ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年4月18日のテーマはなんでしょうか?



今朝は「消耗品費等」の税務上の取扱いについて整理していきたいと思います。実務でも毎日のように発生するパソコンや事務用品、備品などを購入した際の処理についてですね。



消耗品費ですか!たしか、10万円未満なら全額経費になるんですよね?それくらいは私でもバッチリ知っていますよ。



基本はその通りですが、実務上は取得価額によって「10万円未満」「20万円未満」「40万円未満」と異なるルールが法令で設けられており、法人の規模や青色申告かどうかによっても適用できる特例が変わるのです。決して単純な話ではありません。



そうなのですね。少額だからといって適当に処理しては痛い目を見そうですね。ぜひ詳しく教えてください!



それでは、法人税法等の法令や通達に基づき、減価償却の原則的な取扱いから、実務で頻出する3つの特例、そして例外的な取扱いまでを、一つ一つ確認していきましょう。
1. 減価償却資産の原則的な取扱いと消耗品費
まず、パソコン、応接セット、機械装置など、事業の用に供するために取得した資産が税務上どのように取り扱われるのか、その大原則を確認いたします。
法人が事業の用に供するために取得した資産のうち、時の経過によってその価値が減少するものは「減価償却資産」と呼ばれます。法人税法上、減価償却資産の取得価額は、取得した事業年度においてその全額をただちに損金(経費)の額に算入することは原則として認められません。
その資産の法定耐用年数(資産の種類や構造などに応じて定められた使用可能期間)にわたり、各事業年度の償却限度額の範囲内で、期間の経過に応じて少しずつ損金の額に算入していく必要があります。これを「減価償却」と呼びます。
しかし、すべての資産についてこの原則通りの減価償却を要求すると、企業の実務負担が過大になります。わずか数千円の文房具や少額の備品まで数年間にわたって資産計上し、減価償却の計算をするのは非効率的です。そこで、法人税法施行令や租税特別措置法において、一定の要件を満たす少額な資産については、例外的に取得時に経費化できる特例が設けられているのです。



備品などを購入した場合、まずはそれが『減価償却資産』に該当するかどうかを判定し、原則は資産計上して複数年で経費化するものである、という大前提をしっかりと押さえておくことがすべての出発点となります。
2. 少額の減価償却資産の特例(10万円未満の基準)
減価償却の原則に対する一つ目の特例が、法人税法施行令第133条に規定されている「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入」の制度です。一般的に実務で最もよく使われる「10万円未満なら消耗品費になる」というルールがこれに該当します。
少額の減価償却資産の要件
法人が事業の用に供した減価償却資産のうち、次のいずれかの要件を満たすものについては、事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する金額を損金経理(費用として会計処理すること)を要件として、全額を損金の額に算入することができます。
- 使用可能期間が1年未満であるもの
- 取得価額が10万円未満であるもの
要件の具体的な考え方
「使用可能期間が1年未満であるもの」とは、法定耐用年数ではなく、その法人の事業において客観的に1年未満で消耗し尽くされる、あるいは価値がなくなる資産を指します。 「取得価額が10万円未満であるもの」については、法人が通常1単位として取引を行うその単位ごとに判定します。例えば、応接セット(テーブルと椅子)のように、単独では機能せず組み合わせて初めて機能を発揮するものは、そのセット全体で10万円未満かどうかを判定します。



この10万円未満の特例は、法人の規模(資本金など)や青色申告・白色申告の別を問わず、すべての法人が適用できる最も基本的な制度です。ただし、必ず『損金経理』をしていること、つまり会計上も費用として処理していることが適用要件となりますので、経理処理のもれにはご注意ください。なお、貸付けの用に供した減価償却資産(主要な事業として行われるものを除く)は、令和4年の税制改正によりこの特例の対象外とされました。
3. 一括償却資産の損金算入の特例(20万円未満の基準)
二つ目の特例が、法人税法施行令第133条の2に規定されている「一括償却資産の損金算入」の制度です。取得価額が10万円以上であっても、20万円未満であれば適用できる非常に使い勝手の良い制度です。
一括償却資産の要件と処理方法
法人が事業の用に供した減価償却資産のうち、取得価額が20万円未満であるもの(前述の10万円未満の少額減価償却資産の適用を受けるものを除きます)について、事業の用に供した事業年度において、その全部または特定の一部を一括したもの(一括償却資産)とすることができます。
この一括償却資産については、その取得価額の合計額を、事業の用に供した日を含む事業年度から3年間にわたり、損金経理を要件として、均等額(各事業年度の月数に応じて按分した金額)を損金の額に算入することができます。
一括償却資産のメリットと注意点
この制度の最大のメリットは、月割計算が不要である点です。例えば、3月決算法人が3月末日に15万円のパソコンを購入して事業の用に供した場合、通常の減価償却であれば1ヶ月分しか経費になりません。しかし、一括償却資産の適用を選択すれば、取得時期に関わらず、その事業年度の月数が12ヶ月であれば取得価額の3分の1(この場合は5万円)をその事業年度の損金に算入できます。 また、地方税である償却資産税(固定資産税の一種)の申告対象から除外されるという大きなメリットもあります。



一括償却資産として処理した資産は、仮にその3年の間に除却(廃棄)したり売却したりした場合であっても、除却損や売却損を計上して残存価額を一括で落とすことはできず、残りの期間もそのまま均等償却を続けることになります。実務上は間違えやすいポイントですので、台帳管理を徹底してください。なお、貸付けの用に供した減価償却資産(主要な事業として行われるものを除く)は、令和4年の税制改正により一括償却資産の対象外とされました。
4. 中小企業者等の少額減価償却資産の特例(40万円未満の基準)
三つ目の特例が、租税特別措置法第67条の5に規定されている「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」です。取得価額が40万円未満の資産について、年間300万円を上限に一括で損金算入できるという、中小企業にとって非常に強力な節税策となる制度です。



30万円未満では?と思われた方もいらっしゃると思いますが、2026年4月1日より、改正で40万円未満となりました。2026年3月31日までに取得した資産については、改正前の30万円未満か否かで判定することになります。
特例の適用要件
この特例は誰でも使えるわけではなく、以下の厳格な要件をすべて満たす必要があります。
- 適用対象法人
青色申告書を提出する中小企業者等であること。具体的には、資本金の額が1億円以下の法人などで、かつ、常時使用する従業員の数が400人以下の法人(事務負担に配慮する必要があるものとして政令で定める法人)などが該当します。大規模法人の子会社など(適用除外事業者)は対象外です。 - 資産の要件
取得価額が40万円未満の減価償却資産であること。 - 適用期間
令和11年(2029年)3月31日までの間に取得し、事業の用に供すること。 - 上限額
その事業年度において事業の用に供したこれらの資産の取得価額の合計額が300万円に達するまでの金額であること(事業年度が1年に満たない場合は月数按分します)。 - 例外的な取扱い
貸付けの用に供した減価償却資産(主要な事業として行われるものを除く)は、令和4年の税制改正によりこの特例の対象外とされました。これは、いわゆる節税目的のドローン貸付や足場レンタルなどの租税回避行為を防止するためです。
各特例の要件比較表
ここまで解説した3つの特例について、理解を深めるために表に整理いたしました。
| 項目 | 少額の減価償却資産 | 一括償却資産 | 中小企業者等の特例 |
|---|---|---|---|
| 根拠法令 | 法人税法施行令第133条 | 法人税法施行令第133条の2 | 租税特別措置法第67条の5 |
| 取得価額の基準 | 10万円未満 | 20万円未満 | 40万円未満 |
| 対象法人の規模 | すべての法人 | すべての法人 | 青色申告の中小企業者等(従業員400人以下等) |
| 年間の合計限度額 | なし | なし | 300万円まで |
| 償却・損金算入の方法 | 取得時に全額損金算入 | 3年間で均等償却 | 取得時に全額損金算入 |
| 償却資産税の申告 | 対象外 | 対象外 | 対象(申告が必要) |
| 明細書の添付要件 | 不要 | 法人税申告書に別表の添付が必要 | 法人税申告書に別表の添付が必要 |



中小企業者等の40万円未満の特例は非常に有利ですが、償却資産税(固定資産税)の課税対象にはなるという点に注意が必要です。一括償却資産(20万円未満)を選択すれば償却資産税はかからないため、取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、あえてこの特例を使わずに一括償却資産として処理する方が、トータルでの税負担(法人税と固定資産税の合計)や申告の手間を減らせるケースがあります。状況に応じた有利選択が税理士の腕の見せ所です。
5. 実務上の重要な留意点(単位の判定と消費税の取扱い)
消耗品費等の処理を行うにあたり、実務で頻繁に論点となる「取得価額の判定単位」と「消費税の取扱い」について解説いたします。
取得価額の判定単位(通常1単位として取引を行う単位)
10万円未満、20万円未満、40万円未満という取得価額の基準を判定する際、個々の部品やパーツの金額だけで判定してはいけません。通常1単位として取引を行うその単位ごとに判定する必要があります。 例えば、パソコンを購入する場合、パソコン本体が8万円、ディスプレイが3万円だったとします。これらが組み合わさって初めて一つの機能を発揮するシステムとして購入されたのであれば、合計の11万円が取得価額となります。したがって、10万円未満の少額減価償却資産の特例は適用できず、20万円未満の一括償却資産等の特例を検討することになります。
消費税の経理方式による取得価額の判定の違い
もう一つ、極めて間違いやすいのが消費税を含めるか否かという問題です。法人税法上、取得価額を判定する際の金額(10万円、20万円、40万円の基準)は、法人が採用している消費税の経理方式(税込経理方式か税抜経理方式か)に依存します。
法人が税抜経理方式を採用している場合、法人税の課税所得金額を計算するにあたり、仮受消費税等の額または仮払消費税等の額を超える金額を取引の対価の額から区分して経理しているため、取得価額の判定も「税抜金額」で行います。 一方、法人が税込経理方式を採用している場合には、消費税等の額が含まれた「税込金額」で取得価額の判定を行うことになります。
つまり、税抜98,000円(税込107,800円、消費税率10%の場合)のパソコンを購入した場合、税抜経理方式の法人であれば「10万円未満」となり一括損金算入が可能ですが、税込経理方式の法人であれば「10万円以上」となるため、10万円未満の特例は使えないことになります。



決算期末に『40万円未満の特例枠が余っているから』といって駆け込みで備品を購入する際、自社が税込経理か税抜経理かを失念して税込41万円のものを買ってしまい、全額経費にならなかった、という失敗は後を絶ちません。判定金額がボーダーライン上にある場合は、消費税の取扱いを必ず事前に確認してください。
まとめ
本日は「消耗品費等(少額の減価償却資産など)」に関する税務上の取扱いについて解説いたしました。
減価償却資産は、本来は法定耐用年数にわたって償却していくのが大原則です。しかし、実務上の煩雑さを回避するため、また中小企業の設備投資を後押しするために、以下の3つの特例が用意されています。
- 取得価額10万円未満の「少額の減価償却資産」(全額損金算入)
- 取得価額20万円未満の「一括償却資産」(3年均等償却)
- 取得価額40万円未満の「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」(年間300万円まで全額損金算入)
これらの特例は、法人の規模や青色申告の有無によって適用できる範囲が異なり、償却資産税への影響も異なります。また、取得価額の判定においては「1セットとしての機能的単位」で見ること、そして「採用している消費税の経理方式(税込か税抜か)」によってボーダーラインが変わることに細心の注意を払う必要があります。



節税効果や事務負担の軽減効果が高い制度である反面、適用要件を満たさなければ税務調査で否認されるリスクもあります。もし設備投資や備品の購入にあたり、どの特例を適用するのが自社にとって最も有利か迷われた際は、決して自己判断せず、専門家である我々税理士にいつでもご相談ください。誠実かつ的確にサポートさせていただきます。










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