもの(現物)を無料で支給する場合が対象であり、食事に代えて「金銭」で支給する場合には、この非課税の取扱いは適用されず課税対象となるということです。 ただし、例外的な取扱いとして、宿直又は日直の勤務をすること等により、宿日直料が金銭で支給されるとともに夕食又は朝食などの食事が無料で支給されるような場合においては、その支給される宿日直料を食事代に充てる必要がないことになるため、その金銭で支給される宿日直料のうちから、勤務1回につき4,000円からその支給される食事の価額を控除した残額については、食事代以外の費用の弁償に該当するものとして課税しないという特別な計算方法があります。例えば、宿直の勤務1回につき3,800円の宿直料と価額900円の食事が無料で支給される場合、3,800円のうち、「3,800円 -(4,000円 - 900円)= 700円」についてのみ課税され、残りの3,100円については非課税となります。このように給与所得に関する通達(基本通達28-1の宿日直料の取扱い)と密接に関連しているため、併せて理解しておくことが重要です。

新屋賢人

残業の際の食事支給は非課税ですが、「夕食代として1,000円を渡す」というような金銭支給は給与課税となります。現物支給であることが大前提ですので、会社でお弁当を手配するなどの方法をとるようにしてください。なお、深夜勤務者については、夜食の現物支給ができない場合の少額な現金支給について別途取扱いがありますが、ここでいう残業食事の非課税取扱いは、原則として食事の現物支給を前提とするものです。

参照:国税庁ホームページタックスアンサーNo.2594 食事を支給したとき

まとめ

今回解説した「課税しない経済的利益」の要件について、以下の表に整理いたしました。実務における確認の際にお役立てください。

項目         主な非課税要件除外・注意事項
永年勤続者の記念品等・社会通念上相当な額・おおむね10年以上の勤続者対象・2回目以降はおおむね5年以上の間隔・金銭での支給は対象外(課税される)
創業記念品等※・社会通念上ふさわしく、処分見込価額(税抜)1万円以下・おおむね5年以上の期間ごとに支給・金銭での支給は対象外(課税される)
商品、製品等の値引販売・取得価額以上かつ通常販売価額の70%以上で販売・合理的なバランスが保たれた基準であること・通常消費する程度の数量であること・有価証券、食事は対象外
・不動産業者の土地建物は対象外
残業・宿直等をした者への食事・通常の勤務時間外の残業や宿日直勤務により無料で支給される食事・食事に代わる金銭支給は原則課税・宿日直料(現金)との併給時は別途計算規定あり

※建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等に際し支給するものは、所得税基本通達36-22の取扱いの対象外とされています

新屋賢人

役員や従業員に喜ばれる福利厚生制度であっても、税務上の要件を満たさなければ思わぬ給与課税を招くことになります。これらの通達の基準をしっかりと把握し、適切な社内規程の整備と運用を行ってまいりましょう。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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